( ^ω^)はネクロマンサーのようです
- 4: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:26:22.20 ID:sFXKmO+Y0
- 川 ゚ -゚)「それで、殺された者達の詳細は判明したのか?」
( ´_ゝ`)「いえ……。ですがどうやら殺された方もまともな者達では無かったようです。
持ち物に短剣や棍棒がありました。もしかしたら賊共による潰しあいかもしれません」
朝の広場。
鎧を着た三人が足早に歩いていく。
それを見た街の人間達の中には、挨拶をする者もいれば、路地裏にコソコソと隠れていく者もいた。
疚しい事がある者は、おのずと避けてしまうのだろう。何せ正義の象徴。絶対的な力の誇示。
しかしこの先頭を歩く女の覇気はすさまじい物であった。
川 ゚ -゚)「そうか。とりあえずその路地へ連れて行ってくれ。
ここは"綺麗な街"でないといけないのを、わかっていない輩がいるとはな」
( ´_ゝ`)「……わかりました」
- 5: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:28:02.97 ID:sFXKmO+Y0
- 強さの中に、また違う強さがあるといった感覚。
まだ若いその見た目に反し、奥底に得体の知れぬ何かを持っているような、三剣頭と呼ばれるだけにふさわしい人物。
名前はクー。
艶のある黒髪を伸ばした女剣士――。
その後ろを着いて行くのがアニジャ、オトジャ。
( ´_ゝ`)「それにしても今日は雲が分厚い……」
(´<_` )「またアニジャのいつもの癖か。天気など気にしていてはいい太刀筋は見いだせられんぞ、全く」
少しの事で口げんかをするこの二人。
喧嘩するほど仲が良いとはよく言うが、この二人に限ってそうであるかどうかはわからない。
ただ、二人が二人を宿敵として見て、己を磨きあっているという事は確かであった。
- 6: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:29:01.80 ID:sFXKmO+Y0
- (#´_ゝ`)「馬鹿め!肌で感知できる湿気、気温、その全てが私の剣筋を磨いているのだ!!」
(´<_`#)「また言っているな!アニジャはそれだから私の斧に負けてしまうのだ!!」
(#´_ゝ`)「なんだとゥ!?」
(´<_`#)「なんならここでもう一度けりをつけてもいいぞ!?」
川;゚ -゚)「おい何をしてるんだお前達は……」
――――
―――
――
- 7: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:31:40.92 ID:sFXKmO+Y0
- (;゚д゚ )「……死霊魔術…師……?」
( ^ω^)「そう、ネクロマンサーだお」
あの後、ブーン達三人は宿へと急いで戻った。
闇市が展開されている以上、もしすぐに"あの死体"がバレたとしても、自分達がやったという事にはすぐ繋がらない。
容疑者が多すぎるこの状況であるならば、身を隠すには十分な要素を含んでいた。
( ^ω^)「僕とドクオは、南の大陸から旅をしている魔術師。
ミルナ達とは関係の無い世界を歩いているんだお」
('A`)「まあ、その旅ってのも色々と目的があってな」
( ゚д゚ )「……」
ミルナは震えていた。
まあそれもしょうがない事だろう。ブーンが魔術師である事、ドクオが使い魔のゾンビである事。
色々と常人では理解できない事がある。
- 8: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:33:11.05 ID:sFXKmO+Y0
- ……あるのだが、ミルナは少しズレていた。
(;^ω^)「ど、どうしたお……?」
(;゚д゚ )「い、いや……。素晴らしすぎるよ、ブーン、ドクオ……!!!」
(;^ω^)(;'A`)「え゛」
( ゚д゚ )「僕は、僕はずっと本を読んできたんだ。それこそ、生まれてすぐ母親に与えられたあの"ミライキ"から、
学問に目覚めて読み漁った"ワクテカ"まで。それでも、僕には何か物足りなく感じていた……。
それがただの書に対する飽きなんかじゃなくて、僕の頭の中が空想では無く、現実が欲しかっただけなのかもしれない。
僕はこんな不思議が溢れている世界で、ありきたり、日常、この二つの言葉しか体感する事が出来無かったんだ。
一冊の本。一冊の本さ。ただの無名作家の冒険譚、魔術師が火を放ち、戦士が盾をかざす。そんな物語が大好きだった。
そんな陳腐で、空想の中での"ありきたり"に心をぐっと奪われていた。それだけは、他の書とは違って何回も、何回も、何回も何回も読んだ。
なぜかって?それは、この書には続きが無かったからさ。人気が無かったんだろうね。起承転結の転で終わっていたのさ。だから……いや。
だからこそ、続きが無かったから、僕は自分でその物語を作っていった。作られた世界。作られた人々の中に自分を投影する――。
僕は詩で人を癒し、その物語の中の登場人物の一人として世界を構築していった。それでも足りない。それでも足りなかった。
そうさ。端から見れば僕はただの白昼夢にとらわれている愚かな一人の男。放浪してその日暮らしをしているし、女性方にも目もつけてはもらえない。
つまらない日常。くだらない日常。それが僕を圧迫していく。もちろん僕は絶望したさ。この世の中に、そして空想の世界の中には入れない、という事にね。
そんな日常の中で見つけたのが"心を与える書"さ。僕は驚いた。なんたって、この書には魔力が篭っているというんだからね。
どうだい?自分が追い求めていたものが急にその目の前に現れたとしたら?僕はたまらなくなった。それまでの人生、空想なんて無意味だと感じてしまったんだ。
残念な事に。好奇心、探究心、全てが僕の体の穴という穴に入っていって、刺激してくる。毎晩毎晩、考えるのはその書の事だけ。まるで恋をした猫のようさ。
押さえつけられなかったんだ。その目の前にある書を読めば、僕はどうなるんだろう……って。
僕はどう変わってしまうんだろう、ってね。その書には少し憑き物があったんだ。託された人からその事にも聞いていた。だから逃げた。
そうしていたら、君達と出会った。最初は陽気な旅人かと思っていたよ。
君達とはいい友達になれるとも思っていた。蓋を開ければ君は魔術師。そして使い魔だ。これは運命か何かとしか思えない!
