ξ゚听)ξツンが地上を目指しているようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 21:22:31.52 ID:XVFpphqwO
- 第二話
狭い路地を、旧式の電磁スクーターが走り抜ける。
路面は決して走りやすいとは言えない状態だったが、地面から20cm程浮いている車体には関係なかった。
( ^ω^)「おっおっお〜」
またがる少年は、鼻歌混じりに風を受けている。
「よおブーン。タンパク缶一つ余ったから持ってきな」
( ^ω^)「おっ!!ありがとうだお!!」
投げられた貴重な食糧をキャッチして、スクーターは路地裏を擦り抜けていった。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 21:23:34.05 ID:XVFpphqwO
- 壁にもたれかかって動かない者。
せっせと資材を運ぶ者。
床には拳大の油虫が這い回る。
( ^ω^)「おっちゃん!タンパク缶分けてもらったお!!」
劣悪な環境の中でも、ブーンはそこで確かに笑っていた。
「おう」
( ^ω^)「17の方はもうダメそうだお。この18も時間の問題かもしれないお」
言いながら、スクーターから荷物を下ろす。
中からはガラクタが顔を覗かせた。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 21:26:28.22 ID:XVFpphqwO
- 「また移動するしかないな。こないだも集落の近くに蟲を見た」
( ^ω^)「そしたらまた頑張って働くお!!」
「……ああ」
傷だらけの手で、ブーンの頭をごしごしと撫でた。
その度に頭がガクガクと左右に振られ、ブーンは文句を言いながらも嬉しそうだった。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 21:33:31.72 ID:GZNxldKC0
- 「蟲だ!!蟲が来たぞーっ!!」
(;^ω^)「!!」
集落の中から、叫び声が上がる。
ブーンと男は、傍らに置いてあった銃を手に取り、声のした方へ走り出した。
にわかに慌しくなる集落。
ブーンがそこに辿り着いたときには、すでに人だかりができていた。
( ^ω^)「みんな大丈夫かお!?」
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 21:39:54.91 ID:GZNxldKC0
- 「おう、ブーン。今囲んだところさ」
「オラ!!覚悟しろ蟲め!!」
( ^ω^)「……?」
布を頭から被り、顔が見えない。
しかし、いつもの蟲とは違う。
いつもなら、問答無用で襲い掛かってくるはずだ。
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくれお皆!!」
ブーンは男達の前に立ち、囲まれている者に話しかけた。
( ^ω^)「あなた……蟲じゃないお?」
ξ゚听)ξ「……」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 21:45:14.24 ID:GZNxldKC0
- 布の下から現れたのは、端整な顔立ちの女だった。
華奢な体つきに似つかわしくない日本刀を腰に携えて。
「女……!?む、蟲じゃねぇのか」
ξ゚听)ξ「……アンタ達はこの集落の人間?」
「そうだ。悪かったな、脅かしちまって」
女は全く気にしていないとでも言うように、表情を変えずに男に要求した。
ξ゚听)ξ「少し食糧を分けてもらいたい」
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 22:51:42.46 ID:GZNxldKC0
- その言葉を聞いた途端、集落の人間の顔色が変わる。
一人、また一人と、女から離れていった。
ξ゚听)ξ「……ん?」
男達が皆背を向けた後、一人残って笑いかけてくる少年がいた。
( ^ω^)「脅かしちゃってごめんだお!!少しで良いなら、食糧分けてあげるお!!」
さぁ、とブーンは手を差し出す。
女はその手をマジマジと見つめていた。
(;^ω^)「……あう。こ、こっちだお!!ついてくるお!!」
ξ゚听)ξ「ありがとう」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 22:53:58.76 ID:GZNxldKC0
- 気まずそうに、差し出した手を引っ込めるブーン。
女の前に立って歩き出した。
( ^ω^)「悪い人たちじゃないんだお。ただ、皆も生活が苦しいんだお」
ξ゚听)ξ「集落を見れば分かるわ」
すれ違う者は、皆一様に同じ目をしていた。
空腹と戦っている目。
生気のない瞳。
そして、余所者を睨む視線。
ξ゚听)ξ「……」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:01:10.80 ID:GZNxldKC0
