('A`)駄目人間は覚悟するようです
- 6: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:06:47.20 ID:klw6FrSk0
- 【十九歳ニート 秋の話】
('A`)「ちくしょ、なんでまたノーマルエンディングなんだ」
パソコン画面を流れていくスタッフロール。
ぼくは思い切り睨み付けながら、スキップできないシステムを恨んだ。
('A`)「ここまでは陵辱ルート……好感度足りないのか?
あ、なるほど。イベ絵回収はまた別なのね」
毎回お世話になっているサイトを参考に、エロゲ攻略再チャレンジを決めたぼくは
一息吐くために台所に向かう。
ぼくの部屋が二階、台所と両親の寝室が一階にある、
我が家はわりとポピュラーなつくりの一戸建てだ。
足音に気を使いながら深夜二時半の階段を降りる。
今日の夜食は魚肉ソーセージ。
エロゲの合間に食べるには見た目的に微妙なおやつだが、
好物なので気にせずがっついた。
('A`)「うめぇ……あ 麦茶ないじゃんか」
冷蔵庫を漁るが、目ぼしい飲み物はなく、
もちろん親父の飲みかけビールなんてゴメンだし、どうしたものかと考える。
- 7: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:09:04.82 ID:klw6FrSk0
('A`)「水道水まずいんだもんな。
自販機いくか」
ぼくは財布を取りに部屋に戻ることにした。
外は寒いだろうし上着も着なければなるまい。
魚肉ソーセージ片手に、ぼくは踵を返した。
台所を出て、廊下を抜け、階段をのぼる。
そして軋みやすい九段目の階段に爪先を乗せた瞬間だった。
ぼくは、自室の異変に気付いたのだ。
*「あっ――そこはっ…ん……はぅん」
- 8: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:10:23.16 ID:klw6FrSk0
危なく転げ落ちるところだった。
あんまりに手すりを強く握りしめたせいで掌が痛い。
(゚A゚)「え、ちょ……」
*「ひゃぁんっ――うあ…あんっあっ」
( A )「うあああ」
文字どおり頭が真っ白になったのはこの時だけ、ではないのだが。
しかし、ぼくは薄く開かれた部屋の扉から聞こえくる嬌声に、身じろぎ出来なかった。
*「あんっ…ふぁ、あ、あ……おっき、い」
- 10: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:11:33.27 ID:klw6FrSk0
- ( A )「……」
*「いやっ……あ、だめ、もうっイク…ん…」
(゚A゚)「いっちゃらめぇぇぇぇぇぇぇ」
ヘッドフォンが外れたか?
自動読み送りにチェックしてたか?
それにしたって作為的に垂れ流してるとしか思えないほど大きな喘ぎ声!
親が目を覚ましてしまうではないか。
ぼくは階段を一段飛ばしでドタバタと駆け上がった。
扉を倒れ掛かるように押し開き、一直線にパソコンに飛びつく。
そしてヘッドフォンプラグイン。
('A`)「って……あれ?」
*「はぁ……ん、気持ちよかっ…た……」
爆音BGMと、アレを致した後の余韻に酔うエロゲキャラの吐息は
パソコンを前に間抜け顔でいる ぼくの背後から尚も聞こえていた。
('A`)「ディスプレイに移っているのはタイトル画面……
じゃあ、今聴こえているのは?」
*「すき、だよ」
- 12: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:13:48.07 ID:klw6FrSk0
- ('A`)「っつーことがありまして」
(´・ω・`)「それはポルターガイスト現象みたいなものだね」
('A`)「まじで?!あれは心臓止まるかと思ったぜー。
オレの部屋にオーディオなんてパソコンしかないんだよ」
明くる朝、公園の冷たい空気が心地よく肺を満たす。
ぼくは、噴水の前のベンチに腰掛けて 溜息を吐いた。
隣ではショボンが顎に手を当てて神妙な顔つきだ。
('A`)「いつもと変わらない部屋で喘ぎ声が響いてるわけ。
もちろんパソコンの電源を切ってもそのまま!
そしたら段々慣れてきちゃってさー、ヘッドフォン装着でエロゲ再開して
陽が昇る頃には聴こえなくなってたわ」
(´・ω・`)「まぁ、ドクオの部屋はちょっと暗すぎるんだよ。
カーテン閉めっぱなしはやめたほうがいい」
コーヒーを啜りながら、ショボンは苦笑いする。
たしかにぼくの部屋はこの頃から真っ暗で、
だけどそれが落ち着くのだから仕方がないというものだろう。
('A`)「んー……」
- 13: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:15:19.22 ID:klw6FrSk0
- (´・ω・`)「風水とかは信じちゃあいないけどね。
でもやっぱり明るい部屋のほうがいいと思うよ」
('A`)「つってもさ。カーテンの開け閉めってめんどくさくね?」
(´・ω・`)「……じゃ、開けっ放しにしたら。閉め切ってるよりはマシかも」
('A`)「んー」
ぼくの回りでこういった怪奇現象が起こるのは、もはや珍しいことではなかった。
といっても、ぼく自身に霊感やら超能力やら、その類が身についているわけではない。
そもそも、ぼくは高校二年生の夏まで、
こういった現象とは無縁の、ごく普通の生活を送っていたのだ。
自室に謎の喘ぎ声が響いたとしても落ち着いていられるような
そういう人間になったのは最近のことだと思う。
そして、そのきっかけ――いや、その原因にあたるのがこのショボンという男である。
(´・ω・`)「でもさ、ポルターガイストっていっても心霊現象とは限らないんだよねぇ。
もしかしたら、君自身に潜む念力みたいなものと
環境が共鳴してそうなったのかもしれない」
('A`)「おいおい……。おまえじゃあるまいし、やめてくれよ」
- 15: ◆Y0BMUrTaXI :2008/01/28(月) 00:17:22.30 ID:klw6FrSk0
- (´・ω・`)「いやいや、アメリカ人と暮らせば、
そのうち嫌でも英語が喋れるようになるでしょ。一緒だよね」
ショボンは胸元のスカーフを弄りながら答える。
なんというか……まるで貴公子のようなその白いスカーフが、木枯らしを受けて靡いていた。
黄緑色のポロシャツにどピンクのセーター、そして赤いジャージを履いて
よくもその風体で平気に座っていられるな、とこればかりは慣れることなく会う度に思うことだ。
服装のセンスに関してだけは、こいつよりマシだろうと自負している。
(´・ω・`)「ホント、ちょっとその気があればコツを教えてやるのにね」
('A`)「……トラブルを呼ぶコツなんて教えて欲しくないだろ、誰だって」
(´・ω・`)「面白いことに出会うコツ、だよ。君語弊があるなぁ」
この男には不思議な力があった。
ぼくからしたら、恐ろしいだけの能力だ。
だけど、それを羨む者はいたし、憧れを抱く者もあった。
ショボンがいたから解決した物事だって、認めたくは無いが確かに存在するのだ。
('A`)「ま、そうだな、あんまし悪く言えないもんなぁ」
(´・ω・`)「ふむ。最近君も理解示してくれるよね。存外に嬉しいもんだ」
('A`)「……あ、あの女の子かわいい」
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