( ^ω^)ブーンが都市伝説に挑むようです

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:41:39.83 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)(あ、そうだお)

そこで、僕はハッとした。よく考えれば、ここもゴミ捨て場の一つなのである。

( ^ω^)「あの、変なことをお聞きしますお、ここ二日ぐらいで変わった動物を見ませんでしたかお」
(*゚ー゚)「え……」

店員さんは僕の質問にぽかんとした表情を作る。まあ、質問自体が些か抽象的だから仕方ないだろう。
それに、言った後に気付いたが、ゴミバケツの口の部分に蓋を固定するためのフックが付いている。
中身を漁ろうとするなら、まずこのフックを外さなければならない。そんなこと、犬では無理に決まっている。
よっぽど頭の悪い犬でなければ、さっさと諦めてしまうだろう。

なので、僕は答えを聞く前から半分諦めていたのだが――

(*゚ー゚)「あ、もしかしたらアレかな」

店員さんが何か思い出したかの様子で呟く。僕は予想外の答えに、頭の中で「えっ!?」と叫びながら目がまん丸になった。

(;^ω^)「な、なんですかお!? 教えてくださいお!!」

僕はそれこそ餌に飛びつく犬の如く、店員さんにずい、と詰め寄る。
初対面の男が鼻息を荒げながら近付いたらそりゃあ気味悪いだろう。店員さんは少々怯えた様子で後ずさっていた。

(;*゚д゚)「あ、あの、私は実際に見たわけじゃないんですけど、店の子が一人変な生き物を見たって……」

ビンゴだ。目撃されたのは探している犬でまず間違いないだろう。
その店員がどういう状況で見たのかはわからないが、普通の野良犬や猫なら「変な生き物」とは言わないはずである。
ビーグルという野良では珍しい品種であるとしても、まず実物を見れば誰しも犬だということは認識できる。
恐らくは、その最も奇異な部分……顔の部分をその店員は垣間見たのだろう。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:43:56.46 ID:fmfm7D9O0
僕だって正直まだ少しだけ信じられないのだから、見た時はきっと自分の目を疑ったに違いない。
何にせよ、目の錯覚と思わなかったことが実にありがたい。

しかし、少し気になることがある。さっき見た通り、ゴミバケツには蓋が開かないためのフックが取り付けられているのだ。
果たして、犬は中身を取り出すことができたんだろうか。まさか犬がわざわざフックを外したとは考えにくいんだが。

( ^ω^)「あの、その見たっていう店員さんは今……」
(*゚ー゚)「ああ、丁度いますよ。ちょっと待っててください……渡辺さーん!」

店員さんが店内に向かって一声かける。
すると、「は〜い」という間延びした声の後、一人の女性がぱたぱたとこちらへやって来た。

从'ー'从「なぁに?」

その渡辺さんと呼ばれた女性は僕の姿を見つけると、ほんわかとした笑顔で軽く会釈した。
話し方からして、なんだかおっとりとしたふいんきの人のようだ。肩まで伸びた黒髪がさらさらと揺れている。
だが、それより僕が気になったのは……。

(*^ω^)(うはwwwパイナポーwwwwwww)

それは、隣にいるポニーテールの店員さんにも勝る、二つの巨大なパイナポーの存在である。
正直グラビアで見るような巨乳は希少動物のように意識していた僕も、いざ実物を見ると荒ぶる情熱を禁じえない。
制服のサイズが合わないのか、胸の部分だけがぱつんぱつんで苦しそうだ。
玲子さんみたいなすらりとしたモデル体系も大変素晴らしいけど、こういう局部特化型のピーキーな仕様もまた掛け替えのないものである。

从'ー'从「あのー、椎名さん。この人は?」
(;^ω^)「あっ! すいませんパ……わ、渡辺さんでしたっけ? 実は少し聞きたいことがあるんですお……」

一度だけ咳払いし、弛んだ頬を引き締める。いけないいけない、もしかしたら重要な手がかりかもしれないのだ。
僕は極力渡辺さんの目を見るように心がけ、改めて質問を始めた。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:46:17.86 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)「あの、あなたが変な生き物を見たって聞いたんですお」
从'ー'从「ああ〜、その時のことですか〜? あの時は、私が一番最後まで残っていて……」

