('A`)と恩返しのようです

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:01:20.51 ID:4yS7pKEl0
-2-


―――――チュン・・・チュン・・・


小鳥のさえずりで目が覚める。
覚めてから言うのもなんだが、なかなか貴重な体験だ。


チュン・・・チュン・・・


ん?なんだ、もう鳴き声は充分だ。
小鳥風情がそんなに目立つものじゃない。


チュン・・・チュン・・・


('A`)「ええーい、うるさいわ!」

('A`)「・・・・なんぞこれ?」



('A`)と恩返しのようです



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:07:04.54 ID:4yS7pKEl0
寝ぼけ眼を擦ると、まず視界に飛び込んできたのは鳥、鳥、鳥。
しかも"小"なんて生易しいものじゃない。鳥だ。
そんな彼らが俺の部屋を縦横無尽に飛び回っている。
あ、今糞しやがった。どーすんだよこれ。


('A`)「誰かー、助けてくれー」

( ^ω^)「どうしたんだお!?」


気の抜けた叫び声をあげるとすぐにブーンが飛んできてくれた。


(;^ω^)「これは・・・…」

('A`)「何とかしてくれーい」

( ^ω^)「ピー太郎にピー子!!それにピー助もいるお!!!」

('A`)「はい?」


鳥が数羽、ブーンの頭に止まる。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:07:38.58 ID:4yS7pKEl0
 
('A`)「何で名前がついてんの?」

( ^ω^)「こいつらは僕の友達だお!」


とりあえずブーンに雑巾を投げつけることにした。
着弾した拍子にブーンに群がる鳥が驚いて奇声を上げていたが気にしない。
ペットの始末は飼い主がするべきだ。

俺は、これからはいくら暑くても窓は開けまいと心に誓った。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:07:57.70 ID:4yS7pKEl0
 
('、`*川「あら、おはよう」

('A`)「おはよう」


居間に行くとおばあちゃんは既に起きていた。
テーブルの上には既に朝食が用意されている。


('A`)「いただきます」


食前食後の挨拶は欠かさない。
よく小さい頃に親父に殴られて、こういう所はしっかりしているのだ。

白米・味噌汁・目玉焼き。
質素なようでしっかりとした朝食。
東京にいたころはこうはいかなかったので、とても嬉しい。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:11:13.91 ID:4yS7pKEl0

('、`*川「よく噛んで食べるんだよ」


そう言うと、おばあちゃんはどこかへ出て行ってしまう。
畑でも見に行ったのかな?なんにしても朝からご苦労様だ。


もぐもぐ……もぐもぐ……。
食べていて思うのだが、「もぐもぐ」なんて擬音、誰が考えたんだろう。
実際音なんかしないじゃないか。

もししたとしてもそれは「クチャクチャ」だろうし、そいつは只のマナーが悪い奴だ。
俺はそう言う奴が許せない。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:16:38.99 ID:4yS7pKEl0

( ^ω^)「お、飯が出来てるお!」


ドタバタと足音を響かせながらブーンがやってきた。
目にもとまらない速さで俺の隣に滑り込んでくる。


( ^ω^)「いただきまーす!!」

( ^ω^)クチャクチャクチャ

('A`)「死んじまえ!!」


ドゴォッ!と鳩尾に一発入れる。
いや、誇張表現とかじゃなくて本当にドゴォッ!と。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:19:57.14 ID:4yS7pKEl0
   
( ゚ω゚)「オブゥッ……何を…………」

('A`)「死んじまえ!!」

('、`*川「あらあら」


俺とブーンが一騒動繰り広げていると、ばあちゃんがやって来た。
台所の片づけが終わったのだろうかばあちゃんは、俺たちを見るなり笑った。


('、`*川「もっと落ち着いて食べないからよ。ほら、あの猫を見習いなさい。」

('A`)「ん?」


ばあちゃんの視線の先を見ると、そこには一匹の黒猫がいた。
どうやら俺たちと同じく朝ごはんを食べているようだ。
ばあちゃんはこの猫にご飯をあげに行ってたらしい。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:23:46.15 ID:4yS7pKEl0

( ^ω^)「随分行儀良く食べてるお」

('A`)「確かに。お前とは大違いだな」

('、`*川「逆らな自然なんだけどねぇ……うふふ」


おばあちゃんは自分が言った言葉にくすくすと笑った。
つられて俺も笑う。最後には、ブーンまで笑った。

田舎の広い一軒家に、俺たちの笑い声が響く。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:25:08.02 ID:4yS7pKEl0
   
ξ゚听)ξ「朝っぱらから元気ねぇ……。」

( ^ω^)「お?もう来たのかお、ツン」


声のほうを見ると、縁側でツインテールが揺れていた。
こちらを見て、なんともいえない表情をしている。
もしかしてあれがデフォルトなのだろうか。


ξ゚听)ξ「なんで倒置法なのよ・・・・・。」

( ^ω^)「すまんこすまんこ」

ξ゚听)ξ「下品なのは嫌い」


全力で同意だ。
食事だって会話だって下品より上品なほうがいいに決まっている。
あ……会話は時と場合によるかもしれないけど。
なんにせよ、今はそのときじゃない。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:27:08.86 ID:4yS7pKEl0
   
