( ^ω^)ブーンが都市伝説に挑むようです
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:10:30.14 ID:fmfm7D9O0
- / ,' 3「……悪いが、見てないよ」
( ^ω^)「そうですかお……」
そう言って、男性はすまなさそうに肩をすくめた。
別にこちらとしては一人目で当たりを引けるとは思っていないので、すぐに弁明する。
そうして、僕は礼を言ってその場を離れようとしたが、そこで男性に少し気になることを言われた。
/ ,' 3「アンタ……刑事さんかい?」
( ^ω^)「え?」
「ありがとう」と言おうとした僕の口が、疑問を発するものに変わる。なるほど、この男性は質問してきた僕を警察だと思ったようだ。
まあ、確かに質問の内容や僕の格好はそれっぽかったろう。そう思うのもごく自然なことだ。
だが、どこか少しだけ躊躇うような言い方だった。やはり、あまり褒められはしない職業だからだろうか。
( ^ω^)「いや、僕は探偵ですお」
/ ,' 3「探偵? へえ……じゃあ、いい勘してるよアンタ」
( ^ω^)「え……」
今度こそ本当に意味がわからなかった。男性が言う「勘が良い」とは、紛れも無く僕のことのようだ。
しかし、自分ではあまり今日スマートに動けていたとは思えない。
その証拠に、結果的に男性からは情報を得られなかったのだし、この後も地道な作業が待っているはずだ。
一体僕の何が「勘が良い」と言える行動、もしくは言動だったと言うのだろうか。
/ ,' 3「素人はさ……俺みたいなのには声かけないんだよ、やっぱ」
それとなくヒントのようなことを男性は述べたのだろうけど、それでも僕はピンと来なかった。
ただ、どうやら「勘が良い」とは僕が男性に話しかけたことを言っているようだ。
しかし、実際のところ、男性にはたまたま最初に見つけたから声をかけただけである。
まあ、今となっては白状できない状況なんだけど。
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:13:07.25 ID:fmfm7D9O0
- / ,' 3「どんな職業でも、大体は自分の手元しか見えてないもんだ。“この街”を見てるのは、案外俺みたいな奴なんだよ」
男性は言った後、にやりと笑う。そして、僕も思わず口角が釣り上がった。
と言っても、別に男性につられて笑ったわけじゃない。僕が男性の言っている意味を理解したからだ。
つまり、“自分はこの街を知り尽くしている”、ということをこの男性は言いたいらしい。
その後の男性曰く、一般の職業に就いている者は自分のことに精一杯で、周りのことにまで目が向かない。
自分のように何も考えず、ただぽつんとつっ立っているだけの職業だからこそ、色々なモノが見えてくるそうだ。
普通なら誰も声をかけない、言わば空気のような存在。それ故、男性は多分に余裕があり、この街の全てを見渡せるのだという。
その理論は素直に驚けるものではないし、ただの言い訳のようにも聞こえる。でも、異様な説得力を感じたのも確かだ。
男性は記憶力も良いらしくて、証拠とばかりにどの店のどの女性が病気持ちであるかを教えてくれた。
果たして、僕がそれを必要とする時が来るのかはわからないが。
( ^ω^)(とはいえ、本当なのかお……?)
