ξ゚听)ξツンが地上を目指しているようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 22:53:21.83 ID:SXLIlurf0

体の隅々を走る大小のチューブ。
腰に巻かれ、すねまで下げられた長い布。

そして、全身黒ずくめのバトルスーツ。

蟲と呼ばれたその男は、白目と黒目が逆転した細い瞳で、女を観察していた。

( ´_ゝ`)「……」

向けられた右手から、機械音が発生する。
甲から射出されたピンポン玉程の丸い球体は、酷くゆっくりした速度だった。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 22:55:04.85 ID:SXLIlurf0
ξ゚听)ξ「……!!」

それを見た女は、自分の腕の中にいるブーンを再び抱き上げて立ち上がる。

(;^ω^)「うわわ!?」

反対側の窓を蹴り破り、外へと飛び出した。
二人が居た空間まで移動した球体は、空中で動きを止める。



集落に、再び閃光と爆発音が響いた。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 22:59:16.34 ID:SXLIlurf0
トドメをささんと、崩壊した部屋へと足を踏み出した時。
蟲は鈍い音と衝撃で歩みを止めた。

自分の横腹を見る。
深々と刺さる、大きな鉄の杭。

( ´_ゝ`)「……」

「へ……へへ……やったぜ、どうだ糞野郎」

蟲が目線を上げた先。
武装した集落の人間が次々と集まりだしていた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:03:19.96 ID:SXLIlurf0
元々建築用の工具だった武器を腰に構え、狭い廊下で蟲と対峙する。

その様子を、無表情で見つめる蟲。
胸中は、余裕なのか絶望なのか。

「……なんだコイツ……」

全く読み取れない蟲の無機質な表情に、集落の人間は一様に息を呑んだ。

「う、撃てーッ!!撃ちまくれ!!」

誰かの合図で、杭が一斉に放たれた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:09:25.92 ID:SXLIlurf0
慌てる様子もなく、集落の人間たちに目がけて左手を振るう。

次の瞬間。
蟲へと襲い掛かる杭は、空中でその八割が消滅した。
残った杭も、バランスを失ってそれぞれあべこべに飛んでいった。

「なんだ……今アイツ何をしたんだ!?」

蟲が何をしたのか。
それに答えられる者は集落の人間にはいなかった。

ただ一人。
今はもう面影を残さない部屋の向こう側。

腰に日本刀を携える女を除いては。

ξ;゚听)ξ「まさか……五本とも……?」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:10:43.28 ID:SXLIlurf0
しかし、自分達の攻撃が無力化されたことだけは理解できた。
集落の人間達は、慌てて杭を装填しようとする。

「あれっ」

体の異変に気付いた者から、素っ頓狂な声を上げる。


「腕が、ない」


少しずつ、ゆっくりと。


「うわ、ずれる、ずれr」


糸の切れた人形のように。


「げ、ふ……」


集落の人間達はバラバラになっていった。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:14:09.06 ID:SXLIlurf0
「う、ぐ……痛ぇ……畜生、畜生……!!」

胸から上を切断された者は既に息絶えていたが、中には腹部のみの損傷で済んでいる者もいた。
はみだす腸を必死に押さえ、少しでも蟲から離れようと地面を這いつくばっている。

( ´_ゝ`)「っく」

口の端すらピクリともしない。
しかし、無表情な顔の奥から僅かに笑い声が漏れる。

蟲は、右腕をゆっくりと上げた。

(;^ω^)「やめるおーっ!!」

瓦礫の奥から、ブーンが叫んだ。
挟まった右足のせいで、駆け寄ることが出来ない。

(;^ω^)「やめてくれお!!お願いだお!!頼むからやめてくれお!!」

必死に懇願するブーン。
その思いが届く相手ではないと知っていながらも。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:19:50.07 ID:SXLIlurf0
( ´_ゝ`)「……」

(;^ω^)「お願いしますお!!これ以上殺さないでくれお!!なんでもするからお願いしますお!!」

数秒もなかっただろう。
しかしブーンにとっては蟲と見つめ合う時間が永遠にも感じられた。
蟲は、首をかしげ、食い入るようにブーンを見つめている。

そして。
視線を逸らさないまま、右腕を下げた。

(;^ω^)「……!!」

「はぁっ……は、見逃して、くれるのか……?」



(;^ω^)「あ……ありがt」



ック



( ^ω^)「……え?」


蟲が、笑ったような気がした。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:24:54.09 ID:SXLIlurf0
下げられた右腕の代わりに、鋭く放り投げられるように振るわれる左手。

「あぅっ」

その標的は、這いつくばっていた男だった。

顔に、五本の赤い線が走っていく。
それは額、鼻、顎を通って男の体を六つに分断していった。

( ^ω^)「あ……あ……」

喜びから失望に。
希望から絶望に。

強張らせていく表情を、蟲は嬉しそうに眺めていた。
ブーンに、右腕を突き出しながら。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:29:03.61 ID:SXLIlurf0
再び吐き出された球体が、二人の目前に近づいてくる。

ξ゚听)ξ「まずっ……!!」

肩越しに後ろを見る。
考える時間はなかった。

腰の日本刀に手を伸ばし、球体に向かって思い切り空を切った。

小さな炸裂音。
ブーンは思わず目をつぶる。
しかし、それは球体が爆発した音ではなく、文字通り消滅した音だった。

( ´_ゝ`)「!」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:36:04.50 ID:SXLIlurf0
( ´_ゝ`)「貴様、どこでソレを」

ξ゚听)ξ「……さぁ」

言いながら、女はブーンの足を挟む瓦礫を切断した。
乱暴に引っ張り出されて、喉の奥から息が漏れる。

( ^ω^)「お、お?」

ξ゚听)ξ「逃げるのよ」

(;^ω^)「や、やだお!!まだ集落にみんなが……!!」

ξ゚听)ξ「無理よ、諦めなさい。早く!!」

(;^ω^)「なっ……!!」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:38:14.56 ID:SXLIlurf0
(;^ω^)「何言ってんだお!!それこそ無理だお!!」

ξ;゚听)ξ「……」

言い争う二人を待たず、蟲は再び左手を振るう。

ξ;゚听)ξ(五本だから……五倍っ!?)

ξ゚听)ξ「くぁあ!!」

対する女も、思い切り日本刀を振り抜いた。

蟲と女の中間点。
お互いの放ったモノがぶつかり合い、空間が歪む。

( ´_ゝ`)「……チ」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/04(火) 23:43:04.86 ID:SXLIlurf0

ξ;゚听)ξ「……ッ」

(;^ω^)「?」

そして吐き出される衝撃波。
それは女も、ブーンも、蟲をも巻き込んで爆発を起こした。



つづく



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