( ^ω^)は霊探偵になったようです

27: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:02:08.75 ID:3AGQ0CGo0




(`・ω・´)「これを見てくれ」

言って、二人に差し出したのは一枚の写真。
裏向きにして机の上にぽんと置かれた。
余白には「B-104」の文字。
その暗号めいた記号の順列を目にして、ショボンが実の兄に聞き返す。

(´・ω・`)「おい、この文字の意味は何だ?」

(`・ω・´)「悪いが、後回しにしてくれ。それは大した問題じゃない」

聞いた風も無く突っ返す。
さながら、忙しなく飛行する鳶のよう。
急ぎながら、駆り出されながら。


(`・ω・´)「――――まあ、まずはご覧になってもらおうか」


表に描かれた像が露になる。
捲れた際の風圧で、黒檀に被さっていた埃が粉雪のようにふっと宙に舞った。



28: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:04:37.39 ID:3AGQ0CGo0
(´・ω・`)「……成程」


見せられたのは、無残な姿に変わり果てた人間。
即ち、死体の写真だった。

血液を寝台にし、うつ伏せになって倒れている。
推測するに、腹部が刃物か何かで裂かれ、臓物が引き摺り出されたのであろう。
或いは喉を掻き切られたか。

また、欠損部位も見られる。
具体的には、右耳、右手の人差し指と小指、左足の膝から下、等々。
肩の辺りの肉も抉り取られている。
そこから、朱に染まった骨が剥き出しになっていた。

全体のイメージは赤。赤過ぎて、むしろ紫に近い。


('A`)「ひでぇな、こりゃ。角煮でもここまでのグロは貼られねぇぜ」


ドクオが嘆息混じりに呟く。
気分を害しているようであるが、しかし正気を保っている。



31: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:07:13.49 ID:3AGQ0CGo0
(`・ω・´)「さっきの記号の意味だが」


気迫を込めた声。


(`・ω・´)「Aは自殺、Bは他殺、数字は今年に入ってからの発生件数。
      つまりこれは今年百飛んで四件目の殺人事件だ。
      俺が委託したいのはこの猟奇殺人の調査と、出来ればその解決だ」


(´・ω・`)「待て、数字は件数と言ったな――――多過ぎやしないか?」


多少の驚きを覚えつつ、ショボンが疑問を口にした。



33: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:09:59.70 ID:3AGQ0CGo0
(´・ω・`)「この都市でそれだけの殺人事件が起きているだなんて聞いた事が無いぞ」

やや口調を強めて詰問する。

(`・ω・´)「そりゃそうだ、公表してないんだからな」

(´・ω・`)「――――何だと。
      ……ちゃんと話してもらおうか」

(`・ω・´)「過ぎた事はどうでもいいだろう。今している話はこの事件についてだ」

強引に話を元に戻し、再度写真を見るよう催促する。
ショボンは不快感を露骨に顔に表していた。


が、ドクオはそう気にする様子もなく、
興味は写真とその真相にしかないとばかりに、黙々と思考を走らせていた。



34: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:12:39.20 ID:3AGQ0CGo0
('A`)「要は、こいつを解析すればいいんだな。
   死因、本人確証、出来る事なら凶器の推定まで……このぐらい調べれば十分か?」

(`・ω・´)「そういう事だ。スマンが、引き受けてくれ」

再び湯呑みに口を付ける。やはり、過剰なまでに熱そうに。

たった一枚の写真からの調査。
「難儀な要求だ」とドクオは無精髭の生えた顎を擦りながら考えた。
ざらりとした感触が手の平に伝わる。ここ数日剃るのをサボっていたせいだ。


(´・ω・`)「しかし、警察もどこまで無能なんだか。殺されたのが誰かすら分からんとはな」

(`・ω・´)「アホ、こっちにもいろいろと事情があるんだ。
      見ての通り、これは狂人が仕出かしたであろう事件だ。
      実態も分からぬまま民間に知れ渡ると混乱を招く。
      易々と公に出来ないからな。自然、捜査も大々的に行えないんだよ」

