( ^ω^)はネクロマンサーのようです

9: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:00:13.31 ID:wNkqsKEq0
人が嫌いである。
何が嫌いだとか、どこが嫌いだとかいう次元では無かった。

魔術師としてこの世に生を受け、その才能から両親や、生まれた街の人達に愛でられていた。
己も、己の力そのものを理解し始めていたし、そこからくる探究心。未来への期待も知っていた。

だが、今は違う。
人が嫌い、という事が、体の奥の奥の、また奥に植えつけられている。

ヒッキーの心に何が起き、どうしてこうするに至ったかは、本人と"ママ"にしかわからない。

(-_-)「……ちょっと、ちょっとだけワクワクしちゃって。うん……うん。
    で、でも外にはあまり出たくなかったから……。人が、うん。そうなんだ」



11: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:02:25.41 ID:wNkqsKEq0
しかし誰もいない。
そこには、誰もいない。
ヒッキーが一人で、空間に向けて言葉を発する。
言葉を投げ、返ってはこない言葉に、また言葉を投げ返す。


(-_-)「ママはどう思う?あの魔術師……。え、そんな僕の敵なんかじゃないよ!
    僕はこうやって、ママと同じ部屋でずーっと、ずっと暮らしていたいからさ、だからこうやって戦おうとしているんだよ?
    ママがいなきゃこんな事してないさ。ね、だからママ。もう一回僕のほっぺを摩ってよ、ママ……」

姿無き、偶像に縋る。
その大きな部屋にあるのは窓。大きな"二人用"のベッド。
見えない"ママ"がこよなく愛したガーベラの花。そして本が一冊。

ヒッキーは指輪を右手の中指に。
指輪には綺麗な色。まるで瞳を吸い尽くされそうな色をした青の石がはめ込まれていた。
舐める様に眺め、そして眩しい太陽の光に映す。



13: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:05:10.99 ID:wNkqsKEq0
(-_-)「夜になれば、僕は戦うよママ。
    だからここで見ていて?ママ……」

ママに貰った、幼き頃からの期待。
ママに貰った、幼き頃からの愛情。


人から受けた、裏切り。


それを全て胸にしまいこみ、自分の足場を崩そうとしたブーンにぶつける。
魔術師は空を見る。

(-_-)「お前には……どう見えてるんだよ。魔術師……!!!
    綺麗に見えてんだろうさ。どうせ。それも、蒼く澄み渡った色に……。
    僕の、僕の……。僕とママの世界を奪わせやしない!!!」


――――
―――
――



15: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:08:07.81 ID:wNkqsKEq0
ブーンは、その震える足を忘れるように走っていた。
だがあの女から逃げようとする事は、さすがに忘れられず、ただただ必死に。全力で。

(;^ω^)「……ふーっ!ふーっ!!」

目の前が歪むようだった。
あれは、瀕死の女が構えるような物ではなかった。
見た目は、か弱く、震えた死線スレスレの剣先の動き。
しかしそこからは柔軟、かつ剛毅な変化のついた強さがあったのだ。

見えていた。だが見えなかった。
あのまま戦っていれば、お互い無事では済まなかっただろう。

ブーンは、その強さを知らなかった、ただそれだけ。
そして、これから知っていく事になるという事も知らなかった。

(;^ω^)「なんだお……。さっきのは一体!!!あんなの反則なんだお!!
       せっかく生かしてやろうと思ったのに、あれは無いお!!!」

少し、強がりを口から出す。
すると少し先から、金属がかち合うような音がしてきたのだ。



16: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:10:03.34 ID:wNkqsKEq0
立ち止まり、すぐにドクオの事を思い出す。
クーのあのイレギュラーな構えによってすっかり頭から消し去られてしまっていたのだ。
そしてすぐに、またあのクーの構えが頭を過ぎる。

あの女が使うのなら、あの男二人も使うと考えてもいい。
自然にその考えに行き着く。時間はかからなかった。

(;^ω^)「……はっ!そうだお、ドクオ。ドクオだお!!
       すっかり忘れてしまっていたお。あの女、どこまでも鬱陶しい奴だお!!
       い……いや、ドクオが影薄いだけかもしれないお……。と、とにかくまだ魔術は」

