( ^ω^)達はタイムマシーンに乗るようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 22:51:00.17 ID:8zzA2AjA0


( -ω-)「すぴぃ〜…」

シュツリョク セイジョウ デス

( -ω-)「まだ時計止まってないお」

(´つω-`)

(´・ω・`) 「……!!!!」

ようやく目覚めたブーン、ドクオ、ショボン。
三人の目の前にあったのは、滝。時空の滝だった。
時代ごとの山々の風景が、次々とコマ送りのように上から下へ流れていく。
ショボン達はこれをタイムトンネルのように、タイム・シャワーと名付けていた。
ナイアガラを真っ逆さまに落ちていく筏のように、タイムマシーンは進む。

(´・ω・`) 「おい! 起きろ!」

( つω^)「なんだお?」

(  ゚ω゚)「って、うひゃあーーーー!!!」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 22:54:35.17 ID:0Xmxno0i0

(  ゚ω゚)「な、なぜタイムシャワーの中にいるんだお?」

(´・ω・`) 「お前が何かと勘違いして、起動ボタン押したんだろ!」

( ;゚ω゚)「やっべーー!!」

(´・ω・`) 「まあ、別に支障はないけどね。次の行き先は全て設定してあったし」

(;´・ω・`)「ただ! 覚悟の問題というか…… まあいい」

そう言ってショボンはフロントの座席に腰を下ろした。
その脇で、いつの間にか目覚めていたドクオが呟く。

('A`)「寝起きのタイムスリップもオツなものだね」

(´・ω・`) 「そうか? あまりいいもんじゃないな。
      …酔ってくる」

目の前の滝の色味が徐々に薄れていく。タイムワープが次の段階へ進もうとしている。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 22:57:23.52 ID:0Xmxno0i0
('A`)「―――くるぞっ!」

(´つω・`)「最悪の目覚めだなぁ」

( ○ω○)「光遮断サングラスだお!」


完全に周囲の色が無くなった。タイムシャワーは、一つの大きな光となってタイムマシーンを包む。
大地震のような衝撃が、彼らの体躯を揺さぶる。
起動前に諸々の微調整をしなかったせいか、一回目のワープの時より一際激しい揺れだ。


「・・・・なんだそれー! ブーン、俺に貸せー!・・」

「・・・ちょっ! ひっぱらないでくれお! うわわわわ!!・・・・」

「・・・・うおっ まぶしっ!!」

「・・・誰だ俺のちんこ握ってる奴!・・・・・・」

「うっひゃああぁああああ!!!・・・・・・・・ ゆれるるるっるるるっるる・・・・・」


――――――
――――



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:01:01.81 ID:0Xmxno0i0


*(‘‘)*「うっひょーー!!!」

*(‘‘)*「すごい! あっちこっち違う!」

*(‘‘)*「ヘリカル、かんどーのしゅんかんであります!」

一方その頃、ヘリカルは町に下りていた。
ブーン達に置いてけぼりにされたのも知らず、上機嫌で町を散策している。
父親達は「大して変わらない」と言い放った町並みも、彼女にとっては大きく変わっているように見える。
小さな子供と大人の、一年の長さの捉え方などに因るのだろう。


*(‘‘)*「ここはビデオ屋だった! ここはちゅう車場だった!
     あの公園のすべり台は赤かったぞ! あっ、しぃちゃんの家も新しくなってるー!」


彼女は逐一建物を指差し、実に楽しそうに町を歩いている。
足並みも自然と軽やかになっていた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:05:12.61 ID:0Xmxno0i0
やがて歩き疲れたのか、その体は公園のベンチにもたれていた。






*(‘‘)*「はぁー 疲れた……」

ヘリカルは徐(おもむろ)に左を向く。
誰か男の人が隣に座っているが、読んでいる新聞でその顔を見ることができない。

( :::)「…」

*(‘‘)*(大人はみんなしんぶんを読むんだなあ
     細かい字がたくさん書いてあるだけなのに、そんなに面白いの?)



