('A`)ドクオは方舟に乗るようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:20:54.84 ID:ZlODP4dhO




『第六話  方舟 』




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:21:32.23 ID:ZlODP4dhO
墓参りを終えたドクオは次にクーの家に行こうとしていた。
クーのおじさんに仕事の暇をもらう事を了承してもらうためだ。
ジョルジュの舎弟がまたどこかに隠れてはいまいかと注意を払いながら歩いていく。


('A`)(……………)


ドクオはぼんやりと昨日の夜の事を思い出していた。
泣いていたクー。気がすむまで泣いた後クーはまたよそよそしく帰っていった。
彼女の涙を初めてみたのはあれが最初だった。

('A`)(なんとなーく気まずいな……)



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:22:26.02 ID:ZlODP4dhO
それともう一つ、彼女の両親と会うことにも少しためらいがあった。
何不自由なく育てていたはずの娘の突然の決意に悲しみにくれていないわけがない。
自慢の、最愛の一人娘を失うかもしれないという事にきっと絶望にうちしがれているに違いない。昨日のクーの腫れた頬が何よりもそれを物語っていた。
そんな彼等の姿を見るのは気の毒で見るに耐えれないだろう、とドクオは思っていた。

それにもしかしたら今現在三人がテーブルを囲み、別れの日を惜しんでいる最中だとしたら……と思うとドクオは足を止めたくなった。


('A`)(…………やっぱり、クーの家に行くのはやめておこう……)



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:23:04.57 ID:ZlODP4dhO
クーの家の前できびすをかえそうとした時、庭におじさんがいるのが見えた。


花に水をやっている。あれはドクオがクーに種をあげて彼女が気に入って育てていた花だ。
太陽の光を全て吸い込んだように眩い黄色の花びらが美しい。
ぼーっとその様子を眺めていたらふいにおじさんと目があった。


(;'A`)「……!」


ドクオはとっさに視線をそらしその場から立ち去ろうとする。


(`・ω・´)「待ちなさい」


彼はドクオを呼びとめ、ドクオはビクッとなって立ち止まる。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:25:54.59 ID:ZlODP4dhO
(`・ω・´)「こっちへ来てくれ。君と話がある」


('A`)「………は、はい」


ドクオは少し気が重くなるがおじさんに呼ばれるがまま一緒に家の中に入っていく。

そわそわしているドクオを見ておじさんは、

(`・ω・´)「娘なら今は協会だ」


と言って椅子をひき、ドクオにここに座るように指示する。
そして話を切り出した。


(`・ω・´)「………娘の事も君の事も、本当に残念だ」


('A`)「…………」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:26:45.62 ID:ZlODP4dhO
(`・ω・´)「おおよそ君は仕事の事でここによろうとしていたのだれう?
それは心配いらない。後君の家と畑……それからお母さんのお墓も私が責任を持って管理する」


ドクオはその言葉に安堵しお礼を言うとおじさんは「ただし……」と付け加える。


('A`)「………なんですか?」


彼はそんなにうまい話はないか、と少し不安気におじさんの顔を伺う。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:28:17.62 ID:ZlODP4dhO
(`・ω・´)「君は娘が好きか?」


その突拍子もない質問にドクオが答えあぐねているとおじさんはかまわず話を続ける。


(`・ω・´)「君に娘の事をお願いしたい。
あれはいつもあんな調子だがやはり女の子だ」


ドクオはまた昨日の夜を思い出す。


(`・ω・´)「だから娘の事を頼む。
ただ……
どうか娘にそれ以上の感情を持たないで欲しい」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:28:53.72 ID:ZlODP4dhO
('A`)「………え」


おじさんはドクオの手を握りしめて力強く言う。


(`・ω・´)「どうか………どうか頼む!」

真っ直ぐドクオを見据え懇願するおじさんに彼はただ一言、


('A`)「はい……」


としか言えなかった。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:31:41.21 ID:ZlODP4dhO
(`・ω・´)「皮肉なものだ……」


