('A`)と恩返しのようです
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:07:58.58 ID:4yS7pKEl0
- -3-
―――――チュン……チュン…………
(゚A゚)「……ハッ!」
俺は起き上がると携帯のアラームを止める。
うん、アラームを『鳥の声』にしたのは正解だったみたいだ。
それでも少し不安だったので、部屋を見回してみるが勿論鳥などいない。
('A`)「我ながら素晴らしい反射神経だ」
そんなことを一人呟きながら着替えを済ませる。
窓の外には、相変わらず綺麗な森が広がっている。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:10:15.73 ID:4yS7pKEl0
-
('A`)「そういやクー、ちゃんと帰れたかな……」
背伸びをしてさあ朝食だ、なんて思っていたら突然襖が開いた。
(#゚ω゚)「ドクオォォォォォォォ!!!」
(;'A`)「うわっ!なんだ?」
ものすごい勢いで突っ込んでくるブーン。
「肉弾戦車ぁ!!」と脳内再生されたのは秘密だ。
( ^ω^)「いや、また僕の友達が迷惑をかけたのかと」
('A`)「…………。」
('A`)と恩返しのようです
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:13:14.98 ID:4yS7pKEl0
- このまま永遠に広がっているのではないかとさえ思える森。
沢山の鮮やかな緑と、木漏れ日が体を包み込むのを感じる。
('A`)「……あっちぃ」
( ^ω^)「まあそう言うなお」
まだこの村を案内してなかったお!
そんなブーンの提案により、俺は今村の中を歩いている。
ちなみに今日はツンがいない。なんでも用事があるのだそうだ。
('A`)「しかし………」
こうしてみると、奇麗な村である。
晴れた空はどこまでも澄み渡り、蝉の声さえもが不思議と涼しげで。
本当に俺は、こんなに綺麗な景色を、
こんなにも澄み渡っている空気を忘れてしまっているのか。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:14:39.66 ID:4yS7pKEl0
('A`)「まあ、歩いてるうちに思い出すところもあるだろう」
( ^ω^)「ん?どうかしたのかお?」
('A`)「いや、なんでもない」
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:16:18.51 ID:4yS7pKEl0
- しばらく歩くと、急に視界が開けた。
('A`)「おお……こりゃすごいな」
そこに広がるのはしっかりと……と言うほどでもないかもしれないが、コンクリートで舗装された地面。
いくつかの民家の中に1つだけ異彩を放っている近代的な建物。
全く気付かなかったが海に面しているらしく堤防も見えた。
( ^ω^)「この辺は役場があるから、家の方に比べて新しいんだお」
('A`)「へー、意外だな……というか、海なんてあったのか」
( ^ω^)「知らなかったのかお?」
('A`)「全く知らなかった。というか、海があるなら川じゃなくて海に行けばよかったのに」
昨日のことを思い出す。
川でおぼれていた何か………いや、あれはクーだったのだ。
もし俺が川に行かなかったら、クーは助からなかったかもしれない。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:19:45.73 ID:4yS7pKEl0
('A`)「いや、あれでよかったのか」
( ^ω^)「なにがだお?」
('A`)「気にするな」
ふと立ち止まって潮風を受ける。
もう何年ぶりになるか分からない潮の匂いが鼻をついた。
('A`)「なあ、今度海にも行ってみようぜ」
( ^ω^)「お?じゃあ明日にでも来るかお。」
('A`)「ああ、楽しみだ」
再び俺たちは歩き始める。
いくつかの家の間を縫うようにして抜け、役場の前を通り、気がつけば堤防の上にいた。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:22:22.55 ID:4yS7pKEl0
-
('A`)「…………」
ただただ、綺麗だった。
何に見とれているのかは自分でもわからない。
しかし、その美しさに圧倒されているのは自分だけではないらしく、隣にいるブーンも俺と同じように立ち尽くしている。
川 ゚ -゚)「…………」
('A`)「よ、よう」
川 ゚ -゚)「ん、ああドクオじゃないか」
声をかけると、彼女は振り向いてこちらに駆け寄ってきた。
川 ゚ -゚)「奇遇だな。ん?そちらは君の友達か?」
( ^ω^)「え、あ、そうだお。初めまして、ブーンですお」
挨拶をするブーン。
この様子だと、本当に初対面らしい。
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:24:42.96 ID:4yS7pKEl0
-
('A`)「なあ、クーは昔からこの辺に住んでるのか?」
川 ゚ -゚)「ああ、そうだが。どうかしたのか?」
('A`)「こいつと初対面だって言うからさ、気になっただけだ」
( ^ω^)「きっとたまたま知らなかっただけだお」
たまたまってお前……。
しかし、知らないものは知らないという二人。
結局ブーンの「かわいい子ならなんでもいいお」という一声で、その話題はおしまいになってしまった。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:27:02.91 ID:4yS7pKEl0
- ◇
('、`*川「あらあら、いらっしゃい」
あれからすぐに打ち解けたクーは、午後にはもう家に遊びに来るまでになっていた。
川 ゚ -゚)「おじゃまします」
( ^ω^)「ささ、上がってくれおー♪」
心なしかいつもよりか浮かれているブーン。
浮気か?浮気なんだな?