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:08:20.07 ID:0Xmxno0i0
捲られていく男の新聞を眺めているうちに、彼女の頭にある考えが浮かんだ。


*(‘‘)*「……!! あっ!」

*(‘‘)*(あのおじさんが読んでいる新聞のなかみは、ワタシにとっては未来の出来事なんだ!
     ふふふ… 元のじだいに帰ってきて、サスガ先生や伊藤先生に未来のニュースをしゃべったらおどろくぞ…ww)

ヘリカルはニヨニヨとした顔で、中年の男を見つめていた。中年は呟く。

( :::)「…なんだいお嬢さん? 新聞が読みたいのかな?」


ヘリカルはにやけ顔のまま顔を上下に振る。
男はそっと彼女に新聞を手渡す。開かれていた面は、テレビ番組欄であった。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:11:26.50 ID:0Xmxno0i0
*(‘‘)*「ん…? これはまさかテレビばんぐみの…?
     2年後の…? ごくり」

未来のニュースを覚えるという企みはどこへやら。
ヘリカルはすっかり2年後のテレビ番組欄に夢中になっていた。

*(‘‘)*「”僕はモヌァー”まだ続いてんの!? 何シリーズ目だよ〜
     おっ、”ドク八先生”もやってるんだ。もうしちょー率取れないと思うけどなぁ…」

(::: )「…」

*(‘‘)*「!! …こ、こほん」

男の視線に気付いたのか、ヘリカルは新聞をぺらぺらと少し捲る。

*(‘‘)*「ふむふむ、なるほど〜」

*(‘‘)*「カブカがのきなみじょうしょう… か。なるほど、今が買い時だな」

*(‘‘)*「おっ! イチローまた打ってるか! いいねえ、チョーシいいねえ…」

*(‘‘)*(何書いてるかわかんねーよ もーー…)



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:15:21.88 ID:0Xmxno0i0
静かな朝の公園からは、小鳥のさえずりと少女が新聞を捲る音だけが聞こえてくる。
少女の隣に座っている男は、さっきから時間を気にしている。

ぺらっ… ぺらっ…

ぺらっ…


*(‘‘)*「!」


『八つ橋大学で改良型タイムマシーン完成! さらに20年後の未来へ―――――』


( :::)(…新聞を捲る手が止まった)

( :::)「お嬢さんもタイムマシーンに興味がおありかな?」


*(‘‘)*「あっ、 あのね!! あのね!!」

*(‘‘)*「これね! イチバン最初のはね! うちのお父さん達が作ったんだよ!!!」

( :::)「!?」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:17:39.61 ID:0Xmxno0i0
*(‘‘)*「…あっ!」

( (´・ω・`) 「タイムマシーンのことはあんまり人様に言っちゃ駄目だ…」 )

*(‘‘)*(や、やっば〜…)

男は一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐにまたヘリカルに優しい表情を見せた。力の抜けたくたびれた笑顔だった。
その時、初めてヘリカルは男の顔をしっかりと見つめた。


( ´ω`)「そうか。君のお父さん達はすごいんだなあ……」


*(‘‘)*「―――!?」

*(‘‘)*(お、お父さんにそっくり……!?)

( ´ω`)「私の顔になにか付いているかね?」

*(‘‘)*「い、いえ何も」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:20:06.09 ID:0Xmxno0i0
男の顔はブーンによく似ていた。
ブーンが疲れている時や、落ち込んでいる時に見せる表情。
それにシワを数本刻めばあの顔だと、ヘリカルは思った。
動揺を隠せず、次の言葉を出すことができないヘリカルを尻目に男は立ち上がった。


( ´ω`)「おっと、もうこんな時間だ。学校に行かなくては……」

( ´ω`)「新聞はお嬢さんにあげよう。それでは、お父さんによろしくな」


男の歩幅は大きく、あっという間にベンチとの差は開いていった。
ヘリカルは呆然としつつ、なんとなく再び新聞に目を向けてみる。
平和そうな顔つきの学生の笑顔が、そこに写されてあった。