人差し指を立て、そこに小さい毒を発生させる。

( ^ω^)「よし、あと何回かくらいならいけそうだお。
       まだ効いているお。よし、それじゃあ……」

少しだけ足を早める。
小瓶を一つホルスターから取り出すと、右手にギュッと握りそのまま真っ直ぐ進んだ。



17: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:12:12.74 ID:wNkqsKEq0
ブーンが魔力を気にするのも無理は無い。
魔術師には、魔力タンクと呼ばれる形のない体内器官が存在する。
各々その限界という物があり、それを超えると、実質的なペナルティが訪れる。

ブーンで言えば、魔力タンクが魔力の増幅を求める為、魔術が使えない期間が少しの間続く。
使える魔力といっても、そのタンクの中身全てが使える訳では無い。古の魔術師はこう説いた。

『魔力の底の魔力。それこそが不可視の魔力。そして、触れてはいけない魔力』

人間の意識に、深層というものがあるように、魔術師の魔力タンクにも深層があると言われる。
其処に触れてしまうと、実質的なペナルティが発生すると考えられていたのだ。

ただ、そこをブーンは勘違いしていた。
ブーンは、魔力量ではなく、魔術を使用した回数と捕らえていた。
そしてそこに中途半端に魔力量を絡ませ、何とも言えない複雑な事になっていたのである。

(;^ω^)「とりあえず、ここを乗り切ってドクオ、ミルナ、ペニサスさんと合流しないといけないお」

そして、暗がりの中、足元を少し見る。
何か微かに、臭いがするとは思っていたが、足元には薄く、ほんのりと色づいた水が流れていた。
もちろん、その色は赤。血である。



19: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:13:42.31 ID:wNkqsKEq0
( ^ω^)「……でも、安心もできないお」

その考えは当たっていた。
ブーンが貯水場へ足を踏み入れたときに感じた、何か得体の知れない、だがクーが発した物とは少し違う感覚。
そしてあの死を背中に漂わせた者が放つ独特の臭い。

激しい戦いが繰り広げられていたであろうというのが人目でわかる、壁に残った深い爪跡。
そして中心に備え付けられていた供給パイプが砕け散っており、水が駄々漏れであった。
ブーンは自分の存在が認められないような空間に少しの間立ちすくむ。

そして、声をあげた。

( ^ω^)「ど、ドクオー!!!」
('A`)「なっ。ブーン!!!」

(#´_ゝ`)「余所見を!!!してる暇がぁぁぁ!!」

ドクオはアニジャの大剣を膝を折り頭スレスレでかわす。
それを見て、ブーン、オトジャも加えた2対2が始まった。

(;^ω^)「挟み撃ちなら今が有利だお。ほらドクオ!!詠唱――ってあれ……」



21: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:14:34.89 ID:wNkqsKEq0
(;'A`)「……」



('∀`)「でへっ」

(;゜ω゜)「う!!でー!!!!!」

体を仰け反らせ、人差し指で思い切り指差しながらブーンは叫んだ。
それを聞いた兄弟はビクリとなる。

(;´_ゝ`)「!?」

(´<_`;)「……」

('A`)「すまんってホント。すまんって」
(#^ω^)「なぁにしてるんだお!!それ治すのブーンなんだお!!?」

(#'A`)「なっ!こちとら必死に戦ってるんだよ!!」
(#^ω^)「ブーンだってこの人達の隊長を今やっつけて来た所なんだお!疲れてるんだお!!」

その言葉を聞いて、兄弟の耳がピクリと動いた。
隊長をやっつけた、と今この男は言ったのだ、間違いは無い。
一気にその手が止まり、兄は絶望感を、弟は悲愴感が顔に出ているのがわかった。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/11(日) 21:15:28.57 ID:wNkqsKEq0
(;´_ゝ`)「……何だと?お前、隊長を……殺したというのか?」

とっさにブーンは、ニヤリとした。
今この男は、自分のつい口走ってしまった言葉を過大解釈してしまっているからだ。
さあどうする、ブーンは頭の中で考えた。二人の顔をチラリと見ると、大分心にきていると見る。

