( ^ω^)はネクロマンサーのようです

5: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 21:54:42.71 ID:I9wZZQiB0
喉元を掴んだあの時、確かだがペニサスは違和感を感じていた。
実体はあった。体温もあった。

呼吸をする、喉仏の動きもあった。

だが、存在が無いような気がしたのだ。
しかし目の前でぶっ倒れているヒッキーの下半身。

焼けて鼻をつくような、賎しい肉の臭い。

('、`*川 「分身……。いえ、違うわ」
(-_-)「ふっ。ふふっ。二人目の僕だよ……ふふ」


('、`*川 「――気色の悪い声。あなたの全て、癇に障る……わッ!!!」

右腕を天井にかざし、魔力を放つ。
するとヒッキーの頭上から大きく、太い氷柱が勢いをつけて落ちてきたのだ。

ヒッキーはそれを鼻で笑うかのようにひょいと右側に避ける。
先ほどまで暑かった部屋が、一気に肌寒くなったのを、ミルナはよく覚えていた。



6: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 21:57:45.34 ID:I9wZZQiB0
(;゚д゚ )「……ペニサスさん!!大丈夫なんですか!?」
('、`*;川 「た、多分……。とにかく、今はブーンをここから引っ張り出して!!」

(-_-)「おっと、そうはいかないよ……。ママに見せたいのは……、
    その男……なんていったっけ?そう、ブーンだ……ブーンを殺すところなんだから」

また指を鳴らす。
この男、何をしているのか掴ませない。

魔術の反応さえも、魔術書も大して見えない、使わないのだから。


(;^ω^)「おっ……はぁ、はぁ…っぐぅ!!!!」
( ゚д゚ )「……なんだ、この黒いの……?」

ブーンの体を見た、ミルナは戸惑う。
その場で倒れているブーンの体を、黒い何か、床から生えている黒い何かが抱きしめるようにしているからだ。
それも力は強く、ギリギリと音を鳴らしながら未だに締め付けている。



8: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:01:30.21 ID:I9wZZQiB0
すぐにその黒い何かを掴み、振りほどこうとするが、強烈な力が働いていてはずす事が出来ない。
ブーンも何かを伝えようと口をパクパクしているが、締め付けられているその力でろくに喋れもしていなかった。

(;゚д゚ )「だ、駄目だ。少しだけ、少しだけなら動く。
     でもこんなの人間の腕力じゃあ外しきれないよ……!!」

('、`*川 「……時間はそう、無いみたいね」
(-_-)「さあ、おいでよ……。君……、そんなに魔術を使いこなせて…無いみたいだね」

腕輪を見て、ヒッキーは言う。

('、`*川 「うるさいわよ」
(-_-)「才能が……魔術師の全てだって事、教えてあげるよ……!!」

初めて、ヒッキーがホルスターの魔術書を取り出し、構える。
何が出てくるのか、全ての可能性が広すぎて、ペニサスは防御策も取れない。



9: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:03:27.48 ID:I9wZZQiB0
魔術師同士の戦闘の場合、やはり初撃が重要となる。
何をしてくるのかわからないのであるから、何を出しても大体当てることが出来る、そういう答えに繋がるのだ。

しかしペニサスは外してしまった。
自分が"赤"である事をばらしてしまった。

自分が魔術師見習いである事を、腕輪によってばらしてしまった。

('、`*;川 「……くる!?」
(-_-)「ブーンの前に……まずは君からだ!!!」

魔術書が怪しく光り、紫色をした波動がヒッキーを包みだしたのだ。
その波動は徐々に手に集まり、指に集まり……。

指先五本、全てに波動が凝縮されていく。



12: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:05:36.89 ID:I9wZZQiB0
(-_-)「ママ!!!見ていて!!!」

手をとんがらせ、一気に押し出す。
すると光線のように波動が飛び出し、ペニサスを襲った。

('、`*;川 「……一々ママママうるさいいの!!!!よぉ!!!!!!」

波動を迎え撃つかのように雷鳴を放つ。
腕輪は激しく光り、ペニサスもその勢いの反動で後ろへ大きく吹き飛んだ。

雷鳴は波動を裂き、二股に分かれたまま部屋の壁へと激突する。
そしてそのままヒッキーに直撃したのだ。



13: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:06:48.83 ID:I9wZZQiB0
(;-_-)「あ……が、ふ……。な、なんで……?」


尻餅をついたペニサスを見ながら、全身焼けてしまったヒッキーは言った。
肌と衣服がベッタリ焼け付き、痛みで涙を流しながら倒れる。


そして息絶えたが、その死骸に皹が入り、魔法陣が現れた。


('、`*川 「……だんだん、わかってきた。あなたの魔術」

そう、後ろを少しだけ振り返り、ペニサスは言う。

すると魔法陣からずるずると、ヒッキーが産声をあげずに誕生する。
先程とは違い、羽化をするかのようにだ。



14: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:07:32.01 ID:I9wZZQiB0







全裸で。






15: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:08:39.35 ID:I9wZZQiB0
(-_-)「三人目、ハッピーバースディ……僕」



