川 ゚ -゚) 少女クーは‘2’に棲まうモノ達と奇妙な旅をするようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:40:06.15 ID:Uv0wFSOb0




E少しは素直に




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:42:03.53 ID:Uv0wFSOb0

ごととん
ごととん・・・


川 ゚ -゚) ふぅ・・・

今日も、ふざけた列車に乗って移動。移動。
あっちからこっちへと、よくも気軽に呼びつけてくれる。

今は私以外に乗客がいないから、
聞こえるのは列車の音だけだ。

静かなのはありがたいが、
暇なのも困りものだ。

大して興味もない本を鞄から引っ張り出し、
読み始める。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:44:38.65 ID:Uv0wFSOb0

・・・読んでいる小説は、主人公が大切な家族を守るために
義理の父親だった男を殺すという話だった。

完全犯罪を目論むが、失敗。
結局は、主人公は罪を疑われ、家族に更なる迷惑を掛ける前に
自らが消える・・・というラストだった。

はっ・・・
馬鹿め。

主人公は家族を守りたいと口にしている。
一番守りたいのは、どう見ても自分だ。

自殺も、自分を守りたいがためだろう?
穢れた自分が、周囲に晒されるのが耐えられなかったんだ。

この小説の主人公は、死ねばその罪から逃れられると思っている。

それが、どれだけ甘い妄想であるか、
この主人公に伝えてやりたい。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:47:29.92 ID:Uv0wFSOb0

もし、伝える事が出来れば、
主人公は考え直す事だろう。

現世に生き、
罪を償い、罪の意識から逃れられる方法を探すだろう。

罪に捕まったまま死ねば・・・
・・・

いかん、妄想がすぎる。
興味がない本、とか言いながら、いつの間にか感情移入してしまったな。

やれやれ、これも暇な所為だ。

早く、着かないものか・・・
あの女の子。
今日は、あの子の視察にいかなければ。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:50:01.28 ID:Uv0wFSOb0

川 ゚ -゚) ・・・

きぃぃいいい〜
プシュー・・・

「クー様、つきました〜。どうぞ、お気をつけていってらっしゃいませ〜」

とんとんとん・・・
たったったっ・・・

ドアから降りれば、もうそこは既に人間たちが現実を歩む世界。
そして、同時に超常のモノを含む、様々なものが存在する。

私は今日ここで、
私の中で最も会いづらいモノに、会わなくてはならない・・・

・・・
・・・



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:54:25.37 ID:Uv0wFSOb0

(  ^ω^) ツンちゃーん

ξ#゚听)ξ=3 もう、何よ! その甘えた声で私の名前を呼ばないでよ!

(  ^ω^) 今日も、疲れたおー。ツンちゃーん

ξ#゚听)ξ 人の話を聞いてないのですか。そうですか

( *^ω^) ・・・

ξ#゚听)ξ=3 ・・・
 
( *^ω^) ・・・

ξ゚听)ξ ・・・はぁ

(  ^ω^) ?

ξ゚−゚)ξ ・・・



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 20:56:34.45 ID:Uv0wFSOb0

(  ^ω^) ・・・

ξ゚−゚)ξ ・・・

(  ^ω^) 最近、元気ないことが多いおね?どうかしたのかお?

ξ゚听)ξ ・・・幽霊に元気ないも、ないもんだわさ

( ;^ω^) ま、そうだおね

ξ゚听)ξ 別に。すっとしない、それだけよ

(  ^ω^) すっとしない?

ξ゚听)ξ ええ、そう。誰かさんのお陰で、酷く悩んじゃうわ

(  ^ω^) ?



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:01:35.17 ID:Uv0wFSOb0

ξ゚听)ξ 気にしないでー

(  ^ω^) ・・・

ξ゚−゚)ξ ・・・

(  ^ω^) ・・・気になるお

ξ゚−゚)ξ ・・・

(  ^ω^) 気になるお!