( ^ω^)「やっぱりクーちゃんは美人だお」
俺は静かにカメラのシャッターを切った。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:28:02.35 ID:4yS7pKEl0
- ―――――――縁側では風鈴が涼しげな音を奏でている。
そんななか、熱い決闘が繰り広げられていた。
川 ゚ -゚)「私のターン、【サイバー・ブレイン】をマナにして、【マリンフラワー】召喚」
( ^ω^)「む……こ奴、できる!ドロー!【ラ・ウラ・ギガ】をマナゾーンに、そして同じく【ラ・ウr(ry】を召喚!」
川 ゚ -゚)「私のターンだ、【アクア・ビーグル】をマナゾーンに、そして【マリンフラワー】を【アストラルリーフ】に進化させる!」
クーとブーンは、いつの間にか一昔前に流行ったカードゲームに夢中になっている。
ブーンがどこからか引っ張り出してきたものだ。
川 ゚ -゚)「進化!【クリスタル・パラディン】」
( ^ω^)「なん……だと……?」
('A`)「はぁ…………」
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:32:30.84 ID:4yS7pKEl0
- ついていけずに、俺は一人縁側に座っていた。
後ろの会話は意味が分からないが、クーがブーンを圧倒しているという事だけはわかる。
('A`)「暇だなぁ…………ん?」
(,,゚Д゚)「ゴル……にゃぁ」
気がつけば、俺の足元に1匹の猫がいた。
昨日の朝見た猫に似ているのだが、おそらく別の猫だろう。
家族かなんかだろうか。
('A`)「お前も暇なのか?」
(,,゚Д゚)「にゃぁ」
('A`)「そうか、じゃあ俺とまったりしてような」
(,,゚Д゚)「にゃー」
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:33:03.44 ID:4yS7pKEl0
- 猫を膝の上に迎えてブーンとクーの方を眺める。
どうやらもう1戦していたのがまた終わったらしく、またしてもブーンが敗北したようだった。
(,,゚Д゚)「にゃー」
('A`)「お、おい」
暫くそんなやり取りを眺めていると、猫は満足したかのように俺から飛び降りて走っていく。
('A`)「なんだったんだ?あの猫」
ξ゚听)ξ「なに一人でブツクサ喋ってんのよ」
('A`;)「うぉわっ!?」
いつの間にか、ツンが目の前にいた。
急いで来たのか、汗をかいているようだ。
- 76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:33:40.99 ID:4yS7pKEl0
-
ξ゚听)ξ「で?新しい女の子が来たって……誰?」
('A`)「クーのことか?クーなら今ブーンと……」
ξ゚听)ξ「!!……ブーンのところね?、アリガトッ」
そう言うなり駆け出していくツン。
なにやら面白そうな匂いがしたので、俺もそれに続く。
ξ゚听)ξ「はじめまして、クーさん」
川 ゚ -゚)「なんだね君は?」
ξ゚听)ξ「ツンといいます、この豚の知り合いです」
川 ゚ -゚)「そうか、よろしくな」
ツンが一人で修羅場を作っている。
なんとまあわかりやすい子なんだろうか……それが可愛いといえば、可愛いのだが。
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:34:27.93 ID:4yS7pKEl0
( ^ω^)「お、ツンも来たのかお?」
ξ゚听)ξ「え?あ、うん。……ってブーン!この女、あんたのなんなのよ?」
(;^ω^)「なんなのって言われても……友達だお」
ξ゚听)ξ「嘘おっしゃい、どうせまたかわいいだのなんだの言って……」
( ^ω^)「誤解だお!そんなことは言ってないお!」
不毛な争いはととどまることを知らずに続いていく。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:37:24.58 ID:4yS7pKEl0
- しかし、そんな争いも長くは続かない。
こんな時に立ち上がるのがこの俺、ドクオだ。
('A`)「ツンさんツンさん、これを……」
俺は、恭しくそいつをツンに手渡すと、
すぐさま保存してあった画像を呼び出す。
( ^ω^)「お?二人で何をやってるんだお?」
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:40:26.05 ID:4yS7pKEl0
- そこに映し出された画像―――――――ブーンがクー寄り添っている画像は、
