('A`)が神を認めないようです。

3: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:01:29.30 ID:0ItzAzP80
今は廃墟となった協会を探索し始めてどれ程の時が経っただろうか。
どうやらこの世界には太陽や月といったものはないようだ。
頭上を見上げるとそこに広がるのは青空ではなく、
ただ茫然と広がる白い光。

自分が今いる場所がいかに特異なものであるか再確認する。

クーにたずねてみたところ、もともと契約者が持つ自分オリジナルの空間は
普通の家のようなものだが、
玄関というものは存在せず、その部屋から出る事は他の空間と接続することでしか不可能らしい。



4: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:03:25.95 ID:0ItzAzP80
違和感を感じ、ふと記憶をたどってみる。
確かクーの空間には窓があったはずだ。
疑問を口にする前に説明される。
窓は飾りのようなものであり
外の景色は人為的なもので、窓を開ける事はできないそうだ。

つまり、契約者がそれぞれ所持している空間に外という概念自体存在しない。
そのことから、この協会が存在しているのは誰かの空間ではないということがわかる。

ショボンは以前から不思議には思っていたらしい。



5: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:05:24.93 ID:0ItzAzP80
協会長である荒巻という人物にも、個人の空間は存在していた。

ならこの空間はいったい誰のものなのか。
はたまた、誰のものでもないのなら、なぜ契約者は簡単に出入りできるのだろうか。


ξ゚听)ξ「つーは何も知らないの?」

(*゚∀゚)「えーっと…。ほら。私はあまり考え込まないタイプだから♪」



7: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:08:11.75 ID:0ItzAzP80
ガレキをどかしながらの会話にも少し疲れてきた。
何か手がかりをと思い、ひたすらに探し続けてみたが
特にそれらしいものもない。

川 ゚ -゚)「少し休憩しようか。」

('A`)「あぁ…。もう腕がパンパンです…。」


ショボンも同意見らしく、がれきに腰掛けて一息ついている。
ツンとつーはなにやら服を買いにいくだの、ケーキバイキングがどうだの、
女の子特有の聞くだけで疲れるような話に夢中になっている。



8: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:10:12.81 ID:0ItzAzP80
後ろを見るとブーンとクーがなにやら話し込んでいた。
珍しいツーショットだな。
その会話に興味がないと言えば嘘になるが、
いまはそれよりも疲労感のほうが強かった。

('A`)「あー…。」

仰向けに倒れこむ。

視界に広がるのはやはり青い空ではなく、ただの白い光だ。
見続けているとクラクラしてくる。



14: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:13:09.09 ID:0ItzAzP80
もとより何かてがかりがある確証などは無かった。
むしろ、あればラッキーぐらいのものだ。

だが、これだけ探索して何もないとなると少しがっかりだ。
神によって破壊されてしまった協会。
これだけ徹底的に破壊したんだ。
きっと何か情報があって、それを隠すために…と考えたのだが、
少し考えすぎだったのかもしれない。

(´・ω・`)「疲れたかい?」

急に話し掛けられて少し驚いた。
横を見ると同じように寝転んだショボンがこちらに微笑んでいた。



16: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:15:27.77 ID:0ItzAzP80
('A`)「ん〜…。簡単にはいかないもんだな。」

(´・ω・`)「そうだね。僕も少なからず期待はしていたんだけど―――あれ?」


ショボンのこちらを見る表情に変化が出た。
俺の顔に何か…、いや、違う。
どうやら見てるのは俺じゃなくて後ろのようだ。


「何をしている?」



17: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:17:19.83 ID:0ItzAzP80
背後から聞こえる聞いた事のない声に飛び起きる。
そこに立っていたのは、長身で真っ黒な短髪。
ノースリーブの服から生えている二本の逞しい日に焼けた腕。
太い首に、しっかり開かれた双眼。