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:02:41.83 ID:Uv0wFSOb0

ブーンが大きな声を上げても、
ツンは気がないようにそっぽを向くだけだった。

ツンの機嫌を、何か損ねるような事をしたかお・・?

ブーンは心配になって、
ツンさんに近寄って、手を・・・

手を・・・
どうしよう。

ツンさんに触ることなんて、出来ないのに。

自分の手を見て、考えてしまったブーン。

そんなブーンに、いつの間にか視線を戻しているツンさん。
いつもは怒りんぼさんなのに、
今は表情を消している。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:04:18.74 ID:Uv0wFSOb0

ξ゚−゚)ξ ・・・

(  ^ω^) ツンさん。ブーンは・・・

ξ゚听)ξ なに?

(  ^ω^) ・・・

ξ゚−゚)ξ ・・・

(  'ω`) ・・・



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:06:16.63 ID:Uv0wFSOb0

ブーンは、何を言うべきなのだろう。

ツンさんと、ずっと一緒に居たいとか
大好きだとか、そんな事は既に何度も言っている。

ツンさんはその度に恥かしがって、
「からかわないでよっ」と怒る。

それでも、ツンさんは人が内心で考えていることまで
読めてしまう。

だから、それがブーンの本心からだって、
きっと伝わってる。

これ以上、ブーンが言えることなんて・・・



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:07:54.68 ID:Uv0wFSOb0

ξ゚听)ξ 分かってるわよ

(  'ω`) ・・・お?

ξ゚−゚)ξ どうしようもない、ことだってさ

(  'ω`) ・・・

ξ゚−゚)ξ=3 ・・・

(  'ω`) ・・・ぁ

ξ゚−゚)ξ ?



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:09:33.63 ID:Uv0wFSOb0

・・・
今、心の隅に引っかかるものがあった。

何だろう。
もしかして、それは二人の隙間を生める解決策なのだろうか?

なんだろう、それは。
引っかかるものが、またすぐに抜け落ちないように。

慎重に、慎重に手繰り寄せる。

何故だろう、何で、すぐにその引っかかるものが、分からないんだろう。
すぐ、そこに見えてるのに。

もしかして、それは・・・
ブーンがずっと逃げていた答えなのだろうか?

ツンさんが、じっとこちらを見つめてくる。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:12:10.13 ID:Uv0wFSOb0

ツンさんの、整った顔。
白くて、透けるような・・・
少し見とれてから、透けるようなっていうか、
透けてるじゃん!ってセルフ突っ込みする。

そう。死んでるんだから。
死んでるから、触れない。

ブーンは、生きてるから、触れない。
生きている者と死んでいる者、そこにはどうしようもない壁がある。

だって、死んだものは、生き返れないんだから。

・・・?

あ・・・そうか。
死んだものは、生き返れない。

じゃ、逆は・・・



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:14:27.03 ID:Uv0wFSOb0

Σξ゚听)ξ !!!

(  'ω`) ・・・ツン

ξ゚听)ξ ぶ、ブーン?

(  'ω`) ブーンがもし・・・

ξ゚听)ξ ・・・



「もし、死んだら。ブーンは、ツンと一緒に、ずーっと、一緒に」

「・・・・」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:16:06.83 ID:Uv0wFSOb0

「出来もしないことをいうのは、よしてよ」

「・・・」

「そんな慰め、いらないから。
 どうせ、私が止めるって、思ってるんでしょ?」

「・・・」

「いいから。出来もしないこと、言わないでよ」

「・・・」

「ねえ、ブーン・・・」

「ツンはブーンの考えている事、わかるんだお?」

「・・・」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:17:19.86 ID:Uv0wFSOb0

青ざめるツンさん。
でも、同じようにブーンも青ざめているかもしれない。

今、決心してしまった。

今まで、楽しく二人で過ごしているつもりだったけど。
やっぱり、何かが足りなかった。

ブーンはツンさんが、好きだお。
もっと、ずっと近くに
ツンさんの傍にいたいお。

そのためなら何だって、やってやる。

そう、何だって・・・



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:19:20.05 ID:Uv0wFSOb0

「止めて!!!!」

「・・・ツンさん?」


泣きそうな顔で、ブーンを見つめるツンさん。
なんで、そんなに泣きそうなんだお?