(*^ω^)「下品?ふひひ、わからないお・・・何が下品なのか言ってみてくれお?」

('A`)「とりあえず死んじまえ!!」ξ゚听)ξ

( ゚ω゚)「フォッ!?」


ダブルアッパー。
嗚呼、どうしてコイツはアホなんだろう。
昔からこうだったのだろうか・・・思い出せない。


('A`)「思い出したくないだけかもしれないけど」

ξ゚听)ξ「ん?」

('A`)「なんでもない・・・・で?なんか用があってきたんだろ?」

ξ゚听)ξ「遊びに来たのよ」


朝から元気なのはどっちなのか。
しかし口に出すと殴られかねないので、この思いは胸の内に秘めておく事にした。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:30:10.47 ID:4yS7pKEl0

( ^ω^)「じゃあ川にでも行くお」


ようやく……とは思えないほど完全に回復したブーンが提案する。


('A`)「川か。気持ちよさそうだな」

ξ゚听)ξ「じゃあ水着とってこないとね」

( ^ω^)「じゃあ30分後くらいに現地集合で」


という訳で、一旦解散となった。
昨日は森で今日は川……田舎は田舎で飽きる事もなさそうだ。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:32:32.87 ID:4yS7pKEl0
―――――意外と大きな川だった。
しかし、浅いところならそれほど流れが速いわけでもないので、怪我をする事もないだろう。
つまりは、絶好の遊び場ということだ。

水は透き通り、魚が泳ぐ姿が見えるほどだ。
これなら……なんて思って手で掴もうとするが、直に逃げられてしまった。


('A`)「意外と難しいな」

(メ^ω^)「素人には無理だお」

('A`)「黙れ変態。」


このブーン、ツンが水着を取りに帰った途端にカメラを準備し始めた。
しかも、ご丁寧に防水機能がついている奴をだ。

絶対黙ってろ、なんて言われたからここに来るなりすぐさまツンに教えてやった。
その後のことは想像にお任せする。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:36:36.05 ID:4yS7pKEl0

(メ^ω^)「男の夢なんだお」

('A`)「一緒にされたくはないな」

ξ゚听)ξ「ほら、何やってんのよ!」


それから俺たちは遊んだ。とにかく遊んだ。
対岸まで競争したり魚を取ったり、ビーチバレーなんかもした。
いや、リバーサイドバレーか?


('A`)「しかし……一回も勝てなかった」

ξ゚听)ξ「田舎者をなめるなよ!!」

('A`)「それでも女の子に負けるとはねぇ」


勿論ツンだけど、と心の中で付け足しておくのは忘れない



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:39:53.60 ID:4yS7pKEl0


('A`)「ちょっと頭冷やしてくる」


ツンにそう告げて離れたところへと歩いていく。
ちなみに内藤は採った魚を焼くために火をおこそうと悪戦苦闘している。


('A`)「疲れた・・・・」


そう言って大きめの石に腰を落ち着かせたそのときだった。


('A`)「なんだあれ?」


丁度川の真ん中あたりで水しぶきが上がっている。
最初は魚でも跳ねているのかと思った。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:40:53.67 ID:4yS7pKEl0
   
('A`)「なんだあれ?」


丁度川の真ん中あたりで水しぶきが上がっている。
最初は魚でも跳ねているのかと思った。


('A`)「あんなでかい魚がいるわけ無いよな……」


そう、それはどう見ても人間。
人が溺れている。


('A`;)「ヤベェ!!」


次の瞬間には、もう飛び込んでいた。
必死になってそれの下へと泳ぐ。
なんとか、その腕を捕らえることができた。

だが、そこまで。
俺は後先考えずに飛び出してきた事を酷く後悔した。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:42:48.68 ID:4yS7pKEl0

('A`;)「くそ・・・限界だ」


あれだけ遊んだのだ。そろそろ限界が来てもおかしくない。
体から力が抜ける。あとは流れに身を任せるだけだ。

薄れゆく意識の中、クーの顔が見えた気がした。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:44:04.78 ID:4yS7pKEl0
――――目を覚ました時、俺は家にいた。


(;^ω^)「大丈夫かお?」

('A`)「え……?」


最初にブーンのアホ面が目に飛び込んできたとき、俺の頭は回っていなかった。


ξ゚听)ξ「アンタ川の下流で倒れていたのよ」


どうやら俺は溺れてしまったらしかった。
よく生きていたな……と思う。
そして、段々意識がハッキリしてくる内に重要な事を思い出した。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:45:47.44 ID:4yS7pKEl0

('A`)「そうだ、クーは?」

( ^ω^)「クー?昨日ドクオが言ってた人かお?」

('A`)「え……あ…………」


思い出した。内藤は俺たち以外に子供はいないといった。
でも掴んだ腕は、確かに女の人のものだった。
それに微かにだがクーの顔を見た記憶もある。


ξ゚听)ξ「アンタのほかに倒れてる人なんかいなかったわよ」

('A`)「そう……か…………」


なら、あれは幻なのか。
まあなんにせよ、俺が助かったのだから恐らく彼女も無事だろう。
根拠は無かったがそんな気がする。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:48:41.92 ID:4yS7pKEl0
  