眠れる獅子を呼び覚ますには十分すぎるものだった。
ξ#゚听)ξ「…………」
( ^ω^)「僕にも見せてくれ…………おっ!?」
気のせいか、ツンの体からオーラのようなものが見えた気がした。
('A`)「クー、こっちに」
川 ゚ -゚)「ん?ああ、分かった」
その後、家の中に嵐が吹き荒れたのは言うまでもないことである。
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:45:23.67 ID:4yS7pKEl0
- ◇
もうすっかり日も暮れて、辺りは闇に覆われている。
俺達は晩飯を終え、ゆっくりと食後の時間を満喫していた。
―――――――――明日は、東北地方は大荒れの模様
これまでも関東・中部地方では近年まれにみる大雨で、恐らくその影響を受け相当な嵐になりそうです。
('A`)「こりゃあ海は断念した方がいいかな・・・・・・」
( ^ω^)「せっかく美女二人と泳げるチャンスだってのに……残念だお」
('A`)「二人って……いつそんな約束したんだよ」
( ^ω^)「さっきクーちゃんが帰った時だお」
全く手が早い。
これには少し驚いてしまった。
しかし、先ほどあれだけツンに殴られておいて、よくそんな気が起きるものだ。
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:49:48.31 ID:4yS7pKEl0
-
('A`)「ま、運が悪かったと思うしかないな……」
立ち上がる。
もう時計は11時を示していた。
( ^ω^)「お?もう寝るのかお?」
('A`)「ああ、今日はなんだかんだ言って疲れたからな」
まあ、実際何をしたというわけでもないのだが。
( ^ω^)「そうかお。じゃあ、おやすみだお」
('A`)「ああ、お休み」
早々に部屋にひっこむことにする。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:53:21.70 ID:4yS7pKEl0
- 窓の鍵を確認し、布団を敷こうと押入れを開く。
('A`)「…………」
ミ,,゚Д゚彡「………」
閉める。
見てはいけないものを見てしまった様な気がする。
('A`)「きっと疲れがたまってるんだろう」
もう一度襖をあける。
ミ,,゚Д゚彡「…………」
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 01:56:18.82 ID:4yS7pKEl0
ミ,,゚Д゚彡「待て、なぜ閉めるんだ」
('A`)「キャアアアアアアアアア、不審者ァァァァァァアァ」
襖を開けたらひげ面のおっさんがいた。
これならまだ某タヌキロボットの方が自然に受け入れられる。
ミ,,゚Д゚彡「話を聞いてくれー」
('A`)「ハァハァ・・・食べない?食べない?」
ミ,,゚Д゚彡「ああ、食べないから」
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 02:02:09.32 ID:4yS7pKEl0
- うん、まあなんというか、人間いざというときほど冷静に思考できるというのは本当らしいね。
ミ,,゚Д゚彡「なんか悪いな、茶までもらっちまって」
('A`)「いえ、ペットボトルのですからそんなに恐縮しなくても」
まあ恐縮していても怖いものは怖いのだが。
('A`)「あの……それで、どういったご用件で」
ミ,,゚Д゚彡「ああ、そうだ。忘れてた」
ペットボトルに残っていたお茶をすべて飲み干してこちらに向き直る。
…………ますます怖い。
ミ,,゚Д゚彡「明日、海には近付くな。後川にもできれば近寄らない方がいい」
('A`)「え……海ですか?」
ミ,,゚Д゚彡「ああ……お前に伝えるのには少しわけがあるんだが…………まあ気にしないでくれ」
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/05(月) 02:06:53.19 ID:4yS7pKEl0
- ――――――結局、それだけを言うとおっさんは帰ってしまった………窓から。
('A`)「海にはいくなって……まあ、多分行かないけど」
おっさんが出て行った窓をいつもよりきつめに施錠して、電気を消す。
本気でこの家のセキュリティが心配になってきた。
なんだよあのおっさん、どっから入ってきたんだよ。
ブーンとツンとクー、それからなぜかあのおっさんの顔が脳裏をよぎる。
俺は、気がつけば夢の世界へと吸い込まれていった。
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