(,,゚Д゚)「聞こえなかったか?こんなところで何をしていると聞いたんだ。」


その男は再び同じ言葉を発した。

その瞬間バックステップで距離をとる。
この空間にいるという事は…こいつも契約者だ。



18: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:21:28.91 ID:0ItzAzP80
しかもこの圧倒的威圧感…。
神とはまた別の重圧を感じる。

その表情や、声からして、
とても友好的に話し掛けてきてるとは思えない。


川;゚ -゚)「な…!ギコ!? なぜここに?」

(,,゚Д゚)「おう。お前の事は知っている。クー。だが先に質問に答えろ。」



21: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:23:32.37 ID:0ItzAzP80
ギコ…聞き覚えがある。
神に指名された3人の契約者。
クーとハインリッヒ、そしてギコ。

確か近接系の能力に秀でていると聞いたはず。
だがそんなものは見ればわかる。

(;'A`)(勝てる気がしねぇ…)


(´・ω・`)「神に…抗う手段を探しているんだよ。」



23: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:25:19.93 ID:0ItzAzP80
ギコの疑問に答えたのはショボンだった。
つーも驚いて声が出ないようだ。
それもそうだろう。まさかこんなところで他の契約者に出くわすなんて。


川 ゚ -゚)「驚いた…。だが、会えてよかった。」

(*゚∀゚)「そうだよ!ギコがいれば私達の戦力は大きく上がる!」


わざわざ神が直接指名するということは、
それだけ能力が高いということだ。



25: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:27:11.96 ID:0ItzAzP80
ハインリッヒがいなくなった今、ギコが味方に加われば大きな力になる事は間違いなかった。

(,,゚Д゚)「神に…な。やめておけ。」


だが、ギコの口から出た言葉は驚くべきものだった。


(,,゚Д゚)「あいつは強い。俺たちでは勝てん。」

(;´・ω・`)「なっ!? 本気か!?」

(,,゚Д゚)「当たり前だ。冗談でこんな事を言うか。むしろお前達こそ正気とは思えんな。」

川 ゚ -゚)「ギコ…。そう言わずになんとか手を貸してくれないだろうか。」



27: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:29:02.10 ID:0ItzAzP80
そう言って頭を下げるクー。
契約者同士といっても、それらは皆友達同士でもなければ知り合いというわけでもない。
人数は少ないとはいえ、ある者は協会職員に。
またある者は人間の世界に溶け込んで生活している。

その中で面識の無い者というのはもちろん存在するのだ。

ギコとの接し方を見ていれば、噂は聞いた事があるとしても
面識はほとんどないように思える。

それでもなんとか仲間にしたい。今はやはり力不足は否めないのだから。



28: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:31:06.05 ID:0ItzAzP80
(,,゚Д゚)「…すまないが」


そういってギコは空間から刀を引き抜いた。
その細身の刀は一見とても脆そうで儚いものに見える。
しかし、それと同時にゾクゾクするような怪しさを持っていて
明らかに下位レベルの能力ではないことがわかった。


(,,゚Д゚)「お前達と仲間になることはできん。」

ギコは刀をこちらへ向けてそうつぶやいた。



29: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:32:54.44 ID:0ItzAzP80
理解できなかった。
なぜギコがこちらへ刀をむけているのか。
なぜこんなにも完全に拒否されているのか。

その理由はすぐにわかった。

(,,゚Д゚)「俺は神の下についた。」


一同全員が一瞬でギコと距離をとる。
すぐ隣にいるショボンは額に汗を浮かべている。
後にいる他の皆の様子を窺う事はできなかった。
顔を逸らす事ができない。それほどの殺気をギコが放っているのだ。



30: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:34:57.22 ID:0ItzAzP80
(,,゚Д゚)「今すぐお前達と争うつもりはない。そんな命令もうけていないからな。
     だが忠告しておく。やめておけ。神に勝てる者など存在しない。」


殺気を放ったまま喋る言葉の一つ一つに重圧を感じた。
ギコの体勢は構えてるなどとは言い難く、
ただ刀をこちらへ向けているだけに見える。
しかし、今少しでも動けば即座に切られるだろう。
そのイメージが脳裏から離れない。