―――――――
―――――



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:22:10.32 ID:0Xmxno0i0



*(‘‘)*「いやー… それにしてもおどろいた…」

「なにがだい? おじょーちゃん」

*(‘‘)*「ううん! なんでもない! おっちゃん、しおラーメンな!」

「あいよっ!」


時刻は昼を過ぎ、ヘリカルは昼食を摂りに街角のラーメン屋に来ていた。
一人で外食をするのも彼女にとっては初めてである。品が出来上がるのを待つ時間も、ヘリカルにとっては退屈なものではなかった。
先程の出来事にしこりを感じつつも、天井に取り付けられたテレビを眺めながら彼女は揚々と待つ。


*(‘‘)*(うおっ!! ガッキー大人びてるな!!)

*(‘‘)*(うーん… まさみちゃんはちょっとオバンになったかな)

*(‘‘)*(タモリはいつの時代もタモリだなぁ)



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:24:51.63 ID:0Xmxno0i0
*(‘‘)*「…〜♪」

「へいおまちっ!」

*(‘‘)*「おおっ! 美味そうだ!」

ラーメンのスープの匂いが漂う中、店の親父さんは彼女に話しかける。

「しかし嬢ちゃんはなんで一人で来たんだい? おつかいの帰りかい?」

*(‘‘)*「えーとねえ…、 タイ…」

*(‘‘)*「…おっと」

*(‘‘)*「そう! おつかいの帰り! 魚屋さんでタイを買って来いって言われたの」

「はは、そうかい! (あのリュックん中に鯛が入ってるのか…?)」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:27:45.49 ID:0Xmxno0i0
ヘリカルが美味しそうに麺を頬張る姿を見ながら、親父さんは続ける。

「…それにしても似てるなあ」

*(‘‘)*「ん? 何が〜?」

「外れに住んでるヘリカルちゃんのちょっと小さい頃にそっくりだ」

「妹さんかい?」

*(‘‘)*「もぐもぐ… いや、っつーかワタシが…」

*(‘‘)*「!」

*(‘‘)*「いもうとです〜」

「ははは! そうだろう、そうだと思った」

「ねぇちゃんは元気かい?」

*(‘‘)*「んー 多分」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:29:41.54 ID:0Xmxno0i0
「そうかい、そいつぁ良かった。あの子最近外で遊んでるの見ないからよぉ」

*(‘‘)*「まー、外でドロ土だらけになるより、中でパズルとかしてるほうが面白いし」

「なんでも勉強ばっかりやらされてるってウワサじゃないか? なんでも、もう高校の問題も解けるとか…」

*(‘‘)*「やらされてるんじゃなくて好きでやってるの!!」

「わ、わりぃわりぃ! ねぇちゃん思いで結構だよ。ははは」

*(‘‘)*「…」

「しっかしあんなに頭いいと将来何になるか、他人の俺でも楽しみだよ」

*(‘‘)*「そうかな?」

「ああ。嬢ちゃんは何になると思う?」

*(‘‘)*「うーん…」

「やっぱり親父さん達みたいに、偉大な科学者にでもなるか?」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:31:26.82 ID:0Xmxno0i0
*(‘‘)*「科学者にはならないな…」

「ほぉ、それじゃあ何だい?」

*(‘‘)*「うーーん…」

ヘリカルは少し悩み、心許無い声で答えた。

*(‘‘)*「お…」

*(‘‘)*「お嫁さん」

「ははは!!! そうかい、逆に平凡な夢を持ってるってことか?
 面白いなあ。でも、ちょっともったいないな!」

*(‘‘)*「…うん」



他愛も無い会話はその後も少しだけ続き、しばらくしてヘリカルは店を出た。
南中した太陽の光が彼女を照らしていた。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:34:03.61 ID:0Xmxno0i0


*(‘‘)*「ブーンお父さんみたいに明るくて〜」

*(‘‘)*「ドクオお父さんみたいに料理がうまくて〜」

*(‘‘)*「ショボンお父さんみたいに頭がいい男の人… か」

*(‘‘)*「そんな人、いないよね〜」

*(‘‘)*「しょうらいのゆめ…」

*(‘‘)*「よく作文で書かされるけど、いっつもサッパリ思いつかない!」

*(‘‘)*「花屋さんとか〜 スチュワーデスとか〜
     いっつもその場で考えてるけどさ…」


(私はどんなオトナになりたいんだろう?)