ブーンがそうしたら、きっとずっと、一緒にいられるのに



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:21:08.85 ID:Uv0wFSOb0

「ごめんね、ブーン。ごめん」

「なんで謝るんだお」

「イライラしてたの。だから、ブーンを苛めちゃっただけなの。
 だから、ごめん」

「・・・ツンさん」

「死んじゃうなんて、言わないで。
 ブーンが羨ましかっただけなの」

「羨ましい?」

「・・・生きてること、それが、羨ましい」

「・・・そうかお? それが、そんなに大事なことなのかお?」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:23:01.76 ID:Uv0wFSOb0

「大事だよ! 死んだら、もう、ただここにいるだけだもん」

「・・・」

「何も変わることないし、何も変えられない。
 うらやましい。羨ましい。
 生きてるだけで、色んな可能性があるんだよ?
 死んだら、何もない!」

「・・・」

「私は、たぶん100年近くここに一人でいる。
 何も変わらずに、何も変えられずに!」

「ツンさん」

「もう、嫌だよ! いつまで、ここにいるの?
 どうやったら、離れられるの!?
 離れられないの!!!」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:26:19.48 ID:Uv0wFSOb0

「・・・どういう・・・ことだお?」

「ブーンはね、私が事故から人を守るために、ずっとここにいるって思ってるでしょ?」

「・・・じゃ、ないのかお?」

「ちがうのよ・・・
 私は、ここから離れられないの。
 短い時間ならともかく、長い時間は無理」

「お・・・?」

「幽霊って、そんな単純なものじゃないみたいなの!
 私は、ずっと、ずっと、ここに、いなきゃならないの」

「・・・じゃあ、ブーンが死んでも、ずっとここにいるお」

「それが、出来ないかもなの!」

「・・・なんで?」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:28:35.03 ID:Uv0wFSOb0

「そんなの、わかんない!
 とにかく、ダメ!!!」

「・・・ツンさん。ブーンは、それでも、可能性に掛けてみたいお」

「可能性にかける!?
 それが、ブーンが生きてるから考えられることなの!!!」

「・・・」

「お願い。止めて。
 私が、悪かったから。
 お願い、お願いします・・・」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:30:44.76 ID:Uv0wFSOb0

涙を流しながら、頭を下げて謝ってくるツンさん。

なんで?
ブーンは、こんなツンさんを望んだつもりじゃなかったのに。

一緒にいられるって、
喜んでくれるかと・・・

どうして・・・



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:32:27.21 ID:Uv0wFSOb0

「ブーン、怖いの」

「・・・お?」

「私はずっと一人、ここにいた。
 今は、貴方がいる
 それが、本音をいうと、凄く嬉しい」

「・・・」

「でも、貴方はこれからもずっといるとは限らない」

「ツンさん、ブーンは・・・」

「ブーンが生きてれば、他に好きな人が出来るかもしれない。
 そうでなくても、私が好きじゃなくなるかもしれない。
 そして、忘れられるかも知れない。
 そうじゃなくても、ブーンが死ぬまで、私と一緒にいてくれたとしても
 ブーンが死んだら、そしたら、多分終わり」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:34:19.69 ID:Uv0wFSOb0

「私はその後も、ここにずっと、一人。
 ブーンは、死後、きっとここにはいない。
 生まれ変わる準備に入るのか、
 それとも違う場所に縛られるのか。
 どうなるのか分からないけど、
 きっと、ここにはいない。
 私、また一人だわ・・・」