何かとしか思えないんだ!!わかるかい!?君達も僕と同じ気持ちを共有しているのかな!?していたら、それはもう何ものにも変えられない快感になるに違いないんだ。
肉欲や食欲に勝る悦になると思う。そしてその経験、体感した出来事は僕の頭、指に呼応して最高の文章をつむぎだせる、そう信じているんだ!!!
ブーン、ドクオ。君達はどう思う?こんな空想を抱いている僕は滑稽かい?それとも、夢を胸に抱くいたいけな青年に見えるかい!?僕を空想に連れて行ってくれないか!!!」
- 9: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:34:54.44 ID:sFXKmO+Y0
(;^ω^)「……」
(;'A`)「……」
- 10: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:37:08.76 ID:sFXKmO+Y0
- ( ゚д゚ )「……!! ああすまない、ちゃんと聞こえていなかったみたいだね
じゃあちゃんともう一回言うよ。君たちの答えを聞かせて欲しい。僕は……」
(;^ω^)「あああああ聞こえてたお!!!ちゃんと聞こえてたお!!!」
(;'A`)「み、ミルナったらお茶目なんだから!!!」
あわててミルナの口を塞ぐブーン。
長いこと難しい話を聞かされたせいか、ミルナとは対照的にブーンの口は開きっぱなしで涎が出ていた。
よほど攻撃力の高い文字のマシンガンだったのだろう。
(;^ω^)「と、とりあえずわかったのはミルナはその書を手に入れた事によって、狙われているって事だお?」
( ゚д゚ )「そう!!その通りさ!でも僕は後悔していないよ……、だって、今君達という人生の宝石n」
(;'A`)「おいブーンバカッ!!!ちゃんと口塞いどけ!!!」
(;゜ω゜)「ふ……ふおぉぉ!!」
( ゚д゚ )「ふぉふふぇき、そうふぁかすぷしいは」
- 11: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:40:00.40 ID:sFXKmO+Y0
――――
('A`)「でもよ、封鎖されちまったって事は遅くてもここにはプラス騎士団?の奴らの手が伸びるわけだ。
そこらへんはどうすんだ?何か考えてるのか?あんまり人殺しはしたくねえぞ……、さすがのゾンビでも」
ドクオがブラブラと狭い部屋の中を歩き回る。
あと3時間程で夜が明ける。まだ月は空にあった。
( ^ω^)「とりあえず見つからない事が一番、だお。今は完全封鎖だけど、それも限界があるお。
だから明日はここにこのまま隠れて……、それからまた先の事は考えるお」
そう、頼りなさげなブーンが、窓の外――。
大きな甲冑に身を包んだ兵士達が、闇市を撤去するように指示しているのを横目に見ながら言う。
- 14: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:42:16.83 ID:sFXKmO+Y0
- (;'A`)「アバウトすぎだろ……」
( ゚д゚ )「君達を巻き込んでしまったんだ……、ここはもう僕が出て行って事態の収束を図るしかない」
( ^ω^)「それは困るお」
( ゚д゚ )「……」
ブーンは、ミルナが座っている椅子。その隣テーブルに置いてある"心を与える書"を指差して言う。
ミルナがこの書に興味をひかれ、とあるトラブルに巻き込まれても手に入れようとしたその感覚は間違ってはいない。
( ^ω^)「心を与える書だけじゃ、不完全。そうだお?ミルナ」
( ゚д゚ )「え……、ああそうさ。僕はある人にこの書を託された。あの人はもう自分が殺されてしまうという事に気づいていたんだろうね。
その書を託された時に言われたよ『心と体は二つで一つ』ってね。だから僕は逃げがてらこの書の片割れである、
"体を与える書"を探していたんだ。まあ、こうやって捕まって殺されかけて……、君達に助けられたんだけどね」
パラパラと、ページをめくりながら軽く目を通す。
見た感じだと、ただの哲学書。それも誰にでも思いつきそうな心のあり方についてであった。
だが確かに感じられる魔力。
何かがあるのだろう。人をひきつけるには十分な魅力を持っていた。
- 15: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:44:08.95 ID:sFXKmO+Y0
- ( ^ω^)「そこが気になるんだお」
( ゚д゚ )「何がだい?」
( ^ω^)「ブーンがなぜミルナを助けたのか?ここに一番かかっている重要な部分がそこなんだお。
その書が二つ合わさる事によって何が起こるか?何が生まれるのか?その興味が大きいんだお。
書が合わさる条件にミルナが関わっていたら、もしくはミルナが身に着けている物に関わっていたら……。
という可能性が捨てられないんだお。だから今ミルナを死なせる訳にはいかないんだお」
('A`)「おい、ブーン」
( ゚д゚ )「……。はは、その言い方って、書の原因さえわかれば僕は死んでもよかったみたいな言い方じゃないか」
少し曇った表情になるミルナ。
確かに、ブーンの言い方はミルナの言っているように十分取れるものであった。
顰めた面をして書とにらめっこしているブーンに、何も悪気は無いのであるが、その口から出てくる考察の一言一言がミルナを刺激する。
