( ><)のStand By Me

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:34:05.43 ID:mWDcYMxC0
それは夏休みが始まる一週間前のこと。
あの頃、僕らは14歳だった。




( ><)「大人になるってどういうことなんです?」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:34:47.85 ID:mWDcYMxC0
( ゚∀゚)「またビロードが訳の分からないこと言い始めたぜ」

( <●><●>) 「なんでそんなことを思い始めたんですか?」

( ><)「うーん… よくわからないけど… なんとなく…」

( ゚∀゚)「そんなくだらないこと考えてる暇あったら、女の子ナンパしようぜ」

( ゚∀゚)「今年の夏もひとりぼっちは寂しいぜ!」

( ><)「…そんなことする勇気ないんです」

( <●><●>) 「右に同じく」



四角い教室で、僕らはいつものように丸くなって歓談をしていた。
窓で切り取られた青い空から、眩い光が差し込んでいた。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:36:37.76 ID:mWDcYMxC0
( <●><●>) 「法律では僕らはあと5年や4年で大人になれます」

( ><)「うん……」

( <●><●>) 「そしたら、エッチな本やお酒やたばこもできますね」

( ゚∀゚)「げっへへへ。ヤニはいいもんだぜ。お前らも吸うか?」

( ><)「遠慮しとくんです」

( <●><●>) 「右に同じく」

( ゚∀゚)「ペッ」


( ><)「ジョルジュ君は早く大人になりたいんです?」

( ゚∀゚)「もち。 大人になったら自由じゃねえか。フリーダムよ、フリーダム」


( ><)「ワカッテマス君は?」

( <●><●>) 「私も早く大人になりたいですね。 子供扱いされるのは嫌いです」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:40:13.47 ID:mWDcYMxC0
( <●><●>) 「君はどうなんですか?」


ワカッテマス君の黒目がちの瞳が僕を睨んだ。


( ><)「ぼ、僕は……」

(;><)「わかんないです」


すると、隣で机をばんばんと叩く音が聞こえる。


( ゚∀゚)「かーっ! すぐこれだよ!」

( ゚∀゚)「何かあると、すぐ”わかんないんです”!」

(;><)「ううっ」

( ゚∀゚)「世の中ナメてんのかテメェは!」


また2、3回机を叩く音がした。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:42:35.20 ID:mWDcYMxC0
( <●><●>) 「舐めてるのは君のほうだと僕は思うんですが」

( ゚∀゚)「シャラーッ!」



(;><)「な、なめてないです……」

( ゚∀゚)「ほう」


ジョルジュは立ち上がり、一呼吸置いて僕に弁をふるった。



( ゚∀゚)「いいか!! 大人になるってことはな」

( ゚∀゚)「それはつまり…」

( ゚∀゚)「つまりだよ?」

( <●><●>) 「早く言ってください」

( ゚∀゚)「つーまーりー」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:46:05.20 ID:mWDcYMxC0
(;゚∀゚)「…」

( ><)ドキドキ


( ゚∀゚)「大人になる イコール! 男になるってことよ!」

( <●><●>) 「男になる?」

( ><)「ぼく、おとこのこなんです」



( ゚∀゚)「わかってねぇなぁ!」


そう言って、ジョルジュは拳を僕らの前に振りかざす。


人差し指と中指の間に、親指が差し込まれていた。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:50:35.41 ID:mWDcYMxC0
( ゚∀゚)「これよ、これ、これ」


そして、その拳のまま腕を上下させる。
僕にはよく意味は分からなかったが、ワカッテマス君は顔を赤らめていた。


(;<○><○>)「ほぎゃー」

( ><)「ワカッテマス君、顔がゆでだこなんです!」

( <●><●>) 「…おっと」



( ゚∀゚)「つまりお前らには縁遠い世界ってことは確かだ」

( ゚∀゚)「今はまだ、エロ本片手にシコシコやってるのが似合ってるぜ」

( ><)「シコシコってなんです?」

(;゚∀゚)「…はあ」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:54:13.08 ID:mWDcYMxC0
( ゚∀゚)「よし! お前、今日うちに泊まりに来い!」

( ゚∀゚)「親が用事で一晩いねーんだ」

( ゚∀゚)「男になるための基礎知識からお前には仕込まなきゃあかん」


( <●><●>) 「泊まり…?」

( <●><●>) 「親がいない…?」

( <●><●>) 「男に… なる…?」

( <○><○>)


ジョルジュがワカッテマス君の後頭部を缶の筆箱で叩いた。
いい音がした。


(;゚∀゚)「そういう意味じゃねえよ」

( <●><●>) 「そうですか… じゃあ僕も行っていいですか?」

( ゚∀゚)「ん、ああ、いいよ」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 19:58:54.36 ID:mWDcYMxC0
( ><)「ジョルジュ君の家で何をするんです?」

( ゚∀゚)「あん? 親がいねーんだから、そりゃー決まってるだろ」

( <●><●>) 「や、やっぱり僕は行くのよそうかな」

(゚∀゚ )「おまえ鈍器のようなもので頭かち割るぞ!」

( <●><●>) 「ゴメス」



( ><)(楽しみなんです!)



