( ^ω^)ブーンが都市伝説に挑むようです

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:13:07.89 ID:fmfm7D9O0
正確にはわからないが、その犬は両手で抱けるであろう大きさで、聞いていた通りの良い毛並みをしている。
地面近くまで垂れた大きな耳が特徴的で、路地裏なんかで見かける雑種犬と見間違えることはないだろう。

そして、何よりその犬の顔面は、本来は犬のそれが存在しているであろうその部分には――

――はっきりと、人間の顔が写っていた。

(;^ω^)「……」

率直に言えば、言葉が出なかった。

もしかしたら僕は、心のどこかで長岡さんの言うことを信じていなかったのかもしれない。
いや、きっとそうだった。何故なら、今だって僕はこの写真が実は合成ではないかと疑いを持っているのだ。

それだけじゃない。僕は、なんだかこの写真に恐怖心のようなものまで抱いてしまっている。
根拠は無いが、この写真は僕にとって、何かの“きっかけ”のようなものに思えるのだ。

――人面犬。

常識では考えられない、現実にはありえないはずのモノ。
だが、僕が知っているその「常識」とは、一体どれほどのものなのだろうか。
本当は実にちっぽけで、狭小なものだったりするのではないだろうか。

実際は、僕の想像もつかないような不可思議なことが、この世の中には溢れているのかもしれない。
少なくとも、今僕が目にしているこの写真には、その不可思議なものの断片が写っているのだ。

僕は、そんな非常識な存在が写っているこの写真が、たまらなく怖い……。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:15:35.03 ID:fmfm7D9O0
(;*゚∀゚)「あの……大丈夫ですか」
(;^ω^)「あ、すいませんお、ちょっと見入っちゃって……」

気付けば、横には心配そうにこちらを見つめる夫人の姿があった。
僕は落ち着くためにカップの冷めてしまった紅茶を一口啜り、ふうと一度溜め息を吐く。

そのおかげで僕は大分落ち着きを取り戻したものの、夫人は相変わらず深刻な表情をしていた。

夫人の様子がおかしくなったのは今に始まったことじゃないが、それはこの写真を見せるからではなかったんだろうか。
僕が写真を見た後も、夫人はどこかそわそわとしていて、依然どっしりと構えている長岡さんとはえらく対照的だ。
何か、別の心配事があるということだろうか。その様子からして、おいそれと言えることではなさそうだ。

……やはり、これは単なる犬探しではないということなんだろうか。

やがて、契約期間や必要経費、報酬など諸々の話が終わり、僕はリビングを後にする。
正直、足取りは軽やかとは言えなかった。五日ぶりの仕事とはいえ、その内容は異様だとしか言えないからだ。

まさか、こともあろうに人の顔をした犬を探すことになるとは思わなかった。
きっと歴代の探偵にも、こんな依頼を受けた者はいないだろう。あるとしたら、それはきっと創作の小説の中のことに決まってる。
事実は小説よりも奇なり、なんて言ったところだろうか……。

とりあえずの契約期間は、今日から数えて三日間。
決して良い条件とは言えないが、例え見つからなくても何らかの進展があった場合は期間を延ばしてくれる手筈となった。

だが、なるべく人の目には触れぬようにとのことなので、正直なところ見つかる可能性は高いとは言えない。
本来なら貼り紙などを作ってそこら中に貼るのだけど、今回はそういった作業は全て禁じられることになる。
本当に、手足を使って地道に探すしかないようだ。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:17:57.26 ID:fmfm7D9O0
(*゚−゚)「……」

僕の前を歩く夫人は、リビングを出てから終始無言だった。
表情は少しうつむき加減で、どう見ても気分が落ち込んでいるようだ。

やはり、夫人には何か思うところがあるのだろう。そして、それが今回の依頼に関係していることは間違いない。
長岡さんがあまりにも平然としていたため、余計にその夫人の態度は目立っていた。

別に夫人が何を隠していようと気にする必要はないんだが、果たして職業病というやつなのか、

( ^ω^)「あの」

気付いたら、僕は夫人に声をかけてしまっていた。

(*゚∀゚)「……あ、ハイ。なんでしょう」

夫人が足を止め、背後の僕へと振り向く。自然に見える笑顔だが、恐らくは作っているものなのだろう。

( ^ω^)「何か……他に言っておく必要があることは、ありませんかお?」
(;*゚∀゚)「え……」

遠回しな言い方だったが、やはり、夫人はその表情を崩した。

(;*゚∀゚)「え、あの、報酬などでしたら先ほど主人と話したはずでは?」

夫人はごまかそうとしているのか、少しだけ“大袈裟な”笑顔になる。
横に誰もいないことが不安になったのか、胸の前で握った手が少し震えを帯びていた。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:20:25.41 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)「長岡さんが言ったこと……あれは、全て真実なんですかお?」
(;*゚∀゚)「え? え、ええ……」