- 18: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:46:00.79 ID:sFXKmO+Y0
- ( ^ω^)「……そう思わないかお?ミル――」
( д )「助けてくれた。僕は確信してたんだ!!!」
('A`)「……」
(;^ω^)「ど、どうしたんだお?」
( ゚д゚ )「僕の命を救ってくれてありがとう。僕の為に君の手を汚させてしまってごめん。
でも僕は……、君の事を友人だと思っていた、それは事実なんだ……」
先ほどのブーンの考察による独り言と同じように、一方的にミルナの主張が口から飛び出す。
ドクオは、またかと言わんばかりの呆れ顔。ブーンは水をぶっかけられたかのように驚いた顔をしていた。
- 19: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:46:31.75 ID:sFXKmO+Y0
- (;^ω^)「ミ、ミルナ……。何を怒って」
何も言わず、ミルナは書を持って出て行ってしまった。
物事の真意がわからず、キョトンとしてしまうブーンにドクオが物を言う。
('A`)「魔術師と人間が、一緒な訳無いだろバカ……」
( ^ω^)「……」
あきれた顔で、ドクオもまた棺桶へと戻っていく。
ブーンには悪気が無かった。無かったが、無かったなりのその真っ直ぐとした意見がミルナを傷つけた。
悶々とした気持ちの中、闇に消えていったミルナが心配になりながら、ブーンは瞼を閉じた。
今追いかけていっても何もいえないし、何もできない。それがブーンが精一杯人間らしく考えてみた答えだったから。
- 20: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:48:38.05 ID:sFXKmO+Y0
- ――――
日は昇り、物々しい雰囲気がプラス中を包み込み始める。
街の入り口、出口。あらゆる所に鎧を着た騎士が見張りをしていた。
( ゚д゚ )「……」
もらったローブをあの部屋に忘れてきてしまった。
自分の身形を見る。肩口で大きく破れてしまっている布のシャツ。傷口は包帯が巻かれ、血の赤が滲んでいる。
これでは直に、犯人とは思われなくとも、怪しい人物だと見られ捕らえられてしまうだろう。
思わずあの場所から離れた路地に逃げるように駆け込む。
カチャカチャと、金属が地面にかち合わさる音が耳に入るたび、背筋にゾクリとしたものが走った。
どこかボロ布でもいい。身にまとってこの傷口を隠さないと……。
- 22: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:51:22.59 ID:sFXKmO+Y0
- (;゚д゚ )「……っつう」
傷口が痛む。
それも当然だ。さされて間もない内に友人と決別して、その足で今逃げ隠れようとしているのだから。
少し後悔した。魔術師だと聞いて舞い上がっていた自分がそこにはいたのかもしれない。
普通の、自分たちのような人間ではないのだから、違う考え、物言いがあってもいいはずだった。
( ゚д゚ )「ブーン、ドクオ……」
そのまま下水路を辿るようにして街の南へ向かう。
胸には少しの後悔の念。そしてこの書を完成させる願望があった。
煉瓦に朝焼けがかかり、眩しく光って見える。
それも直に終わるだろう。今日は空気が湿っている、雨が降るはず。
- 23: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:52:46.66 ID:sFXKmO+Y0
- 緩い階段を下った先にあったのは、一軒の雑貨屋。
北側と南側で高低差がある街なので、そこにはあまり日の光が届いておらず、少し薄暗い場所だった。
( ゚д゚ )「ここで布を買って……そうすれば人ごみに紛れていてもわからないはず」
川 ゚ -゚)「なぜ、人ごみに紛れる必要があるのだ?」
バッと後ろを振り返る。
女が一人、そこにはいた。
腰に一つ剣を携え、黒い髪が風に靡いて、美しかった。
しかし尋常ではないその声の圧迫感。昨日の賊などとは桁が違う。
- 24: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:54:48.14 ID:sFXKmO+Y0
- (;゚д゚ )「え、ははは。ちょっと怪我をしちゃったんです」
川 ゚ -゚)「そうなのか。私は医術も少し勉強していてな。どれ、診てやろう」
一歩、また一歩こっちへと近寄ってくる。
わかる。わかるんだ。
"この人は、僕を殺しても構わないという態度でこちらへと迫ってきている"と――。
今僕が女へ向かって、突進でもしてみればどうなろうか。
即座にその腰の剣を抜き、僕の体に突き刺すだろう。どう考えても、どう足掻いても……。
この僕から出ている恐怖に気づいている。
気づいているんだ。
鋭い目。そこに埋め込まれた光り輝く宝石のような瞳。
それが僕を見ている。
- 25: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:56:35.55 ID:sFXKmO+Y0
- (;゚д゚ )「い、いえいえ!!そんな見ず知らずの方に診てもらうだなんて!!」
駄目だ。
逃げ切らないといけない。怖い。
路地の向こう側からグルリと回って神判堂の裏側へと行こう。
そしてブーン達のいる宿へ――。くそっ。なんであの時の僕はその事をわかっていなかった!!
