( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:50:24.72 ID:Q0M3tuDUO


「もしもし、私、渡辺さん」


「今、あなたの後ろに――――」


→振り向いて抱き締める。
→振り向いてキスをする。
→振り向いて愛撫する。
→振り向いて頭を撫でる。

 にげる。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:51:45.77 ID:Q0M3tuDUO


第二話「渡辺さん ―ね、携帯でしょ?―」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:53:07.40 ID:Q0M3tuDUO
マンションに引っ越してから三日後、ブーンは漸く重い腰を上げて、
搬入されていた荷物類を然るべき場所へと整理していた。

( ^ω^)「めんどくさ」

ξ゚ ゚)ξ「ショボン、お茶を入れてくれるかしら」

(´・ω・`)「くねくね」

あの世と隣り合わせの部屋は慣れてしまえば快適だった。

勝手に点くテレビはリモコンいらずと考えれば良い。
毎夜に起こる金縛りは寝相の悪いブーンには良い薬だ。
電気を消すと浮かび上がる人魂は暗い部屋を優しく照らしてくれる。

ξ゚ ゚)ξ「ありがと。ショボンは誰かさんと違って働き者ねぇ」

( ^ω^)「ソファーでくつろいでるツンに言われたくないお」

ξ゚ ゚)ξ「私は口裂け女、つまり女性よ? 女性に重い物持たせる気?」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:54:14.55 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「女性はむやみやたらと殺意を剥き出しにしないお」

ξ゚ ゚)ξ「それは幻想よ。女性だってヤる人はヤる」

( ^ω^)「KOEEEEEEEEEEEEEE!!」

(((;´・ω・`))ガクブル…。

ブーンは大袈裟に驚いてみせ、ヤる側の女性、ツンの横顔を見た。
お茶を啜る為、今は白いマスクを外している。

( ^ω^)「噛み付かれる前に退散しますかお……」

ξ゚∀゚)ξ「何か言った?」

( ^ω^)「いいえ! 別に!」

悪霊だろうが何だろうが、いつの世も女性が強い。
ブーンは素直に負けを認め、スゴスゴと作業を再開した。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:55:39.53 ID:Q0M3tuDUO
ブーンが住む666号室には洋室間が二部屋、和室が一部屋ある。
ブーンとツンが洋室間を使い、ハインは和室を使っている。
他の幽霊達とは違い、ツンとハインは人間の姿でいる事が多い。

( ^ω^)「有名であればあるほど強い、かお」

部屋を眺めて、ブーンは先日にツンが言っていた言葉を思い出した。
数多くの人間に知られているツンとハインは、
ブーンに憑く幽霊達の中でも強い部類に入る存在だ。
したがって、他の幽霊達が部屋を使わせて貰える事は無かった。

( ^ω^)「カワイソス」

所詮、幽霊の社会もこの世と同じ実力社会。
ブーンは胃に若干の痛みを覚えつつ、本棚に本を並べる。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:56:46.96 ID:Q0M3tuDUO
段ボールから本を取り出しては並べ、取り出しては並べ……。
いい加減ブーンが疲れて来た頃、誰かが扉をノックする音がした。

( ^ω^)「はいお」

ξ゚ ゚)ξ「お疲れ様。少し休憩したらどう?」

ケーキとコーヒーを乗せたトレイを持って、ツンが部屋に入ってきた。
コーヒーの甘い香りが部屋中に染み渡って行く。

( ^ω^)「おやつktkr」

時間は丁度15時。
ブーンは目を輝かせてテーブルの前に座った。
ケーキとコーヒーがブーンの目の前に置かれる。
ブーンはフォークを使わず、ケーキを手で掴んで食べようとする。

( ^ω^)「いっただっきまー…………」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:57:58.24 ID:Q0M3tuDUO
ケーキが口の中に運ばれようとした瞬間、ブーンの動きが止まった。
口を大きく開けて静止しているブーンをツンは怪訝な目で見る。

ξ゚ ゚)ξ「どうしたのよ」

( ^ω^)「………前から思ってたんだけど」

ブーンはケーキを小皿に戻し、前に座るツンに顔を向けた。

( ^ω^)「こういうの買うお金、どこから出てるんだお?」

ξ゚ ゚)ξ「知らない」

ツンはそっぽを向いて即答した。
悪霊のツンは働いていないのに、食べ物などを持って来る。
そして時には、ブランド物の服なども、どこからか仕入れて来る。

( ^ω^)「ツン?」

ξ゚ ゚)ξ「知らない」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:59:17.17 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)(待てお?)