――昨日の夜、たまたま彼女――渡辺燦はマクドメルドでのバイトが遅番となり、店内に残っていたのは彼女一人だけであった。

営業時間もとっくに終わり、店内の掃除をしていた渡辺だが、これがなかなか終わろうとしない。
元々彼女は俊敏な動作が苦手で、特に床に落ちたゴミをちりとりに移す作業が大の苦手であった。
右手の箒でゴミを左手のちりとりに入れようとすると、それと同時に自分自身も後ろに下がってしまうのである。

箒を動かす度に自分も一歩下がり、もう一度入れようとしてまた下がる……。
彼女自身には全く悪気がないため、仲間の店員も責めるに責められない癖であった。

結局その堂々巡りがしばらく続き、店内の掃除が終わる頃には既に結構な時間となっていた。
そうして、彼女は最後の仕事である廃棄物の処理に向かったのである。

从'ー'从「よぉいしょ」

恐らく気合を入れたのであろう掛け声の後、渡辺は賞味期限が切れていたり、食べ跡の残っているハンバーガーが詰まった袋を持ち上げる。
そのまま右に左によたよたと振られながら、裏口のドアへと向かった。

手が使えないので渡辺は器用にお尻でドアの取っ手を下げ、渡辺は夜風が冷たい路地裏に出てくる。
時刻とあまり光の届かない場所とが相まって、路地裏は相当に薄暗かった。自然と、彼女の両目が細くなる。
そして、一度袋は脇に置き、蓋を取ろうと渡辺は月明かりを頼りにゴミバケツへと手を伸ばした。

从'ー'从「あれれー? ふたが外れてるよぉ?」

そこで、渡辺は思わず驚きの声を漏らす。表情や言動はほのぼのとしているが、これでも渡辺はかなり驚いている。
蓋を開けようとした彼女だが、既にその蓋は外れ、ゴミバケツの脇へと落ちていたからだ。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:49:00.26 ID:fmfm7D9O0
実は、今以外にもこの日の午後にゴミ出しが行われており、その当番も彼女であった。
その時のゴミは既に収集車が回収しており、それにも付き添った渡辺は蓋をしっかりと閉めたことを記憶していたのだ。
なので、開いているとしても中身は空っぽなのである。ちなみに、蓋以外には何ら異常は見られなかった。

从'ー'从「……まあいいかぁ」

恐らくは誰かが間違って開けたのだろうと解釈し、渡辺は再び袋へと手を伸ばす。

――その時であった。

从'ー'从「?」

渡辺は、暗がりの中に何かぼんやりとした“姿”を見つける。

それは袋を持とうと中腰になった彼女よりも少し下ぐらいの目線で、こちらをじっと睨んでいるような印象であった。
渡辺は目を凝らしてその姿を確認しようとするが、闇が深過ぎるせいでぼんやりとしかその姿を確認できない。
なんとか確認できたのは、どうやら地べたに四本の足で立っていることだけであった。

从'ー'从(犬か猫かなぁ?)
▼ ::::▼「……」

ようやく目が慣れてきたのか、その時暗闇の中で渡辺は何か平べったいものが揺らめくのを垣間見る。
それはシルエットの頭に当たる部分から垂れ下がっており、彼女はなんとなくそれが「耳」であることを認識できた。
また、よく見るとシルエットの中には細長い尻尾のようなものがあることを渡辺は確認する。

この時、彼女は恐らくは食べ残しの匂いに駆られてきた野良犬か何かであろうと思っていた。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:51:10.35 ID:fmfm7D9O0
从'ー'从「あ、そうだ」

