( ´_ゝ`)兄者の宇宙ヤバイwwwのようです

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 00:49:51.58 ID:JT6VGhpY0



第1話 『俺は月にいる』



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 00:51:15.78 ID:JT6VGhpY0

数日後、母者が警察に捜索願を出した。


エロまみれの俺たちの部屋は
 (まぁ全部俺の私物なわけだが)
手がかりを探す警察官に踏み荒らされ、
俺はもちろん質問責めになった。


だけどその場にいた俺としたって、
言える事なんてほとんどない。
ただ、消えるようにいなくなった。
それだけだ。
左腕に残るビニール袋の落ちる感触だけ、やけに覚えている。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 00:54:04.67 ID:JT6VGhpY0
最近の様子はどうだったか?
悩みがあるようにはみえなかったか?
新しい友人関係などはなかったか?
家族ともめていたような事は?


警察からは聞かれて当然のことばかりだが、
俺はなんとなくキレてみた。

常にセットでいた兄弟、しかも双子の俺達だ。
俺が気付かないことがあるわけがない。
そりゃケンカは多かったけど。

暴れる俺を母者がおさえ、
父者が代わりに答えていた。
あの母者に抑えられて尚暴れられたのは
あれが最初で最後だ。
俺の力が増していたのか、
母者の力が弱かったのかはわからない。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 00:57:17.83 ID:JT6VGhpY0
誘拐、事件に巻き込まれたという見解を主に
捜査は進んだが、
いつまでたっても進展することはなく。
何者かからゆすりの電話がかかってくる事もない。


俺は日課だったネットをする事もできなかった。
こういう時、匿名制の場所は容赦がない。

こういう事件で被害者が生きていた事は少ないよな。
もしくは迷宮入り。

余計な知識ばかり身につけていた自分を恨んだ。


弟者が消えてから1週間とちょっと。
ついに明日は始業式の日。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 00:58:31.63 ID:JT6VGhpY0
∬´_ゝ`) 「兄者…」

夕方、姉者が静かに俺の部屋に入ってきた。
おそらく晩ご飯に呼びにきたんだろう、
階下からは美味しそうな匂いがする。

もともと姉者は近所で一人暮らしをしているのだが、
弟者が行方不明になって以来
手付かずになっているあれこれを手伝いに
帰ってきてくれていた。

俺と、弟者と、姉者。
そして母者と父者。

たった5人の家族だ。
こういう時に助け合えるのは、ありがたい。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:01:07.82 ID:JT6VGhpY0
父者は会社でそれなりの役についているため、
そう長いこと休み続けられない。
母者は独自に捜索をしているので、
姉者が今は家事をやってくれている。

3人は、深夜になると
リビングでなにやら話し合っているようだ。
弟者に関する事なら俺も混ぜろと訴えたのだが、
お前は今は休めの一点張り。

なんだというのだ。
俺がそんなに凹んでいるように見えるんだろうか。

たしかに、俺は俺で
落ち着かなくなっている部分はある。
そんな内面が自分の意識してる以上に外面に出てるのかもしれない。
毎日外に探しに出て、
弟者の友人関係もすべてまわった。

ひきこもりの俺をこんなに外に出させやがって、
弟者のやつ見つけたらボコボコにしてやんよ。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:03:11.84 ID:JT6VGhpY0
∬´_ゝ`) 「兄者、明日の事なんだけど」

∬´_ゝ`) 「学校…どうする?
      まだ辛いなら、行かなくてもいいわよ。
      母者達もそう言ってる」

( ´_ゝ`)「………」


正直学校に行くような気分じゃない。
弟者失踪はニュースにも出たし、もう噂にもなってるだろう。
学校の連中にいろいろ聞かれるのも嫌だが…



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:06:21.27 ID:JT6VGhpY0
( ´_ゝ`)「いや、行くよ」

( ´_ゝ`)「弟者のクラスや授業のことも見ておかないと、
       あいつが帰ってきた時困るしな」

∬´_ゝ`) 「そう…わかった。ご飯できたから降りてらっしゃい」


明日は弟者のクラス替えも見て、
なにか授業やクラスの連絡網がないか先生に聞いておかないと。


晩ご飯を食べ終わり、俺が自室に帰ったところで
母者達3人がまた話し合ってる気配がした。
報告でもしあってるんだろうか。
こんな時にこんな仲間外れみたいなことをされるのは
正直凄く心細いが…
あの母者達がそうしてるという事は、俺への配慮でもあるんだろう。

今日もFMVを一度も開かないまま、電気を消す。
歩きつかれた足が疲れを訴え、
俺はすぐにも眠りについた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:09:39.06 ID:JT6VGhpY0
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― ―― ―

( つ_ゝ`)「ん……?」

妙な感覚に目が覚める。
ベッドで寝ていた筈なのに、足が地を踏んでいる。
寝たまま立ち上がっていたのだろうか?
頭を2、3度ふり、あたりを見回す。

( ´_ゝ`)「あれ…?ここは…??」

ベッドどころか自室の影も形もない。
180度、灰色の空に灰色の地平線。
視界を遮るものがないため遠近感が狂うが、
塵ひとつ落ちていない機械的な荒野。
裸足のまま踏んでいる床は
プラスチックのようにツルツルでひんやりと冷たい。
まるで絵画のなかにでも放り込まれたような違和感。