(;゚д゚ )「……なんなんですか、アレは」

そう、ヒッキーは全裸だった。
てらてらと体は光っているが、貧相で、何もかも貧相で見てはいられなかった。

('、`*;川 「ってやっぱり勘弁して!!!」
(;゚д゚ )「へ、変態だ……!!!変態だぁぁ!!!」

目を手で隠し、頬を赤らめるペニサス。
ミルナはなぜかそれを変態だ、と言いながらもマジマジと見ていた。興味でもあったのだろうか。

(;-_-)「ちょ、ちょっと待ってよ!!君が……君が急に雷を撃つからこうなったんじゃないか!!」
('、`*;川「早く服を着てよ!!変態!!」

( ゚д゚ )「そ、そうだそうだ……!!」



(*゚д゚ )「……そうだそうだ!!」



16: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:10:59.64 ID:I9wZZQiB0
やっぱりマジマジと見るミルナ。
ヒッキーは視線を感じていたが、忘れようと必死になっていた。


(;-_-)「じ、じゃあ服を着るから少し待っていなよ!!
     全く……ママ。他の奴らは皆自分勝手だ!!」


ぼやきながらベッドの隣にあるクローゼットを開き、
マントの代わりの茶色い色をしたローブを着、足にホルスターを取り付け、魔術書を入れる。

そしてフードを被り、またぼやきながらペニサス達の前へとやってきた。

('、`*;川 「変態は一味違うのね」
(;-_-)「……。もう……変態扱いなんてさせないよ……」



18: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:13:58.88 ID:I9wZZQiB0
('、`*川 「……次はこっちから!!」

高速の雷の矢が、不規則軌道で数本射出される。
矢はヒッキーの周囲をカクカクと曲がりながら飛び回り、いつ襲い掛かるか、それを探るように飛び交っていた。
ヒッキーはその場で様子を伺う。

(-_-)「1,2……、5……7。7本も同時に矢を出して……操っている?
    さっきからの……魔術と比べて高等……、でも、大したこと無いね!!」

手を広げ、魔力を集中させる。

今もヒッキーの頭上、背後、側面を飛び交う矢を捕らえるように手をゆっくりと動かし……、補足を完了させる。
ペニサスの頭の中に描かれた不規則軌道を捉える。決して逃がさぬよう、捕らえ漏らさぬよう。

('、`*;川 「いっけえぇぇ!!!!」
(-_-)「……予想通り、予想通り、予想通り、誤差範囲、誤差範囲、予想通り!!!」

全てを先程の波動で打ち消していく。
一言、一言がその通りといわんばかり。ヒッキーは天才なのだから。



19: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:17:14.56 ID:I9wZZQiB0
(-_-)「少し、少しずつ楽しくなってきたよ!!
     ママ……こいつは、こいつはここに倒れているブーンとやらより……、
     ブーンとやらより、ずっと強いのかもしれない!!強いのかも……いや、強い!!
間違いないよ!!!でも駄目。もう、次で決着はつくんだからね!!」

ペニサスは異変に少し遅れて気づく。
影が、自分の体を伝ってきているのだ。気づいたころにはもう足は動かず、先程と同じような状況になっていた。

(-_-)「もう一度、僕の……僕の攻撃を受けてみて!!!」
('、`*川 「……」

しかし落ち着いている、ペニサス。
ヒッキーは、その表情をペニサスの苦し紛れの虚勢だと判断した。今この状況、一発入れられれば勝ちなのだから。



22: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:20:54.20 ID:I9wZZQiB0
そういう状況なのだ。
妥協はしない。
手は抜かない。
同情などしない。
優しさなどいらない。

乗っている。
今乗っているこの状況を逃す事はヒッキーには出来なかった。

(-_-)「体……顔!!綺麗なままじゃ済まないよ!!覚悟して!!!」

思い切り両手を後ろにし、魔力を溜める。
ヒッキーの才能全てがつめられた、懇親の一撃。

それが今、放たれた。

三日月のような形を描き、一直線に動けないペニサスへと飛んでいく。
ミルナもその光景を見ていた。

だが、自分にはどうしようもない。
ただ、目の前で苦しんでいるブーンのこの呪縛をなんとかして解かなければいけない。

(;゚д゚ )「……ペニサスさん!!!!お願い、避けて下さい!!!!」

祈るだけ。願うだけ。



23: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:22:40.82 ID:I9wZZQiB0
瘴気が部屋を包み込む。

