(,,゚Д゚)彼女は年上なようです从'ー'从

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:05:16.27 ID:zSy4s+PL0
第3話 『鈍い男』


(,,゚Д゚)「…………」
放課後、俺は鞄に教科書を詰め込みながら憂鬱な気分に浸っていた。

今日も、学校が終わってしまった。
また、あの家に帰らなければならない。

(,,゚Д゚)「……はあ」
思わず溜息が出る。
出来るなら、このまま次の日まで学校に留まっていたいんだが、
流石にそうもいくまい。

そこまですれば、いくら俺の両親でも何かしらのアクションを起こしてくる。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:07:21.94 ID:zSy4s+PL0
(,,゚Д゚)(……ショボンの所にお見舞いにでも行って時間を潰すか)
あの後、ショボンは開いた傷口を縫いつける為に再び緊急手術ということになった。

どう考えても看護婦さんに襲い掛かろうとしたことが原因なのだが、
しかしショボンは何であんなことしたんだろうか。

あいつが看護婦さん趣味だったなんて話、
聞いたこともなかったんだが。

(,,゚Д゚)「なあ、ジョルジュ」
俺は小声でジョルジュに話しかけた。
  _
( ゚∀゚)「んあ、何だ?」
ジョルジュが欠伸をしながら返す。

(,,゚Д゚)「入院生活ってのは、その、そんなに欲求不満になるもんなのか?」
常識的に考えなくても、
いきなり看護婦さんに襲い掛かるなんてのは普通じゃない。

てか、普通なら警察沙汰になってもおかしくないレベルだ。

今回は特に看護婦さんが被害届とかを出さなかったおかげで事無きを得たが……
しかしショボンの行動が甚だしく犯罪チックだったことには変わりが無い。

あの普段は極めて理性的で物静かなショボンが、一体何故。
入院生活というのは、そこまで人を変えてしまうものなのだろうか?



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:09:01.79 ID:zSy4s+PL0
  _
( ゚∀゚)「いや、あれは看護婦さんを狙ってたっていうよりもむしろ……
     ……やっぱいいや。 そのうち、お前にも判るさ」
(,,゚Д゚)「?」
ジョルジュが露骨に目をそらして言葉を濁らせた。

(,,゚Д゚)「てか今日どうする? またショボンんとこお見舞い行くか?」
俺はジョルジュに訊ねた。

お見舞いに行くとなれば、
またあの花屋に行く口実が出来る。
悪くない話だ。
  _
( ゚∀゚)「悪ィ。 今日ストバスの試合の約束があるんだわ。
     また今度ってことで頼むわ」
(,,゚Д゚)「ああ、そう」
口では素っ気無く答えたが、俺は内心喜んでいた。

ジョルジュが来れないってことは、
つまりあの花屋でじっくり花を選ぶことが出来るって訳だ。

(,,゚Д゚)「んじゃ今日は俺一人で行くから。
    ショボンにはよろしく言っとくよ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、頼んだ」
そう言って、ジョルジュと別れようとした時――



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:10:04.81 ID:zSy4s+PL0
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの!」
突然、後ろから声をかけられた。

この子は――
確か、同じクラスのデレさんだっけか。

いきなり、俺に何の用なんだろう?

(,,゚Д゚)「何? デレさん」
ζ(゚ー゚*ζ「え、えっと……その……
       ギ、ギコ君、これからショボン君のお見舞いに行くんだよね?
       良かったら、私も一緒に行っていいかなって……」
もじもじした様子で、デレさんが喋る。

(,,゚Д゚)「え? ああ、別に良いけど――」
しかし、何でだろう?