何かを思いついたかのように呟くと、渡辺は食べ残しの詰まった袋の中に手を突っ込む。
そしてがさごそと漁った後、ほとんど手の付けられていないハンバーグを取り出した。

从'ー'从「ほら〜おいでおいで〜」
▼ ::::▼「……」

渡辺はハンバーグを指で摘まんでひらひらと示す。
だが、「それ」は彼女を警戒しているのか、その餌に近付こうともしなかった。

从'ー'从「んん〜、仕方ないなぁ」

その後一向に近付く気配がないため、渡辺は「それ」に向かってぽいとハンバーグを放った。
「それ」は気付いて一度だけびくりと体を震わせるが、その後ゆっくりとハンバーグへ近付いていく。
渡辺はそれを確認し、その様子をじっくり見ようと中腰の体勢から膝を曲げてしゃがみ込む。

そのせいで、月明かりが彼女の前を照らした。

▼ :::゚▼「!!」
从'ー'从「へ?」

そうして彼女は垣間見た。
想像の範疇にあるはずもない、そのアンバランスな存在。
日常から逸脱した、非日常の断片を。



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:53:35.38 ID:fmfm7D9O0
月の光が暴いた「それ」の面影は、明らかに犬のものとは違っていた。

鼻の骨格が突き出ているわけではない。
舌が長いわけでもない。
口が横に広がってもいない。

あったのは、明らかに感情が込められた瞳――その犬の顔面には、犬であることを示すものがなかった。

渡辺の思考が定まらなかったのは、彼女がおっとりしているからでは決してない。
自分が予想する暇もない、完全にイレギュラーな存在。それを突然見せられて、冷静に事を運べる者などいない。
だから、ハンバーグを銜えた犬が一瞬の内に走り去るのを、彼女は黙って見ていることしかできなかった。

从'ー'从「……」

渡辺の表情は、相変わらず変わらぬままだった。だが、それは変える余裕がなかっただけ。
やっと少しずつ活動を再開した彼女の脳内は、その処理する項目の多さにてんやわんやになっている。
幸いだったのは、彼女が思考をパンクさせる前に足元のゴミ袋を見つけたことだ。

从'ー'从「……お仕事、しなくちゃ……」

渡辺は体に染み付いた動作を頼りながら、足元の袋を拾い上げた。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:55:54.08 ID:fmfm7D9O0
从'ー'从「……以上〜」
( ^ω^)「あ、どうもですお」

渡辺さんの状況説明が終わる。
本当ならもっと興奮するような出来事だったと思うんだが、彼女のゆっくりとした口調はずっと変わらなかった。
その代わりといってはなんだけど、隣の椎名さん(渡辺さんがそう呼んでいたはずだ)は目を可愛らしくぱちくりさせている。
恐らく、これが普通の反応なんだろう。そうなると、渡辺さんは相当肝っ玉の太い人のようだ。

しかし、話を聞き終わってみて、やはり渡辺さんが見たのは僕が探している犬だ。
恐らくはこの店から出ていた肉の匂いにでも釣られ、ふらふらとやってきたのだろう。

だが、結局ゴミバケツの外れていた蓋のことだけはわからなかった。
渡辺さんが見た時は既に外されていたようだし、それに気になるのはバケツが“倒れたり”していなかったことだ。
もし本当に犬が開けるとするならば、恐らく体当たりでもして、バケツが倒れた衝撃でフックが外れるぐらいなんじゃないだろうか。

しかし、話によればバケツはただ蓋が外れていただけ。
そうなると、もしかしたら犬ではなくやはりその前に誰かが開けてそのままにしていたんだろうか。それならば、一応の納得はつくのだが。

( ^ω^)(んー……)
(*゚ー゚)「あのー……すいません、もう戻らないといけないんですけど……」
(;^ω^)「あっ、引き留めちゃってすいませんお! どうもありがとうございましたお!」

少々慇懃なほどに頭を下げ、そそくさと僕はその場を後にする。
ありがとうパイナポー☆シスターズ。君達のおかげで重要な手がかりを掴むことができた。

今後も是非、僕の仕事や私生活諸々に活力を与えて欲しい。
今までは事務所から近場の店を利用していたが、今後も足繁く通うことになりそうだ。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 19:58:14.13 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)(犬があの店に現れたのが昨日の夜なら……)

恐らく、まだそれほど遠くには行っていないはずだ。
あの店は長岡さんの家がある住宅地からでもそう遠くない。
一日で移動した距離がこれなら、もしかするとまだ近くをうろついているのかもしれない。