*(‘‘)*「わからーーん!」

そう言ってヘリカルは足元の小石を蹴飛ばした。
その小石が飛んだ先は、彼女が通っている小学校の校門の向こう。

*(‘‘)*「あ… 小学校だ…」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:44:03.05 ID:8zzA2AjA0
*(‘‘)*「もうこんなに歩いたのかよー」

*(‘‘)*(ヘリカルは今、四年生か…)

*(‘‘)*「四年生の教室は… あそこだっ!」

ヘリカルの視線が東側校舎の二階へ飛ぶ。
二年後の自分が、都合良く窓際に座っていないかと、端から窓の一つ一つを追っていく。

*(‘‘)*「いちくみー… にくみー… さんくみー…」

*(‘‘)*「…あっ!」

自分の姿は見えない。しかし、代わりに彼女は親友であるしぃの姿を見つけた。
窓際のしぃは自分の時代よりもずっと髪の毛が伸びていて、体も一回り大きくなっている。

*(‘‘)*「しぃちゃんだ! …よーし」

*(‘‘)*「おーい! おーい!」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:45:26.45 ID:8zzA2AjA0
ヘリカルはしぃに視線を集中させて、懸命に手を振る。

*(‘‘)*「きづけー! おーい!」


〜〜〜〜〜

(*゚ー゚)「…ん? 何だろあの子… こっち見て手を振ってる」

(*゚ー゚)「!!」

(*゚ー゚)「ねえねえ。ちょっと見てみなよ!」

「ん〜?」

〜〜〜〜〜


*(‘‘)*「やばっ! となりの人に何か言ってる!
     みんな寄ってきたらやばいぞ〜… 二年後とはいえ”どうきゅーせい”だ」

*(‘‘)*「というわけで逃げろ!」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:47:46.32 ID:8zzA2AjA0
(*゚ー゚)「あっ、行っちゃった…」

「しぃちゃん、何?」

(*゚ー゚)「あ、いやなんでもない…」

「も〜 私は微分の応用問題で忙しいんだよ〜」

(*゚ー゚)「ご、ごめんねヘリカルちゃん」


(*゚ー゚)(あれは… 小さい頃の…)



――――――――
――――――



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:49:08.06 ID:8zzA2AjA0



その後もヘリカルは街を見て周った。
自分の時代との小さな違いに気付くたび、腕を組んでドクオのようにわざとらしく感慨に耽る。
そして次第に、日は暮れていく。


*(‘‘)*「うーん。時のながれってすばらしいのね…」

*(‘‘)*「ところでお父さん達はどこに行ってるのかな?」

*(‘‘)*「町をぐるっと回ってるけど、さっぱり見掛けないぞ〜
     …ま、そっちのほうがいいんだけどね! 見つかったら何言われるか…」

*(‘‘)*「でも、おばあちゃんの家にいくよりはマシかな!」

*(‘‘)*「…もう夕陽がのぼる時間かぁー」

*(‘‘)*「よし! 帰る前にあそこに行こう!」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:51:58.31 ID:8zzA2AjA0
ヘリカルが向かった先は、墓場がある山の上の展望台。
彼女は自分の時代に戻る前に、街を一望しようと思ったのだ。


