('A`)は川 ゚ -゚)と繋がるようです
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 22:43:31.05 ID:LTHS9D+k0
第二話
校庭で見掛けた少女は、時を待たずして俺の目の前に現れた。
目にする距離が近ければ近いほど、昨日夢見た理想の姿と似ていて俺は驚く。
あくまで外見上の話だが。
「こんな時期だが、転校生を紹介する」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 22:47:26.40 ID:LTHS9D+k0
- 転校生は前髪をさっと横に分け、凛とした瞳でクラスの全域を捕らえた。
クラス中の誰もが彼女に釘付けになる。 俺なんてもう釘が貫通してぶっ倒れそうだ。
川 ゚ -゚)「素直空です。よろしくお願いします」
('A`)「ぶふっ」
「ドクオ、どうかしたのか?」
('A`)「…ただのくしゃみっす」
「きもっwwww」
('A` )(うるせぇな…)
転校生、いや素直さんの視線が一瞬こちらに向けられた気がした。
だけど俺は耳の先を赤くして、顔を伏せた。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 22:51:07.43 ID:LTHS9D+k0
- 自分の名前だけ名乗ると、素直さんは俺を目指してツカツカと直進してきた。
…というのは錯覚で、空いている席は俺の後ろだけだから、そこに向かって歩いてきたのだ。
(ひゅー… すさまじい美人)
(ほれた…)
(ヤリてぇ…)
(かっこいい♪)
(やべぇ…)
('A`)(ひゅー… すさまじく美人でほれたヤリてぇしかもかっこいいわやべぇまじやべぇ)
彼女に対するあらゆる感想や想いが、頭の中で飛び交う。
パソコンの画面から飛び出てきた彼女が、今俺の目の前にいる。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 22:53:16.98 ID:LTHS9D+k0
- ('A`)(やっば… 俺の後ろかよ…)
('A`)(なんか緊張するな…)
彼女の気配が、俺の背後に移動した。そして、着席した。
それは、なんというかエキセントリックな感覚である。
つんつん
(;'A`)「!?」
素直さんは机に座ると、俺の背中をつついた。
俺は尻尾を踏まれた猫のように驚き、ゆっくりと後ろを振り向いた。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 22:56:45.80 ID:LTHS9D+k0
- ('A`)「あの、何か…?」
川 ゚ -゚)「や」
川 ゚ -゚)「目が、合ったね」
('A`)「え?」
川 ゚ -゚)「さっき」
(;'A`)「あ、ハイ…」
川 ゚ -゚)「…」
('A`)「…」
(;'A`)(あ、会話おわり?)
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 22:59:28.45 ID:LTHS9D+k0
- 素直さんはそれだけ言うと、窓の外に視線を外した。
会話は終わったということか。俺は再びゆっくりと身体を向き直す。
そして、「短いけど言葉のキャッチボール所謂会話というものをしてしまった!!」
という喜びを、一人噛み締めるのであった。
そんな俺の気持ちとは裏腹に、窓から見える空は不機嫌そうだったが。
('∀`)(雨降りそうだな)
('∀`)(窓閉めとくか)
('A`)(おっと! ニヤけたままだったぜフフフ)
――――――
――――
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:03:28.02 ID:LTHS9D+k0
- 時間は平坦と過ぎ、昼休み。 教室の雑踏が一際煩くなる時間帯だ。
俺は安いパンを速やかに口に放り込んだのち、文庫本を開いてそれを読み始める。
('A`)(さて… 憩いの時間だ)
表紙には勿論ブックカバー。 これを付けておかないと、
「何読んでるの?」とか「そんなの読んでるのwww」 って言うバカな奴が寄ってくるからな。
('A`)(人がせっかく心地良く読書してるのに、話しかけてきちゃうのはマジアウトよ、アウト)
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:04:21.94 ID:LTHS9D+k0
- ('A`)(しおりどこに挟んであったっけ?)
「何読んでるの?」
('A`)(あぁん?)