男性は相変わらず自信満々といった感じで、続いて道行く男性がカツラであるかそうでないかを見分けている。
もし、男性の言っていることが事実だとしたら、もうこの風俗街に探している犬はいないということだ。
なにせ、一番詳しいという人が知らないのだから、もはや探しようがない。
博打を打つぐらいの気持ちでやってきたのが、全ては徒労だったというわけだ。
初めて会った人物の言うことを鵜呑みにするのもおかしな話だが……なんだか、早くも暗礁に乗り上げた気分だった。
/ ,' 3「……なあ兄ちゃん、俺は知らねえけど、知ってそうな奴なら知ってるぜ?」
( ^ω^)「えっ!?」
不安な気持ちになっているところに、それはまさしく天の声と呼ぶにふさわしい言葉だった。
冷静に考えたら男性の言っていることはおかしいのだが、情報をくれるのならばもうなんでもいい。
僕は一切の躊躇なく、男性の話に飛びついた。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:16:17.88 ID:fmfm7D9O0
- / ,' 3「俺の知ってる奴に、ソニー高田って奴がいるんだが……」
( ^ω^)「ソニー……高田? それ本名なんですかお?」
聞いて、男性は「さあ」といった感じで首を捻る。
思わず腰を抜かしそうになってしまった。一体どういう関係なんだろうか。
/ ,' 3「そいつが路地裏とかビルの屋上とか……人気の無さそうな場所にやたらと詳しいんだよ」
(;^ω^)「な、なんでですお?」
当然抱く疑問だ。この男性のように“この街の全て”とか抽象的なものならともかく、何故そんな場所限定なのか。
すると、男性も僕がそう質問するだろうと思っていたらしく、軽い口調でその理由を話し出す。
その人物が本名かどうかは知らずとも、そういうことは知っているみたいだ。
( ^ω^)「え……じゃあ、その人はいい人なんですかお?」
/ ,' 3「……さあー?」
不可思議な間を与えつつ、またもや男性は首を捻る。
傍から聞けば大変慈善的な理由だったので、牧師のような人かと思ったが、それも違うようだ。
一体その「ソニー高田」とはどういう人物なのか。というか、よく考えたら僕はこの後その人物と会わなければならないのだ。
いくら四の五の言ってられない状況とはいえ、身の安全は保障されるんだろうか。
/ ,' 3「あっ! 思い出した! あれだよあのー……メ、メンヘラ!」
(゙゚'ω゚'`)「え゙」
何言ってんだこの人。嬉しそうに「思い出した!」じゃないよ。
メンヘラって、要するに精神病を患ってるってことだろう。ちゃんと意味わかってるんだろうか。
これからその人物と会うってんだぞ、僕は。まともな人物を紹介するべきだろ……常識的に考えて……。
(;^ω^)「……」
/ ,' 3「大丈夫だって、多分」
- 100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:18:41.94 ID:fmfm7D9O0
- 腑に落ちない点が多いものの、ともかく今は時間が無い。気付いて時計を見ると、既に時刻は三時を過ぎていた。
本当に何度も言うけど、今はとにかく時間が惜しい。今日を逃せば、探すのはあと一日しかないのだ。
僕はすぐに腹をくくり、男性からその「ソニー高田」という人物の居場所を聞き出す。
すると、ここから少しだけ離れた団地――そこにある、CCさくらマンションにその人物は住んでいるらしい。
少々わかりづらい場所にあるそうで、僕は内ポケットからメモ帳を取り出し、男性に簡単な地図を描いてもらった。
どうやら入り組んだ道を進んだ先にあるようで、男性の持つペン先が何度も曲がりくねる。
恐らく、慣れない道だから辿り着くのは四時過ぎになりそうだ。
/ ,' 3「あいよ」
( ^ω^)「どうもありがとうございますお。えーっと……」
/ ,' 3「……ん、あ、そうか。そうだな……じゃあ俺のことは荒巻スカルチノフって呼んでくれよ」
なんかもう慣れてしまったらしい。明らかに偽名だろうが、僕はそれを聞いても特に驚きはしなかった。
男性の方も別にその名に他意はないらしく、僕の反応を見て不満そうにする素振りもない。
それでも一応聞いたが、昔見た映画にそんな名前の人物がいたそうだ。
( ^ω^)「じゃあ、これで失礼しますお」
/ ,' 3「おう。俺は大体いつもここにいるからよ、またなんかあったら教えてやるよ」
そう言って、荒巻さんはまたにやりと笑う。所謂、“情報屋”というやつのつもりなんだろうか。
