('A`)ドクオは方舟に乗るようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 22:56:02.97 ID:xsBWcGt+O
『第七話 眩暈』
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 22:56:50.54 ID:xsBWcGt+O
- ( ^ω^)「あれが君達をエデンまで運ぶ方舟……」
その言葉に更に驚きの声があがる。
( ^ω^)「ノヴィスノアだお」
上空を横切る方舟は北山の方へ移動していくと太陽はまた顔を出し、次第に辺りはいつもの明るさを取り戻していく。
(;'A`)(でけぇ……あれが方舟……)
ドクオは初めて見る船のあまりにも規格外の大きさに漠然とした不安を抱いていた。
彼等はそもそも空を船が移動すること事態、予想もしていなかった。
川 ゚ -゚)「空に……浮かぶ舟…」
クーはそう声をもらす。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 22:57:34.27 ID:xsBWcGt+O
- この村に漁師なんていう職業はないが学校で見た資料に描かれた物とはまるで違っていた。
( ^ω^)「驚くのも無理はないお。
舟はおろか海も見たことない君達がいきなりあんなものを見たら当然だお」
北山の方で轟音が鳴り、砂塵が舞い上がる。
方舟が山に着陸した。
この位置からでも十分にその大きさを確認できる。
( ^ω^)「あれは普通の舟とは機能もサイズも段違いだお」
完全に着陸を終えたそれはまるで巨大な建造物がいきなり建立したかのように見える。
鳥たちが一斉に逃げ出したのが見えた。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:01:36.87 ID:xsBWcGt+O
- (;゚∀゚)「じゃ、じゃあ冗談抜きでまじであの空の上まで行くっていうのか!?」
( ^ω^)「空どころか空を越えたさらに向こう側、夜に見える月や星が存在するところまでだお」
空の向こう側という言葉にドクオ達はいまいちピンとこない。
月のある場所、そんなところに本当にいけるものなのかと、狐につままれたような顔をする。
しかしただ一人ツンだけは顔に期待の色を浮かべていた。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:04:01.15 ID:xsBWcGt+O
- ( ^ω^)「そしてそれから一週間の間君達はあの舟の中で暮らしてもらうお」
話についていっていないドクオ達をよそにブーンはショボンと何かを話しだした。
('A`)「で、でかいよな……」
川 ゚ -゚)「ああ、この村の外にあんなものがあったとは夢にも思わなかった」
('A`)「でもあの舟ならあながち空の向こうに行くってのも嘘じゃなさそうだ」
( ゚∀゚)「ケッ……何をビビってんだよドクオ〜」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:04:48.70 ID:xsBWcGt+O
- ジョルジュが二人の話に割って入る。
途端にドクオは口をつぐむ。
( ゚∀゚)「今からだって志願取り止めたっていいんだぜ〜」
ジョルジュはあざけ笑う。
また三人の間に険悪な雰囲気が漂うと広場に一台のジープが走ってきた。
これまた見たことのない鉄の乗り物に一同は驚く。
これは一体何なのだろうか、馬車にしては馬はいないと、各々考えを張り巡らせていると、
( ^ω^)「さ、これに皆乗り込むお。
方舟まで連れてってくれるお」
と当たり前のようにいう。
(;゚∀゚)「ほ、ほら怖じけづいてないで早くするぞ」
そういって足早にジョルジュがジープに乗り込む。
彼はここでも大将風を吹かせたいらしい。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:05:37.36 ID:xsBWcGt+O
- ジョルジュに続いてドクオ達も乗り込んでいく。
( ^ω^)「ブヒヒ…方舟にはこれまでにない暮らしが待っているお」
ブーンはまるでイタズラっ子の様に笑い助手席に乗る。