( ^ω^)(ツン→悪霊→消える→店に行く→マジで)

( ^ω^)「マジで」

ブーンの推測によれば、ツンは万引きをしているらしい。
神隠しならぬ、金隠しを働いているというのだろうか。
ブーンは横を向いているツンの顔をまじまじと見つめる。

ξ;゚ ゚)ξ「な、何よ……気持ちの悪い」

( ^ω^)「別に」

ξ;゚ ゚)ξ「さ、さっさと食べなさいよ!」

ツンは慌てふためきながらブーンに食事を促した。
動揺して目が泳いでおり、ツンは何かを隠している様子だ。

( ^ω^)「……………………」

ξ;゚ ゚)ξ「……………………」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:00:05.41 ID:Q0M3tuDUO
気まずい静寂の後、ブーンが再びケーキを掴んで口に入れる。
ツンは沈黙攻撃から解放され、ほっと胸を撫で下ろした。

( ^,ω^)「もぐもぐ…それにしても荷物が、もぐ、片付かないお、もぐ」

ξ゚ ゚)ξ「喋るか食べるかどっちかにしてよ、汚い」

( ^ω^)「ゲフゥ!」

ξ#゚ ゚)ξ(……)

ブーンはコーヒーを一気に喉に流し込んだ。
暫し、舌触りの良い味の余韻に浸ってからツンに話しかける。

( ^ω^)「荷物が片付かないお」

ξ゚ ゚)ξ「それは聞いた」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:01:06.91 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「ツン〜、ちょぉっと手伝ってくれないかお〜?」

ξ;゚ ゚)ξ「きもっ」

( ^ω^) ニコニコ。

ブーンの気味が悪い猫なで声にツンは露骨に不快感を示す。
しかし、ブーンの屈託の無い笑顔にツンが折れた。

ξ゚ ゚)ξ「……はいはい、軽い荷物なら良いわよ」

( ^ω^)「ありがとだおー!」

ブーンは喜びを抑えきれず、テーブルに置いたツンの手を両手で包んだ。
案の定、ツンの頬が真っ赤に染まって行く。
ツンは必死に振り払おうとするが、強く握られている為に離れない。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:01:58.21 ID:Q0M3tuDUO
ξ////)ξ「バ、バカッ! わ、私は何をすれば良いのよ!」


( ^ω^)「アルバムの整頓を頼むお」


ξ////)ξ「わ、分かったら、早く手を離しなさい!」


( ^ω^)「こうしたら好感度が上がるかなと思って」


ξ#  )ξ(……………)



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:03:30.76 ID:Q0M3tuDUO
(自主規制)「前が……見えないお……」

ふざけ過ぎたブーンは、切れたツンにボコボコに殴られた。
ツンは怒りつつも、しっかりとアルバムの整頓をしている。

(自主規制)「お? 小学生の時読んでた漫画……ナツカシス」

ブーンは作業を一時中断して古い漫画を読み始めた。
ツンはアルバムを整頓しながらブーンを横目で睨む。

(自主規制)「ヴィルガスト面白いおー」

ξ゚ ゚)ξ「あら! この写真!」

アルバムの間に挟まっていた一枚の写真を見て、ツンが高いを上げた。
口元はマスクで見えないので分からないが、
目尻が垂れている事から察するに、微笑んでいるようだ。

(自主規制)「写真? 何の写真だお」

( ^ω^)つ自主規制



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:04:54.93 ID:Q0M3tuDUO
ξ*゚ ゚)ξ「ほら! 見て見て!!」