('A`)「…」
俺は隣を向いた。
川 ゚ -゚)
('A`)ブホッ
鼻からやきそばパンのやきそば出た。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:07:20.92 ID:LTHS9D+k0
- 素直さんの円らな瞳が俺を見つめる。 ああ、やめて。溶けてしまう。
そんな高貴なシャム猫のような目つきで俺を見ないでくれ。
('A`)「…」
('A`)「え、えと」
('A`)(太宰や三島とかって言うべきか?)
('A`)(いやここは正直に言うパターンだろ)
(;'∀`)「ラ、ライトノベル」
川 ゚ -゚)「そんなの読んでるんだな」
人生オワタ。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:09:37.12 ID:LTHS9D+k0
- 思えば素直さんは、朝から移動しないで席で一人過ごしていた。
バカ騒ぎしているスイーツ達の集団にも混ざろうとしない。
あまりにも暇だったのだろうか。その挙句にした質問は、俺に失態を吐かせたよバーロー。
ライトノベルなんて、俺の学校じゃオタクの代名詞。
別に隠しているわけじゃないのだが、印象は最悪だよ。死にたい。
いや、どっちにしろ俺の印象なんて元々最悪じゃね? いくら隠そうとしても、無駄じゃね?
だって外見とか見かけとか顔とか外見とか顔とか。
('A`)(ウボァー)
川 ゚ -゚)「…ま」
('A`)「?」
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:11:57.47 ID:LTHS9D+k0
- 川 ゚ -゚)「私もラノベは別に嫌いじゃない」
('A`)「!?」
川 ゚ -゚)「…だが、普通の小説も読んでみたほうがいい」
川 ゚ -゚)「面白いから」
予想を反する反応に、俺は気持ち悪い笑顔で応じた。
しょうがなかったんだ。どんな顔で女の子と話せばいいかなんてわからん。
ガチでわからん。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:15:29.05 ID:LTHS9D+k0
- (;'∀`)「あ、ああそうなん? わ、わかったぁじゃあ今度普通の小説も読んでみるわぁ!!」
(;'∀`)「なな、何がおすすめなの?」
うわー俺キモい。だけど素直さんは特に気にすることなく会話の流れを止めない。
川 ゚ -゚)「これ」
素直さんは机から一冊の本を取り出し、俺の机にちょこんと置いた。
俺はそれを中指と人差し指で手繰り寄せ、タイトルを読んでみる。
中々、難解そうな本だ。
('A`)「女王の… 千年、密室」
川 ゚ -゚)「ああ」
川 ゚ -゚)「森博嗣は、好きだな」
もりひろし? 野原ひろしと舘ひろししかわからんわー。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:18:46.46 ID:LTHS9D+k0
(;'A`)(なんて口にしたらきっと凍りつく展開が待っているだろうな)
ページを恐る恐るぺらぺらと捲ってみた。
なるほど、これは面白そう。いやわからんけど。
川 ゚ -゚)「貸してあげるよ」
('A`)「えっ! ちょっ! そんな、いいっすよ」
川 ゚ -゚)「あ、そう。じゃあ返して」
(;'∀`)「あわわ!! わ、わかりました。読ませていただきま〜す」
今の自分の表情、壮絶に気持ち悪いだろうな。
そんなことを思いつつ、俺は素直さんから本を受け取った。
なんだか俺、やっぱ自分キライだわ。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:21:04.63 ID:LTHS9D+k0
- ('A`)「家帰ったら読んでみますわ〜」
('A`)「…はい」
…よし、会話はこれで終結か?
川 ゚ -゚)「君も何か私に貸して」
な ん だ と。
頼むからそれ以上会話を繋げないでくれ……。
俺はカーチャン以外の女性と、まともに会話なんかしたことないんだ。
(;'A`)「え、ええーっとぉ…」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:23:41.27 ID:LTHS9D+k0
- あたふたする俺に、素直さんが声を掛ける。
川 ゚ -゚)「それ、今置いてあるそれ貸してよ」
(;'A`)「え、あ、これ、今読んでる最中だからダメ」
後で思ったんだけど、これって俺最低じゃねーか!