ドクオ達はまずその速さに驚いた。
木や家屋はあっとういうまに視界を過ぎ、その速さは山道でも変わらない。
ドクオ達にとって驚くべき勢いで目に見える方舟が大きくなっていく。
(;'A`)(にしても……よく揺れる)
油断をしたら体が外に投げ出されそうだ。
ドクオの目に必死の形相で鉄棒を掴むジョルジュが映る。
歩けば半日以上かかりそうな道のりも、ものの一時間程で到着した。
激しい揺れと走っている間中鳴る煩い音さえなければ最高の乗り物だとドクオは思った。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:08:10.66 ID:xsBWcGt+O
- 真近くで見る方舟はより圧倒的で、その無機質な作りが不気味さをかもしだす。
大きすぎて舟の全貌は見えない。
ドクオは広場で見上げた時にみた形を思い出す。
凝った装飾もしておらずそれがかえって綺麗に見える直方体だった。
从;゚∀从「……う……うぷ」
<ヽ`∀´>「……!」
ニダーはハインリッヒの異変に気付く。
顔から血の気が引いて脂汗をかいている。
<ヽ`∀´>「どうしたニダ!?」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:08:38.79 ID:xsBWcGt+O
- 从;゚∀从「……う……う…」
どうやら質問に答えられる様子ではないと悟ったニダーはブーンを呼ぶ。
<ヽ`∀´>「様子がおかしいニダ」
( ^ω^)「………どうやら車に酔っているみたいだお」
从;゚∀从「ハァハァ………」
<ヽ`∀´>「何かよくなる薬はないニダか?」
( ^ω^)「とりあえず方舟の中にいけば回復に十分な医療施設はあるお」
そういってブーンは方舟の真ん中辺りを指さす。
方舟の入り口があり、そこから地上に向けて長い階段が降りている。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:09:13.27 ID:xsBWcGt+O
( ^ω^)「さ、皆早く登れお」
何食わぬ顔でそういうと階段の方へ歩いて行くブーンにニダーは反感を覚える。
<ヽ`∀´>「ちょっと待つニダ、あそこまで今の彼女が登るのは無理ニダ!」
( ^ω^)「だから?」
ブーンは笑顔で言う。
<ヽ`∀´>「彼女を医療室まで運んでやってくれニダ!」
ニダーはいよいよ顔が真っ青になりしゃがみ込んでいるハインリッヒの背中を摩ってやる。
( ^ω^)「…………」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:09:42.84 ID:xsBWcGt+O
- ブーンは今度は顔から笑顔がいっさい消え冷酷な顔になる。
ニダーは一変したブーンの表情に一瞬戸惑う。
( ^ω^)「……勘違いするなお。僕達はあくまで選別者。
既に選別は始まっているお。
どんな理由があろうと個人に贔屓はできないお」
<ヽ`∀´>「いくらなんでも……!」
ニダーの顔は氷つく。
ますますブーンへの嫌悪感を増していく。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:12:36.41 ID:xsBWcGt+O
- ブーンはそれ以上何も言うことなく階段を登っていく。
ショボンも後に続く。
( ゚∀゚)「ケッ……情けねえ情けねえ。
ま、これでめでたく一人脱落ってわけだ」
ジョルジュは高笑いしながらブーン達の後を追っていく。
从;゚∀从「くっ………くそぅ………」
ξ゚听)ξ「ま、悪いけど運がなかったってことで諦めなさい」
<ヽ`∀´>「あんた達はなんとも思わないニダか……!!」
ξ゚听)ξ「なんとでもいいなさい」
ツンもジョルジュの後に続く。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:13:05.82 ID:xsBWcGt+O
- ドクオはそんなやりとりをどうしたらいいのか分からず黙って見ていた。
('A`)(あいつは……今一人ぼっち……)
自分の力ではどうすることもできない状況で次々と人に見捨てられて行くハインリッヒを自分と重ねていた。
痛い程分かる気持ち。
俺には分かる……。
('A`)(よしっ!)