彼はドクオに言うでもなくボソっと呟くと、ドクオを抱き締める。

(`・ω・´)「元気で……そして無事に帰ってきてくれ」


ドクオは家に戻り採ったばかりの野菜を調理し昼食を取ってしばらくすると教会の鐘がなる。


('A`)「………いくか」


彼は何かもやもやした気持を払拭できないまま広場へと向かっていった。



太陽は真上で輝いていてその陽射しは彼に優しくはない。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:32:33.69 ID:ZlODP4dhO
広場につくともう皆集まっていて自分が最後だと気付く。
ブーンはニコニコしていて、五人と雑談をしている。優しい笑顔というよりはどこか不適な笑みだ。
その隣で朝にドクオと出会ったショボンが無言で立っている。

ドクオが来たのに気付いたジョルジュは意外そうな顔をしている。

川 ゚ -゚)「おはよう」

('A`)「……お、おはよう。
でも朝はさっき終わったぞ」


川 ゚ -゚)「そういえばそうだったな」


ブーンは全員揃った事を確認すると手を鳴らし自分の話を聞くように促す。


( ^ω^)「皆、昨晩はよく眠れたかお?」


たっぷり睡眠をとったような艶のいい顔で六人に訪ねる。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:33:21.55 ID:ZlODP4dhO
答えを待たずに彼は話を続ける。


( ^ω^)「ブヒヒ……まずは勇気ある君達に国王に変わって例を言うお」


彼は一人一人と握手を交し礼の言葉を言っていく。


( ^ω^)「さあ、君達にはこれから方船に乗る者を選別するために我々と一週間一緒に暮らしてもらうお。
そして一週間後に選ばれし者が決定するお」

('A`)「………」


( ^ω^)「所で君達はエデンがどこにあるか想像できるかお?そこの君はどう思っているかお?」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:35:25.20 ID:ZlODP4dhO
指を指されたニダーが少し考えてから答える。

<ヽ`∀´>「船にのると言うからには海を越えた遥か彼方にあると思うニダ。
きっと豊かな土壌に太陽と水の恵みが育った楽園ニダ。
勿論そこに着くまでに過酷な道のりを越えていくニダ」


六人全員が頭に連想させた答えをニダ―ははっきりと述べた。
それを聞いたブーンは満足そうな顔をして鼻をならし、腕をあげ空を指差す。


その動作に一同は困惑する。
それを見てまたブーンは満足そうな顔をする。



( ^ω^)「ブヒヒ……」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:36:30.69 ID:ZlODP4dhO
( ^ω^)「君達が答えられる範囲としては満点だけど残念ながら違うお」


('A`)(………?)



( ^ω^)「エデンは遥か空を越えた向こうにあるお」


('A`)<ヽ`∀´>川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ( ゚∀゚)从 ゚∀从「…………………」


誰一人としてブーンの言う意味を理解できず唖然とする。


(;゚∀゚)「あ、あんた何をいって────」


ジョルジュが言い切る前に視界が暗くなる。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:38:31.73 ID:ZlODP4dhO
気付くと広場はすっぽりと陰に覆われていて、六人は急に夜にでもなったのかと思い太陽の所在を確認する。

しかし、見上げた空に太陽の姿はなかった。
代わりに巨大な鉄の塊が音も立てずに空を覆っていた。


从;゚∀从「う、うわああ!!」


(;゚∀゚)「うひゃあ!!」


村をすべて飲み込んでしまわれるような感覚に陥り、皆がこの世の終りを見たような顔をする。


(;'A`)「……な、なんだっていうんだ……」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/15(水) 19:39:26.76 ID:ZlODP4dhO
慌て蓋めく彼等をよそにブーンは口をにんまりとさせる。ショボンは落ち着いた様子でそれを眺める。


(´・ω・`)「…………」


そしてブーンは静かに、


( ^ω^)「ようこそ、救いの舟よ」


と呟いた。




第六話 終



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