( ^ω^)「うーん?」

ブーンはツンと寄り添うように座り、ツンが持つ写真を一緒に眺めた。
そこには緑の山々を背景にして、一人でブーンがピースをしてる姿が映っていた。

(*^ω^)「懐かしいお! 僕が中学生の頃の写真だお!」

ξ*゚ ゚)ξ「ブーンの隣に立ってるのが私ね」

( ^ω^)「ハインは僕の後ろに立って何を」

一般人には分からないが、霊能力者が見れば卒倒しそうな物が写真に映っている。
真ん中に映るブーンを中心に、背景は全て悪霊達でひしめき合っている。

( ^ω^)「本当楽しかったお!」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:06:55.27 ID:Q0M3tuDUO
ξ*゚ ゚)ξ「ターボばーちゃんvsターボばーちゃんMK-U」

( ^ω^)「あれは歴史に残る名山道レースだったお」

ξ*゚ ゚)ξ「結局、同着だもんね。おばあちゃんの走りに生きる姿は燃えたわ」

( ^ω^)「僕、一回肩に乗せて貰った事があるけど怖かったお」

ξ*゚ ゚)ξ「そのまま死ねばよかったのに」

( ^ω^)「wwwwwwwwwwwww」

寄り添い、過去の郷愁を語り合うブーンとツン。
その二人の体は余りに近く、気付いた時には顔がすぐ側にあった。

ξ*゚ ゚)ξ(…………)

( ^ω^)「お?」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:07:48.98 ID:Q0M3tuDUO
マスクを外さないまま、ツンがブーンの頬に顔を寄せて行く。
そして、頬まであと数センチという所で。




ξ#゚ ゚)ξ(――ちょっと待てええぇーーーい!!)

ξ#゚ ゚)ξ(私は一体何で青春しようとしてんのよ!
      違うでしょ。そうじゃないでしょ……)

ξ#゚ ゚)ξ(私はブーンを殺さないと駄目なんだから!!)



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:08:53.56 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「どうしたお?」

ξ゚ ゚)ξ「いえ、なんでもないわ。作業の続きをしましょ」

( ^ω^)「?」

合点が行かなかったが、ブーンは本棚に本を並べ始めた。
屈みながら作業をするブーンの背中は、無防備でツンにとってチャンスだ。

ξ゚ ゚)ξ(ハインは居ない…。ショボンはキッチンでくねくねしてる)

ξ゚ ゚)ξ(ヤれる!)

ツンはポケットの中から、先端が鋭く尖ったハサミを取り出した。
クルクルと一回転させて持ち手を強く握り締める。

(;^ω^)「ふたりエッチ読んでも実践した事ないお」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:10:24.87 ID:Q0M3tuDUO
ξ#゚ ゚)ξ(童貞のまま死ぬのも良い物よ!)

ツンはハサミを高く振り翳してブーンの背中を狙う。
ハサミを握る力が強くなって行く。
そして、ハサミを降り下ろしたその時――ツンは後ろへと引きずり込まれた。

( ^ω^)「ツン、部屋で暴れちゃ駄目だお」

ξ;゚ ゚)ξ「くッ! 一体何が!?」

ツンはうつ伏せ状態のまま、自分の足元に顔を向けた。
そこには顔が長い髪で覆われている女性の姿があった。
女性は寝そべりながらツンの足首を必死に掴んでいる。

川д川「ブーンさん、タイムリミットの件なんですが」

( ^ω^)「ああ、貞子さん。それはまた今度で」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:11:57.25 ID:Q0M3tuDUO
川д川「今度はちゃんと死んで下さいよ? でないと、私、泣きますよ…」

( ^ω^)「善処します!!」

川д川「はぁ……。ツンさんを連れて帰ります」

ξ;゚ ゚)ξ「なんでよ!」

川д川「他の方に殺されたら私のプライドに関わりますので……では」

ξ#゚ ゚)ξ「ちっくしょおおおおぉぉぉぉ!!!」

貞子はツンを連れて、テレビの中に帰って行った。
嵐が過ぎ、静まり返った洋室間でブーンは一人考える。

( ^ω^)「さっきのキス……まっさかぁーー」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:13:16.43 ID:Q0M3tuDUO
********************