ドクオは覚悟を決めた。
そんな彼の様子に気付いたクーは一瞬躊躇したがドクオの手を握る。
(;'A`)「クー…?」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:13:35.10 ID:xsBWcGt+O
- 川 ゚ -゚)「行くぞ」
クーはドクオの顔を見ずにそう言うと彼を強引に引っ張っていく。
(;'A`)「おっ、おい!」
川 ゚ -゚)「………」
ハインリッヒに気がひけながらもクーにさほど抵抗することもなく連れられていく。
クーの心意が解りかねないといった表情で彼女の顔を見るが以前口を閉じたままで歩いて行く。
<ヽ`∀´>「…………」
从;゚∀从「う……う……」
ニダーはハインリッヒを摩る手を止めた。
彼からは怒りの表情がうかがえる。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:15:58.97 ID:xsBWcGt+O
- <ヽ`∀´>「…………」
从;゚∀从「お前も……早く……いけ……よ」
<ヽ`∀´>「………」
じっとハインリッヒを見つめた後、ニダーは彼女の手前に背中を見せてしゃがみこむ。
从;゚∀从「お……おい……」
<ヽ`∀´>「いいから背中に乗るニダ」
ハインリッヒは彼の行動に少し困惑したが、ワラをもすがるように肩にしがみつく。
力ない彼女の体重がニダーにのしかかり苦悶の表情を浮かべる。
しかし、そんなこともなんのそのと足腰に力をいれ立ち上がる。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:16:23.13 ID:xsBWcGt+O
- <ヽ;`∀´>「いいニダか……?」
从;゚∀从「………?」
<ヽ;`∀´>「悔しかったら見返してやるニダ。
自分を笑ったやつらを……蔑すんだやつらを……」
从;゚∀从「…………」
ハインリッヒは答えることなくニダーの言葉を聞く。
彼はどこか自分にいい聞かせているように見えた。
<ヽ;`∀´>「エデンにさえ……エデンにさえ行けば皆がウリ達を認める……ニダ」
汗を滲ませ力をこめ、ニダーは一歩ずつ大地を踏みこむ。
ハインリッヒは彼の背中が勇ましくそしてどこか哀しいなと感じた。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:16:54.55 ID:xsBWcGt+O
- ドクオは方舟に着くとしばらく中を探索することにした。
ブーン達との次の話し合いまで鐘一つ分程の時間をもて余していたからだ。
方舟の中はドクオにとって見るもの見るものが新しかった。
勝手に開く動く扉。
木でも鉄でもない何か別の材質の床。
村の建物とは別の様式の造り。
真夏だというのに何処からか風が吹いて涼しい。
一体これらは何なのか?
('A`)(王国の技術ってやつは凄いんだなあ……)
ただただ感心しながら歩き回る。
('A`)(しかし広いなあ……あんまりいったら迷いそうだ……)
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:19:05.96 ID:xsBWcGt+O
- ドクオはふとハインリッヒの事が気にかかる。
('A`)(ブーンが言うにはあの後ニダーがハインリッヒを背負って医務室へ行ったらしいけど……)
ドクオには二人に対して罪悪感が芽生えていた。
自分だってクーの手を振り払ってでも手助けできたというのに。
でも結局自分はそれをしなかった。
('A`)(…………)
孤独にうちひしがれたハインリッヒよりもクーを選んでしまった。
同時に罪悪感は自己嫌悪を引き起こす。
ハインリッヒの気持ちが分かっていたのに……
自分が情けない。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:19:52.50 ID:xsBWcGt+O
- 拳を壁に思いきり叩き付ける。
痛い。
すごく痛い。
耐えがたい痛みがドクオを支配するがかえってそれが良かった。
少しでも心の痛みよりも勝ってくれればそれでよかった。
('A`)(……二人の様子でも見に行ってみよう……)
痛む拳を摩りながら医務室へ続く道を探す。
しかしあまりの広さに思うように辿りつけない。
気付いたらドクオは完全に迷ってしまった。
すると彼の後ろから声がする。
「どこへ行く気だ?」
聞き覚えがある声にドクオは立ち止まる。
第七話 終
戻る/第八話