「・・・そうなのかお。ブーンは、死んでも・・・」

「そう・・・多分」

「・・・」

「それでも、一緒に、ちょっとでも、長く、一緒に居たいのよ
 死なないでよ
 触れあえなくても、見てるだけでも、贅沢言わないから・・・」

「・・・」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:37:02.26 ID:Uv0wFSOb0

ツンさんは、泣き続けてる。

ブーンは、ツンさんを抱きしめようとした。
ブーンの手と、胸にはツンさんの感触はない。

ツンさんも、抱きしめ返そうとしてくれた。

それでも、ツンさんがブーンに触れているあたりに
ツンさんの感触はない。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:38:51.45 ID:Uv0wFSOb0

「ごめんね、ブーン」

「・・・謝らないで欲しいお」

「ごめん」

「ツンさん」

「ブーンだって、同じだよね。 
 ブーンだって、私に触りたいだろうし
 寂しいのは、同じなのに」

「ツンさん・・・」

「ごめんね」

「ツンさん。ブーンは・・・」

「ん・・・?」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:40:47.32 ID:Uv0wFSOb0

「例え、他に何を犠牲にしても
 ツンさんと一緒にいるのが、一番だお」

「・・・」

「ホントだお」

「・・・ふんだぁ。バーカ!」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:42:36.22 ID:Uv0wFSOb0

ブーンから離れて、そっぽを向くツンさん。
でも、さっきよりは、空気が柔らかい。

ブーンも、ちょっと嬉しくなった。

ずっと、一緒には居られない。
そういう言葉を突きつけられてショックはあるけど

正直、そんな先のことは分からないお

とりあえず、今は
こうやって、ツンさんと信頼を深めていければ・・・

・・・



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:44:21.27 ID:Uv0wFSOb0

ふと、新たな疑問が浮かぶ。
それは、今さっきまでの、
ツンさんの悩みに比べればどうでもいい事だけど

それでも、凄く気になる、ツンさんの不思議・・・

ブーンの頭の中を読んだであろうツンさんも、
恥かしがってた顔を真面目な顔へと変えた。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:46:45.47 ID:Uv0wFSOb0

(  ^ω^) ツンさん

ξ゚听)ξ うん

(  ^ω^) 君はなんで、ずっとここにいるんだお?

ξ゚听)ξ ・・・

(  ^ω^) ・・・

ξ゚−゚)ξ わからない・・・

(  ^ω^) ・・・もしかして

ξ゚听)ξ ?

(  ^ω^) それが分かれば、ツンさんがずっとここに居る理由もわかるんじゃ?

ξ゚听)ξ ・・・ぅん



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:48:51.51 ID:Uv0wFSOb0

(  ^ω^) ・・・

ξ゚−゚)ξ ・・・

(  ^ω^) 全然、ダメ? さっぱり分からないのかお?

ξ゚听)ξ うん

(  ^ω^) ・・・そういえば、ツンさんの話聞いてても

ξ゚听)ξ ?

(  ^ω^) ここにいる時の話しか聞いたことないおね

ξ゚听)ξ あっ・・・

(  ^ω^) ツンさん、ツンさんが生きている間の話って・・・

ξ゚听)ξ それが・・・



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:51:11.37 ID:Uv0wFSOb0

(  ^ω^) ?

ξ゚听)ξ 覚えてないの

(  ^ω^) ・・・全く?

ξ゚听)ξ ・・・うん

(  ^ω^) 幽霊になると、生前の記憶がなくなるのかお・・・?

ξ゚−゚)ξ んー・・・そういうわけじゃないと思うけど・・・

(  ^ω^) ???

ξ゚−゚)ξ だから、私も何でここにいるのか・・・

(  ^ω^) ・・・



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/21(月) 21:53:21.31 ID:Uv0wFSOb0


二人に、また沈黙がやってきた。
こんどは、困惑によるものだけど。

どうしたらいいのかわからない、
途方にくれた感覚

その沈黙は、中々途切れなくて、

二人が何かを言い出す前に
別の音で中断されることになった。

「電車がきます〜危ないので白線の内側までお下がりください〜」
という、感情の篭らないアナウンスのような声

それから、電車の止まるような音。

一体、どこから・・・?



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