話を続けていくうちに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
速やかに散開していく集団たち。
僕は机に戻り、教科書とノートを出し、筆入れからシャープペンを出す。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:05:33.46 ID:mWDcYMxC0
先生の念仏のような声をBGMにして、
僕は窓の外に引かれていた飛行機雲のラインを見ていた。
あの上を歩いて、何処か遠い遠いところまで行ってしまいたい。


( ><)(授業ってつまんないんです)

( ><)(なんでみんなこんなクソ真面目に受けているんです?)

( ><)(ワカッテマス君なんて、先取りして問題集までやってるんです)

( ><)(狂気の沙汰!)

( ><)(逆にクソ不真面目な人もいるけど…)

僕は視線を斜め前に向けた。

( -∀-)「んごー ティッシュがカピカピやんけ……」

( ><)(あのくらいまでいくと、先生に怒られるから僕はやらないんです)


教科書に視線を落とした。
仮面ライダーの落書きが福沢諭吉と戦っていた。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:09:07.32 ID:mWDcYMxC0
( ><)(はあ…)

( ><)(子供なんてつまらないんです)

( ><)(毎日、学校、宿題、毎週、学校、宿題、カーチャン、うるさい、トーチャン、酒飲み)

( ><)(センコー、ガミガミ、、ララララ♪)


頭の中で適当な歌を奏でていると、先生の怒声がそれを崩した。



「ビロードっ!」





(;><)「は、はいっ!」

「まったくお前は、ちゃんと授業を聞いているのか?」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:12:54.86 ID:mWDcYMxC0
( ><)「わ、わかんないんで…」

(;><)「き、聞いているんです!」

「そうか。じゃあ問題を一つ… 明治の文化について今やっているんだが」

「学問のススメ を著者は誰だ?」



( ><)「え、えっと…」

(;><)「わかんないんです」







ライダーキックを浴びせられている人物が答えだと知らずに、
僕は頭のてっぺんにセンコーパンチをくらったのだった。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:19:11.78 ID:mWDcYMxC0
授業が全部終わり、僕は卓球部の活動と図書委員会の仕事をサボって街へ出た。
卓球部の活動は週に5回。図書委員会の仕事は週に3回ある。
だけど僕の出席率は一ヶ月を通して、20パーセントも満たない。


僕は体を動かすのは好きだけど、年が一つ違うってだけのウスノロにへこへこしたくない。
僕は本を読むのは好きだけど、並べたり積み重ねたりするのは嫌い。





( ><)(今日はどこにいこうかな……)






蝉の音が少しずつ聞こえてくる季節だった。
梅雨を抜けた爽やかな風が、女子高生のスカートを揺らしていた。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:23:58.76 ID:mWDcYMxC0
街を歩く。すれ違いざまの”大人”は誰もが皆、退屈そうだ。







本屋に行けば、色んな知識を吸収できる。

ゲームセンターにいけば、色んなゲームでストレス解消間違いなし。

美容室にいけば、ナウでヤングなヘアスタイルでゴーゴーディスコだぜ。

歌が歌いたい? カラオケでなんぼでも! 誰かと繋がりたい? ネット喫茶から世界に飛び出そう!

お腹が減ったらファーストフード! 歩きつかれたら電車に乗ろう!










街には、こんなに楽しいことが溢れているのに。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:29:06.56 ID:mWDcYMxC0
( ><)「おっ!」



僕の足は小さな書店の前で止まった。
ガラスの向こうに、僕がひいきにしている小説家の新刊が積み重ねてある。



( ><)「さっそく読んでみるんです!」






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30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:33:01.78 ID:mWDcYMxC0
( ゚∀゚)「おせぇなあアイツ……」

( ゚∀゚)「…!!!!! あっ、テメエ! 仕返しマスで俺に仕返しするなよ!!!!」

( <●><●>) 「だって僕ら二人しかプレーヤーいないじゃないか…」


ポンピーン




( ><)「ご、ごめん! 遅れたんです!」

( ゚∀゚)「ばーろー! 早くあがれよ!」




街が夕暮れを越えて、暗くなり始めていることに気付いたのは、
主人公の男がヒロインを殺しかける場面のあたりだった。
息を切らす僕の肩を、ジョルジュが軽く叩いた。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:37:04.98 ID:mWDcYMxC0
( ><)「なにやってるんです?」

( <●><●>) 「人生ゲーム……」

( ゚∀゚)「あ、おまえウィー持ってきた? うぃー」

( ><)「う、うん」


僕はショルダーバッグの中から、ゲーム機を取り出した。
するとジョルジュはわきわきとそれを取り上げ、テレビに接続する。
ひょっとして彼、一人の夜が寂しかっただけなのかもしれない。




