('A`)と恩返しのようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:01:46.85 ID:BAvta2+m0
- -4-
やめときゃよかったんだ
なんて後悔してもあとの祭りなのだが、それでも後悔せずにはいられないというかなんというか…………。
吹き荒れる風は水面を揺らし、激しさを増すばかりの雨は容赦なく視界を奪っていく。
('A`;)「早く戻って来い!」
しかし、叫び声は届かない。
代わりに響くのは雷鳴と風が奏でる音のみだ。
ξ;゚听)ξ「―――――!!」
(;^ω^)「――――――!!!!」
だけど声が届くまでもなく、二人は岸に向かって移動し始めている。
俺はまだ見えないクーの姿を探すのに必死になっていた。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:04:31.42 ID:BAvta2+m0
-
('A`;)「クーーーー!!」
はっきりとしない視界の中、目を凝らしてあたりを見渡す。
すると、30mほど沖だろうか、小さく水しぶきを発見した。
川;゚ -゚)「!!―――――!!!!!!」
('A`;)「クー!」
川で溺れていたくらいだ、泳ぐのが得意な方ではないはずだったんだ。
俺は迷わず海へと駆けだした。
('A`)と恩返しのようです
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:06:58.81 ID:BAvta2+m0
- 朝、目が覚めると窓の外には気持ちがいいくらいの青空が広がっていた。
昨日のニュースはなんだったのだろうかと思うほど澄み渡り、まだ朝だというのにギラギラと太陽が照らしつけてくる。
('A`)「なんだ……めちゃめちゃいい天気じゃん」
( ^ω^)「これで海に行けるお」
('A`)「どれだけわかりやすいフラグなんだ……」
昨日のおっさんのことを思い出す。
"海には近付くな"だっけか、分かりやすすぎるぞ、色々と。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:08:45.24 ID:BAvta2+m0
( ^ω^)「何のことだお?」
('A`)「いや、なんでもない」
ブーンはそんなことは知る由もないので、不思議そうな顔をする。
しかし、おっさんのことを話したところで異常者扱いされるのはおそらく俺だ。
('A`)「万が一ってこともあるしさ、やめておこうぜ」
でも……いやな予感がするんだ。海に行くわけにはいかない。
( ^ω^)「へんなドクオだお……」
納得がいかない様子のブーンを尻目に居間へと向かう俺。
しかし、結局俺は海に行く羽目になってしまう。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:10:48.05 ID:BAvta2+m0
- ◇
これでもかと降り注いでくる太陽。
足元には白い砂が広がり、焼けるように熱い。
遠く広がる海の青は、遥か彼方で空と混じり、まるで空が溶けて海に流れ込んでいるのではないかと錯覚するほどだ。
('A`)「結局来てしまった……」
おっさんの言葉を忘れたわけではない。
ただちょっと、本能に逆らえなかっただけというか、欲望に囚われてしまっただけというか。
川 ゚ -゚)「おお、待たせてすまなかったな」
('A`*)「待ってないです!全然!!」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:13:09.62 ID:BAvta2+m0
ブーンほどではないが、俺も男だ。
美人の水着姿が見れると分かって、どうして黙っていられよう。
(*^ω^)「もうこの瞬間に死んでもいいくらいだお」
ξ#゚听)ξ「その願い、聞き入れたぞ」
バコォァッ!!