*(‘‘)*「…ふう。ようちえんの遠足で来たっけな、ここ」


息切れした体を整えて、彼女はこうべを上げる。
雲の隙間、隙間から、オレンジの光が漏れていた。
そして、ビルの群れの向こうに、沈む真っ赤な太陽があった。
ヘリカルは眉上に手をかざして、それをゆっくりと見つめる。

*(‘‘)*「うーん!! どのジダイも、ここから見えるふうけいのすばらしさは変わらないな!!」

*(‘‘)*「……などと言ってみるワタシ!!」




*(‘‘)*「よし、帰ろう♪」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:53:27.98 ID:8zzA2AjA0
登ってきた道とは違うルートで山を下る。
途中にタイムマシーンが到着した地点があるのだ。


*(‘‘)*「やまおとこにはー ほれるなよー♪」

*(‘‘)*「さか道は、帰るときは楽しいぜっ!」

*(‘‘)*「ダーーッシュ!!」


勢いをつけたヘリカルは一気に坂道を下る、そして平地に辿り着く、そこにはタイムマシーンが… ない。


*(‘‘)*「!?」


*(‘‘)*「……おいて、いかれた?」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:55:43.18 ID:8zzA2AjA0
自分が置いて行かれたことを自覚したヘリカルは、また当ても無く町を彷徨う。
辺りが暗くなり、少しだけ大きく開いた彼女の瞳は、うるうると波打っていて、今にも泣き出しそうだ。
”違う時代”に置いて行かれた。それは彼女にとって、デパートや町で迷子になる事とは比ではなく、超越した出来事だった。
だからかえって思い切り泣きじゃくることができず、何よりも不安な気持ちで町を歩いていた。

彼女は一日中町を歩き、体力も底をついていた。
まるで軟着陸するかのように、朝の公園へと辿りついた。


*(‘‘)*「…」

*(‘‘)*「どーしよ」

*(‘‘)*「足いてー…」

*(‘‘)*「うっ、うっ…」


ベンチに疲れた体を預けると、塞き止めていた感情が決壊する。


*( ;;)*「うわああああああん!!!!!!」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/22(土) 23:57:40.28 ID:8zzA2AjA0
夜の公園にたむろするカラスの鳴き声は、少女の嗚咽を掻き消す。
赤いハーフパンツに、大粒の涙の跡がいくつも付いていた。



やがて、彼女は泣き疲れて寝てしまった。








――――――
―――



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/23(日) 00:00:24.34 ID:BOClYbL/0



ヘリカルは目を覚ます。体を包むのは冷たい夜風ではなく、薄い毛布。
下は柔らかいソファー。 自分の家だろうか、いや違う、それよりも寝心地がいい。
目線の先には星空ではなく、白い天井。


(…あれ? わたしは、泣きつかれて寝てしまったんじゃ…)


向こうからしわがれた声がする。どこかで聞いたことがある。
そんなに遠いときのことじゃない。


「あ、起きたかい」


体を起こした彼女の目に飛び込んできたのは、朝の公園で出会った男だった。
ブーンによく似ているあの男。


( ´ω`)「公園でうずくまっていたから、風邪をひかないようにと連れて来たんだ…」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/23(日) 00:00:58.62 ID:BOClYbL/0
それだけを言って、男はまた背中を見せた。
男が飲んでいるコーヒーの匂いが仄かにヘリカルの鼻をくすぐった。


*(‘‘)*「あ、あの……」


思わぬ人物との、思わぬ再開。
ヘリカルは言葉を上手に選べない。聞きたいことが色々あるだろうに、頭に浮かんだことをとりあえず話す。



*(‘‘)*「名前をおしえてください…」


( ´ω`)「うん?」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/23(日) 00:01:28.37 ID:BOClYbL/0
*(‘‘)*「どこかでお世話になった人のことは、必ずお父さんたちに教えなきゃならないんです…」

*(‘‘)*「いつも… そう言われてるんです…」

( ´ω`)「いい子だね」

*(‘‘)*「…」


コーヒーカップを静かにテーブルに置き、男は言った。




( ´ω`)「……私の名前は、杉浦」



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