全て、人間という範囲分けしか出来ていなかった自分のせいだ――。
ブーンの事、親友とまで言っておきながら、ブーンの事を考えていなかった。
川 ゚ -゚)「おいどこへ行く?君は今、この"雑貨屋"で布を買うんじゃなかったのか?」
(;゚д゚ )「――……」
また一歩。
こっちへと近づく音がした。
- 27: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 13:58:31.26 ID:sFXKmO+Y0
- こんな平和な街の路地裏という空間で、僕は処刑台に上らされているような感覚に陥っていた。
それも、自分から近づくんじゃなく、あのギロチンの鎌の方から、ゆっくり、でも確かに近づいてくる。
川 ゚ -゚)「よく見ればその肩、何か刃物で突き刺されたような後もある。血も出ている」
(;゚д゚ )「大した事は……」
その鎌が……。
川 ゚ -゚)「三人も殺しておいて、大した事無い、は無いだろう」
こっちへ――。
(;゚д゚ )「……っくぅ!!!」
たまらずその場から走り出した。
歪むように変わっていく煉瓦模様、気色。
- 32: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:03:18.11 ID:sFXKmO+Y0
- 川 ゚ -゚)「……ふむ。どう思う二人とも」
腕の痛みなど頭の隅っこにおいやり、今はただ、自分の足を兎の物と思い込んで走った。
向こうは薄手だとしても鎧を着ている。足は遅くは無い。
逃げ切って……。
( ´_ゝ`)「早々に当たりですか……ね」
逃げ切って。
(´<_` )「さすが隊長。見る目も違います」
川 ゚ -゚)「……褒められたくて言ったのでは無い。よし、このまま泳がせる。
恐怖心だけ植えられればそれでいい。行け」
( ´_ゝ`)「はっ」(´<_` )
逃げ切って、どうすればいい――?
- 33: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:05:49.47 ID:sFXKmO+Y0
- (;゚д゚ )「はあっ!!はあっ!!!」
恥も外聞も捨てて……、もう一度、仲直りを乞えばいいのだろうか。
僕はそれでもいい。でも、ブーン達はどうおもうだろう?
勝手に怒って、勝手に出て行って、かと思えば兵士に見つかって帰って来た。あげくの果てには助けてくれ。
こんな事、誰がされても怒る決まっている。
たとえ魔術師であっても、そうだろう。
身勝手すぎる自分に、吐き気がした。
――身勝手で、人の事を考えられない者に、どんな言葉が紡げようか!!
- 34: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:06:13.84 ID:sFXKmO+Y0
- 口から出せるなら、喉から出せるなら、肺から出せるなら……。
言葉のそれはどれだけいいものか。
音のそれはどれだけ素晴らしいものか。
それさえも曇り、見えない。
( ゚д゚ )「……くそっ!!」
揺り動かせる程の力を持つ言葉なんてそこには、無い――。
- 35: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:07:00.70 ID:sFXKmO+Y0
- ――――
ブーンは一人。
宿の窓から外を見つめていた。
噴水の周りには兵士がゾロゾロといて、各々、この街から出られない人への対応や、殺人犯を追う作業で手が一杯のようであった。
ブーンは考える。何がそこまで彼を怒らせたのか。
自分ではわかりきれなかった。
人間というのは、魔術師と外見も、何もかもが似ている。
それなのに、何の差支えの無い言葉を口にしただけで憤慨し、さっきのように出て行ってしまった。
( ^ω^)「……。ブーンは魔術師しか今まで話した事が無かったんだお。
ミルナが初めての……、初めての、人間のトモダチ……。友達」
口から、緩い煙が出るように、モクモクと言葉が羅列され出て行く。
ドクオが言っていたあの一言にも意味があるのだろう。
- 38: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:08:11.05 ID:sFXKmO+Y0
- ('A`)『魔術師と人間が、一緒なわけ無いだろバカ……』
一緒じゃないのは、ブーンもわかっていた。
だから故に、ミルナが怒るその理由もわからない。ドクオにも教えてもらおうとは思わない。
自分で、ミルナにその理由を聞けばいいと思っていた。
偶然ではあった出会い。
だが、ブーンが魔力を含む書に興味を示し、ミルナを助けようとした時点で何かは始まっていたのだ。
なだらかではあるが、加速度的に胸を占有していく。
( ^ω^)「友達なんだお……。友達なら、友達ならやり直しが出来るんだお。
ごめんなさい。ごめんなさいから始めればいいんだお!!!!」
それが、ブーンの答えだった。
優しく、荒削りながらわかりやすい。
そして非常に、人間臭い考え。
- 40: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:09:45.20 ID:sFXKmO+Y0