殺せはしなかった。いや、あのまま放っておけば死ぬのであろうが、すぐに治療すればそれほどの怪我にもならない。
とりあえず、嘘をつく事にした。


( ^ω^)「……君達はあの女の部下のようだな。あの女の墓標にこう、告げておいてくれ。
       無理にとは言わない。お前は、十分に強かった。我輩には及ばなかったが、勇敢な騎士であったと――」



(;'A`)(まぁたコイツ嘘ついてやがる……口調が変わりやすすぎなんだよ豚ちゃん)

これで、相手を言葉の上で牽制できると考えたブーン。
だが、結果は全くの逆方向へと進む。



23: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:17:28.51 ID:wNkqsKEq0
(´<_` )「アニジャ。わかるな、俺の言おうとしている事が」

スッと、背中を合わせドクオとブーンを迎え撃つような体勢になる兄弟。
アニジャもただその質問にコクリと頷き、さっきの悲しみの顔とは全く違う、勢いに満ちた顔つきになっていた。

( ´_ゝ`)「……継ぐぞ。意思を」

(;'A`)「おい、ブーン……いや、豚野郎。俺が言いたい事、わかるよな?」
(;^ω^)「は……ははっ。ドクオ、ちょっとこのままだとアレだから"閉じ込める"お」

ブーンは魔術書を取り出すと、すぐさま呪文を唱える。
しかしそれを許さないかのように、アニジャがブーンめがけ大剣を右方から思い切り振り切ろうとした。

(#´_ゝ`)「……仕留めたぁぁぁ!!!!」

大剣の刀身がブーンの首を跳ねようとしたが、腕、肘、肩、手首全てがいきなり固定される。
何が起きるかわかるかわからないか、そんな速度である。アニジャは自分の腕を見るが、何も見えない。



26: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:19:55.99 ID:wNkqsKEq0
いや、何かあるが見えないのだ。
振り返るとオトジャも同じような状況である事がわかった。

(´<_`;)「なんだ……っ!!これは!!」
( ^ω^)「いいからそこで転がってるお」

ブーンの指が法則的な動きをすると兄弟二人がバチンと背中同士引き寄せあい、棒立ちのまま横に倒されたのだ。
出す攻撃、出す攻撃が変則的である魔術師の魔術に翻弄され、怒りと疑問がわきあがり、訳がわからなくなる。

(;´_ゝ`)「くそっ!!こんなこざ……ぷあっ!!」

(´<_`;)「くっ……。くそっ」

もぞもぞとどうにかして立ち上がろうとしている兄弟。
そしてたまたま前にあった小石のように、オトジャの顔面をブーンは蹴り上げた。
額から血を流し、見下ろすブーンを睨むオトジャ。

(´<_`;)「……っ。殺すなら、殺せ」
( ^ω^)「……行くお。ドクオ」

('A`)「いいのか?」
( ^ω^)「いいお。ここの量を考えればあともって15分だお」

ブーンの放った"とりもち"のような、強粘着の液体が、兄弟二人の関節という関節。
動けなくするよう徹底するように張り付いている。もちろん、立ち上がることなど出来ない。



28: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:22:17.72 ID:wNkqsKEq0
そして、もう一つ。

( ^ω^)「どっちか一人だけなら生き残る事が出来る。
       兄弟、どっちか下にして寝転べばいい。喧嘩してでも決めれば、いい」

( ´_ゝ`)「……下衆め」

そう言って、ブーンは兄弟の隣を通過し、ドクオの元へ行く。
そしてそのまま、貯水場から出て行った。

――――

暗闇にまた入り、ブーンの額からはどっと汗が吹き出た。
それを見たドクオは、呆れた顔で言う。

('A`)「お前さぁ、嘘ならもっとマシにつけよな」
(;^ω^)「だって嘘をつくなら徹底的がいいと思ったんだお……」

('A`)「まあいいけどよ。あの粘着液だって5分ともたないし、女だって殺してないんだろ?」
( ^ω^)「……逃げちゃったんだお」



29: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:23:02.54 ID:wNkqsKEq0
('A`)「え?なんでだ?」
( ^ω^)「強かったから、逃げてきたんだお。人間なのに、強かったんだお……」