それと、これは僕の予想に過ぎないんだが、もしかするとその犬はこの街にあまり詳しくないんじゃないだろうか。

確か長岡さんが引き取るまではどこかの金持ちに飼われていたそうだけど、多分その家はこの街よりもっと遠い場所にあったんじゃないだろうか。
何故なら、普通の犬の足なら一日もあればもっと長い距離を進めると思うのだ。
それがこれだけしか進んでいないのだから、もしかしたら途中で迷ったりしたのかもしれない。

犬は知らない土地だと不安になると言うし、まさかあの容姿で散歩に連れて行くなんてことも考えられない。
ひょっとしたら、逃げた理由も土地が変わったことが関係しているのかも……。

( ^ω^)(恐らく……今日が天王山だお)

仮定に過ぎないとはいえ、このチャンスをモノにしない手はない。
この街は僕にとって庭のようなものだ。土地に関しては完全にこちらが有利。
相手に弱点が存在する以上、徹底的にそこを攻める必要がある。

しかし、それでも相手は動物だ。体力ならば圧倒的にあちらの方が上だろう。
犬が体力にものを言わせて遠くに行ってしまう前に、迅速な行動で追い詰めなければならない。
そのためには、どう探すかが重要になってくるんだけど……。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:00:43.22 ID:fmfm7D9O0
――ぐぅぅ。

(;^ω^)(アッー! お腹空いてるの忘れてたお……)

張り詰めていた緊張の糸をぷっつり切るかの如く、僕の腹部から情けない音色が響き渡る。

どうやら、僕のお腹に住んでいる虫は全く空気が読めないようだ。
そして空腹と共にもう一つ忘れていたが、こういうのはやはり意識すればするほどその強さを増していく。
このままではせっかく犬を追い詰めようにも、その前に眩暈を起こすかもしれない。

(;^ω^)(……しょうがないお)

僕の脳裏に、まさに「背に腹は変えられない」という言葉が浮かぶ。
一度お腹をさすった後、僕はポケットの中の財布を握り締め、そこでぐるっと踵を返す。

そうして、僕は早くも椎名さん達と再会した。
とりあえず、再びパイナポーが拝めたのと、代金の小銭が丁度足りたのでよしとしておこうか。



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:03:09.69 ID:fmfm7D9O0
( ^ω^)「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!」

両手のハンバーガーとコーラを貪りながら、僕は商店街の出口を抜ける。
恐らく、既に犬はこの商店街から離れているだろう。何しろ、元々人通りが多い上に今日はセールをやっている。
犬でなくても、人ごみが嫌いならまず近付かない。
その犬が人懐っこい性格なら話は別だけど、渡辺さんの話ではすぐ逃げてしまったようだし、そうは考えにくい。

ふと、僕はコートの右ポケットをまさぐる。思った通り、硬い感触。掴んで引き出すと、シックなデザインの腕時計を見つけた。

これは大学生の時、バイトした金でちょっと背伸びして買ってみたものだ。愛着があって、その時からずっと使っている。
僕がポケットに入れた記憶はないから、きっとまた玲子さんが入れておいてくれたんだろう。
こういう小物は気を付けていても忘れることがあるから、非常にありがたい。
“ふと、気付いた時には右ポケット”である。

腕時計を左腕の手首に巻き、改めて時間を確認する。現在の時刻は午後の二時過ぎ。
夜中になれば探すのは困難なため、夕方までには何とかしたい。
犬が人ごみを避けるとするならば、そういう場所に向かうと考えるのがセオリーだろう。
今の時間、極端に人が少ない場所といえば――

( ^ω^)(……風俗街、かお)

この街にも、夜にこそ人が集まる場所はある。それに、確かあそこには路地裏なんかも多かったはずだ。
野良犬も結構見かけた気がするし、犬が一匹増えたところで誰も気にはしないだろう。

