( ^ω^)ブーンの人生は運に恵まれていないようです
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/16(木) 23:47:27.33 ID:BW6J0r7zO
- 1997年4月26日
VIP町―――
田舎町と呼んでも差し支えないこの町で
僕は一人暮らしを営んでいた
父さんとの暮らしは楽しかった―――最初だけは
父さんは再婚を考えており、段々僕のことが邪魔になったようだ
次第に家を空けることが増えていった
しかし僕の家を出る決意を確かなものにしたのは
今年の1月の出来事だった
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/16(木) 23:49:16.34 ID:BW6J0r7zO
- その日僕はいつも通り学校から家に帰っていた
その時だった
毎日見ている景色の中でそれは
はっきりした色彩で
僕の目に
飛び込んできた
('、`*川「シャキンさ〜ん、今日も泊まってって〜」
(`・ω・´)「ははっ分かった分かった。泊まらせてもらうよ」
ああそうか―――
だから最近家にいなかったのか―――
まあそうだよな―――
再婚ぐらいするよな―――
僕はそれを驚くほど冷静に受け入れた
- 40 名前: >>39ありますがネタバレは勘弁してください 投稿日: 2007/08/16(木) 23:51:17.25 ID:BW6J0r7zO
- 結局父さんと次に顔を合わせたのはそれから二日後だった
( ^ω^)「父さんこの前一緒に歩いてた人……」
(`・ω・´)「……見てたのか……」
( ^ω^)「あの人と結婚するのかお?」
この時点ではまだ決意は固まってなかった
(`・ω・´)「まあ一応な……でもまあ」
この時点では―――
(`・ω・´)「そんなことお前には関係無いだろう?」
この時
僕の中で
何かが
音を立てて
はじけた
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/16(木) 23:53:10.07 ID:BW6J0r7zO
- それからこの町で暮らし始めた今月までの間に
家庭内に流れていた嫌な空気は
出来れば忘れたい
嫌な空気と言えばそういえばあの時も―――
などと他のことを思案しだしたとき
『おーいブーンいるか?』
( ^ω^)(ジョルジュさんだお)
そう言いながら
アパートの隣の部屋に住んでいる
自分が兄のように慕う人の顔を思い浮かべた
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/16(木) 23:55:10.15 ID:BW6J0r7zO
- ドアを開けると思い浮かべた通りの顔がそこにあった
( ゚∀゚)「ようブーン。今暇か?」
( ^ω^)「今は……暇ですお」
( ゚∀゚)「じゃあライブ見に行かねぇか?俺のダチが出るんだ」
正直言ってあまり乗り気のしない誘いだった
そんなに音楽に興味も無いし……
( ゚∀゚)「嫌ならいいぞ」
( ^ω^)「いや、行きますお」
( ゚∀゚)「なら準備してこいや、待ってるから」
まあ暇潰し程度にはなるか
と軽い気持ちで準備を始めた
- 2: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:17:35.38 ID:0usucGp6O
―――俺の手にしたCDには
アニメタッチで
でも情けない顔は相変わらずの
俺が写っていた
この町でミュージシャンの夢を追いかけて二年―――
初めて出したこのアルバムも完売したことだし
そろそろこの国の中心都市
ニュー速市に進出しようかな―――
とぼんやり考えていた
まあそんな先のことよりも
('A`)「今このライブハウスにいるお客さん、だな。うしっ、そろそろだな」
さあ行こうか
自分の存在を
誰よりも大きく
誰よりもかっこよく
誰よりも素晴らしく見せれる
最高の舞台へ―――
- 3: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:19:06.00 ID:0usucGp6O
( ゚∀゚)「ブーンほら、あいつだよあいつ」
ジョルジュさんが指差した人を見て僕は後悔していた
( ^ω^)(何か元気の無い人だお……これは歌もきっと……)
ステージにいる人は立っているのがやっとといった感じで
演奏を一曲やり通せるのか?という疑問を持つほどだった
やがてピアノの人にやはり弱々しく合図をしてギターを弾き始める
やがて
彼の口が
開いた
- 6: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:22:40.06 ID:0usucGp6O
音楽を聴いて鳥肌が立つのは―――
初めての体験だった―――
いや―――
これからもきっと―――