その時、僕に答えた夫人の声が少しだけ上ずる。どうやら、夫人が落ち着きを取り戻す前に“当たり”を引けたようだ。
これで、夫人が何か隠しごとをしているのはもう間違いない。そして、それは恐らく長岡さんも承知のことだろう。

しかし、そうなると長岡さんが僕に話した内容には虚偽が含まれているということだ。
別に依頼内容が事実でないのは特に珍しいことではないが、今回はあまりにも特殊なケースなのでどうにも気になってしまう。

いや、正直に言えば特になんでもない依頼でも何か謎があると解きたくなってしまうんだが、大体は解ける前に依頼が完了する。
僕だって、流石に終わった仕事にはノータッチだ。まさかその後も調査することなんてない。
……ちょっとだけ例外もあるけど。

とにかく、契約期間の中でその謎も解けたら、それはそれでラッキー。そのくらいにしか思っていない。
ただ、何度も言うが今回は依頼の内容がとても変わっているから、ちょっと好奇心が働いただけなのだ。

……そう、思ってはいるのだが。

( ^ω^)(……一体どの部分が嘘なのかお……)
(;*゚д゚)「あ、あの……」
(;^ω^)「え、あ! いや、なんでもないんですお! どうか気にしないでくださいお!」

あまりにも困り果てた夫人の表情に、途端に僕は罪悪感を覚える。そんなつもりじゃなかったんだが、些か追い詰めてしまったようだ。
やはり玲子さんがいないと、こういうところに抑えが効かない。今度から、暇な時は同行してくれるように頼むべきだろうか。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:22:48.29 ID:fmfm7D9O0
(;*゚∀゚)「は、はあ……」

どうにか夫人は表情を元に戻し、僕はホッと胸を撫で下ろす。そうして、僕達は玄関へと向かっていった。

( ^ω^)「ん?」

玄関にまで辿り着くと、僕はふと、そこであるものが気になった。

それは、玄関の片隅にぽつんと置かれてあった、一足のスニーカー。
丁度外側から死角になっていて、来る時には気付かなかったようだ。

では、何故それが気になったのかというと――

( ^ω^)(……これ、誰のだお?)

僕は、このスニーカーが一体誰のものなのかが気になっていた。何故かといえば、まず夫人のものにしてはサイズが大き過ぎるのだ。
すぐ近くにいかにも女性が履くような小さめのサンダルがあるし、どう見ても夫人のものではないだろう。

それでは、長岡さんのものなのか。いや、僕は人の趣味をとやかく言うつもりはないけど、そちらも違うように思われる。
スニーカーのデザインはややカラフルで、両の外側には流線形の装飾があり、いかにも若者が好むような見た目だ。
それだけでなく、随分と履き古されたもののようで、靴底は磨り減って、表面にも少し汚れが目立っている。

靴の棚に長岡さんのものであろう革靴が置いてあるが、そっちはまるで新品のようにピカピカだ。
思うに、長岡さんは相当几帳面な人なのだろう。そんな人が、このようなスニーカーを履くとは想像できない。

( ^ω^)「あの、このスニーカーって……」
(;*゚∀゚)「そ、それじゃ、よろしくお願いしますっ!」

突然僕はぐいぐいと夫人に背中を押され、そのまま外にまで促される。
何が何だかわからない内に僕は玄関から放り出され、そのまま後ろでばたんと扉が閉まる音がした。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:25:12.49 ID:fmfm7D9O0
(;^ω^)「ちょっとしつこ過ぎたかお……」

ご機嫌を損ねたとかそういうことではないと思うが、とりあえずこれ以上は手を出せないようだ。
僕は振り返ることなくそのまま庭を歩き、敷地の外へと向かう。

だが、やはり僕は途中で足を止め、少しだけ後ろを振り返る。そうして、僕は空っぽになった犬小屋に目を向けた。

( ^ω^)「……ここに、“いた”のかお……」

僕は頭の中でシュールな光景を浮かべながら、再び敷地の外へと歩き出した。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:27:27.13 ID:fmfm7D9O0
長岡邸を出た後、僕は急ぎ最寄りのアパートに来ていた。
地道な作業しかできないし、時間も三日間とそう長くない。とにもかくにも時間が惜しい。
僕は一直線にアパートの管理人室へと向かった。

( ^ω^)「強麺ナサイヨー、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですがおー」

やや大きめの声でそう言いながら、管理人室の扉をノックする。
少しだけ中からがさごそと蠢くような音がした後、扉が外に向かって開かれた。

J('ー`)し「はいはい、なんですか」

中から出てきたのは、少しだけやつれたような見た目の中年女性だった。
だが、その見た目とは違ってその声の調子ははきはきとしていて、しっかりとした感じの人に思える。
まさに、ドラマなんかでよく見る肝っ玉カーチャ……いや、管理人さんなんて感じだろうか。