- ( ^ω^)「嫌われる事なんて慣れてたお……。
でも、ここはもうあそこじゃないんだお」
黒のローブを脱ぎ捨てる。
そして身体に羽織る、白い布で出来た薄地の上着。
一瞬だけ見えたブーンの地肌には、夥しいほどの呪言が刻まれていた。
皮のホルスターに魔術書を入れ、バチッと止める。
ブーツの紐をグッと締め、二、三回地面を蹴る。
ブーンには見えていた。
己が今いる場所が。
その真紅の目から見える、少し赤みがかった世界も。
( ^ω^)「我輩絶……じゃないお」
ブーンは外へ出る。
すると、見え無かった突破口が、少し見えたのだ。
- 41: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:12:08.40 ID:sFXKmO+Y0
- そして照らす日。
太陽はまだ上ったばかり。
闇夜の力に頼らずに、男は救いに急ぐ。
――――
川 ゚ -゚)「戻ってくるとは、どういう考えだ?」
( ゚д゚ )「逃げて、逃げてどうこうなるものじゃないから……。
逃げて、何が見つかるっていうんだって、そういう事さ」
( ´_ゝ`)「隊長。とりあえず見せしめとして、ここで痛めつけておきましょう」
(;゚д゚ )「……ッ」
似た騎士の内の一人が、右手でその剣を背中からずい、と抜き、言った。
鈍く、重い色をしたその切っ先がミルナの方向を向く。
書を持つミルナの手が、音をたてそうなほど大きく震えだした。
- 50: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:18:47.97 ID:sFXKmO+Y0
- ここは審判都市プラス。
人通りの無い北側の路地裏。
煉瓦が周りを形成し、水の流れる音。人の話し声が少し聞こえる。日は差し込まない。
人が二人隣り合って歩けるほどの幅。
そこで、無力な男は、プラス最強"三剣頭"と対峙しているのだ。
手加減一つ知らなさそうな、その三人と。
(;^ω^)「……はぁ、はぁ。ち、ちょいと、ちょいと待つお!!!」
二度目の手助け。
魔術師との接触。
- 51: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:19:33.85 ID:sFXKmO+Y0
- 川 ゚ -゚)「なんだ、お前は」
( ゚д゚ )「……ブーン!!!」
クー達をミルナとブーンで挟むような形になったが、形勢は絶対的な物で変わろうとはしない。
オトジャは何も物言わず、その戦斧を片手で一振りする。
兄弟、背中合わせになり、ミルナとブーンを迎え撃つ体勢をとった。
- 44: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:15:21.53 ID:sFXKmO+Y0
- ( ´_ゝ`)「隊長」
(´<_` )「指示を」
川 ゚ -゚)「まあ、少し待て。貴様ら二人が、昨晩の事件を巻き起こしたのか、答えは聞いてない。
これから私達に、生か死か、わからぬようになるまで正義を振りかざされる覚悟はあるか。
それを、今から、それだけをお前達に、今から問おう。答えは、どっちだ」
(;゚д゚ )「……はぁ、はぁ」
ミルナは、その圧迫感に長い間うたれていたせいか、胸の鼓動が異常に早くなっていた。
胸を押さえ、目がうつろになりながらも、その先にいるブーンを見る。
口から答えは――出そうにない。
だが、ブーンは違う。
- 52: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:21:45.72 ID:sFXKmO+Y0
- (;^ω^)「……ふぅ。ようやく息が戻ってきたお。
僕みたいな人間に、路地裏をドタドタと走らせないでくれお」
すると、ホルスターの側面についた、中に液体が入った小さな入れ物を取り出す。
その容器には、先端に針のようなものがついていた。
それを、腕に思い切り突き刺す。
( ^ω^)「……っく。コレが無いと、コレが無いと乗ってこないお。やっぱり。
ドクオは止めるけど、やっぱり日がある内はコレが無いと……駄目だお」
ブルブルと、身体を震わせる。目がうつろになる。
そしてホルスターから魔術書を取り出し、右手で持ち"三剣頭"に向けて指をさす。
- 53: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:24:54.35 ID:sFXKmO+Y0
- ( ω )「聞け……。我輩、南からやってきた死霊魔術師。
死を生とし扱い、生と死の境を曖昧にする者。意味がわかるか。凡人にはわかるまい。
だから聞け。我輩の死の音色。ここプラスに響かせてやろう。夜な夜な泣き喚くがいい――!!!」
(;´_ゝ`)「隊長。今こいつ、魔術師と……」
剣をグッと握りながら、アニジャは言う。
一気に、今までの空気が変わった。それは誰もが感知する。
この狭い空間だけでは無い。
プラス全体が感じ取っていた。
(´<_` )「落ち着けアニジャ。魔術師と戦った事など無くとも、通ずる物はあろう」