当たれば、即死だろう。

だが、ペニサスは笑っていた。
それも、クスクスと……。

('、`*川 「……駄目、我慢してたけど……ふふっ。ごめんなさいね」
(;-_-)「……っ!!」

波動が飛んできているというのに、余裕綽々といったところであろうか。
ペニサスはヒッキーの頭上を指差す。

('、`*川 「あなた……、根から卑屈なんでしょうね」
(;-_-)「……死ぬからって、そんな強が……!?」



26: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:27:57.29 ID:I9wZZQiB0


('、`*川 「たまには、上を向いて生きなさいよ」



ペニサスは、罠を仕掛けていた。
一気に焦りが、ヒッキーに生まれていた。
何がそこまで焦らせるのか、上を向いたヒッキーの頭上には魔法陣が矢の軌道で描かれていたからである。

魔術を学んだ者なら一度でも見た事があるだろう"雷鳴"の魔法陣。

(;-_-)「ち、ちょっと待ってよ……。そんなの……!!そんなの、気づかなかったぞ!!!!
     上に……。上にそんなのがあるなんて気づかなかった!!いや……無かった!!」

( ゚д゚ )「……すごい」

('、`*川 「三人目、短い生涯だったわね……」
(;-_-)「……まだ、まだ最後のh」

手を振り下ろした瞬間。
雷鳴が、天井から降り注いだ。

細かい雷が、まるで雨のようにヒッキーへと突き刺さっていく。
轟音、閃光。ミルナにはこの光景が、世界の始まりのように見えた。

先程の爆発で起こした穴よりも、はるかに大きく、焼け跡が周囲にまで飛び散っている。
波動は消え、ペニサスの瞳は輝く。



28: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:32:01.84 ID:I9wZZQiB0
雲消霧散。
無影無踪。

二つの穴だけを残し、しかし残骸は残さない。

( ゚д゚ )「……や、やったんですか?」
('、`*川 「まだ……みたい。ほら、ミルナ君。ブーンの体を締め付けてるそれ」

ブーンはもう、気を失っていた。
しかしどうにもする事が出来ない。早くヒッキーを倒し、これを解かなければ本当にブーンは息絶えてしまうやもしれない。

(;゚д゚ )「じゃあまだどこかに……?」
('、`*川 「……どうかしら」



29: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:35:50.88 ID:I9wZZQiB0
――――

駄目だよ、ママ。
僕……、あれだけ倒す機会があったのに、倒せなかった。
弱音なんて吐きたくないけど、負けたくないけど、さっき言われたんだ……。

さっき言われたんだ、上を向いて生きろって……。

それが、僕の胸を突き刺すんだ……何度も、何度も何度も。
どうすればいいの?

ママ……。 

……?
ママ?


あ、あれ……。
ママがいない!?

ママ!!!

ま……。

(;-_-)『……なんだよ、これ。何なんだ……これ』



30: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:37:30.75 ID:I9wZZQiB0
――――
―――
――

『君はぁ、名前。なんて言うんだい?』

『……僕ですか?なんで……、なんで僕の名前なんか』

『いやぁ、君。いい魔力がある。実にいい魔力だ。それにお兄さんは、惹かれちゃってねぇ』

『……。僕、僕の名前はヒッキーです』

『ヒッキー、いい名前だ。魔術師らしい……、屈託の無い、いい名前だぁ』

なんだろう……これ。
記憶……?こんな場面、知らない。でも、今喋っているのは、僕だ……。

小さい頃の……僕。
苛められて……期待されていた頃の僕。



33: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:42:26.98 ID:I9wZZQiB0
喋っているのは誰?
顔は見えない……。

厭味ったらしい、声。

『君は、ママ。好きかい?』

『も、もちろん!!僕はママが好きだよ!!
 パパがいなくなっちゃってから、僕を、ママは一生懸命、こうやって育ててくれてるんだ!』

そうだ。
ママ……ママがいなくなったんだ。

でも、ここがどこかもわからない。
どうしよう。意識が溶けていく……みた……いだ。

小さな……ぼ、くに……。

(-_-)『えっとね!!ママは偉い魔術師さんの元で修行をしてね!それでパパも偉い魔術師さんでね!!』
(  ∀ )『いやぁ、もう、いいよヒッキー君』

(-_-)『え……?なにが?』
(  ∀ )『いやぁ、何でも無いよ。早くお家に帰りなさい。もう、日が暮れる』



34: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:43:53.30 ID:I9wZZQiB0
――――
―――
――

……。

…………。

見たく、無かった。
忘れようとしていた事を忘れていた。

思い出してしまった。

見たく、無かった……。


(-_-)『……何?どうしたの?ねえ!!どうしたのおじさん!!おばさん!!』

燃え盛る、ママがいた家。
見たく無かった。

『……ヒッキー。君の母さんが……』

人間によって、家が襲われた。
お金が欲しいなら、言ってくれと、叫んだ。

ママは、辱めを受け、殺された。

そう……ママはあの頃からいなかったんだ。



37: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:49:17.72 ID:I9wZZQiB0
(; _ )『……嘘だ。嘘だよ!!!そんなの!!!ママは!!!ママは家で……。
    今夜は……、シチューを作ってくれるって言ってた……。作ってぐれ゛る゛っで!!!』

僕はそれから、一人になっていたんだ。
でもなぜ今?今、僕はこんな辛い記憶を思い出しているの?