( ^ω^)「ちょっとお聞きしたいんですがお。あそこのゴミ捨て場とかで、つい最近変わった動物を見ませんでしたかお」

そう言って、僕は少し離れたところにあるゴミ捨て場を指差す。
恐らく野良犬なんかはああいうところに集まるだろうから、もしかしたら探している犬もいたかもしれないと思ったからだ。

すると、その質問に管理人さんは少しだけ「うーん」と唸った後、

J('ー`)し「見てないねえ」

と、首を捻った。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:29:44.48 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)「そうですかお……」
J('ー`)し「時々カラスを見るくらいだねえ……なんだか知らないけど、他の人にも聞いてみたら?」
( ^ω^)「そうさせてもらいますお」

僕は管理人さんに礼を言って、その場からアパートの各部屋へと向かう。
だが、やはり一番見ているはずの管理人さんが見ていないというのもあって、結局有力な情報を手に入れることはできなかった。

その後、その他近隣の目ぼしいアパートや住宅を回ったが、得た情報は全くのゼロ。
普通の野良犬を見たという証言はいくつかあったものの、肝心の探し犬については何の情報も掴めなかった。

その日の聞き込みは深夜にまで及んだものの、残念ながら誰一人としてその姿を見た者はいなかった。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:32:14.49 ID:fmfm7D9O0
――そうして、明くる日の二日目。

僕は昼ぐらいの時間に目が覚め、欠伸をしつつ洗面所で身だしなみを整える。
毎日の惰性でテレビの電源を入れると、何やら亀が反則で切腹とか物騒なニュースが流れていた。世も末なものである。

( ^ω^)「……さて、行きますかお」

僕はいつものようにコートと帽子を手に取り、また神棚の前で通過儀礼をこなす。
残された時間は今日を入れて後二日。今日こそは、何か手がかりでも見つかればいいのだが。

外に出ようとするも、玲子さんの「行ってらっしゃい」の声は聞こえない。まあ当然だ、今日は平日なんだから。
事務所の扉に鍵を掛け、僕は一階へと続く階段を下りていく。その間、僕は頭の中でこの街の地図を思い描いていた。

( ^ω^)(長岡さんの家から近いゴミ捨て場は大体調べたお……でも、犬を見た人はいなかった……)

昨日の聞き込みが思い出される。僕は何人もの人に同じ質問を繰り返したが、返って来る答えはどれも同じものだった。

――そんな犬は見ていない。

( ^ω^)「……気ぃ〜になるお〜、気ぃ〜になるお〜……」

自作の歌を口ずさみながら、階段を下りる足音で少しリズムを取る。
実のところ、僕は既にその気になっていることが何なのかはわかっていた。
だが、それは少しだけ曖昧で、やろうと思えばどうとでも説明が着くことだ。それに、そんなに重要なことにも思えない。

……まあ、今はとりあえず頭よりも体を動かすべきだろう。そうして、僕は少し早足で階段を下りて行った。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:34:37.58 ID:fmfm7D9O0
さて、今日向かう場所はというと、ここら辺で一番大きな商店街だ。その名も商店街VIP。
僕の住んでいるここ、雑谷県美府市の市長である狐星さんが決めた名前だそうだが、多分考えるのが面倒くさかったんだろう。
置いてある店舗は食品店が多く、腹を空かせた犬が辿り着くにはおあつらえ向きというわけである。
事務所から商店街はそれほど遠くない場所にあるので、僕としても生活にかかせない場所だ。

( ^ω^)「……お?」

数分程歩いて、僕はいざでかでかと「商店街VIP」と書かれたゲートの前に辿り着いた。すると、何やら商店街のあちらこちらに“のぼり”が立っている。
見てみると、どうやら十周年記念セールらしい。恐るべきことに、なんと全品大幅値下げで売っているそうだ。
仕事中でなければ是非にでも参加させてもらうのに……実に口惜しい。

しかし、何度も言うように今は時間が惜しいのである。
僕は目の前に吊るされたニンジンの誘惑を振り切り、まずは犬の好物の定番であろう肉屋へと向かった。

( ^ω^)「すいませんお、ちょっとお聞きしたいことが……」
( ゚д゚ ) 「へらっしぇー!!」

勢いの良過ぎる掛け声に、僕は思わずその場で後ずさる。
見ると、ショーケースの向こうで大きめのエプロンを着けた男性が立っていた。
この男性はこの店の店長さんなんだが、何故かいつも客のことを食い入るようにして見続けている。
いつも目を合わせないようにしているが、それでもすごい眼力だ。思わず「こっち見るな」と言いそうになってしまう。