……まあ、普通の犬とは違うんだが。

( ^ω^)「……ずごごごご……ぐぁっぷ」

残ったコーラを一気に飲み干し、包み紙やらなんやらと共に紙袋へと突っ込む。脇には丁度良くゴミ箱が設置されていた。
ここからだと、風俗街へは大体三十分ほどだ。僕は紙袋を捨てると、道筋を思い出しながら歩き出した。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:05:38.75 ID:fmfm7D9O0
その場所に近付くに連れ、人の気配が段々と少なくなる。
掲げられている看板はどれも消灯され、閑散とするふいんきの中を僕は少し早足で歩いていた。

活気が溢れていた商店街とはまるで色の違う、もはや別世界のような場所。
この場所の人々が好むのは、自らを隠してくれる闇。輝く太陽は疎まれて、謙虚な月に恋焦がれる。
そして夕闇が翳る頃、人々は己を際立たせるネオンの下、その息吹を取り戻していく。

風俗街――僕が住むこの街の中でも、最も異質な空間。しかし、それでも無くてはならない場所だ。
どんなものにも求める人はいて、その人が望むように、時には望まれない形でそれは存在する。

僕も浮気調査なんかで何度か足を運んでいるし、この街は庭のように思っているけど、それでもここだけは未だに馴染めない場所だ。
路地裏の数が多く、身を隠すのにも適したこの場所は、犬が一匹隠れるなんてのは実にたやすいことだろう。
この異色な光を放つ空間の中に、果たして僕の探す犬はいるんだろうか。

( ^ω^)「とにかく、まずは聞き込みを……」

不慣れな場所なのだから、自分で調べるよりも人に聞く方が手っ取り早い。
僕はお上りさんのようにその場できょろきょろと周りを見渡すと、道上にキャバクラの看板を持ってぽつんと立っている男性の姿を見つけた。

( ^ω^)「すいません、ちょっといいですかお」
/ ,' 3「ん……」

返事をした男性は顔中に皺をたくわえていて、恐らく年齢的には五十の半ばぐらいに見える。
眠たそうな眼をやっと開いているようで、失礼だがいかにもまともな職を失ったその後といった感じだった。

( ^ω^)「あの、最近ここら辺で変わった動物を――」
/ ,' 3「……」
( ^ω^)「あの……?」



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:08:04.27 ID:fmfm7D9O0
言いかけて、僕は男性がおかしな表情をしていることに気付く。
ぽかんと口を半開きにして、僕を見る目が点になっている。なんだか、変なものでも見るような顔つきだ。

別におかしな言動はしていないはず……もしかして、僕の格好を見てそんな風になっているんだろうか。

確かに、僕の服装を訝しげな目で見る人は少なくない。ここに来るまでに何度か視線も感じている。
それも、別に今日だけの話じゃない。依頼主の長岡さんだって、本当は気を使って何も言わなかったのかもしれない。

しかし、これはわざわざ色んな古着屋を回って一着一着品定めして、やっと見つけた代物なのだ。
それに、自分に気合を入れるという意味合いだってある。値段は安いが、僕にはとても価値のある一張羅だ。

だから……頼むからそんな目で見ないで欲しい。

(;^ω^)「……そんなにおかしいですかお」
/ ,' 3「え? ああスマンね、話しかけてくる奴なんて滅多にいないもんだから」

そう言って、男性はある意味自嘲するかのように小さく笑う。
どうやら話しかけられたのが相当珍しかったようだ。聞けば、話しかけられるどころか素通りされるのがほとんどらしい。

なんだか、男性は笑い方一つにも年季を感じるようで、ほんの少しだけこの人の人生を垣間見たような錯覚に陥る。
少しだけ身の上話を聞いてみたくなったが、すぐに思い止まった。聞いたところで、どうせ僕に深く理解できるはずもない。
僕は雑念を振り払うかのように、男性に同じ質問を繰り返した。

( ^ω^)「最近……ここ二日ぐらいで、おかしな動物を見ませんでしたかお?」
/ ,' 3「動物……?」

男性の眉間にぐっと皺が寄り、黒目がぎょろぎょろと上方を彷徨う。
加えて、白髪が混じった頭をぼりぼりと掻き始めた。この男性の癖なんだろうか、ぱらぱらとふけが宙を舞う。

しかし――



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