从 ゚∀从「おい! もっと骨のある奴はいねぇのか!!」

春の透き通るような青い空の下。
ハインは墓地で、この街を占めている悪霊達と喧嘩をしていた。
ハインと悪霊達を囲むように亡霊達が観戦している。

悪霊A「いやー、お強いですね」

悪霊B「ッ……痛くて死にそうだ! でも死なない! ふしぎ!」

悪霊A「もう既に死んでますからね……立てますか」

悪霊B「ああ、まだまだやれるぜ!!」

今、ハインが対峙しているのは
黒いスーツを着たホスト風の悪霊と、リーゼント風の悪霊の二人だ。
他の悪霊達はハインに敗れ、今は地面で転がっている。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:14:18.04 ID:Q0M3tuDUO
从 ゚∀从「おっ! まだやるってのか!?」

ハインは地面に倒れている悪霊を思い切り踏みつけた。

悪霊C「あふん!」

悪霊B「貴様あああぁぁぁぁぁッッ!!」

弄ばれている仲間の姿を見て悪霊Bは絶叫した。
悪霊Bは全身に力を込めて、体と心を奮い立たせる。
そして、ハインへと一気に駆け寄り魂の篭った拳を放った。

悪霊B「死ねぇい!!!」

悪霊A「もう死んでますってば」

だが、ハインはその拳を掴んで悪霊Bが驚くより前に、
ボディへとハンマーのように重いパンチを見舞った。
吹き飛ばされ、遥か後方の地面に悪霊Bは背中から叩き付けられる。

悪霊B「く……このままだと成仏しちまう……」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:16:03.25 ID:Q0M3tuDUO
悪霊A「…………」

从 ゚∀从「次はお前の番だぜ!」

悪霊A「待って下さい。私は喧嘩が得意ではない」

从#゚д从「知るか! そんなこたぁ!」

悪霊A「貴女はここら一帯を占めたいんですよね?」

从 ゚∀从「そうだ。新しい土地の奴等に俺様の強さを見せつけんとな」

悪霊A「それならば、ここら辺を仕切る渡辺さんと一騎討ちなんてどうです」

从 ゚д从「渡辺さん?」

この街を取り仕切る大悪霊の名前は渡辺と言うらしい。
数多の部下に"さん"付けをさせる程の大悪霊。
ハインは厳めしく、恐ろしい姿の渡辺を想像した。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:17:53.18 ID:Q0M3tuDUO
从 ゚∀从「…………そいつは強いのか」

悪霊A「強いですよ。何せ最先端の武器を使いますからね」

从 ゚∀从(銃かなんかか……こいつは気を引き締めんとな)

从 ゚∀从「良いぜ、その一騎討ち買って――――」

ここでハインは、一つの悪戯が頭に思い浮かんだ。
無造作にハネた赤い髪の毛を掻きながら考えを纏める。

从 ゚д从「あー、そうだ、俺思い出したわ」

悪霊A「?」

从 ゚д从「俺のバックにブーンっていうボスが居てよ」

悪霊A「ブーン………」

从 ゚д从「どうせ一騎討ちならボス対ボスのが派手で良いんじゃね」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:19:43.84 ID:Q0M3tuDUO
悪霊A「……良いですよ。なら、ブーンさんの携帯番号を教えて下さい」

从 ゚∀从「携帯番号?」

悪霊A「渡辺さんが追って連絡を入れられると思います」

从 ゚д从「成る程。えーっと確かー、xxx-boon-boonだった筈だぜ」

从 ゚∀从(初めて携帯買ったからって見せびらかしたのが運の尽きだ)

二日前、生まれて初めて携帯を買って喜んでいたブーン。
そのブーンに向けてハインは心の中で舌を出した。

悪霊A「分かりました。では失礼します」

遠ざかって行く悪霊達の背中をハインはジッと眺める。
これから大悪霊渡辺さんに報告に向かうのだろう。
そして、渡辺さんに狙われる羽目になったブーンは――。

从 ゚∀从「終わったな」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:21:26.25 ID:Q0M3tuDUO
********************