ショボンとデレさんは、そんな仲が良いって訳でも友達ってわけでもなかった筈だ。
なのに、急にショボンのお見舞いに行ってもいいか、だなんて。

ああ、そうか。
デレさんって優しそうだもんな。
ショボンの入院が長引いたってことで、心配になったんだ。

ショボンも罪な奴だ。
看護婦さんを襲おうとしたことで、こんな良い同級生に心配かけて――って。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:11:37.79 ID:zSy4s+PL0
(;,,゚Д゚)「いや、やっぱ駄目だった!
     ショボンは、あんま人が来ると気を遣うってんで、
     俺とジョルジュだけお見舞いに来る方が良いって言ってたからさ」
咄嗟に俺は嘘をついた。

危ないところだった。

ショボンは看護婦さんに襲い掛かる程欲求不満の状態なのだ。
そこへ、デレさんみたいな可愛い子が来たら、
また襲い掛かるってことも有り得ない話じゃない。

そうなればまたショボンの退院が延びるのみならず、
デレさんにもトラウマ級の恐怖体験をさせることになってしまうだろう。

ここは、決してショボンとデレさんを会わせるようなことがあってはならない。

ζ(゚ー゚*ζ「そっか……そうなんだ……」
デレさんが、寂しそうな顔を見せた。
傍から見ても、落ち込んでいることがはっきりと判る。

ごめん、デレさん。
だけど、今君をあの獣と化したショボンに会わせる訳にはいかないんだ……!

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんねギコ君、いきなり変なお願いして……」
(,,゚Д゚)「いや、こっちこそごめん。
    ショボンには、デレさんのこともよく伝えとくからさ」
俺はそれだけ言うと、
デレさんの悲しげな表情に後ろ髪を引かれながら、教室を後にするのだった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:13:50.75 ID:zSy4s+PL0





(,,゚Д゚)「…………」
俺は再び花屋の前に来ていた。
が、前回同様どうにも店に入るのに躊躇してしまう。

何も悪いことをしていない筈なのに、
どうにも緊張する。

いや、何こんなところで硬直してんだ、俺。
さっさと店に入るなりしないと完全に不審者じゃねえか。

でも、またこの店に来たことで、変に思われたりしないだろうか……
……いやいや、ここで店にも入らずうろうろしてる方が、
もっと変に思われるだろ常識的に考えて。

ままよ。
意を決して、店の中へと踏み込む。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:14:40.70 ID:zSy4s+PL0
从'ー'从「いらっしゃいませ〜……あら、この前の」
女の人が以前と同じ笑顔で俺を出迎えてくれた。

どうやら、俺のことを覚えてくれていたらしい。
情けないことに、それだけで嬉しいとか思ってしまう。

(;,,゚Д゚)「あ、ども、こんちわ……
    えっと、その……また、お見舞い用の花をお願い出来ますか?」
しどろもどろになりながら、俺はそう言った。

だから何でこんなにいっぱいいっぱいなんだよ、自分。
もう少し、カッコつけた喋り方出来ないのか。

从'ー'从「はい、構いませんよ。
     ご予算は、前と同じ千円でよろしいですか?」
(;,,゚Д゚)「あ、はい……」
二連続で千円の花篭とか、みみっちいにも限度があるだろ……
糞、絶対俺この人に良い印象持たれてねえ。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:16:41.93 ID:zSy4s+PL0
从'ー'从「お友達、早く退院出来るといいですね」
花篭を作りながら、女の人が俺にそう語りかけてきた。

(,,゚Д゚)「え、ええ、まあ、そうですね。
    本当は今週にでも退院出来る筈だったんですけど、
    ちょっとまあ、病状が悪化して……」
从;'ー'从「まあ! それは心配ですね……」
(;,,゚Д゚)「い、いえ! そんな大したことじゃないんですよ。
    退院が延びたっつっても、そんな命に関わるとかそんなんじゃないですから」
まさか看護婦さんを襲おうとして傷口が開きました、
なんてことが言える筈もなく、
俺は適当にお茶を濁すしかなかった。