なぜ、思い出さなければいけないの?
人間が憎い。憎い憎い憎い!!!!!

憎い!!!!





( ・∀・)『……お母さんを、失ったそうだね。可哀想に……。君にママを、あげようか?』





――――



40: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:51:45.34 ID:I9wZZQiB0
(-_-)「……お前、人間だろ」

ミルナのすぐ後ろから、ヒッキーは現れる。
誰も知る事の無い過去。秘密。それを全て知った男が、男の後ろに現れた。

(;゚д゚ )「……え?」

背中に押し当てられたヒッキーの右腕から飛び出た爪が伸びたような形状をした波動が、ミルナの体を貫いた。
訳のわからぬまま、口から血を噴出し、膝をガクつかせる。

突き刺したまま、ヒッキーはミルナの体を持ち上げ、放り投げる。
とっさにペニサスが火炎を放ったがヒッキーは影のようにふわりと消えてしまった。

床に血を撒き散らしながら、ミルナはゴロゴロと転がり、床にぶつかる。



41: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:52:44.94 ID:I9wZZQiB0
('、`*;川 「……ミルナ君!?」
(-_-)「お前、魔術師だろ」

そしてまた突然、ヒッキーは現れる。
死角に的確に、そして、気づけば傷跡が出来ている程の速度で。

ペニサスの右肩に突き刺さっていた波動。
焼けるような、噛み付かれたような不快感、痛みが同時に襲ってきた。

声をあげ、痛がるペニサスに追い討ちをかけるようにヒッキーは思い切り、腹を蹴り上げた。

( 、 *川 「……ぐぅっ!!!」

(-_-)「ママは……こんなものじゃなかったんだ……。陵辱されて……、それでも生きようとして……、
    抵抗して……、そして、人間共に殺された。守ってくれなかった街の魔術師も……同罪なんだ!!!」

髪を掴み、ペニサスの唇を奪わんかの如く顔を寄せる。
なめるような視線。吐き気を覚えたペニサスは、キッとヒッキーの顔を睨んだ。



42: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 22:54:43.95 ID:I9wZZQiB0
(-_-)「君は……力でねじ伏せられて……、体を好きなように弄ばれて、殺される。
    その辛さ……。わかるの?わかるなら……教えて欲しい。わからないなら……」

('、`*川 「……離してよ。気持ち悪い」

(-_-)「……知らないんだね。じゃあ、僕がしてあげるよ……、たっぷり、しっかりとね……。
    それで君は言うんだ……。許して下さい、殺さないで……、って。でも僕は許さない。
    ちゃんと、教えてもらわないといけないから……、犯されて、殺されるその心境、感覚……」


('、`*#川 「離してって言ってるでしょ!!!」


(-_-)「……駄目」


影がペニサスの体を縛り上げる。
そして壁に組み込まれるようにして貼り付けられると、ヒッキーはケラケラと笑った。



45: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:01:29.24 ID:I9wZZQiB0
(-_-)「……これが終われば……、次はここの街全員だ。
     女、子供、男。皆、皆僕のママを助け無かった償いをさせてやる……」

('、`*川 「……狂ってるわ。アナタ」

(-_-)「どうとでも……言えばいいさ。まず、君を殺す前に、この二人を殺さなきゃいけないみたいだね……。
    そっちの人間、ここの魔術師。もう、息絶え絶え……でも、殺すなら……、確実に。屈辱的に」

完全に線が切れてしまっているヒッキー。
意識の無いブーンの緊縛を解き、風圧を起こしブーンをめくりあげる。

ゴロゴロと床を転がり、ブーンは苦しそうな声をあげながら意識を取り戻した。

(; ω )「……お、ぐ。ふ……い、痛ぇお」
(-_-)「君は……この女より戦えもしない屑さ。その痛みももうすぐ消えるよ」

('、`*;川「……つ。取れない!!!ブーン!!!」
( д )「……」

危機。
この二文字が、一番シンプル。かつ、適切であった。
どうすればいい?どうすれば誰も死なずにこいつを殺せる?ペニサスは考える。



47: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:04:08.49 ID:I9wZZQiB0
しかし、動かない体。魔力の無い魔術師。腹を貫かれ、瀕死の人間。

絶望的――。

絶望的であった。

(-_-)「……今、今気づいたよ。君の……その棺桶。それに入ってるんだろう?
    双子と戦った奴が……。おかしいと思ってたよ。だって一人いなかったんだからね」

一歩、また一歩ブーンに近づく。
ブーンはそれから逃げようとして、ベッドの近くまで這いずり移動する。

(;^ω^)「はっ……!!はっ……!!」
(-_-)「ネクロマンシー……そう。そんな重たいもの担いで、這いずり回って疲れてるでしょ……?」

何かが千切れるような音。そしてブーンの悲鳴。
右足首に深く、鋭い波動が突き刺さっていた。あの音は、おそらく腱が切れた音。



48: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:06:55.59 ID:I9wZZQiB0
(; ω )「……ぁああっぐぅ!!!!!」
(-_-)「逃がさない」