('A`)「あ!それってよ、なんかこうググッと心臓を押さえつけるような感じの奴か?」
( ^ω^)「そうだお!!それだお!!ドクオは知ってるのかお!?」

ドクオは持った腕を振りながら答える。
それは、魔術師誰もが通る、人間の秘めたる強さ、と。

( ^ω^)「人間の……秘めたる強さ?」

('A`)「そうだ、きっとな。俺だって、初めてあんな感じを受け取ってビックリしたぜ。
    もちろんフォックスのババアもだった。あん時の顔は面白かったぜぇ?」

( ^ω^)「……なんだ、心配したお!!それにしても、あれはすごかったお。
       体に毒を与えたのに、それなのにまだ立ち上がるんだお……」

('A`)「中々ここの連中は丈夫にできてるみたいだ」
( ^ω^)「だお。じゃあそろそろドクオは棺桶に戻るお」

あらかじめ、ドクオを呼び出した時に置いておいた棺桶を指差して、呪文を唱える。
ドクオは契れた腕を持ったまま棺桶の中へと入っていった。
そして棺桶をかついで暗闇の中を走っていく。ヒッキーに狙われているという事など当人は全く知らない。



30: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:25:06.54 ID:wNkqsKEq0
ドアを少し開く。
人っ子一人、歩いていなかった。そういえば、先ほど脅しをかけたのを思い出す。
ブーン自身、本当は残酷な事などしたくは無い。魔術師で無ければ、パン屋を開いてのんびり暮らしたいというくらいであった。

だが、やはり自分、そして自分の周りの人となると、話は全くの別物である。

( ^ω^)「宿に戻れるかお……?多分ミルナはそこで待ってるお。ペニサスさんは……。
       でも、もう戻ってくれてるかも知れないお。とにかく行ってみるしか……」

とりあえず、この負傷したドクオ。魔力を少し使いすぎた自分を癒す為。
そしてこれまでの話の整理、ペニサスへ説明が必要だった。
人がいない街を、隠れるように路地を通る。神判堂がすぐ近くにあったので北だとすぐわかった。

南を向く――。

いつもは嫌いな太陽に、少し雲がかかっていて、怪しげだった。
それが、なぜか良く見えたのだ。

雲さえあるものの、青く、いい空であった。

( ^ω^)「……戻るお」

宿の入り口は締め切られていて、扉をドンドンと叩くのも罰が悪そうであった。
なのでしょうがなく、裏の路地に周る。丁度宿の裏側であるそこで、ブーンは少し悩んだ。



33: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:27:15.83 ID:wNkqsKEq0
( ^ω^)「宿に入るためだけに魔術を使う……。どうするかお……」

少しだけ迷ったあげく……。

( ^ω^)「まあ、バレてしまったら元も子も無いお」

人差し指と中指の間に一つ、小さな種を召喚し、足元に放り投げる。
魔力をそそぐと太目の幹が一本と、紫色をした一枚の葉が現れた。そこに足を置き、ぐいぐいと上っていく。
だが、ブーンは少しの違和感を覚える。

( ^ω^)「……?」

それは、ちょっとした予兆。
しかしあまり気にする事も無く、そのまま葉は宿の屋根にまで到達する。
ポンと音を立てて消えると、ブーンは自分の部屋であった場所を見定めると、屋根から下を覗くように、上半身をぶらりと垂らした。

すると中にはペニサスとミルナがいるのが確認できた。
少し手では届きにくかったので持っていた空き瓶を窓に向けて軽く放る。

危なっかしい音を立てて、瓶はそのまま下に落ちて割れた。



36: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:30:23.55 ID:wNkqsKEq0
( ゚д゚ )「……?」

ミルナが窓を開けて不思議そうに下を見て、そして上を見た。

(;゚д゚ )「う、うわぁっ!!?」
( ^ω^)「入れてくれおー」

('、`*川 「……何?間抜けな声が聞こえたけどブーンなの?」

先に棺桶をミルナに渡してからブーンがぬるりと入ってきた。
だらしなく尻餅をつき一つ大きなため息をつく。
ペニサスはその光景を呆れながら見ていたが、今のこの状況を一刻も早く、確かに知りたいと思っていたので口を開く。