川 ゚ -゚)「そうだ。オトジャ、お前の言うとおりだ。
自分を崩すな。相手を崩せ。己の腕のそれを止めるな。
そしてそこのお前。まだ、答えは聞いていない――!!!」
- 54: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:26:25.08 ID:sFXKmO+Y0
- クーが、細身の剣を腰から引き抜く。
いい金属を使っているのは、その見た目でわかった。
全く、輝きが違うのだ。長さは人の腕一本程。薄く、しかし堅剛な印象を、ブーンとミルナは受けた。
(;゚д゚ )「ぶ、ブーン!!君はなんで、なんでここにきたんだ!」
( ^ω^)「なんでって……、僕はミルナの友達、そうじゃなかったかお?」
( ゚д゚ )「そんな……。僕が一方的に、君の事を知らずに……、なのに、なんで……」
( ^ω^)「僕には、ミルナ。君は最初にできた、人間の友達なんだお……。
多分それは、とても大切で、きっかけや時間がどうであれ、無くしたくないものなんだお」
大粒の涙が、ミルナの頬を流れた。
堅い石床に水滴は吸い込まれる。
( ;д; )「ごめん……。ごめんよ、ブーン……。ありがとう」
- 55: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:27:29.64 ID:sFXKmO+Y0
- ゴシゴシと、ミルナがその涙を掬っている内に、戦いは始まった。
クーの初撃がブーンの首筋を狙う。
(;゚д゚ )「っく、ブーン!!!!」
川 ゚ -゚)「ほう、受け止めるか。魔術というのは好かん」
( ^ω^)「剣なんて……!!」
クーの剣撃を受け止めたのは、ブーンの左腕であった。
何か、膜のような薄く、そして少し紫色を帯びた物が、上から振り下ろされたクーの刃をくわえていたのだ。
川 ゚ -゚)「アニジャ!!オトジャ!!
お前達はそっちを殺せ!!生かしておけなどと…」
剣を引き抜こうとするも、うんともすんとも言わない。
川 ゚ -゚)「……!?」
魔術師は、その光景を見て笑う。
肩をひくつかせ、下品に笑う。
- 57: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:30:59.76 ID:sFXKmO+Y0
(´<_`;)「……隊長!!」
( ^ω^)「その剣を構成している金属は、非常に純度が高いお。
作るのに、莫大な時間がかかり、作り手にも大きく負担がかかるお。
それは人にとって、業と呼ばれる。わかるかお?」
川 ゚ -゚)「……何が言いたい」
( ^ω^)「そんな物、糞喰らえと言いたい」
覆いかぶさるように、その薄い膜はクーの持つ剣を飲み込み始める。
クーの顔が青ざめる。まるで汚いものでも見ているかのように。
だがブーンはその場から動いてもいないし、ただ左手を剣撃にあわせただけなのだ。
静と動の攻撃が、今取っ組み合いを始めた。
肩の力を思い切り使い、飲み込まれそうな剣を引き抜く。
ドロリと音を立てて、その膜は地面にだらしなく垂れ下がった。だがそこで異変に気づく。
輝かんばかりのこの剣が、その一切を失っていたのだ。
- 58: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:33:41.95 ID:sFXKmO+Y0
- 言い換えれば、膜の付着した部分が"錆びて"いた。
錆びさせたような感覚では無い。物には必ずある、年月の経過による劣化のようなもの。
川 ゚ -゚)「小細工ばかり――!!!」
( ´_ゝ`)「隊長……」
川 ゚ -゚)「構わん。そっちはそっちでやれ」
アニジャ、オトジャ共にミルナを一歩、また一歩と追い詰める。
狭い路地。あの鎧は二人いっぺんに来れない事だけはわかっていた。
(;゚д゚ )「……く」
だが、ミルナに力は無い。
ただ声を詩にし、人に伝える事しかできないのだ。
それはこうやって、力と対峙したときに明らかにされる。己の無力を痛感させられる。
ミルナはここにきてため息をついた。
最近になって、このような事が多すぎるのだ。
それもこれも書のせいであるのには間違いは無い。
- 60: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:35:30.74 ID:sFXKmO+Y0
- 結果がわかっていない、可能性にかけたミルナに起こった結果であるのにも間違いは無い。
川 ゚ -゚)「さあ、こっちも再開しようか」
( ^ω^)「……望むところだお。でも、僕がここにいるのは、
人間の騎士と戦う為に来たわけじゃあないんだお」
川 ゚ -゚)「助けるのだろう?あの男を。
それを阻止し、お前達に制裁を加えるために私はここにいる」
手に持った書をホルスターに、またしまい、代わりにコインを一枚取り出す。
そしてそれをクーに見せ、拳を作った親指の上に乗せる――。
何か不穏な空気を感じ取ったクーは、アニジャに声を荒げて命令する。
川 ゚ -゚)「アニジャ!!早くやれ!!!」
( ´_ゝ`)「……という事だ。そこの男、また"次の世界"で会おう!!!」