そう感じるほどの衝撃が体を突き抜けた
いつの間にか満員になったライブハウス内のみんなが
一つの音も聞き漏らさまいと全神経を耳に集中させていた―――
普段はうるさいぐらい元気なジョルジュさんも―――
( ゚∀゚)「……………」
その音に聞き入っていた
別に特別歌詞やメロディが良い訳ではない
歌も特別上手くはない
だけど
僕が欲しかった何かを―――
彼は
その歌に
全て詰めこんでいた―――
- 8: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:25:37.19 ID:0usucGp6O
- 最初の一曲目に受けた衝撃は
最後には余計に深くなっていた
彼がステージ上から退いた後も
僕はしばらくステージを見つめていた
( ゚∀゚)「ブーン、行くぞ」
その言葉で視線を動かす
( ^ω^)「はっ、はいですお。でも行くって何処に……」
あっ、アパートにか
言ったあとに自己解決した
( ゚∀゚)「あいつのとこだよ、いわゆる楽屋ってやつ」
( ^ω^)「ああやっぱり……ってええーーっ!!」
- 9: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:27:32.99 ID:0usucGp6O
- ( ゚∀゚)「どうしたデカイ声出して……嫌か?」
( ^ω^)「いやいやむしろ嬉しいですお」
あんなに心を震わす歌を歌う人に会える―――
それだけで僕のテンションは上がった
ありがとうジョルジュさん
やっぱり持つべきものは
僕が親からの仕送りをサラリーマンの月給並にもらってるのを知ってからというもの、毎日のように夕食を共にしてくれる兄貴分です
( ゚∀゚)「?どうした?」
( ^ω^)「何でも無いですお」
( ゚∀゚)「なら良いけど……ほらここだ。ドクオ入るぞ」
ジョルジュさんがノックもせずに部屋に入ったことが二人の仲の良さを表していた
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/17(金) 23:29:17.61 ID:0usucGp6O
('A`)(今日のライブは上手くいったな……)
それが今日ライブの全てだった
それ以上でも以下でもない
しかし今日のライブから感じた手応えはいつも以上だった
普段なら変に声が上擦るMCも上手くいった
ステージにいる間ずっと変な高揚感があった
('A`)(何であんなに楽しかったんだ?)
頭の中で答えが出ないなら声に出そうかと思った時
突然の訪問者が開きかけた口を閉じさせた
- 11: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:31:18.35 ID:0usucGp6O
- ( ゚∀゚)「おっすドクオ、お疲れー」
入ってきたのは親友のジョルジュ
と
( ^ω^)「お、お邪魔しますお……」
('A`)「……誰?」
あれ?おかしいな
いくらジョルジュのダチだとはいえ、
初対面の人に対して普段はキョドってしまう俺が
たった一言のみではあるが普通に話せることは
ちょっと
異常だ
付き合いの長いジョルジュも不思議そうに俺を見ていた
それはそうだ
今では数少ない親友のジョルジュでさえ
初対面のときは全く話せなかったから―――
- 12: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:33:04.15 ID:0usucGp6O
- ( ^ω^)「あっ僕はブーンですお」
('A`)「俺はドクオ。よろしく」
そう言って右手を差し出す
ますます変だ
ジョルジュに対してもここまで積極的になれない
ここで気付いた
こいつと話してるときの感じ
ライブの時の感情に似てる
気持ちは高ぶっているが変に落ち着いている
全く同じ
ライブの時は曲
今はこの気持ち
とそれぞれに伝えたいことがあるのも同じだ
- 13: ◆E6cMliFHiE :2007/08/17(金) 23:35:02.04 ID:0usucGp6O
- お互いの自己紹介が済んだあとはジョルジュを交えて色々な話をした
中でも興味深かったのはブーンの姉との約束の話だった
肝心の夢については恥ずかしがって言わなかったが
その後皆で飲みにいった
ブーンは未成年だからと躇ったが
お互い様だといったら渋々ついてきた
案外いける口だった
だがやはりと言うべきかトイレに駆け込んでいった
( ゚∀゚)「……でもびっくりしたぜ、お前どうしたんだあんなに話しだして」
('A`)「俺も分かんねぇよ」
( ゚∀゚)「お前あいつのこと気に入ってるだろ?」
('A`)「……何で?」
( ゚∀゚)「顔で分かる」
('A`)「そんなんじゃねぇよ」
そう
本当は酒を飲み出した理由と同じかもしれない―――
('A`)「ただの好奇心さ」
戻る/1997年8月19日