( ^ω^)「あの、最近この近くで変な動物を見ませんでしたかお?」
( ゚д゚ ) 「牛系? 豚系?」
(;^ω^)「あ、いや……肉のことじゃなくて……犬とか」
(゚д゚ ) 「……」

すると、突然店長さんはそっぽを向いてしまった。これはもしや、「見ていない」という肉体言語だろうか。
もしかしたら違うのかもしれないが……なんとなく、これ以上は意味がないような気がする。
僕は店長さんに礼を言って、そそくさとその場を後にした。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:37:00.60 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)「……安いお」

僕は犬が寄って来そうな店を探しながら、ついでに商店街の中を物色していた。
ここには何度も足を運んでいるが、やはりいつにも増して今日の活気は盛大だ。あちらこちらで店側の呼び込む声や、お客の驚嘆する声が飛び交っている。
「大セール!!」と大きく書かれた看板に偽りはなく、どれもこれも思わずこっちが「いいんですか!?」と思えるくらいの値段だ。

(;^ω^)「な……! 鯛がこんな値段で……、あら! こっちの鰤もお安い!」

かくいう僕も、さっきからついつい財布に手が伸びそうになっている。
何か有力な情報が得られるかと思って訪れた商店街だけど、どうやら僕には誘惑が多過ぎるようだ。
この商店街に入ってから、何回自分が「安い」と言ったかわからない。

肝心の仕事の方も、もう結構な店を回ったものの、未だどの店からも情報を得ることはできていない。
もしかして、この商店街には寄っていないんだろうか……そう思った時、僕のお腹が低い声で提言した。

( ^ω^)(あ、そういえばまだ何も食べてなかったお……)

自分が空腹であると自覚した途端、より一層その意識が強くなる。
これ以上こんな大勢の人の中で醜態を晒すのも嫌だし、僕は飲食店が立ち並ぶコーナーへと向かっていった。

( ^ω^)(今の財政事情を考えれば……やっぱりここかお)

やがて、僕は商店街の中のある一つの店舗の前で立ち止まる。
その店の名は……マクドメルド。
わざわざもったいぶる必要など皆無の、全国チェーンの超有名ファーストフード店である。

大の大人が一人でハンバーガーに噛りつくのは少しばかり気が引けるが、背に腹はかえられない。
時間も時間だから、今なら朝のメニューにありつけるはずだ。

――と、そう思って自動ドアの前に立とうとした時だった。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:39:16.30 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)「お?」

がさり、と何かが動くような音。それも一回ではなく、何やら断続的にがさがさと動いている。
誰かが何か作業をしているのだろうか。僕はなんとなくその音が気になり、周囲をきょろきょろと見回してみる。
すると、僕はマクドメルドと隣の商店との間に、人一人が通れるような隙間を見つけた。どうやら音はこの奥から聞こえているようだ。

僕は早速この路地裏に足を踏み入れる。屋根の付いた建物に挟まれているせいで、昼間でも薄暗い。
今まで日の光の下にいたせいか、どうやら余計に暗く感じているようだ。特に足元が見えにくく、何度も転びそうになる。

やがて、僕は路地裏の奥に人影のようなものを見つけた。
段々目が慣れてきて、そのシルエットがはっきりとしたものに変わってくる。見えたのは後姿で、僕のことには気付いていないらしい。
細身で、髪がポニーテールでまとめられていて、どうやら女性のようだ。中腰で、何か作業を行っている。

( ^ω^)(ん? なんか服装に見覚えがあるような……)

その女性は縦にストライプが入ったシャツに、膝までのスカート。何か頭に線のようなものが見えるが、どうやらキャップでも被っているらしい。
僕はその服装への既視感を意識しながら、背後からその女性に話しかけた。

( ^ω^)「あのー、ちょっといいですかお」
(*゚ー゚)「えっ? あっ、はいなんですか」

近くで見て、すぐにわかった。この女性が着ているのはマクドメルドの制服だ。どうりで見たような気がするわけである。
あと、女性は実にふくよかなバストをお持ちだった。あくまでも身体的な特徴なので、断じて他意はない。断じて。

( ^ω^)「あの、今やってるそれって……」
(*゚ー゚)「あっ、これは古いものをロス……あ、廃棄してるんです」

女性が少し体を横にずらすと、そこにはよく街で見かける青いゴミバケツがでん、と居座っていた。
なるほど、結構珍しい状況に出くわしたのかもしれない。よく行く店とはいえ、その裏側までは知れないものだ。
バケツの中を覗かせてもらうと、確かに様々なハンバーガーが散乱していた。



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