(;´_ゝ`)「…なんだこの、アニメの心象描写でありがちな風景は」

「兄者が言うなら、おそらくそうなんだろうな」

(;´_ゝ`)「!?」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:12:38.28 ID:JT6VGhpY0
背後から聞きなれた、しかし最近聞けていなかった声がして
ムチウチになりそうな勢いで振り向く。


(´<_`;)「兄者……だよな?」

そこには、戸惑い顔で
茶色く薄汚れたボロ服を着た弟者がいた。

間違いなく、弟者だ。
やつれ気味で汚れてしまっているが
たしかに俺の弟だ。

(;´_ゝ`)「……おっ…弟者ああああぁぁあ!!」

いちもにもなく飛びついた。
恥とか格好悪さとか、そういったことは
なにひとつ考えられなかった。
ただ勢いにまかせて腕を伸ばす。

だが



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:14:40.48 ID:JT6VGhpY0

スカッ

Σ(;´_ゝ`)「!!」

俺の手は弟者を捕まえることなく
空しく宙を掻いた。

思わず自分の手のひらを見つめ、
おそるおそる視線を戻す。
弟は、どこか申し訳なさそうな顔をして
その場に立っていた。


(´<_` )「兄者………すまん」

すまんってなんだよ。
なにを謝ってるんだ。

胃に冷水を入れられたような感覚が襲い、
体がズンッと重くなった。
想像していた中で一番最悪の可能性が脳を支配する。


(;´_ゝ`)「お前、まさか……死…」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:17:27.75 ID:JT6VGhpY0
(´<_` )「…いや、抱きつかれたくないから
       避けただけなんだけど」

(#´_ゝ`)「てめえええええええええええええ!!!」


俺の拳が弟者の顔面にヒットアンドアウェイ。

殴れた。
触れるじゃないか畜生が驚かせるな。

パァァン、と小気味いい音を残した一発に
弟者は上体を大きく揺らして倒れそうになったが、
足を踏ん張ってこらえた。
そしてそのままの体制でギラリとこっちを睨む。


(´<_`#)「やったな兄者…?ここんとこロクなもの食ってなくて
       体力のないところに…」

(#´_ゝ`)「お前のことなんか知るかばかばかうんこ!!
       こっちがどれだけ心配したと…!!」

(´<_`#)「俺だって大変だったんだよ!!」

(#´_ゝ`)「しらねーよバアアアアアアアカ!!!」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:19:47.18 ID:JT6VGhpY0
ガッ ゴガッ フーフー
ポカポカワーワー

あーもー怖かった。ほんと怖かった。
泣きそうなのを誤魔化すように拳をぶんぶんふるい続けた。
今までの緊張感が全部爆発したような気さえする。

(´<_`#)「ハァ、ハァ……まいったか、クソ…」

( ´_ゝ`)「はい、参りました。もうカンベンしてください」

気がついたら俺はもう床しか見えてなかったわけだが

(´<_`;)「あ、あぁー…正直スマンかった兄者。
       いや、なんかひさしぶりで。つい」

俺がグッタリしているのに気がついて慌てて謝ってきた。
こいつにしては珍しく情緒不安定気味だ。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:23:30.52 ID:JT6VGhpY0
( ´_ゝ`)「フッ…このくらい。
       まだメインカメラをやられただけだ」

膝をガックンガックンさせながら立ち上がる。
弟者は何か言いたげな表情だったが空気読んで黙っていた。

( ´_ゝ`)「…そんなことより、これはやっぱり夢なのか?」

弟者が生きている。元気でいる。
これは俺の願望が見せている夢なんだろうか。
それにしてはリアルな気もするが。

(´<_`;)「わからない……」

あたりを見回し、首を捻る。

( ´_ゝ`)「なぁ弟者、お前は今どこにいるんだ?
       誘拐でもされたのか?
       教えてくれ…助けがいるなら、いくから。
       母者が動けばほとんどの事は解決するはずだ」


あの地球の生命体とは思えない母者の力をもってすれば
たとえ拉致を得意とするあの国や
イタリアンマフィアが相手でもなんとかなるだろう。
なぁに、俺だって
自分の力をあてにするほど無謀じゃないって事さ。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:27:53.56 ID:JT6VGhpY0
(´<_`;)「……いや、誘拐されたわけじゃないんだ…
       信じてもらえるかわからないが…
       自分でもいまだに信じられないんだが……」

弟者がなにやら言いよどんでいる中、
俺は突然無性に眠くなってきた。
瞼がいまにもくっつきそうだ。

( ´_ゝ`)「いいから、言ってくれ…なにか凄く眠くなってきた。
       もう時間がないような気がする…」

( ´_ゝ`)「なんでも信じるから……
       助けに行くから……」

ボーッとした頭をむりやり弟者に向ける。
夢の中で寝たら、起きる事になるんだろうか。
もしそうだったらもう機会はないのかもしれない。
どんなワラでも掴んでやる。
ここで話を聞いておかないと。

(´<_`;)「………」

そんな俺をしっかり見据え、弟者の口が開いた。

(´<_` )「兄者……」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/19(土) 01:31:10.76 ID:JT6VGhpY0

(´<_` )「俺は今、月にいる」


第一話終わり



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