32: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:38:36.36 ID:0ItzAzP80
(*゚∀゚)「ふざけないでよ…」


そんな中言葉を発したのはつーだった。
振り向く事ができないのでその表情はわからない。
だがその言葉には明らかな怒気を感じた。


(*゚∀゚)「皆一生懸命戦ってんのよ! 別にあんたが手を貸してくれないならそれでいいわ。
     神に簡単に尻尾ふるような負け犬こっちから願い下げ。
     でもそんなあんたが偉そうに忠告なんかしてるんじゃないわよ!」



34: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:40:19.66 ID:0ItzAzP80
背筋が凍りつきそうだった。
ギコの表情は変わらない。
とはいってもこれだけ挑発されているのだ。
いつ斬りかかられてもおかしくはない。


(,,゚Д゚)「―――ふん。威勢だけはいいな。」


言葉に怒りを感じなかった。
どうやら挑発には乗らないようだ。
助かった…そう思った自分に気が付いて苛立ちを感じた。



36: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:42:20.42 ID:0ItzAzP80
(,,゚Д゚)「いい事を教えておいてやる。神はお前達に潰されたニダーを中心にした組織『神軍』を 
     新しく作り直している。」

('A`)「なん…だと…!」

(,,゚Д゚)「もう一つ。ドクオと言ったな。お前達に追手が出されている。
     俺も詳しくは知らんが…それなりに腕はたつだろうな。」

(,,゚Д゚)(追っ手に任命されたのは神のいろんな技術を実験的に詰め込まれたやつだ。弱くはないだろう。)


( ^ω^)「なんでだお?」

(,,゚Д゚)「あ?」

( ^ω^)「なんでそんな事をわざわざ教えてくれるんだお。
      神の下についたならブーン達を今倒せば手柄になるんじゃないかお?」



38: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:44:12.12 ID:0ItzAzP80
ブーンの言ってる事はもっともだ。
いくら俺たちの人数が多いといっても、この男ならきっと対等以上に戦えるだろう。
怖気づいているようにも見えない。
ましてや、そんな情報をわざわざ教えてくれる理由がわからない。

(,,゚Д゚)「神の下についているといっても、全てを捧げたわけじゃない。
     理由があるだけだ。 それに弱いものいじめは趣味じゃないんでな。」


そう言うとギコは自分の空間と思われるものへの入り口を開いた。
どうやら本気で戦う気はないらしい。

(,,゚Д゚)「神に逆らうのはやめておけ。俺はお前達みたいなやつは嫌いじゃねぇんだ。
     できれば戦いたくねぇ。」



40: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:45:49.01 ID:0ItzAzP80
そう言い残して自分の空間へと消えていった。
あとに残された俺たちは、ようやくプレッシャーから開放されて
久しぶりに呼吸をしたようにすら感じていた。


(;'A`)「…おっかねぇ。」

( ^ω^)「お…。とっても強そうだったお。」

ξ゚听)ξ「なっさけない…とも言えないわね。」

(*゚∀゚)「しょうがないよ。『剛剣』のふたつ名をミルナ先生から直々に頂いた程の使い手だからね。」



41: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:47:34.72 ID:0ItzAzP80
『剛剣』契約者の中で有名な剣術があり、それを極めたものだけに送られる名らしい。
先代はミルナという者だったが、衰えと教員になることを理由に譲ったらしい。
現在はギコが冠しているふたつ名だそうだ。


川 ゚ -゚)「ギコが…敵になったか。」

(´・ω・`)「しかも神軍まで再結成とはね。」


ゼロの中でも神に従うもの。
具体的には、能力を持たないゼロでない人間達を殺し、
自信の能力のレベルを上げようと考える者やそれに従う者達。
フレイムボールが使える者が十数人と、フレイムランスを使える者数人、
更にリーダーとしてニダーがまとめあげていた神軍。



42: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:47:50.39 ID:0ItzAzP80
だが、それらは前の戦いで俺たちが潰したはずだった。
リーダーでもあるニダーは神自らの手によって殺されたのだ。