果たして、僕が今後再び荒巻さんの元を訪れるのかはわからないけど、憶えておいてまず損はないだろう。
僕は荒巻さんに一礼すると、団地へと向かって歩き出した。
……のだが。
/ 。゜3「アッー! ちょっと待った! ちょ、ちょっと待った!」
急に背後から呼び止められ、僕はすぐさま立ち止まる。どうやら、伝え忘れていたことがあったらしい。
正直少しでも早く団地に急ぎたい気分だったが、荒巻さんの話を聞いた後、僕は大急ぎでそれをメモ帳に書き記した。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:21:29.23 ID:fmfm7D9O0
- 時刻は午後三時を過ぎて、四時に近づこうとする頃。
僕は荒巻さんの地図を頼りに、不慣れな道を右往左往しながら目的のマンションを探していた。
見上げれば、蜂の巣のように広がったマンションのベランダから、干された布団や洗濯物がちらほらと見受けられる。
いかにも人の住まう団地、といった光景だ。
( ^ω^)(えーっと……ここを真っ直ぐ歩いたら、インド人……じゃなくて三つ目の角を右に……)
改めて見て気付いたが、荒巻さんの書いた地図は手抜きにも程があった。
道筋は何度も間違えては上からなぞっているために大変見にくいし、目印となる建物の数があまりに少な過ぎる。
丸に囲まれた「VIPSTAR」という文字がパチンコ屋だと理解するのに、実に三十分近くは迷った。
なんとか(地図上は)マンションの近くにまで辿り着いたけど、ここまで来れた自分を誉めてあげたい気分だ。
タクシーでも使えば良かったんだろうが、なんだか途中からはもう意地になっていた気がする。
車一台分ぐらいの道をてくてくと歩いていると、前から自転車に乗った人と何度かすれ違う。
とはいえ、この時間になるとあまり人の姿は多くなく、子供と戯れる母親の集団が少し公園などで見れるぐらいだ。
もう少しすれば、買い物に出かけていく主婦の姿なんてのも見れるのだと思うけど。
( ^ω^)「! CCさくらマンション……ここだお!」
僕は思わず声を上げ、左手でガッツポーズを作る。
言った後に周りに人がいなかったか確認したが、どうにか誰にも見られずに済んだようだ。
マンションはその名の通り薄い桜色の外壁で、なかなか目立つ外見をしている。
というか少し入りづらい。女性なら特に問題なく入居できても、男の僕には些か躊躇うところだ。
かと言って、ここで諦めても男が廃る。
僕は一度だけコートの襟を直すと、いざマンションの通用口へと足を踏み入れた。
( ^ω^)(呼び出しは……これかお)
自動ドアパネルの「管理人呼び出し」のボタンを押す。するとしばらくして、低い男性の声が聞こえてきた。
- 106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:24:23.85 ID:fmfm7D9O0
- 「はい、なんでしょうか」
( ^ω^)「あの、高田さんって人がここに住んでると思うんですけど……」
「え……、それって……あの高田さん?」
言葉の最後、男性のトーンが少し高くなる。それは確認というより、どちらかといえば驚きの方だ。
よっぽど珍しかったんだろうか、小さな声でかすかに「へぇー」というのが聞こえてくる。
( ^ω^)「……? そう、ですお。いますお?」
「あんた……あの人の知り合い?」
ここで、少し考える。
知り合いだと言ってしまうのは簡単だが、もし本人に確認を取られたらすぐに嘘だとばれてしまう。
このマンションは見た目もしっかりとした感じだし、セキュリティもそれなりに重視しているだろう。
ここは安易な嘘より、正直に事を説明した方がいいはずだ。
( ^ω^)「あー……いや、そういうわけじゃないんですが……ちょっとお話を伺いたくて……」
「あぁー……はいはい、いつか来るんじゃないかと思ってました。部屋番号は303号室です。今ドア開けますね」
( ^ω^)「? はあ、どうも」
詳しい話を聞かれたりするのかと思ったが、意外にもドアはすんなりと開かれた。
喜ばしきことなんだけど、なんだか少し引っかかる感じだ。
わざわざ知り合いかと聞かれたのは、きっと高田さんに会いに来る人物が滅多にいないからだろう。
しかし、「いつか来るんじゃないかと」っていうのはどういうことなんだろうか。
