('A`)ドクオはキラーマンのようです

2: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:19:20.76 ID:Vgakpcih0

第四話 命

('A`)「むっ・・・」

朝の陽射しがカーテン越しに当たる。
私はう〜ん、と大きな伸びをし、ゆっくりと立ち上がった。

('A`)(昨日のホタルは綺麗だったな・・・。デレちゃんもよろこんでたし)

私は昨日の出来事を思い返すと無意識に笑みを浮かべた。
任務のことはもう少し考えよう。時間はあるのだから。



3: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:20:36.14 ID:Vgakpcih0
  
私は窓を開け、さわやかな風にあたり物思いにふけてみた。
スズメの声や、風に揺られる木の音。川のせせらぎ。
自然の朝は人を癒してくれる不思議な力があるんだな・・・

/ ,' 3「きぇぇぇぇぇぇぇいいいい!!!!!!」

その気分をぶち壊すあつくるしい気合いの声。
いったいなにが起きたのかと庭に出てみると案の定、ジジイが訳の分からんことをしている。

('A`)「何やってるんですか?」

私は恐れながらも聞いた。

/ ,' 3「みればわかるじゃろう?空手じゃ!!」

('A`)「はあ。」

なにもこんな朝っぱらからしないでほしい・・・。



6: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:22:01.57 ID:Vgakpcih0
 
いつか住民から苦情が来るぞ。

ζ(゚ー゚*ζ 「おじいちゃんはね、琉球空手5段なのよ。」

デレちゃんが麦茶をお盆にのせてやってきた。
私は縁側に座り、麦茶をいただいた。
そして見たくもないがジジイの空手を見るハメになった。

/ ,' 3「おい、小僧!!」

私のことか?小僧って・・・

/ ,' 3「ちょっと相手をしろ!!気合いを入れてやろう!!」

ジジイは上機嫌だ。あーあ、なんだこの展開は。



7: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:23:18.83 ID:Vgakpcih0
 
('A`)「いや、私はそのー・・・」

言い訳を考えようとしたが朝なのでいい言い訳が思いつかない。
すると突如ジジイが宙を舞い、蹴り足が飛んできた。

('A`)「うわ!!」

私は上半身をねじり、なんとかかわすとジジイの蹴りは縁側を破壊した。

/ ,' 3「問答無用じゃぁぁぁ!!ふとんがふっとんだぁー!!」

ジジイは上段突きから冗談好きのコンボを繰り出した。
なにかがおかしいぞ。この空手は・・・
私達が戦っているとお母さんが縁側に座り、ニコリと笑った。

('、`*川「珍しくおじいちゃん張り切ってるわね。弟子ができたみたいでうれしいのかしら」

ふふっと笑い、お母さんはしばらく戦いを傍観していた。



9: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:24:24.27 ID:Vgakpcih0

('A`)「いててて・・・ひー!しみる・・・」

昼飯時、私は体中ボロボロの状態だった。

/ ,' 3「気合いが入って無いから怪我なんかするんじゃ!!」

てめえがこけそうになったのを助けて私が石にぶつかったのになにを偉そうな事を言ってるんだ・・・
私は痛みをおさえながらもひややっこを口に運んでいた。

ζ(゚ー゚*ζ 「ねぇ、ドクオさん。今日はどうするの?」

デレちゃんが私に尋ねてきた。そういや何も考えてないや・・・



10: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:25:18.48 ID:Vgakpcih0

('A`)「特にやることは無いけど・・・」

デレちゃんの顔がパアっと明るくなり、

ζ(゚ー゚*ζ 「じゃあ、川に行かない?魚とか取れるんだよ!」

('A`)「川か・・・うん。いいよ。」

ζ(゚ー゚*ζ 「やったー!」

私達は昼飯を終え、川へ行く準備をした。



11: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:26:18.98 ID:Vgakpcih0

夏の太陽の厳しい陽射しの下、私達はズボンをめくり川で魚採りに挑戦していた。

('A`)「だめだー!!逃げられちゃうよ!!」

魚は採るどころか近ずくだけで逃げていってしまう。
そのスピードはF1並のスピードに感じられるほどだ。

('A`)「デレちゃーん!!そっちはとれたー?」

私は下流にいるデレちゃんに向かって叫んだ。

ζ(゚ー゚*ζ「もう少しなんだけど、なかなか取れないのー!!」

やっぱりデレちゃんかわいいなぁ。
ズボンをまくっている姿が私の脳を刺激していた。
も、萌えー



12: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:27:40.39 ID:Vgakpcih0
 
しばらく魚採りにチャレンジしていたが、全然取れなかった。
私は時計を見るともう4時になっていた。そろそろ引き上げるか・・・

('A`)「おーい!!デレちゃーん!!そろそろ帰ろうよー!!!」

返事は無い。
どうやらもっと下流のほうまで行ってしまった様だ。

私はジュボジュボと水をかきわけて下流へ行った。
しかし、そこにもデレちゃんの姿は無い。
この先は急に川の流れも速くなり、底も深くなる地点だ。

('A`)「まさか・・・」

注意書きの看板が川に倒れていた。



13: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:28:29.35 ID:Vgakpcih0

('A`)「まさか・・・」

私の全身から血の気が引いた。
私は考える暇も無くさらに下流へと足を進めた。

もう水は私の胸の高さまできていた。
流れも速く、足をすべらせれば一瞬で川に飲まれてしまう。

('A`)「デレちゃーーーーん!!!!」

私は必死にあたりを見て、デレちゃんを探した。
私の脳裏には最悪の状況が浮かんだ。



20: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:44:44.09 ID:Vgakpcih0
 
もし、彼女が死んでしまったら・・・。私は背筋が凍りつくような感蝕に襲われた。
もし彼女が死ねば私が殺す手間が省ける。
彼女は「事故」で死ぬんだ。私のせいじゃない。
ほら、オマエの良心にも言い訳が出来るじゃないか。

ヤメロ

あとは東京に帰り200万もらって優雅に生活すればいい。それをオマエは望んでいるんだろ?