逃げられぬよう、しゃべる事のできぬよう。
アニジャのプレッシャーがぐっとかかり、ミルナの身体からは脂汗が噴出す。
もう逃げられない。
もう逃がさない。
双方にそれ以上の感覚が伝わり始めた。
- 63: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:39:55.11 ID:sFXKmO+Y0
- (;゚д゚ )「……く、あ……、ブーン!!!!」
大剣を大きく振りかぶり、ちょうど迷いが無く直線的な動きで、
ひるんで動けないミルナの首筋にまで振り下ろそうとしたその時。
コインが地面に落ち、音が鳴る――。
川 ゚ -゚)「……?」
そしてその音とほぼ同時に起きる大きな音、衝撃。爆煙。
(;´_ゝ`)「なっ!!?」(´<_`;)
いや、爆発した訳では無かった。
壁を粉砕しながら雷が通り過ぎた。
強烈な破裂音と、瓦礫が崩れ落ちる音が合わさり、思わずミルナは耳を塞いでしまう。
そして間もなく、強烈な粉煙と、ミルナの悲鳴が聞こえた。
アニジャがその煙を一閃で吹き飛ばす。
だが、もうそこにはミルナの姿は無く、
煉瓦壁の中に作られた水路への入り口が、ぽっかりと大きな口を開けていた。
- 64: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:41:08.71 ID:sFXKmO+Y0
- 川 ゚ -゚)「アニジャ!!オトジャ!!」
(;´_ゝ`)「り、了解した!!!」(´<_`;)
何を言われるまでも無く、そのまま水路の中へと駆けていく二人をクーは横目で見る。
そして眼をそのまま前に戻し、してやったりという顔の魔術師を睨む。
周りからは、何が起きたかわからない者達のざわめきが聞こえてくる。だが、クーはそのような事は関係無くなって来ていた。
ここまで強固なる、揺らぐ事のない自信を、まるで子供が積み木を崩すかのように簡単に、
そして当たり前のように崩されてしまったと感じていたのだ。
剣の柄を握るその力も強まる。
川 ゚ -゚)「甘く、甘く見ていた。お前達のような魔術師を、甘く見ていた……」
風を撫でるように、ヒュッと一振り。
錆付いてしまった愛剣を確かめるように。
川 ゚ -゚)「やはり"アイツ"のようなクズばかりか……。
丁度いい。このプラスの治安を崩した罰だ」
- 65: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:42:12.71 ID:sFXKmO+Y0
- ( ^ω^)「アイツ……?」
ズイ、と一歩深く踏み込む。
それをブーンが気づくまでに、もう二、三歩クーが踏み込んだ。
意味はわかる。
それがブーンの反応できるギリギリの速度であったから。
とっさに剣筋を見て腕を十字させる。そのまま受け止めた剣の衝撃によって、ブーンは大きくのけぞった。
魔術で受け止め、吸収しようと思ったが、それすらも許さないスピード。
斬りつけたその力を利用して、素早く剣を下げていた。
(;^ω^)「――!!!」
川 ゚ -゚)「そうだ。そのまま斬り込む」
刃が翻り、そのままもう一歩。
そしてもう一撃。
ブーンのローブは裂け、石床に鮮血が散った。
- 67: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:44:57.54 ID:sFXKmO+Y0
- (;^ω^)「ぐぅ……!!!」
川 ゚ -゚)「錆びていなければ……」
ドサリ、音を立ててブーンが尻餅をつく。
浅く斬りつけられた腹部から、勢いよく血が流れ落ちていた。
川 ゚ -゚)「魔術師の血は、人間と同じか。いい事を知った」
(;^ω^)「赤いに……、赤いに決まってるお!!!」
後転し、すぐに体性を立て直す。距離を開け、魔術書を取り出そうとした。
だがそれすらさせない。クーは距離を問答無用で詰めてくるのだ。
川 ゚ -゚)「錆びていなければといった……がッ!!」
ブーンの首すぐ前を刃が通過する。
皮膚を離れた汗の玉雫が真っ二つに斬られるのを、ブーンは見た。
川 ゚ -゚)「首くらい……跳ねられるだろうッ!!!」
- 68: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:46:22.06 ID:sFXKmO+Y0
- (#^ω^)「甘く見るなおお!!」
地面に手をつき、何か小さく呟くと、その場から青い色をしたトゲを持った蔓が一斉に飛び出した。
驚きつつも、クーは飛び出す一本一本を素早い剣捌きでぶちきっていく。
反射神経も並大抵のものでは無い。
川 ゚ -゚)「小細工は得意と言った所か!?」
だが、それはブーンのフェイク。
ただ距離さえとることが出来ればそれでよかったのだから。
( ^ω^)「今日はわざわざアレを使ったんだお。身体がその気になってきた今からが……。
今からが、丁度本勝負。お腹がすごく痛いお。でもそれは気にしない」
- 71: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:46:59.68 ID:sFXKmO+Y0