( ゚∀゚)「うほほほーー!! Wii初体験だぜ!」

( <●><●>) 「僕もやります」



( ><)「ふぅ…」

( ><)ぎゅるる

(*><)「あ」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:41:09.07 ID:mWDcYMxC0
( ゚∀゚)「ハラ減ったん?」

( ゚∀゚)「テーブルの上にから揚げ置いてあるぜ」

( ゚∀゚)「ほっ! たっ!」


( ><)「わかったんです」





テーブルへ行き、から揚げを頬張る。
口の中で、薄い衣から油が染み出してくる。それは僕の空腹を満たすには十分の味わいだった。





三つぺろりと食べたあと、ベランダの窓越しに夜空を見る。
大なり小なりの星々が瞬いていた。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:45:12.36 ID:mWDcYMxC0
( ><) ぽけーっ


( ><)(めっちゃ輝いてる星もあれば、くすんでる星もある)

( ><)(ぼくたちも同じ?)

( ><)(僕はどんな星がいいかな)

( ><)(流れ星なんかはどうだろう……)


<ビロードもこっち来てやろーぜー



(><;)「僕はいいんですー」


<あー、そー



( ><) ぽけーっ



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:49:28.74 ID:mWDcYMxC0
何も考えないで、昼や、夜の、空や、 道の、虫や、花を見る。

そんな時間も、たまには必要だと、僕は考える。

ワカッテマス君は、いつも紙に書かれた数字に夢中だし。 

ジョルジュ君は、髪が長くて目がぱっちりしている人間に夢中だ。


そういえば、僕が夢中になってることってなんじゃらほい?


何もない。 そう考えてみると、僕は老人みたいだな。

目標も、目的も、これといってない。





それもいいなあ。大人をすっとばして老人になるのもいい。

僕はこの世で唯一の老人少年になるのだ。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:51:42.33 ID:mWDcYMxC0
老人ごっこをしていると、僕の頭にWiiのコントローラがすっ飛んできた。



( ><)「あいてててぇ」


( ゚∀゚)「あいててぇ〜 じゃねーよ! 今夜のビッグイベントの始まりだ!」

( ゚∀゚)「こっちこいよ!」


( ><)「わ、わかったんです!」

( ><)「男になるんです!」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:54:14.48 ID:mWDcYMxC0
僕はジョルジュたちが座っているソファーに腰を下ろし、
ビデオ3と表示された黒い画面を見つめていた。



( ゚∀゚)「覚悟はいいか?」

( ><)「はいっ!」

( ゚∀゚)「うむ。しからば再生ボタンを押せい」

( <●><●>) 「ポチッとな」




・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・



・・・・あふぅん・・・・・・・・・・・・・・・



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 20:58:50.63 ID:mWDcYMxC0
「あ、あつい・・ もっと、もっと 太いの」

「ここか? ここがええんか?」

「だ、だめ! いく、いく いっちゃう!」


画面の向こうで、裸になった女の人が、男にまたがっている。
女の人は、今まで僕の人生で、聞いたことのない声を発していた。


( <●><●>) 「こっ これは!!!!!」

( ゚∀゚)「むふふ。その通りだ」

( <●><●>) 「ただのアダルトビデオではありませんね」

( ゚∀゚)「むふふ。そうだ。純度100%の… 裏物だ!!」

( <○><○>)「むきょあーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」




( <●><●>) 「こここここれ どどどどどこで てててにいれたの」

( ゚∀゚)「ひみつだっ……」

( <○><○>)「あばっばばば」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 21:02:04.90 ID:mWDcYMxC0
(;><)「んはやはほへほーー」

( ゚∀゚)「ビロード、どうだ? 中々いいべ?」

(;><)「は、はだかー」

( ゚∀゚)「ほーら、これがオメコっつうんだ。そんでよ、このビラビラがよ、大人になるにつれ伸びるんだな」

( ゚∀゚)「そんでよ、上のほうにあるのが、なんつったっけ? くり、栗…」

( <●><●>) 「クリトリス」

( ゚∀゚)「そうクリトリス」



(;><)「くりとりす・・・・・」





衝撃だった。
確かに僕は、少しだけ男になれた気がした。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/12(土) 21:06:30.50 ID:mWDcYMxC0
鑑賞会が終わったあとも、僕は胸の動悸を抑えられなかった。

股間をさすってみたら、ちょっとだけ湿っているのに気付いた。



でもなんか…… 違う。





大人になるって… どういうこと?
やっぱりよくわからないまま。






その夜。僕は生まれて初めてオナニーということをしてしまいました。
ジョルジュ、ごめん。



1. ボーイズ、トリコに火を放つ    おしまい



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