そして、もう一度。
次は左足首へ。突き刺さる、突き刺さる。

その度に響く声。嗚咽。
ペニサスは見ていられなかった。涙で前が滲む。

( 、 *川 「……もう、もう……止めて……」


(#-_-)「……だぁま!!!ってろよ!!!!!この!!!糞!!!女!!!!の!!!くせに!!!」


壁から黒い手を模した影が現れ、ペニサスの口を押さえつける。

(;-_-)「ふーっ……フーッ!!!だ、黙って……見てればいいんだよ」

精神的な幼さが、こうさせるのか。
ヒッキーに罪悪感は見られず、己の怒り、欲望、その全てを一気に満たそうとしているようにも見えた。



50: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:10:20.31 ID:I9wZZQiB0
そしてブーン。

悲鳴しか言えず、体全体にぬめりを帯びた汗をかき、それでも何とかして逃げようとしているのか。
手だけで体を引っ張り、這いずっていく。

その先にはベッドしかない。

そしてその後ろには、絶望しかない。
しかし、ブーンは前を見ていた。

ヒッキーの手から、また波動が伸び、ブーンの首下を掴みあげる。
ギリギリと絞まっていく首筋。喉を鳴らし、ぜえぜえと呼吸しながら、ブーンはヒッキーを見た。

(; ω )「……ぁ。うぅ……、み゛……」

(-_-)「もう、終わりだよ魔術師ブーン……、君は……ここで、死ぬんだ。もし天国があれば……、
    ママに、愛してると伝えておいて……。身勝手だね……身勝手だね、僕は。でも、反省しない」

貼り付けられているペニサスの方向を見て、ヒッキーは見せ付けるようにブーンの体を向ける。
しかしペニサスは眼をそらそうとせず、強がるそぶりを見せた。
どこか、自分が仲間はずれにあっているような感覚に陥る。

もともと、馴れ合う様な間柄でも無い。



52: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:12:38.39 ID:I9wZZQiB0
しかしママという存在がいないという事に気づいた今、どうしようも無い虚無感が、ヒッキーを締め付けた。
だからそれを紛らわす。


(; ω )「……かは!!ぐ……っつ、く……」


締め付けられた心を忘れるように、ブーンの首を締め付ける。
そして心を閉めつける。

一抹の不安を忘れられるように始末をつける。

この男を始末する。

(;-_-)「……終わりぃぃ!!!!」



53: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:14:30.83 ID:I9wZZQiB0
……しかし終わらない。

(;^ω^)「げほっ!!!!……ぐえぇ、げほっげほっ!!!」

もどかしかった。
なぜ、決着がつかない。

己の影で造った波動が千切れているのを見て、そう思ったのだ。

(;-_-)「……何だ。何が、何が起きたんだ?」
    
ブーンは地面に転がり、必死に呼吸をする。
周りには誰もいない。戦える者が。


すると、ヒッキーの肌に一陣の風が吹いた。
それは皮膚だけでは無く、一瞬で右腕を持っていく。

(;-_-)「う……!?うあわぁあぁああ!!!!」

勢いよく噴出す血。あるものが無くなった感覚。
ヒッキーは混乱する。

睨むように入り口を見る。
そこにいたのは、オトジャであった。



55: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:16:49.34 ID:I9wZZQiB0
(´<_` )「……。ヒッキー、お前は、可哀想な者なのだ」

あり得もしない展開に、皆驚きを隠せない。
なぜ三剣頭が、いや、形式的とはいえ、自分の部下が今己の腕を切り落としたのか……、理解しようが無い。

震える声で、オトジャに真意を尋ねるヒッキー。
しかし答えがオトジャの口から出る事は無く、もう一度撃たんとせんばかりに斧を構える。

('、`*;川 「な、何が起こってるのよ……」
(;^ω^)「……い、ま、内に……」

ずり、ずりとミルナに這いずり寄るブーン。
頬を軽く叩き、痛みによって気絶しているミルナを起こすと、ベッドの隣に置いてある一冊の本を指差した。



56: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:18:19.89 ID:I9wZZQiB0
ブーンは喉がつぶれてしまっていて、うまく話せない。
しかし指をさした場所、そしてその熱気のようなものは、ミルナに意味をわからせるのに十分であった。

(;゚д゚ )「……あ、あれ……あれがそうなんだね!?」

痛む腹を押さえながら、よろよろと立ち上がり、本を手に取ろうと近づく。
ヒッキーはそんな事よりも、今目の前のオトジャの裏切り、右腕の激烈な痛みに耐える事に必死になる。