(´・ω・`)「ますます不信感を抱かせるような発言だな。まさしく事件の隠蔽じゃないか」

(`・ω・´)「裏があっては駄目だと言いたいのか? そんな綺麗事が通用する訳ないだろ。
      現代社会の平和っていうのは、見栄と虚構で作り上げた、言わば巨大なハリボテだ」


そういうものだよ、と最後に付け加え、シャキンは視線をソラに漂わせた。



37: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:15:04.86 ID:3AGQ0CGo0
(´・ω・`)「そういうもの、か」

(`・ω・´)「ああ、所詮な。表向きの秩序さえ保てればいいんだよ」

口に含んだ液体を食道に送り込むため、シャキンは喉を上下に動かした。


ショボンは肩をすくめて大息を吐いた。

塗り固められた嘘。蔓延る腐敗。
分かってはいた事だが、一応職務上は刑事である兄の口から直球に告げられて、
呆れにも似た失望を改めて覚えていたのだ。


(´・ω・`)「それが実情だとしても、当人が口にすべきことじゃないだろう。
     全く、真面目に働く事も出来ないのか、この不良刑事は」

(`・ω・´)「……まあ、否定はしない」


湯呑みを机上に置く。
摂理に乗っ取って生じる、かたん、という接触音。
それを聴いたショボンは、何故か無性に懐かしい気分になった。



38: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:17:09.59 ID:3AGQ0CGo0
(`・ω・´)「辺鄙な署の出身だ、本庁の同僚からは蔑んだ目で見られる日々だ。
      出世の見込みもゼロ。古株にはどう足掻いても敵いやしない。
      そんな境遇なんだから、ちょっとはアウトローを気取ってもいいだろ?」


自嘲するシャキン。
笑ってはいるが、破顔ではない。いちどきに哀愁を振り撒いている。


(´・ω・`)「同情でもして欲しいのか?」

漫ろに口を開く。

(`・ω・´)「馬鹿言え、冗談は顔だけにしておけよ」

(´・ω・`)「同じ顔だけどな。残念ながら」

(`・ω・´)「はっはっ、やっぱり冗談が上手くなったな」

再び笑みを浮かべた。今度は、比較的救われた気分になって。
卓上の湯呑みの中にはもう日本茶は残っていない。
それは既に過去になっていた。



40: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:19:26.03 ID:3AGQ0CGo0
(`・ω・´)「そういう訳で、任せたぞ」

('A`)「あまり期待しないでくれよ。
   どうやっても、画像からだけじゃ正確には分からないんだからな。
   俺達の所に来るぐらいなんだから、どうせ発見者も有力な情報もないんだろ?

面倒そうにドクオが答える。

('A`)「直々に現場に出向かなきゃならないな、こいつは」

解析は彼の得意とするところではあるが、
何せ、肝心の判断材料が一枚の写真しか存在していない。
これだけで全てを解き明かす事は元より不可能。

一を聞いて十を知れ――――などと、論語の一節を口にするのは簡単だ。
現実はそう甘くない。


(`・ω・´)「頼めるか」

('A`)「嫌だと言えればいいんだけどよ」


(´・ω・`)「許す訳ない、か」


タイミングを見計らったようにショボンが口を挟んだ。



42: ◆zS3MCsRvy2 :2007/10/13(土) 23:21:36.78 ID:3AGQ0CGo0
(`・ω・´)「当たり前だろ、報酬なら上に頭下げて調達してやるから。
      逆に仕事を与えてやった俺の優しさに感謝して貰いたいぐらいだな」

(´・ω・`)「あー分かったからとっとと帰れ。
     早速調査に乗り出すから、いつまでもお前がここにいると邪魔だ。
     お引き取り下さいませ、お客様」

「しっしっ」と、手で追い返す仕草をする。
勘違いするなとでも言いたそうに。


(`・ω・´)「兄貴に向かって随分と大それた口を聞くじゃないか。ぶち殺すぞ」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ、ガチで」



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