( ^ω^)「今日は疲れたから、もう寝るといいお」


時計を見ると9時を指していた。
少し早いがいいだろう。


('A`)「そうだな……じゃあそうする」


電気を消す。
しっかりと窓が閉まっているのを確認して布団に入る。


('A`)「なにかかかってないと寝れない俺」


タオルケットを体に巻きつけて目を瞑る。
よほど疲れていたのだろう、直に意識は無くなった。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:51:34.44 ID:4yS7pKEl0
コンコン

窓を叩く音が聞こえる。
また鳥の仕業だろうか、安眠妨害とはいい度胸だ。
こうなったら徹底抗戦だ。意地でも眠って見せるわ。


コンコン・・・コンコン・・・・コンコン


むう、なかなかしつこい。
だがしかし、こんなところで降伏しては人間として情けない。


コンコン・・・コンコン・・・コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン


('A`#)「だーーーっ!お前は狐かこん畜生!!」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:53:51.72 ID:4yS7pKEl0

川 ゚ -゚) 「いや、狐じゃないぞ」

('A`)「え?」


窓の外にはクーがいた。
ずっと窓を叩いていたのは彼女らしい。


('A`)「本物?」

川 ゚ -゚) 「偽者がいるのか、私には」

('∀`)「そうか、き川 ゚ -゚) 「狐に化かされたと思った、なんていっても上手くないからな」

('A`)「…………」


まだ空は暗く、時計の針は2時を指し示している。
こんな夜中に何をしにきたというのだろうか。



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:54:11.60 ID:4yS7pKEl0
   
川 ゚ -゚) 「いや、狐じゃないぞ」

('A`)「え?」


窓の外にはクーがいた。
ずっと窓を叩いていたのは彼女らしい。


('A`)「本物?」

川 ゚ -゚) 「偽者がいるのか、私には」

('∀`)「そうか、き川 ゚ -゚) 「狐に化かされたと思った、なんていっても上手くないからな」

('A`)「…………。」


まだ空は暗く、時計の針は2時を指し示している。
こんな夜中に何をしにきたというのだろうか。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:54:45.34 ID:4yS7pKEl0
    
('A`)「まあ、とにかく入れよ。虫に刺されるぞ」


クーを招き入れ、窓を閉める。
すっかり恐怖が身にしみているらしく、俺は戸締りに過敏になっていた。




川 ゚ -゚) 「助かった」

('A`)「へ?」


突然頭を下げられた。


('A`)「助かった……って何が?」

川 ゚ -゚) 「溺れていた私を助けてくれただろう?」


眠いからだろうか、暫く頭が回らずに考えてしまう。
少し経って、ようやく頭の中が整理できた。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:56:19.06 ID:4yS7pKEl0
  
('A`)「じゃああれはクーだったのか?」

川 ゚ -゚) 「ああ。カッコよかったぞ、ドクオ。」


嬉しそうに言う彼女。
どうやら彼女が言っている事は本当の事らしい。


('A`)「あれ?でも俺途中で……」

川 ゚ -゚) 「ああ、最後のほう返事してくれないと思ったら意識が無かったのか。」


気力だけで泳いだ男、ドクオ。
なかなかカッコイイではないか、俺。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:58:09.64 ID:4yS7pKEl0
  
川 ゚ -゚) 「また……助けられてしまったな」

('A`)「え……?」

川 ゚ -゚)「いや、何でもないんだ。それより、カッコよかったぞ、ドクオ。」

('∀`)「人助けくらい当然だ」


カッコよさついでにさらにカッコつけてみる。
まあ大して意味は無いのだけれども。


川 ゚ -゚) 「じゃあな……と、なんだ窓なんか閉めて。」


クーが鍵の閉まった窓を開け損ねて文句を言う。



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:59:13.81 ID:4yS7pKEl0

川 ゚ -゚) 「まさか襲おうなんて思ってたんじゃないだろうな?」

('A`)「いや、それは鳥が……」

川 ゚ ー゚) 「冗談だよ」


クーは、今度こそ窓を開けると外へ飛び出す。
すぐそこにおいてあった靴を履くと森のほうへ走り出して行った。


('A`)「送っていかなくてもいいのかー?」

川 ゚ -゚) 「大丈夫だー!」


少し心配になったが、きっと大丈夫なのだろう。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 00:59:45.96 ID:4yS7pKEl0
空には満点の星空。
俺は暫く、クーが消えていった方向を眺めていた。

都会では見られないような星空。
まるでこの世のものとは思えないほど美しい情景。
誰もが心奪われ、この夜空に圧倒されるだろう。
だけど俺は……


('A`)「なんだ……いやな予感がする……」


特に何があったわけでもない。
しかし、なにかが渦巻いているのを感じる。

釈然としないまま、俺は眠りについた。



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