すさまじい擬音とともに飛んでいくブーン。
お前の両腕は、もっとカッコよく飛ぶためにあるんじゃないのか。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:14:29.97 ID:BAvta2+m0
川 ゚ -゚)「せっかく皆で遊びに来れたんだ、楽しもうじゃないか」
ξ゚听)ξ「ん……ライバルとなれ合うつもりは………」
('A`)「まあまあ、そう言わずに」
俺達は真夏の日差しの下、青い空と海に向かって駆け出して、今日という日をを楽しむ。
後に来る嵐の存在など知る由もなく。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:20:49.93 ID:BAvta2+m0
- 静かな砂浜に二人の男が対峙する。
張りつめた空気は重く、それだけで体力を奪っていくように感じる。
先に動いた方が負ける。
この緊張に
打ち勝つ精神の持ち主こそ、勝者にふさわしいのだ。
( ω )「イッヒ・ナーメ・イスト・ドゥラ・イーモン… 冥界より来たりし凍てつく吹雪よ、我が剣となりて敵を滅ぼせ…エターナルフォースブリザード!!」
( A )「獄炎より蘇りし堕天使よ、今地獄の炎を呼び起さん…死魔殺炎烈光" (ディアボリック・デスバースト)」
ξ゚听)ξ「いいからさっさと割りなさい」
川 ゚ -゚)「スイカがかわいそうだな」
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:26:01.27 ID:BAvta2+m0
- 白熱した戦いも終わり、ようやく割れたスイカを手に並ぶ少年少女。
……あれ?はたして俺達は少年なのだろうか。
いまいち自信がない。
('A`)「なあ」
( ^ω^)「なにかお?」
('A`)「俺達ってさ……少年なのか?」
( ^ω^)「心はいつも少年のままだお」
('A`)「そうか」
この砂浜に遊びに来る人はあまりいないのだろうか、ここにいるのは俺達4人だけだ。
静かな空間に響くのは波の音と、俺達野郎どもの声のだけ。
('A`)「あれ?クーとツンはどこにいるんだ?」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:30:18.62 ID:BAvta2+m0
- さっきまでスイカを食べていたのだが、今はもうその姿はなく
残っているのは皮だけのスイカと持ってきた荷物だけだ。
('A`)「どーこーだー?」
( ^ω^)「あ、あれを見るお」
ブーンが指さす先、そこでは今まさに泳ぎださんとするツンとクーがいた。
ξ゚听)ξ「勝負よ!私が勝ったらブーンに近寄らないでよね」
川 ゚ -゚)「なんだか状況が飲み込めないのだが」
ξ゚听)ξ「うるさいわね!いいから早く準備しなさい」
強引に話を進めるツンに押され、とうとう泳ぎだすクー。
ツンもすぐさま続き、白熱した試合が繰り広げられようとしていた。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:33:40.58 ID:BAvta2+m0
( ^ω^)「よくわからんけど、頑張れおー」
当事者だというのにのん気なブーンを尻目に、俺は一人昨日のことを思い出していた。
"ミ,,゚Д゚彡「明日、海には近付くな。後川にもできれば近寄らない方がいい」"
今更になって不安になってくる。
その間にも二人はどんどん沖へ進んでいく。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:39:04.06 ID:BAvta2+m0
- 折り返し地点まで着いたのだろうか、リードしていたツンがこちらに向きを変えた。
('A`)「なんだ、やっぱ大丈夫じゃないか」
俺はひと安心した、その時だった。
ξ;゚听)ξ「!!」
( ^ω^)「……お?」
まっ先に顔色を変えたのはブーンだった。
ツンはその場で動かなくなり苦しそうにもがき始めている。
('A`;)「足……つってるよな?絶対」
(;^ω^)「ヤバイお!今助けにいくお!!」
急いで海に飛び込んでいくブーン。
しかし、その海の彼方にこちらに押し寄せてくる壁のようなものが見える。
……いや、あれは壁なんかではない。
('A`;)「つ・・・津波!?」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:44:13.11 ID:BAvta2+m0
- 一瞬だった。
すべてを飲み込み、それでもこちらへと向かってくる壁。
それほど大きなものでもないが、このままここにいたら危ないかもしれない。
気づけばあんなに青かった空は黒く染まり、風が吹き荒れる。
さっきまでの平穏が嘘だったかのような――――嵐だ。
('A`;)「チッ」
幸い、波は砂浜まで達することはなかった。
しかしこのままではいつ次が来るかわからない。
それに、今ので3人とも巻き込まれてしまった。
('A`;)「どこだ、どこにいる!?」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:46:37.00 ID:BAvta2+m0
- ◇
目の前が真っ白に染まっている。
ただ一点の曇りもなく、ただ"白い"そこに、俺はいる。
('A`)「どこだ・・・?」
俺の記憶が確かなら、今頃俺は荒れ狂う海の中にいるはずだ。
なんとしてでもクーを抱えあげて岸までたどり着かなくてはいけない。
('A`)「クー……クーは…………!」
叫ぶ。
声は出る。ならば叫び続けるのみだ。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:48:42.54 ID:BAvta2+m0
('A`)「どこだ!?返事をしてくれ!?」
なぜだろう、この白い空間に響くのは俺の声だけで、彼女の声なんて聞こえもしない。
なぜだろう、心のどこかで、もう彼女に会えないかもしれないなんて考えてしまっている。
('A`)「おい……冗談だろ」
違う、お前は分かっているはずだ。
違う、分かっているのは俺自身だ。
('A`)「クソ・・・クソォォォォォォォッ!」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/13(火) 21:49:45.63 ID:BAvta2+m0
その時だ。
目の前に光が見えたのは。
白い世界に降り注ぐ光。
暖かな色をしているそれは俺を包み込むと………消えた。
もうそこに、何も残さずに。
戻る/第五話