从'ー'从「そうなんですか。 それならいいんですけど……
      ……はい、出来上がりました。 お待ちどうさま」
(,,゚Д゚)「あ、どうも、ありがとうございます」
花篭を受け取り、代金の千円を手渡した。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:17:44.19 ID:zSy4s+PL0


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16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:19:42.74 ID:zSy4s+PL0





   ∩∩
   | | | |
  ( ゚ω゚)  <こまーしゃる ここまで
  。ノДヽ。    
   bb






19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:20:36.69 ID:zSy4s+PL0
ξ゚听)ξ「ショボン、退院が延びたらしいわね」
昼休みの教室、女子生徒達が集まって他愛も無いお喋りに興じていた。

川 ゚ -゚)「そのようだな」
素直クールがそっけない口調で言った。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、本当は今日退院の予定だったんでしょ?
       大丈夫かなあ……」
素直クールとは対照的に、心配そうな声でデレは口を開いた。

ξ゚听)ξ「大丈夫でしょ、単なる盲腸炎らしいし」
ツンがあっさりと返す。

ζ(゚ー゚*ζ「でも……」
デレが食い下がるように呟く。

ツンはそんなデレの様子を見て、
ξ゚ー゚)ξ「な〜に〜? やけに心配そうね〜。
      ひょっとして、デレってショボンの事……」
そう、悪戯っぽく微笑んだ。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:22:01.64 ID:zSy4s+PL0
ζ(゚ー゚*;ζ「ち、違うよ! そんなんじゃないったら!」
デレは慌てて否定する。

しかし、ツンとクーはその否定の言葉を肯定の裏返しと取ったようで、
ξ゚听)ξ「はいはい。 判った判った。
      でも以外ね〜。 デレってああいうのがタイプだったんだ」
川 ゚ -゚)「人の好みに口を出すものではないぞ、ツン。
     それに、事実ショボンは悪くない男だ」
などとデレをはやし立てた。

クーの言う通り、ショボンの評判は学校ではかなり良い部類に入る。
成績優秀、品行方正、容姿端麗、公明正大、
そんな四字熟語で形容しても違和感の無い優等生。
それが、区立VIP高校でのショボンのレッテルだった。

勿論それは、誰もショボンの隠された性癖を知らないから故、であるのだが。

ζ(゚ー゚*;ζ「本当に違うったら!」
デレはより一層強く顔を横に振って否定した。

本音だった。
何故ならデレにはショボンなどではなく、
別の誰かが常に心の中に居たのだから。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:23:03.76 ID:zSy4s+PL0


(,,゚Д゚)「本当にもうあの時は慌てたぜ。
    いきなりショボンが看護婦に……」
  _
( ゚∀゚)「いや、その気持ちは判る。 よ〜〜〜く判る。
     俺も何度あのナース服に隠れた大きなおっぱいに顔をうずめようと思ったか……」


お喋りしているツン達に、ギコとジョルジュの話し声が届いて来た。

ξ゚听)ξ「あいつらまた馬鹿な話してるわね」
川 ゚ -゚)「放っておけ。
     あいつらも、ショボンがいなくて寂しいんだろう」
ツンとクーが冷ややかな目でギコとジョルジュを見た。

ζ(゚ー゚*ζ「…………」
そんな中、デレだけが二人とは違う目をする。
ツンもクーも、そのデレの目に気付く様子は無かった。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:24:48.22 ID:zSy4s+PL0
ξ゚听)ξ「……前から思ってたんだけど、
      何であの3人って仲良いのかしら」
ツンが思い出したように誰に訊ねるでもなく言った。

川 ゚ -゚)「確かに不思議ではあるな。
     ショボンもジョルジュもギコも、全然接点が無さそうなのだが」
クーもツンに同意する。

ξ゚听)ξ「てかジョルジュはまだ社交性があるから判るけど、ギコだけは謎だわ。
      というか、ギコがショボンやジョルジュ以外の人とつるんでるの見たことないし」
川 ゚ -゚)「ふむ。 そういえば、そうだな」
ξ゚听)ξ「ギコも顔は悪くないんだけどさ、
      何か周りから浮いてるって気がするのよね。
      時々、何考えてるのか判らないとこあるし。 何かああいうタイプって怖いのよね」
などと、ツンが好き勝手に喋り続けた。