(#-_-)「お、お前ぇぇ!!!もう一度、それ、それ、それを撃ってみろ……!!!
     さっき兄貴を殺せたのに、生かしておいてやった恩も何もかも……忘れて、撃ってみろ……!!!」

(´<_` )「もういい……。お前は、ここから出る事も出来ない。出生から、今までの話は聞いた。
       生きていルには辛すぎる。その心を、せめて三剣頭の私が……、解放する」

再度射出される風。
暴風は床を砕きながら進み、ヒッキーの体めがけて一直線に進む。
しかしヒッキーは影を駆使し高く跳ね上がり、かわす。



57: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:20:18.68 ID:I9wZZQiB0
それでも近くをかすめただけで足は細かな切り傷だらけになり、砕け、バラバラになった床に鮮血が飛び散った。
中空から見えた、自分の腕を見るとヒッキーは涙を流し、そして更に怒る。

(#-_-)「お前にぃぃ!!!お前に、お前なんかに、お前如きに、僕の何がわかるんだよ!!
     僕だって……今、今思い出したんだ!!訳のわからない魔術師に埋め込まれた仮初の記憶……。
     そんなもの!!そんなもの、いらないんだよ!!!糞!!糞食らえ!!!こんなもの!!」

影を引き連れて、オトジャに突進する。
それを受け止めるようにオトジャは待ち構えた。
ヒッキーの影を、オトジャは全て受け止め、力の押し合い状態に縺れ込む。

(#-_-)「死ねっ!!死ねっ!!!死ね死ね!!!」

いきり立つヒッキーとは対照的に、全くの余裕の表情を浮かべたオトジャが、一言。
顔を近づけ、ヒッキーの耳元でこっそりと言った。



58: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:22:57.02 ID:I9wZZQiB0
(´<_` )「……与えられた力。それを履き違えたお前の始末だ。
       力を頂いたお前。この街を裏側で統治する使命。全て、全てなっていない」

(#-_-)「力だって!?そんなもの、僕は生まれるべくして持っていた物!!
     お前達みたいな人間とは違う!!凡人とは違う!!!僕は……天才なんだ!!!ママ!!!」

(´<_` )「勘違い、していルようだな。お前に力を与えたノは、我々だ」
(#-_-)「意味が……よくわからないね!!!このまま一気に押しつぶしてやる……!!影になってしまえ!!!」

ズズズ……。
音を立てて、影が床へと減り込んでいく。
建物は震えて崩れそうな程、そして部屋は地獄のような光景へとなる。

('、`*;川 「……あいつ、こんなに強かったの!?床が崩れる……!!」
(;^ω^)「……み……な!!!ぁ……はや……く!!!」



62: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:25:20.43 ID:I9wZZQiB0
まるで地震。
足元も覚束ない状況で、痛む腹。そして追い討ちのようにやってくる賊にやられた時の肩の刺し傷。
血が滲み、本当なら泣いてしまっているだろう自分を、どうにかして言い聞かせ、誤魔化し、はぐらかして進む。

ブーンが指差していたのは、対となる体を与える書。
今持っている書が心そのものであるなら、体そのものと合わせることにより何が生じるのであろうか?

不安。そして、好機が見えるかもしれない、といった期待が少しずつ入り混じった表情。
ミルナは少し霞む視界のまま、右手に心を、左手に体を持った――。


(;゚д゚ )「何だこれ……。頭に言葉が……流れ込んで……来ます」


魔力に似た力が、ミルナの頭の中へと吸い込まれていく。
何が起こっているのかはわからない。しかし、確実に変化が起きていること。それだけは紛れも無い事実。

ミルナの体の中に、何かが生まれていく――。



63: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:26:57.26 ID:I9wZZQiB0
そして、その光景をヒッキーはチラリと見てしまった。
力をぶつけあっている最中であったが、思わず声をあげる。

(;-_-)「……お前!!それ、か……母さんの形見に……触るなぁ!!!!」
(´<_` )「……」

勢いでオトジャを弾き飛ばし、そのまま反動で一気にミルナへと飛んでいくヒッキー。

(;゚д゚ )「え、あ……うわ。ちょ、ちょっと……こ、来ないで!!危ないから!!!」
(;-_-)「……!!!」


体が勝手に動いたのだ。

いや、頭がそう命令したから動いた、といえば正しいのだろうか。
それが必然である行動なのには間違いは無かった。
しかし、頭で命じた事から、体が動くまでの時間が、極端に短くなっていた。



64: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:28:55.76 ID:I9wZZQiB0
ヒッキーの波動をその右手で掴み、ヒッキーの体をその左手で止めていた。
自制は利いた。それでも、なんとか、という程である。

(;-_-)「……お前、その書……!!心をどこで……それは……!!
     パパ……。パパはまだ生きていた。これを託して……僕のものだったのに!!!」

(;゚д゚ )「パ……パ?」

(;-_-)「そうさ……僕のパパ、そしてママが編み出した書……。そして僕が成人した時、
     僕にくれるはずだった書!!なのになぜ……。なぜお前が……、僕のパパ。ゼア……」