(#'A`)「黙れ!!!」

私は声を張り上げた。何を考えているんだ。
私が今すべきことはデレちゃんを探し出すことだ。



21: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:45:53.02 ID:Vgakpcih0

その時、前方にある大きな岩に人が張り付いているのが見えた。

ζ(゚ー゚*ζ「う・・・」

('A`)「デレちゃん!!!」

私は急いで彼女の元へ向かった。
彼女の頭からは血が流れ、体は長時間川につかっていたせいか冷たく、
生気のない真っ青な顔をしていた。

('A`)「畜生!!」

私は急いで彼女を背負い、川を出て、ケータイで119番へプッシュした。



22: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:46:52.34 ID:Vgakpcih0
 
3区中央病院

薄暗い中、集中治療室の前で私は頭を抱えていた。
何が起こったのか。彼女は生きているのか?死んでいる?

彼女の笑顔が脳裏に浮かび、それはがらがらと崩れていく。
「治療中」というマークは点灯したまま、私は何度もまだかまだかと見つめる。
黒いベンチはきしっと音を立て、私は激しく自分を攻め立てた。

私のせいだ。私が不注意だったからこんな事故が起こった。

彼女のお母さんはどう思うだろうか?

自分の娘がこんな男の不注意で死ぬ。

はは、ジジイなんか空手で殺されるかもな。
いっそのこと死んだほうがマシかもしれない。



23: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:47:27.31 ID:Vgakpcih0

('A`)「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

私は目から涙を流し、誰かに言っている訳でもなくそうつぶやいた。

バタバタと足音がし、お母さんとジジイがやって来た。
私は合わせる顔も無く、うつむいたままの状態だった。

お母さんは激しく動揺した顔で、ジジイは息使いが荒い。

ジジイが重い口を開いた。

/ ,' 3「なんで・・・デレがこんなことになっとるんじゃ!!ええ!!」

ジジイは私の胸倉をつかみ上げた。



24: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:48:41.68 ID:Vgakpcih0

('A`)「ごめんなさい・・・私が・・不注意でした」

自分でも分かっている。こんな言葉で許されたらどんなに楽なんだろう。

/ ,' 3「貴様!!それですむと思っているのか!!」

ジジイの手にさらに力が入った。

('、`*川「やめて!!おじいちゃん!!」

お母さんが涙ながらにそう言うとジジイの手から力が抜けた。

/ ,' 3「デレ・・・デレぃ!!!」

ジジイはその場に泣き崩れ、手で顔を覆った。



25: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:50:15.09 ID:Vgakpcih0
 
あれから2時間ほどたった時「治療中」のマークが消えた。
中から神妙な顔をした医師が出てきた。

('、`*川「先生!!デレの状態は・・・」

医師は顔を変えずに言った。

医者「落ち着いて聞いてください。」

私達は医師の言葉に耳を済ませた。
沈黙が流れる。重い。冷たい沈黙。

医者「彼女は頭を強く打っており、出血がひどい。
   今輸血をしていますが傷口の大きさから考えて輸血のほうが先に底をつくでしょう。」



26: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:51:14.88 ID:Vgakpcih0

お母さんは今にも倒れそうな悲痛な声で言った。

('、`*川「そ、それじゃあデレは助からないんですか!?」

医者「落ち着いてくださいお母さん!!まだ助からないと言った訳じゃない。」

医師はお母さんをなだめ、さらに続けた。

医者「デレさんの傷口は今の状態ではふさげません。このままでは持って7時間と言ったところです」

そんな・・・持って7時間?助からないとでもいうのか?
私の脳が真っ白になった。

医者「助ける方法はひとつだけあるのですが・・・」

('A`)「それはなんですか!?私はできる範囲のことなら全てします!!」

私は考えるより先に口が走った。



27: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:54:45.25 ID:Vgakpcih0

ζ(゚ー゚*ζ「・・・」

('、`*川「ああ・・・デレ・・・。お母さんだよ・・ほら、目を開けてよ!!」

私は静かに病室を出た。
私のすべきことはひとつしかない。
私は靴を履き、外へ飛び出した。

/ ,' 3「待ちんかい!!」

聞き覚えのある声、いやもうイヤになるほど覚えてしまった
後を振り返るとジジイがいた。



28: ◆kYtAlEFUHQ :2008/03/21(金) 20:55:28.18 ID:Vgakpcih0

/ ,' 3「雷光草をさがしにいくのじゃろう?・・・バカチンが。草の姿もわからんのに探してどうする。」

ジジイはニヤリと笑っていった。

/ ,' 3「ワシも一緒に探すぞ。雷光草を知っているのはわしぐらいじゃろうしな。」

('A`)「・・・はい!」

私は涙ぐみながらジジイと共に走った。

絶対に死なせないからな・・・まってろよ。デレちゃん。



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