川 ゚ -゚)「…それじゃあ」
川 ゚ -゚)「これにする」
素直さんが手に取ったのは、鞄の中に入れてあったCD。
昨日、放課後に買いに行って、そのままにしておいたんだっけ。
勿論、一回も再生してない。 なるほど、そうくるかと俺は思った。
(;'A`)「え、でもそれCD… しかもまだ…」
その瞬間、風が吹いた。 廊下側の窓からの強い風だ。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:27:12.97 ID:LTHS9D+k0
- 素直さんの柔らかなロングヘアーが風に揺れ、向き合う俺の顔面に近づく。
ほのかなシャンプーの匂いが俺の鼻をくすぐった。なんつーいい匂いだよコレは。
それにヤラれてしまったのかどうかは、知らないが、俺はどうにでもなれという感情を抱く。
そして、
('A`)「ん… じゃあ、いいよ。本もCDも貸してあげるよ」
川 ゚ -゚)「いいのか?」
(;'∀`)「いいよぅ」
川 ゚ -゚)「ありがとう」
俺、もうだめだ。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:30:43.58 ID:LTHS9D+k0
- 川 ゚ -゚)「なるべくすぐ返すよ」
('A`)「あ、別にいいよ…」
「ねー」
二人の会話を、茶色のDQN君が切り裂いた。
俺はほっとしたような、むかつくような、悲しいような。
「クーちゃんっていうんだっけ?」
「なあ、メルアド交換しねえ?」
川 ゚ -゚)「え、あ、えと」
(;'A`)(どうした素直クー! ここはすっぱり”やだ”っていう場面だろう)
しかし、しどろもどろとする彼女の姿もまた可愛いと思う。
早い話が彼女の全ては可愛いんだよチクショウ。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:33:10.83 ID:LTHS9D+k0
- 川 ゚ -゚)「…」
その時、都合よくチャイムが鳴った。
低俗な群れは、廊下へと授業の準備をしに出て行く。 俺もそれに倣って出て行く。
川 ゚ -゚)「チャイムが鳴った」
川 ゚ -゚)「それじゃ」
「え、ちょっとwww 待ってよwww」
('A )(よおし! いいぜ! いいぞ素直空!)
―――――
―――
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:35:50.70 ID:LTHS9D+k0
- その日、俺が最後に素直空に接触したのは、放課後。
昇降口の前だった。 外は、不機嫌な雲が雨を存分に降らしていた。
('A`)(折りたたみ傘持ってきて良かった… と思う反面、自転車どうしようという苦悩…)
('A`)(あ、素直さんだ)
素直空は、昇降口の標語の看板の前で佇んでいた。
手に傘はない。 やはりどんな姿でもサマになると俺は思った。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:39:18.73 ID:LTHS9D+k0
- ('A`)(いいなあ…)
(*'A`)(あ)
ふと、目が合った。 しかし、場合分けしたなら俺がスケベだというパターン。
ほぼガン見じゃないか俺。それだけ見てれば目が合うのは当然だろう。変態め。
(;'A`)
なぜかモジモジとする俺。 女子中学生かお前は。
素直さんは、そんな俺を見てこう語りかける。「キメェwww」 いやそうじゃなくて。
川 ゚ -゚)「…」
川 ゚ -゚)「雨は、好きだな」
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:43:05.65 ID:LTHS9D+k0
- 自然に言葉が出た。
('A`)「………え、雨?」
('A`)「あ、俺も好きだわ。いいよね、雨」
(;'A`)(ん?)
返答をした自分。それは、紛れもない、素の自分だった。
彼女と出会って数時間。初めて出た素のリアクション。
それを受け、彼女はこう応えた。
「…そっか」
(;'A`)(笑った!!!?)
その表情を俺は逃さなかった。目の裏に保存して、いつでも再生できるよう、瞬時に焼き付ける。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/04/26(土) 23:46:24.30 ID:LTHS9D+k0
- 川 ゚ -゚)「…それじゃ」
微笑んだ表情をすぐに仕舞い込んで、素直さんは再び校舎の中へ入っていく。
そういえば鞄も持っていなかったが、何故だろう?
そんなことより俺は上機嫌だ。理屈抜きに上機嫌だ。
笑ってくれた。素直クールが、笑ってくれた。
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('A`)「…ふふ」
水溜りを跳ねながら上機嫌に帰路を辿った。
久しぶりにいい気分で俺は歩いた。
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