('A`)ドクオは方舟に乗るようです

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:25:54.11 ID:MXqR9cohO




『第十話   飢えた獣』



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:28:50.70 ID:MXqR9cohO
二人は懐中電灯の光を頼りに森の中へ入っていく。


ξ゚听)ξ「この筒便利よね」

ツンは懐中電灯を不思議そうに眺めながらいう。


('A`)「ああ……あの舟には村にないもんばっかりだ」


ドクオはツンの話に答えながらその胸の内では何故ツンが自分に何を話すつもりなのか考えていた。

村長の娘。さらにそこらへんの女の子よりも美しい容姿もあいまって相当勝ち気で我儘だと噂を聞いていた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:29:50.76 ID:MXqR9cohO
こういう機会でもなければおそらく一生ドクオと関わりはないだろう。

('A`)「…………」


ξ゚听)ξ「それでね──私の犬がさ──」

('A`)「なあ……どこまで行くんだよ……」


ドクオはツンを制して立ち止まった。
まるで本題に入らない彼女に段々苛立ってきている。


ξ゚听)ξ「え……」」
('A`)「大事な話があるなら早くしようぜ……」


ξ゚听)ξ「……そ、そうね。ここらへんまで来たらもう大丈夫ね」

空には満月が輝き、狼が吠える。森は遠近感を奪うような暗さで、ミミズクの鳴き声があやしく響く。
ツンはふいに辺りを見渡す。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:30:54.09 ID:MXqR9cohO


ξ゚听)ξ「………」


('A`)「どうした……?」

ξ;゚听)ξ「な、何かいるわ……」


('A`)「……けものか?」

ξ;゚听)ξ「きっとそうよ……!」


('A`)「どこだ………」

ドクオは耳を澄まして見るが何も気配を感じない。
相変わらず闇にミミズクの声が吸い込まれていくだけだ。


('A`)「何もいないみたいだけど……」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:31:38.22 ID:MXqR9cohO
ξ;゚听)ξ「確かにそこに何かいたわ!狼だったらどうしましょう!」


ツンは懐中電灯の光を手前の草むらに向ける。

ξ゚听)ξ「そこよ!……ちょっと見てみてよ」


('A`)「………」


ドクオはツンに促されて渋々照らされた方へ様子を見にいく。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:34:20.86 ID:MXqR9cohO
('A`)「おい、やっぱり何も───ッ!!」


突如後頭部に痛みが走る。
何事かと振り返るとそこには、


( ゚∀゚)「よう、ドクオ」


ジョルジュが木の棒を持って立っていた。


(;'A`)「なっ!?」


まるで状況を把握できずに混乱するドクオにジョルジュはもう一撃を喰らわす。
ドクオは地面に倒れこんだ。


(;'A`)「〜〜〜ッ!!!」


ξ゚听)ξ「ごめんなさいね〜」


彼女のその一言でドクオは全てを悟った。
同時にまた痛みが体を走る。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:35:40.92 ID:MXqR9cohO
( ゚∀゚)「しっかり縛っておけよ!」


ξ゚听)ξ「わかってるわよ」

(;'A`)「やめろ!!」

( ゚∀゚)「ケッ!てめえが悪いんだぜ?クーに馴れ馴れしくしやがって!」

ドクオは木に縛り付けられた。
ジョルジュはニヤニヤしながらドクオに袋をぶつけると、パシャっと液体のような中身がドクオにかかった。

(;'A`)「これは……!!」


生臭い臭いが鼻孔を満たす。

( ゚∀゚)「兎の血だ」

(;'A`)「!!」

ドクオはそれの意味するところが分かりおののいた。

( ゚∀゚)「森に散歩に入ったまま奥に入りすぎ迷ってお陀仏。よくある話さ」

(;'A`)「冗談はやめろ!!」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:37:32.32 ID:MXqR9cohO
( ゚∀゚)「じゃあな」


ジョルジュはツンを連れてドクオを背にして意気揚々と去っいった。


(;'A`)「………」


身動きもとれず夜の森に一人置き去りにされたドクオは死を予感した。

月の光も届かず視界は闇に包まれ鼓動が忙しく聞こえる。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:38:06.21 ID:MXqR9cohO
ミミズクの鳴き声が森の心音のようだ。


(;'A`)「くそっ……!!」


もがけどもがけど縄は緩む様子もない。
ドクオは諦めた。


「ウー………」


('A`)「!!」


姿なき獣のうなり声。

狼。



彼に染み付いた兎の血の匂いに誘われたのだろう。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:40:28.55 ID:MXqR9cohO
飢えた獣はヨダレを垂らしドクオに飛び付いた。

(;´A`)「うわぁ!!」


今にも喉元に喰らい付こうという時、耳をつんざく渇いた音が響いた。


(;'A`)「あ……」


目を開くとそこには狼が横たわっていた。
力つきた様に動く様子はない。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:40:56.39 ID:MXqR9cohO
(;'A`)「どうして………」


訳が分からずにただ地面に倒れた狼を見つめていると急に目が眩しい光に照らされ痛む。
川 ゚ -゚)「ドクオ!!」


(;'A`)「クー!!」


川 ゚ -゚)「大丈夫か!?」


クーが血相を変えてドクオに駆け寄り縄をほどく。


川 ゚ -゚)「誰にやられたんだ!!」


('A`)「ジョルジュ達だ……」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:41:57.51 ID:MXqR9cohO
川 ゚ -゚)「あいつめ!」


('A`)「なんでクーがこんな所に……?」


川 ゚ -゚)「私は中々お前が部屋に戻ってこないからもう一人で行くことにしたんだ。
そしたら大きな音がして様子を見にきてみればお前が木に縛り付けられていたというわけだ」


(;'A`)「とにかく……助かった……」


川 ゚ -゚)「ああ」


('A`)「………早く帰ろう……また狼が来るかもしれない……」

縄がほどけてドクオは血の染み付いた服をその場に投げ捨てた。


川 ゚ -゚)「……その前に……約束を守ってもらわないとな」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:44:26.10 ID:MXqR9cohO
('A`)「え……?」

川 ゚ -゚)「例のいい場所っていうのはこの近くなんだ」


クーに連れられた場所には湖があった。
白く輝く月や星が水面に映りゆらゆらと揺れている。



川 ゚ -゚)「綺麗だろ?これもショボンさんに教えてもらったんだ」

('A`)「ああ……空が二つあるみたいだ」


川 ゚ -゚)「涼しくて気持ちいいな」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:47:20.16 ID:MXqR9cohO
('A`)「……ああ。あ……なんだこれ?」


ドクオは瓶が落ちているのに気付いた。


川 ゚ -゚)「酒瓶だな……でも中身も入ってないし随分古いな…」

('A`)「ちぇっ……中身があったら月でも見ながら一杯やりたいとこだったけどな」

川 ゚ -゚)「フッ……お酒なんて飲んだことないくせに」


('A`)(それにしてもあの狼はなんでいきなり死んだんだ……?)


川 ゚ -゚)「ドクオ…?どうした?」


('A`)「あ……なんでもないよ」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/29(水) 23:51:24.05 ID:MXqR9cohO
ドクオは不可解な狼の死が気にかかったが今は目の前の風景に興じることにした。


ドクオは空っぽの酒瓶で水をすくいまた湖に水を流す。
なんとなくしばらくそれを繰り返した。


('A`)「なあクー……」

川 ゚ -゚)「なんだ?」


('A`)「ありがとうな」




第十話 終



戻る第十一話