もう充分不安材料を抱えているのだから、これ以上は増やさないで欲しいものなんだけど。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:26:55.34 ID:fmfm7D9O0
- 「お勤めご苦労様です」
( ^ω^)「え、あ、はい、ありがとうございますお」
ドアを通ろうとして、最後にそんな労いの言葉が聞こえた。
確実に何か勘違いをしているみたいだが、これで第一関門突破、というところだろう。
僕は三階に向かうため、奥のエレベーターの元へと向かった。
(;^ω^)「……ゴクリ」
エレベーターが来るのを待つ間、若干の緊張。
やはり得体の知れない人物だからだろうか、掌にじんわりと汗が浮かび上がる。
職業上色んな人に会って来たが、精神病を患っている人は初めてだ。
イメージしようとして、テレビやインターネットでのおぼろげな知識が浮かび上がる。
本当にしょっちゅう「死にたい」やら、「カレーはやっぱりチキンカレー」とか口ずさんでいるんだろうか。
とりあえず僕はカレーならなんでも好きだけど、死にたがりに効く薬など皆目見当が付かない。
「元気出せよ!」とか「お疲れさんにはグ○ンサン。○正製薬!」とか言えばいいのかな。
いや、それだとただのセールスマンみたいだ。
僕も大学受験に失敗した時にはそのようなことを思ったものの、寝たら忘れていたのでちっとも役に立たない。
あ、それなら「布団をしこう! な!」と持ちかけるのはどうだろう。
僕の理論からすると、大概のことは寝たら忘れるはず。なので、まずはそれで心の平静を保ってもらうという寸法だ。
……って、寝たらダメだろ。何考えてんだ僕は。
ああ、ここまで来ると紹介した荒巻さんを恨みたくなる。というより、なんで僕はここまで悩んでいるのか。
そんなことを考えている内に、「ゴゴゴゴゴゴゴ……」というやけに迫力のある重低音と共にエレベーターの扉が開かれた。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:29:24.31 ID:fmfm7D9O0
- 若干の揺れが収まると、乗る時と同じ音で目の前の扉が開かれる。
エレベーターから降り、僕はコンクリートの廊下の上で目の前にあった部屋の番号を確かめる。
番号は、308。右側に行くに連れて番号が増えているので、僕は左側に向かって歩いていく。
コツコツという自分の足音が、同時に自分の心音のようにも聞こえる。
だからなのか、僕は意識したつもりはなかったものの、少し歩む速度がゆっくりになっていた。
管理人さんに教えてもらった303号室は、丁度階段を登ると目の前にある部屋だった。
胸までの外壁の向こう側には、夕焼けに差し掛かった薄いオレンジ色の空が広がっている。
時計を確認すると、もう四時を十分ほど過ぎていた。
( ^ω^)(ここらで……何かしらの手掛かりを掴まないとダメだお)
内容は異様でも、せっかく掴んだ仕事なのだ。
こういうところできっちり成果を出しておかないと、この先の仕事にも響く可能性がある。
僕は一度だけ首と肩を回し、ふーと大きく息を吐く。そして、303号室のチャイムを鳴らした。
( ^ω^)「ごめんくさいおー」
ピンポーンと中で響く音が聞こえ、僕はドアの前でじっと反応を待つ。
しかし、しばらく待ってもドアは開こうとしない。僕はもう一度チャイムを押してみたが、やはり反応はなかった。
(;^ω^)「参ったお……留守かお……ん?」
ふと視線が下がり、僕はドアに郵便受けが付いていることに気付く。
下品だとわかっていても、僕はついついその場にしゃがみ込む。
そうして、僕はぎょろりと動く二つの目玉と目が合った。
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:31:51.20 ID:fmfm7D9O0
- (;゚ω゚)「あぎじゃびよぃ!?」。
僕は驚きのあまり不規則な言葉の羅列を叫び、
(;゚ω。)「へぶら!」
そのまま、丁度後ろにあった階段の手すりに頭をぶつけた。
(;゚ω゚)「くっ、ふおお〜……ふぉっ、ふぉおおお〜……」
後頭部をすごい勢いでさすっていると、パタンという音と共に郵便受けの蓋が閉まる。
次の瞬間、閉ざされていたドアがゆっくりと僕の前で開いていった。
が、数十センチほど開いたところでその動きは止まる。
(∴゚ з゚ )「……」
まるでドアから生えてくるように、真横に頭が伸びてくる。効果音を付けるなら、「ニョキニョキ」なんて感じだろう。
ぼさぼさの髪、ニキビの残る頬、目の下の大きな“くま”。目つきもどんよりとしている。