ヒッキーの動きが止まる。
急に、力を無くした体はその場に倒れた。

仕留めたのは、ミルナでは無く、先程吹き飛ばされていたオトジャが、手斧を投げたから。
深々と、心臓を後ろから真っ二つに。斧の刃はヒッキーの体を貫通していた。

何も言わず、何も言えず。即死。



66: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:31:27.14 ID:I9wZZQiB0
同時に、ペニサスの緊縛も解け、地面に尻餅をつく。
お尻を摩りながらも、ペニサスは言った。

('、`*川 「……ミルナ君。まだ、まだ安心しちゃ駄目」
(;゚д゚ )「わ、わかっています。でも、あの人……」

ミルナの視線の先には、斧を構えた男が一人……のはずであった。
一人である。一人には間違いない。
しかし何か、複数人いるような気がするのだ。

(´<_` )「……この体でいけルか?あれくらいなら……。
       いや、手は抜かずニ。それはそうだと言えるが……」

重いはずの甲冑を無視するかのように、オトジャは駆け足で距離をつめてくるのだ。
ミルナはどうしていいかもわからず、ただ、自分の体の中に溶け込んでいく二つの書を見ているしかなかった。
自分の体が侵食されているのだが、どこか恐怖感は無く、何か新しいものが、視点が得られるような気がした。



68: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:33:25.06 ID:I9wZZQiB0
(;゚д゚ )「こ、来ないで下さい!!!」

(´<_` )「もう体内にトりこまれはじめられている。失うのは支障がうまれるぞ。
       なら今の内にヤるしかあるまい?そうだ。そうだな」

('、`*川 「体、どうなっているの?何か変わった事、感覚……。何かあるはずよ」
( ゚д゚ )「わかりません……。でも、体が……すごく、熱い……」

二人が話しているその途中。
オトジャがまるで昆虫のように跳ね、ミルナとの距離を詰めてきた。
ミルナは丸腰。オトジャはリーチのある戦斧を扱っている。

このままでいけば、オトジャが有利な事は誰もがわかる事であった。

(´<_` )「断罪。断罪断罪断罪」
(;゚д゚ )「僕は……咎人なんかじゃありませんっ!!!!」

思い切り、薙がれた刃を手のひらで受け止めるミルナ。
まるで皮膚が岩石、いや、それ以上の鉱石にでもなったかのように硬質化していた。



69: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:35:48.78 ID:I9wZZQiB0
(´<_` )「受け止めた。まだ弱い。断罪断罪」

腕ずくでミルナの手から斧をひっぺがすと、次は頭部目掛けて振り下ろされた。
しかしそれも左腕で防ぎきる。ミルナの足元には皹が入り、床が砕け散る。

('、`*川 「……自己強化の魔術?でも、あんなに強力な……。
     って、そんな事考えてる暇は無いわ!ミルナ君!!今すぐそこから下がって、伏せて!!」

(;゚д゚ )「へ?は、はい!!!」

急いで下がるミルナ。
それと同時にペニサスは手を床におき、詠唱を行った。

('、`*川 「……限定空間の重力を壊すわ!!!」

砕け、転がっているだけの床の破片が一斉に浮き、くるりと回りオトジャの元を向く。



71: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:39:07.51 ID:I9wZZQiB0
(´<_` )「小石など効かぬ。小細工など。断罪断罪」

斧を器用に回し、全て受け止め弾く。
土煙が舞うが、それさえも斧の旋風によってかき消した。

('、`*川 「でも、時間を食ったわね、あなた」
( ゚д゚ )「すごいですね……。頭が勝手に構えを覚えてる」

オトジャの死角、腰を捻り、足を思い切り地面につき立て、拳を針のようにしたミルナがいた。
その針は正面オトジャの腹部の方を向き、もう止める事は出来ない。

(´<_` )「避けられない。断罪、だんz」
( ゚д゚ )「どおおおりゃああああ!!!!!」

思い切り、思い切り叩き込んだ。
これが、心と体の力なのだろうか?

きりもみ状に吹き飛び、部屋の扉を巻き込みながら壁へと激突するオトジャを見ながら、ミルナは震えた。
こんな力が、自分の中に出来た事に、恐怖を覚えた。



72: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:42:44.23 ID:I9wZZQiB0
( ゚д゚ )「……。これが魔術なんですか……?」
('、`*川 「わからない……。でもあなたの体に、魔力は見られないわ」


(;゚д゚ )「……!!ぶ、ブーン!!そういえばさっきから倒れたままで……」
('、`*川 「とにかく、ここから出ましょう。あの魔術師も死んだみたいだし、これ以上ここにいるのは危険だわ」