町外れの廃工場内。
薄暗い廃工場内には百を越える渡辺の部下が徘徊していた。

从'ー'从「ふえぇー、それで逃げ帰って来たんだぁー」

恐らく"へぇー"と発音したかったのだろう、舌足らずな少女が机の上に座っている。
大人しそうな顔付きとは裏腹に、どす黒い霊気が少女から滲み出ている。

悪霊A「すみません、渡辺さん。それで――」

从'ー'从「良いよぉー、そのブーンって言うコ、殺してあげるー」

この少女こそが街を取り仕切る大悪霊、渡辺だ。
渡辺は机から降りようと腰を捻ったが、着地に失敗して躓いた。

从;'ー'从「おっとっとっと」

从'ー'从「…………」

悪霊A「見てません」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:22:56.09 ID:Q0M3tuDUO
窓からは赤色の光、断末魔の悲鳴、一人でに動く機械、歪んだ背景……。
これらは全て、渡辺の霊気が及ぼしている現象だ。
渡辺の配下の者でさえ恐れ戦き体を震わせている。

从'ー'从「怖いもの知らずも居たもんだねぇー」

悪霊A「……全くです」

コツコツ…、と足音を鳴らして渡辺は機械と機械の間を通る。
悪霊Aは幹部クラスなのか、渡辺の後ろをついて歩く。
渡辺に側を通られた部下は体を凍り付かせて崩れ落ちて行く。

从'ー'从(意味ありげに歩くのって難しいなぁ)

从;'ー'从(というか、後ろの人どっか行ってよ)

一人でゆっくりしたい渡辺を尻目に悪霊Aは次の言葉を待っている。
廃工場内を数十回往復した頃、漸く渡辺は口を開いた。

从; ― 从「今日の……夜9時に……決行……する」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:23:57.18 ID:Q0M3tuDUO
ξ#゚ ゚)ξ「あら、ハイン、何だかご機嫌ね」

从 ゚∀从「そういうお前は不機嫌そうなんだが」

ξ#゚ ゚)ξ「色々あってね!!」

ツンはあれからテレビの中から抜け出すのに苦労した。
やっと思いで抜け出すと、作業を放棄して眠っているブーンの姿。

(;^ω^)「ショボン、今のコンボまじパネェお」

(*´・ω・`)「くねくね」

ブーンとショボンは洋室間で格闘ゲームをしている。
どうやらこの二人は短い間で、すっかり仲良くなったらしい。
ブーンが狂っていないか心配だ。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:25:33.68 ID:Q0M3tuDUO
从*゚∀从「くくく」

ξ゚ ゚)ξ(……本当、上機嫌ね)

ツンは機嫌が良いハインを一瞥してから掛け時計に目を遣った。
20時45分。そろそろ、ブーン一家の晩御飯の時間だ。
勿論、使われた食材がどこからやって来たかは不明だ。

ξ゚ ゚)ξ「ブーン、ショボン、ご飯にするわよ」

(;^ω^)「なんぞ? 今の追い討ち……」

(*´・ω・`)「くね!」

ξ#゚ ゚)ξ「コラーーーーーーー!!」

言う事を聞かない二人にツンが怒鳴り声を上げた時のこと。
666号室にある全ての電気が一斉に消えた。

( ^ω^)「あ、今勝てそうだったのに」

(;´・ω・`)(…………)



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:27:10.98 ID:Q0M3tuDUO
ξ゚ ゚)ξ「……何?」

反射的にツンはハサミを取り出して周囲を警戒する。
そうせざるを得ない程の霊気が部屋中に立ち込めている。

( ^ω^)「これは凄い」

ブーンも今までに感じた事のない気配に驚嘆した。
立ち上がってベランダを見れば、赤い三日月が怪しい光を放っている。

从 ゚∀从(こいつはなかなか……)

ハインは白い壁紙に指を這わせてみた。
すると、指にベトリと赤い色の液体がこびり付いた。

从 ゚∀从(今まで相当、ぶっ殺して来た悪霊だな)



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:28:38.24 ID:Q0M3tuDUO
(´;ω;`)「…………」

ショボンは激しく体をくねらせて恐怖に怯えている。
そんなショボンを優しく声を掛けるブーンは、やはり狂っているのかもしれない。

( ^ω^)「大丈夫だお。後でゲームの続きをするお」

(´;ω;`)「くね…」

( ^ω^)(ここまでの霊気。ツン、ハインと同じレベルだお)