( ^ω^)「あ、僕はブーンと言いますお。お姉さんは?」
ξ゚听)ξ「……」
女は視線を合わせない。
沈黙が、質問への拒否を表していた。
ブーンは慌てて質問を変える。
( ^ω^)「あ、答えたくないならいいですお。それにしても、一人でしかも歩いてだなんて、強いんだおねー」
ξ゚听)ξ「……」
(;^ω^)「……えっと……」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:07:45.49 ID:GZNxldKC0
- (;^ω^)「……ど、どこから来たんですかお? 5〜6ブロック先にも集落があるんですかお?」
ξ゚听)ξ「……下」
( ^ω^)「あ、下ですかお!?へー、下からかお〜!!それはまた遠いところから……」
ようやく帰ってきた答えに、ブーンは小躍り状態だった。
しかし、女の答えの意味を理解して、すぐに硬直した。
( ^ω^)「……下?」
(;^ω^)「ししし下から!?どうやって!?ゲートを通るなんて、衛生局の人間しか出来ないはずだお!!」
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:12:54.07 ID:GZNxldKC0
- (;^ω^)「あ、もしかして衛生局の人ですかお!?あ、抜け道があるとか!?」
ξ゚听)ξ「違う。ゲートをくぐってきた」
(;^ω^)「じゃじゃじゃじゃあどうやって……!?」
ブーンが一気にまくし立てる。
女は困ったような顔で、一呼吸置いて答えた。
ξ゚听)ξ「……頑張って」
(;^ω^)「どう頑張ったんだお!!!!1」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:17:44.42 ID:GZNxldKC0
- ξ;゚听)ξ「ど、どうって……」
女はバツの悪そうな顔でそっぽを向いた。
どうやらブーンのテンションは若干苦手らしい。
(;^ω^)「ちょ……だって……!!」
詳細を知りたがったが、困っている顔を見て、ブーンはこれ以上追及するのをやめた。
一言だけ謝られて、女はますます戸惑っていた。
ξ;゚听)ξ「謝らなくても……」
( ^ω^)「きっと、すごい強いんですおね?その刀もきっとすごい武器なんだお!!」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:22:05.61 ID:GZNxldKC0
- ブーンの目線の先、女の腰の日本刀。
模様も何もない簡素な鞘は、路地の照明を受けて黒光りしていた。
( ^ω^)「あ、着いたお!!ココですお!!」
壊れたまま作動しない自動ドアを、両手で開ける。
女は後ろで食糧を待っていた。
( ^ω^)「おっちゃーん!!さっきのタンパク缶残ってるかおー!?」
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:32:04.61 ID:GZNxldKC0
- ( ^ω^)「おっちゃん?」
男は、背中を向けたまま振り返ろうとしない。
ξ゚听)ξ「……どうしたの?」
異変を感じた女が、ブーンの様子を伺いに部屋の中に立ち入る。
( ^ω^)「……おっちゃん」
その背中に、真っ赤なシミが広がっていく。
少しずつ、少しずつ。
ゆっくりと背中が裂けていく。
それはまるで、セミの脱皮のようだった。
「ブーン……逃げ……」
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:47:21.81 ID:GZNxldKC0
- 狭い部屋の中に、破裂音が響く。
肉塊が部屋に飛び散り、瞬く間に鉄の匂いが充満した。
( ^ω^)「あ……あ……」
ξ゚听)ξ「……!!」
女はブーンの首根っこを掴み、部屋の外へ飛び出した。
それを追うように、部屋から光が漏れる。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:55:41.87 ID:GZNxldKC0
- 劈くような爆音と共に、小さな部屋は爆発を起こした。
ξ゚听)ξ「く、う……!!」
爆風をもろにうけた女は、ブーンを庇いながらそのまま廊下の壁に激突した。
薄い構造の壁はいとも簡単に壊れ、二人は更に奥へと吹き飛んでいった。
(;^ω^)「ぅぅ……」
土煙の向こうから、人影がゆっくりと現れる。
その人物は、きょろきょろと周りを見渡しながら悠然と歩いている。
( ´_ゝ`)「……」
ξ;゚听)ξ「蟲……!!」
女の姿を見つけると、蟲は右手をゆっくりと持ち上げた。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/02/28(木) 23:56:08.03 ID:GZNxldKC0
- 第二話終わり
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