ミルナはブーンを背負い、棺桶を抱える。
すると、無茶な事を一言だけ、口に出した。

( ゚д゚ )「ペニサスさん。僕の腕に掴まってください。
     下には兵士がいるでしょうし、ここから飛び降ります」






('、`*;川 「……。嫌」



75: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:46:51.25 ID:I9wZZQiB0
( ゚д゚ )「え?すいません聞こえませんでした。さ、早く行きましょう!」
('、`*;川 「いいいい嫌だって言ってるでしょう!?高いトコ嫌いなのよ馬鹿!!」

(;゚д゚ )「そ、そんな事言ってる暇無いじゃ無いですか!!も、もう行きますよ!!」
('、`*;川 「ちょっと!!勘弁してよ!!え、うわ。うわわわわ!!ちょっともう本当に高いじゃないの!!」

ジタバタしているペニサスと棺桶を担ぎ、グッタリしているブーンを背負いながら、
ミルナは壊れた壁から覗く外の世界を見渡す。風が吹き込み、雨が降った後の湿気を吹き飛ばしてくれている。

月は輝き、自分の道を照らしてくれているように感じたのだ。
街の外壁にまで届きそうな気がしたので、少し控えめに距離を考える。

( ゚д゚ )「……捕まってて下さい!!!」
('、`*;川 「い……嫌ぁぁあぁぁぁ!!!!!」

飛び立つ。
外へと。

涙を流しながら叫び、ミルナの腕に爪を立ててしがみついているペニサス。
空気を体に羽織るように外壁近くの建物の屋根に着地した。

( ゚д゚ )「……飛べましたね。本当にこれは魔術じゃ無いんでしょうか……」
( 、 *川 「……」

(;゚д゚ )「き、気絶してる……。無茶しすぎたのかな……。
     でも、壁を越えるまであと2回くらい飛ばなきゃならないから、静かでいいかも」



76: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:49:11.93 ID:I9wZZQiB0
――――
―――
――


壁に崩れるようにして減り込んでいたオトジャ。
あの一撃で腹部の鎧は吹き飛び、骨も何本か折れたようである。

( <_  )「……や、ラれてしまった。やられたみたイだな!!
      やられてしまった。断罪断罪できない断罪できない」


顔を上にあげ、なにやら挙動不審な動きをする。
すると……、オトジャの口から、強引に小さな四体の人形が出てきたのだ。



77: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:50:24.66 ID:I9wZZQiB0
|  ^o^ |「これは、だめだぞ!」

皆、同じ顔して、同じ服を着せられた人形。
各々が独立していたから、オトジャの言動がおかしかったのであろうか、その場所で会議のようなものを始めたのだ。

|  ^o^ |「なぜ、だめだったか、かんがえよう!」

|  ^o^ |「そんなの、ぶーむ、おまえがだめだったんだ!」

|  ^o^ |「まて、おれいがいのおまえらさんにんがだめだったんだよ!!」

|  ^o^ |「なんだと!おれいがいのおまえらさんにんとはだれのことだ!?」

|  ^o^ |「ぶーむ、さんにんのことだよ!」

|  ^o^ |「まて、おまえもぶーむじゃないか!おまえじゃないのか?だめだったのは!」

|  ^o^ |「ちょっとまて、だれがだれのことをおこっているのかぜんぜんわからない!」

|  ^o^ |「どういうことだ?みんなぶーむだぞ!?」

|  ^o^ |「じゃあだれがいったいだめだったんだ?」



79: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:52:38.62 ID:I9wZZQiB0
傍から聞いていると、精神が崩壊してしまいそうな会話。
なにやらそれも喧嘩に発展してしまったようで、収拾がつかなくなってきていた。

|  ^o^ |「なんだと、じゃあだれがいちばんつよいかけんかできめるしかないだろ!」

|  ^o^ |「そうだな、これまではちぇすとかだったしな。だとうだ!だとうだ!」

すると、その人形達を宥めるかのように女が一人闇から現れた。
すっと人形たちに近づき、一人ずつの頭を撫でていく。

lw´‐ _‐ノv「……皆よくやったよ。褒めてあげる」

|  ^o^ |「ますたーのあねき!ますたーのあねきじゃないですか!」

lw´‐ _‐ノv「逃がしちゃったのは残念。でも、あの役立たずを消せたからいいの」
|  ^o^ |「あれでよかったの?ますたーのあねき!!」

その女は深々と黒の帽子を被り、何か鞄のようなものを両手で重そうに持っていた。
髪は黒。長く、先で縮れるようになっている。瞳は紫。

lw´‐ _‐ノv「さあ、帰りましょう。この事、色々言わなきゃ駄目」

鞄を開くと、人形たちはその中に吸い込まれるようにして入っていく。
気づくと、魔術師自体もその場から消えていた……。



80: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/17(土) 23:54:43.79 ID:I9wZZQiB0
……。

…………。


人気が一気に無くなった部屋。
その隅で、悔し涙を流す男。


(;-_-)「……くそう!!くそうくそう……!!!」


物語は、まだまだ終わらない。




( ^ω^)はネクロマンサーのようです 第10話『典型的天才転生転機教室』 完



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