('、`*川 「早速なんだけど、なんでこうなった訳なの?」
(;^ω^)「いやぁ、ブーンにもさっぱり……」


('、`*#川「そぉい!!!」


(;)ω゜)「ふぉおお!!!」
(;゚д゚ )「ぶ、ブーン!!あわわわ……、今一瞬目玉が吹き飛んだように……」

('、`*川 「全くあんた達は本当にアバウト……って」

ペニサスはブーンが着ているシャツの腹の部分が、裂けていて真っ赤な血が滲んでいるのに気がついた。
すぐにブーンのシャツを脱ぐように言い、そこいらにあった布切れを冷たい水に浸し、患部に当てた。



38: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:35:54.47 ID:wNkqsKEq0
(;#)ω^)「……やってくれるのはありがたいんだけど、今殴られた所の方が痛いってどういう事だお」
('、`*;川 「あ、あはははは。ほらじっとしていないと」

そして、腹に消毒液として酒を塗り、痛がるブーンを無視して布で巻いておく。
ペニサスの手際の良さもそうだが、皆意外な一面を持っていると言えよう。

ひと段落着いた所で、ブーンがこれまでの敬意を、うろ覚えながらペニサスに話した。
話を聞いている途中、宿の主が部屋を訪れ、外は魔術師がうろついているから危ないという事を説明された。

どうやら、ブーンの顔を知っている人間はそこまで多くないようで、少なくともこの宿に身を隠せそうな状況になる。

( ^ω^)「――という事なんだお。魔術師はこの街にいる事だけはわかったんだお。
       本当なら、もっと隠れて動きたかったんだけど、途中からは全部頭の中で組み立てて、
       とにかくこっちから餌をばら撒いてみようと思ったんだお」

('、`*川 「餌……ねぇ。でも、その魔術師と戦う必要なんてあるの?
      友好的にちょっと情報分けてくれないかな?くらいでいいと思うんだけど」

( ^ω^)「もちろん、それで済めばそうするお」

( ゚д゚ )「……この心を与える書も、何かの役に立てればいいんだけど。
     良かったらこれ、その時が来るまでブーンに託すよ。僕が持つよりずっといい気がするんだ」

そう言って、ミルナは書をブーンに渡そうとする。
しかしそれを断り、言葉を返した。



40: ◆Cy/9gwA.RE :2008/05/11(日) 21:38:15.12 ID:wNkqsKEq0
( ^ω^)「それはミルナが託された物なんだお?正直ちょっと欲しいけど、
       心を与える書はミルナが持っているといいお」

('、`*川 「それ、さっきも見せてもらったけど普通の哲学書よね。それも少し偏った考えの。
      私は嫌いじゃないけど、見る人が見たら反吐が出る内容。なんでそんな物に魔力なんか……」

ペニサスがまじまじと見ている書。それをよそに、ブーンは棺桶をベッドに置き、なにやら事を始めようとしていた。
ミルナも興味津々で、ブーンの一連の行動を眺めている。

( ゚д゚ )「何をしているんだい?」
( ^ω^)「ドクオはさっきの戦闘で腕を斬られちゃったんだお。だからそれを修復するお」

まず、ブーンはクシャクシャになった紙をホルスターの小瓶から取り出す。
そこには人型のような絵が描いてあり、各部分に小さな文字で説明が書いてあるように見える。
読んでみようにも、その文字は全く理解不能で、どこの地方の文字なのだとかが一切わからなかった。

紙を広げると、棺桶の上に乗せる。
手で押さえ、ブーンは腕にナイフで少し傷を入れ、そこから出た血を絵に描かれた人型の腕の部分に押し当てた。

('、`*川 「代償を払っているの?」
( ^ω^)「そうだお。もしドクオが首ちょん切られれば、首の血を。足なら足の血をブーンが出さなきゃいけないんだお」

('、`*川 「それは魔術を使用して、ドクオの切断面から再生するの?
      そうならそこいらの回復魔術と変わらない気がするんだけど……」



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