ζ(゚ー゚*ζ「……そんなに、悪い人じゃないよ」
と、ポツリとデレが呟いた。

ξ゚听)ξ「え?」
その声をよく聞き取れなかったツンが、デレに聞き返す。

ζ(゚ー゚*ζ「……ううん、何でもない……」
しかしデレは、そう小さい声で答えるだけだった。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:26:44.79 ID:zSy4s+PL0



――人を好きになるのに理由は無いという言葉はよく聞くが、
果たして本当にそうだろうか。

人が人を好きになる。
そこには、必ず何かしらの理由が存在する筈である。

例えば、容姿だとか。
例えば、性格だとか。
例えば、経済力だとか。
あるいは――それら全部だとか。

ある一人の少女が一人の少年を好きになった理由は『雰囲気』である。
そう、少女は考えていた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:27:33.62 ID:zSy4s+PL0
閉校時間間際の放課後の学校、
少女が借りていた本を返す為図書室に寄った時、
図書室には一人の男子学生がいた。

その男子生徒は、少女の同級生ではあったが、
少女はその少年と特に何か会話を交わしたりしていた訳ではなかった。
正直、苦手だなあとさえ思っていた。

だけど何故かその時は、
少女は少年に対しそんな感情は抱かなかった。

その男子生徒は図書室で何をするでもなく、
ただ座って窓の外を見つめていた。

何をするでもなく、ただ、じっと。

その姿が、何故か少女の心を強く絞めつけた。

ただ、座って窓の外を眺めている。
それだけの筈の姿が、
たまらなく辛そうで、たまらなく可哀想で――

その気持ちが、少女の胸に焼き付いて離れなかった。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:28:14.31 ID:zSy4s+PL0
最初は、同情心なんじゃないかと思った。
そう思おうとしていた。

しかし、その時から少女は無意識に少年の姿を追うようになっていた。

そしてその中で、
少女は今まで知らなかった少年の一面を見るようになった。

少年の繊細さを、優しさを、
知るようになった。

そこで、少女は確信した。

ああ、私は、この人のことが好きなんだなあ

と。

驚きだった。
少女にとっては、恋愛などお気に入りの少女漫画の中だけの世界のことで、
自分がそんな体験をするなど、まだずっと先のことだと思っていたから。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:29:17.30 ID:zSy4s+PL0
しかし、少女にはそれ以上何かをしようとする勇気は無くて、
ただ、見ているしか出来なかった。
それしか、出来なかった。

だけど、少女は同時にこのままはいけない、とも思っていた。
このまま、想いを秘めているだけでは何も生まれないと。
何も変わらないと。

だから――
だから少女はある日、ありったけの勇気を振り絞って、
行動を起こした。

「え、えっと……その……
 ギ、ギコ君、これからショボン君のお見舞いに行くんだよね?
 良かったら、私も一緒に行っていいかなって……」
その一言を伝える為に、
どれだけの決意と勇気を少女は奮い立たせたか。

立ったまま失神してしまうんじゃないか。
そう思った程だ。

だが――



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:30:02.93 ID:zSy4s+PL0
「いや、やっぱ駄目だった!
 ショボンは、あんま人が来ると気を遣うってんで、
 俺とジョルジュだけお見舞いに来る方が良いって言ってたからさ」