それで神軍は事実上の壊滅だった。


だが、神は再び神軍を再結成させている。

考えてみれば不思議な事は何も無い。
なぜなら、神はもともと莫大な量のレイを得る為に、
莫大な数の人間と多数契約したのだから。



44: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:50:59.55 ID:0ItzAzP80
しかし、レイを得るためには契約した人間が能力を使用しなければ意味はない。

与えられた能力を使ってみたくなるのは人の性ともいえるだろう。
もちろん、中には理性によってそれを抑えられる者も少なくない。

それらに効率よく能力を使わせるならば、
能力を持っていない者を対象に、能力を使う理由を与えてやればいい。

正義感の強い人間はそれに反発するだろう。
そして反抗する為に能力を使用する。

実に単純で、よくできたシステムだ。


神軍が壊滅したなら、新しいリーダーを担ぎ出せばいい。
ただそれだけでまたゼロ達は争い始める。



45: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:52:48.74 ID:0ItzAzP80
('A`)「一旦捜索は打ち切らないか?」


神軍が再度結成されたなら、
いずれまた戦う事になるだろう。

一度俺たちに潰されているんだ。
神も次は戦力を上げてくるはず。

そもそも、俺たちだけでは神軍に勝てたのかわからないんだ。

シャキンが神軍に手を貸していただけで、
俺たち6人がかりで負けそうになった。



47: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:54:16.46 ID:0ItzAzP80
神がシャキンを殺さなければきっとあのまま負けていた。

神に対抗する手段は見つかっていないが、
今は訓練を重ねて少しでも戦力を上げるべきだと思った。


川 ゚ -゚)「ふむ…。このまま探していても何か手がかりを掴めるかわからんしな。」

ξ゚听)ξ「さっきのギコも敵なんでしょう? …現状では、勝てると思えないわ。」


クーとツンは俺の意見に賛成してくれているらしい。
ブーンは黙り込んで何か考えているように見える。
つーとショボンは反対した。
今のまま訓練を重ねたところで神に勝つ事はできない。
ギコが敵についたのなら、なおさら捜索して手がかりを探すべきだ、と。



48: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:56:01.18 ID:0ItzAzP80
('A`)「つーとショボンが言ってる事も間違っちゃいないと思うんだが、
    神と戦う前に神軍にすら勝てないようじゃしょうがないだろ?」

(*゚∀゚)「それを言うならいくら神軍を倒しても神をなんとかしないと意味ないでしょう?
     ここには何かある。そんな気がするの。」

('A`)「うーん…。でも、俺たちがこうやってる間にも神軍は力をつけているかもしれない。
    さんざん探して何も無かったら時間を無駄にすることになる。」

(´・ω・`)「確かにまだドクオやブーン、ツンの能力の使い方はまだまだ未熟だよ。
      でも正直、僕達だって圧倒的に優れているわけじゃない。
      訓練といっても限度があるんだよ。」



49: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:58:08.15 ID:0ItzAzP80
ショボンの言ってる事もよくわかる。
クー達は訓練によって能力のレベルを上げることができる。
だが、俺とブーンとツンはただ能力を使った戦い方を学ぶしかできない。

そして、訓練とはいえ、すでの能力を使った戦いで、
クー達相手に1本取ることもある。

それはつまり、クー達もそこまで経験を積んでいる訳ではないのだ。
素人の俺たちでも能力の使い方を覚えれば、そんなに差がない。
戦闘技術というものに秀で、それを教えてくれるような者が俺達の中にはいなかった。


('A`)「やっぱりもう少し探索するしかないか…。」



51: ◆2tIpUAdHJU :2008/11/28(金) 22:59:58.83 ID:0ItzAzP80
結局振り出しに戻る。
今出来る事は何か神の能力についての手がかりを探す事くらいなのだ。
地味だが…、それ以外何もできない。


諦めて皆で探索を再開した2時間後、
今度はギコではない人物に出くわす事になる。



第33話 新たなる敵



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