髭は生えていないが、「不潔」とか「不衛生」なんて言葉が僕の頭に浮かぶ。
そういえば荒巻さんから性別を聞いていなかったが、髭が生えていないということは女性なのかもしれない。
ドアの影に隠れていて、のど仏を見ることはできなかった。顔立ちは中性的で、どちらだとしても一応納得はできる。
あまりおいそれと聞けない質問だし、下手したら機嫌を損ねるだろう。まあ、体つきを見ればわかるとは思うが。
(;^ω^)「あ、あの……」
(∴゚ з゚ )「……何をしているぅうう」
何故か高田さんの口調はビブラート(震えるような声)だった。
- 115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:35:04.00 ID:fmfm7D9O0
- (∴゚ з゚ )「セールスはお断りぃいい……」
(;^ω^)「あっ! いや! 違うんですお! ちょっとお話が聞きたいだけなんですお!」
ドアが閉まろうとするのを見かねて、僕は慌てて立ち上がる。
そのおかげで高田さんはドアを閉めるのを止めたが、依然としてこちらを警戒しているようだ。
僕のことを真っ直ぐと見つめて、決して目線を外そうとしない。なんだか、こちらの腹を見透かそうとしているようだ。
立ち上がってみると、目線は結構下になっていて、恐らく身長は僕の方が高いだろう。
高田さんの声色は少し高めのハスキーで、これまたどちらなのか判断が付かない。
それにしても、何故語尾が震えているのか。恐らくわざとだと思うんだが。
(;^ω^)(……いやいや、そんなことはどうでもいいお)
どうにもインパクトが強くて気を取られたものの、とにかく手掛かりを探さなければならない。
僕は乱れた襟や帽子を直すと、先ほどから全くまばたきをする気配がない高田さんに向き直った。
( ^ω^)「えーっと、僕は探偵をやっていまして、内藤と申しますお」
(∴゚ з゚ )「たん、ていぃいい……?」
高田さんの眼がぐっと大きくなる。なんだか猛禽類を感じさせる瞳だ。
実物を見たことはないけど、獲物をじっと観察するような……いや、獲物のつもりはないんだが。
とにかく、僕は早々に話の肝を高田さんに伝えた。
(∴゚ з゚ )「犬ぅうう……?」
( ^ω^)「そうですお、最近変わった犬を見ませんでしたかお?」
今回はより具体的にするため、はっきり“犬”だと伝えた。
依頼の内容はあまり公にしないという約束だが、このくらいなら大丈夫だろう。
むしろ、この人には無意味なはぐらかしなど通用しないような気がする。
それに、随分と閉鎖的な環境にいるようだし。
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/10(土) 20:38:11.39 ID:fmfm7D9O0
- (∴゚ з゚ )「よ、よろしくメカドッグゥウウ……」
(;^ω^)「……」
そこで、僕は絶句する。何故なら、高田さんの瞳が急に尋常じゃない速度で回りだしたからだ。
最初は時計回りに動いて、一度どこかでぴたりと止まったかと思うと、今度は逆回し。
そのままぎょろぎょろと動いている。
「高田純二ですか、高田だけに」と、僕は心の中で呟く。
あっちはギャグとしてやってるんだろうが、こっちは何の意味があるんだろう。
この人はメンヘラというか、それ以前に人間なんだろうか。
(∴゚ з゚ )「人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わんかね」
( ^ω^)「え?」
僕は驚きつつ高田さんを見たが、いつの間にか瞳の回転が終わっていた。
しかし、至極まともな発声だったあたり、やはり先ほどからのビブラートはわざとだったようだ。
一体この人は何が目的なんだろう。もしかして僕をからかっているんだろうか。
( ^ω^)「……あの、それで何か思い出しましたかお?」
(∴゚ з゚ )「オーダー! 卵を使わない卵料理ー!」
「それ卵料理じゃないじゃん」と、僕は聞こえないように一人ごちる。
そして何を思ったか、突然高田さんは独特のリズムで歌い出した。
しかし、なんて舌滑の悪さだ。こっちとしてはまるで異次元の言葉のように聞こえる。
(∴゚ з゚ )「相変わらず誰〜♪」
( ^ω^)「内藤ですお。初対面ですお?」
今度は突然歌いだした。なんだ、一体どうしたんだ。
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