だが、少年の返事は、
少女が望んだものとは大きくかけ離れたものだった。

それでも――

ζ(゚ー゚*ζ「そっか……そうなんだ……」
それでも少女は、そう言って無理に微笑もうとするのだった。



〜To be continued...〜



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:31:09.96 ID:zSy4s+PL0
次回予告



ある男の一生

0歳:ごく普通の中流家庭において出生。
5歳:両親に連れられ子供劇団に入団。
7歳:劇団での地方公演の際、高名な役者の目に留まる。
   以降、それまで所属していた劇団から大劇団に移籍し、才能を開花させていく。
10歳:名子役として大ブレイク。
    数々の作品に出演し、各界から注目を浴びる。
    この時、同じく次世代の俊英と目されていたツンデレに出会う。
15歳:両親が謎の失踪。
    マスコミや警察が懸命に真相を追究するも、真相は判明しないまま迷宮入りとなる。
20歳:活躍の場を世界に移し、全世界においてもその演技が注目を浴びる。
    某有名演出家をして、『千の貌を持つ男』と評され、世界中で数々の賞を総なめする。
25歳:ツンデレと結婚。
28歳:ツンデレと破局。 慰謝料等の問題は起きなかったが、以後、彼の言動が徐々に常軌を逸していく。
30歳:ささいな口論から脚本家と喧嘩になり、その際その脚本家を鉄パイプで殴打。
    傷害事件として書類送検され、それが原因で業界から干されることとなる。
32歳:麻薬取締法違反で逮捕。 逮捕時には廃人寸前の状態だった。
35歳:刑務所から仮釈放。 ホームレス同然の生活で日々を生きる。
36歳:自分で自分の顔を滅茶苦茶に切り刻み、ガソリンで焼いた末に自殺



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:31:58.07 ID:zSy4s+PL0



――僕には、いくつもの顔が有る。
だけど、僕という貌は無い。

( ^ω^)「ある日は傲慢不遜のギャングのボス。
      またある日は正義を信じる熱血警察官。
      昨日は冴えないサラリーマンで、今日は伝説の剣で戦う勇者。
      そして明日は大企業の社長だお」

あらゆる人物に成り切ることが出来る男がいた。

幾千もの仮面を使い分け、
幾万もの誰かを演じ続けた。

( ・∀・)「……現実では、そう簡単に自分を変えることなんて出来やしない。
      だから人は、演じることでその場を乗り切ろうとするのかもね」

彼は誰にでもなることが出来た。
誰の代わりでもすることが出来た。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:32:54.97 ID:zSy4s+PL0
<ヽ`∀´> 「確かに、お前の演技力は凄いニダ。
       どんな役でも、誰の役でもこなせるニダ。
       ――だけど、お前自身の演技がどこにもない、
       お前にしか出来ない役というものが存在しないニダ」

――だからきっと、彼はいつも、自分ではない誰かでしかなかった。

ξ゚听)ξ「……ごめんなさい、ブーン。
      私は、あなたを愛してなんかいなかった。
      あなたの中の、初恋の人の面影を愛しているだけだった」

――だからきっと、彼はいつも、誰かの代わりでしかなかったのだろう。

( ^ω^)「……判らないんだお。
      自分が本当は何を考え、何をしたがっているのか。
      いいやそもそも、自分というものがここに本当にいるのかどうか」

何者でもないからこそ、彼は何者にでもなることが出来た。
しかし、彼は自分にだけはなれなかった。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/30(金) 00:34:13.62 ID:zSy4s+PL0
( ^ω^)「きっと今の僕は、僕という役目を演じているに過ぎないんだお。
      笑っている演技をして、泣いている演技をして、愛している演技をしているだけなんだお。
      ――じゃあ、演技をしていない時の僕は何者なんだお?」

狂っていく歯車。
軋んでいく心。
それが、彼をゆっくりと追い詰めていった。

(#^ω^)「お前は誰だお! 鏡の中にいるお前だお!!
      そんなのっぺらぼうみたいな顔をそれ以上見せるな!!
      お前は一体誰なんだお!!!」

――これは、稀代の役者と呼ばれた男の、
その悲しい生涯を綴った物語。



( ^ω^)ブーンは演じるようです


近日公開



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