- 石床はひび割れ、吹き飛び、どこから現れたのか定かでは無い蔓が消えた後にそれは残る。
魔術書を構え、何かブツブツと呟いているブーンは、異常者のような雰囲気が漂っていた。
尋常では無い精神状態であるのは誰もが見てもわかる。
川 ゚ -゚)「……気でも狂ったか。だが楽しいぞ。
よくもそう、寸前でかわしてくれる。それが偶然なのか、意図してしているのはわからないが、
お前の人生そのものを語っているのだろう?死にたくても死ねない、死ねても苦しみ悶え……」
改めて剣を構える。
ついた血を振り落とし、真っ直ぐ突くように。
川 ゚ -゚)「血が好きそうだ」
――――
―――
――
- 73: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:49:07.01 ID:sFXKmO+Y0
- アニジャ、オトジャ共に水路を北に進んでいた。
なぜか街の外に逃げたとは、不思議と二人とも思えず、その大きな武器を構えたまま。
水路は、言葉にしてそのままの真っ暗。
だがこのまま先に進めば大きな貯水場があり、その先から淡いランプの光があった。
地下を行こうと思えば、そのまま貯水場から街全体に逃げ足を与える事になるため、より早く補足しなくてはいけなかった。
( ´_ゝ`)「……オトジャ、どう思う?」
(´<_` )「どうって、何がだ?アニジャ」
水の音。足元よりすこし高い量で流れている。
( ´_ゝ`)「あいつらの事だ。これだけ引っ掻き回しておきながら、我々には実害一つ無いのだ。
目的があって、奴等をやった。あの死体を見ただろう?少なくとも、まともな"出"では無い」
(´<_` )「待て……、あいつらを庇うのか?」
( ´_ゝ`)「そういう訳じゃない。ただ……」
- 75: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:50:47.62 ID:sFXKmO+Y0
- アニジャの身体を、オトジャがすっと手で止める。
何事かと思ったが、アニジャもすぐに気づく。
足元を見れば、まだ新しい、水のついた足跡がいくつか。そしてこっちを睨むかのような感覚。
『ごくろーさん。そのまま貯水場へ行って、街に出てくれ。
それからはミルナについていけばいい。隠れる場所はある』
少し遠めで聞こえた。
響きのある声。
( ´_ゝ`)「……」
複数人……?
声はさっきの男とは違う。二人……。
いや、ついていけばいい。三人か。
(´<_` )「おい、顔を見せたらどうだ」
『……』
( ´_ゝ`)「どうやら待ってくれているようだ。貯水場へ行くぞ。このまま進む」
- 76: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:52:24.11 ID:sFXKmO+Y0
- 少し狭くなったその空間から解放される。
すると、ランプの輝きで淡く色をつけ、水路が交差しあっている空間に出た。
貯水場。プラス全域に水を供給する重要な箇所である。丁度この上に、中央の噴水がある。
そして、その噴水へ水を送り出している井戸のような建造物に背中でもたれかかっている男が一人。
手には生えたかのように鋭利な刃物が二本。
(´<_` )「アニジャ」
( ´_ゝ`)「わかっている。あいつ達をやったのは、間違いなくこいつだ」
フラフラとしたその身体。
時たまかち合う両腕の刃物の音が特徴的だった。
そして、あの腐ったような眼。
一目瞭然。
- 77: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:54:15.06 ID:sFXKmO+Y0
- ('A`)「……フン」
( ´_ゝ`)「斜に構えるのはいいが、今のこの状況をちゃんと確認したほうがいいんじゃないのか?」
日が届かず、ランプの光が制し、水の音しか聞こえないこの地下空間。
オトジャとアニジャは左右に広がる。
(´<_` )「二対一で勝てる算段でもあるのか?
我々をなめているとしか思えんな」
('A`)「俺達は」
(´<_` )「……行くぞ!!!」
勢いよくオトジャが駆け出し、斧を両手で振りかぶり構える。
重い鎧の足音が響き渡る。
- 80: ◆Cy/9gwA.RE :2008/04/13(日) 14:55:44.28 ID:sFXKmO+Y0
- ('A`)「お前達が思っているよりずっと」
( ´_ゝ`)「……!!? 待て、待てオトジャ!!!!」
ドクオが、今まで背中で扱っていた石で出来た噴水への供給パイプへ、スラリと刃を入れた。
丁度、オトジャがいるその方向に裂かれた割れ目。
(´<_`;)「……?」
そこから水が噴出し、大きくオトジャの身体が左方向に吹き飛ぶ。
何が起こったか判断できないほど、唐突に、そして強烈に。
( <_ ;)「なあっ……!!!?」
(;´_ゝ`)「汚い真似をしてくれる!!!」
('A`)「ずっと、外道、そして悪者だ」
( ^ω^)はネクロマンサーのようです 第7話「剣術外道雷鳴空洞教室」 完
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