もし、そうであれば誰もが知っている悪霊だ。
そして、有名な悪霊ならば何かしら対処法が公の場に晒されている。

ツンの場合、「キレイ」と言わず「ふつう」と答えれば良い。
ブーンは既に言ってしまっているが。

口裂け女の大好物のべっこう飴をプレゼント、もしくは「ポマード」と三回言う。
という少々奇抜な回避手段もある。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:29:52.50 ID:Q0M3tuDUO
ハインの場合、こちらは単純明快だ。
赤い服は血を意味しているのだから、迫られても断れば良い。

つまり、今回現れた悪霊にも弱点がある…ブーンは、そう考えた。

( ^ω^)(取り敢えず、どんな幽霊なのか調べないと)

ブーンは壁に背中を預けて相手からの行動を待った。
取り乱した所で良い事は無い、ブーンが恐怖の中で培った達観だ。

ξ゚ ゚)ξ「ブーン」

――――ピシィッ!

鼓膜を突くような強いラップ音が響いた。
同時にツンがハサミを構える。

( ^ω^)「来たお」

ブーンのまだ真新しい携帯の着信音が鳴った。
ポケットから携帯を取り出してブーンは画面表示を見る。

( ^ω^)「渡辺さん」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:30:58.87 ID:Q0M3tuDUO
ξ゚ ゚)ξ「渡辺さん? ブーン、渡辺さんって言ったの?」

( ^ω^)「はい、もすもす」

ブーンはツンの声を無視して通話ボタンを押した。
耳奥に届くのは大人しそうな少女の声。

「私、渡辺さん、N居駅にいるの。今からあなたの部屋に行くね」

( ^ω^)「自分でさん付けとか、面白い方ですNE!」

ξ゚ ゚)ξ「ちょwwwwwwwwww」

そこで通話がブツリ、と切れた。

( ^ω^)(怒らせちゃったかお?)

ブーンは首を傾げて携帯電話の画面を見る。
着信時間は21時丁度だ。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:32:26.13 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「渡辺さんかお」

从 ゚∀从「……知ってんの?」

今まで口を挟まなかったハインがブーンに問い掛けた。
その質問に対してブーンは壁にもたれたまま答える。

( ^ω^)「ハインは携帯持ってないし、ネットも見ないお」

从 ゚∀从「ああ、それがどうした?」

( ^ω^)「渡辺さんは携帯が武器だお。
       段々と近付いている事を知らせて、
       恐怖で震えてる背中の後ろに―――」

从 ゚∀从(……最先端の武器、ね)

最先端の武器にしては粗末だな、とハインはほくそ笑んだ。

( ^ω^)「そして、ネット。ネットで画期的な対処法が編み出されたんだお」

从 ゚∀从「画期的?」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:34:12.02 ID:Q0M3tuDUO
ブーンは無言で後ろの壁をコンコンと叩いた。
その行動を見て、ハインは把握したようだ。

从 ゚∀从「背後に立ってギャー! だから壁があると無理ってか」

( ^ω^)「だお」

从;-д从(使えねー………)

ξ゚ ゚)ξ「でも、それがダメなのよ」

ツンが二人の会話に入って来た。
二人はツンの方向へと顔を向ける。

ξ゚ ゚)ξ「その対処法にブチ切れた渡辺さんが、秘策を編み出したと聞くわ」

( ^ω^)「秘策、かお?」

ξ゚ ゚)ξ「そう、渡辺さんはね」

――パイルバンカーを持ち歩きだしたの。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:36:01.12 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「よーし! 今から対処法を考えるお!」

直ぐ様、ブーンは壁際から離れた。
パイルバンカーなど、そんな素敵武器で壁ごと貫かれたら堪らない。
ブーンは用心の為、部屋の真ん中に座って熟考を始めた。

( ^ω^)「電話を取らないのはどうかお?」

ξ゚ ゚)ξ「ダメよ。渡辺さんは携帯厨だから取るまで諦めないわ」

( ^ω^)「(携帯厨?)……ずっと後ろを振り向かないってのは?」

ξ;゚ ゚)ξ「追い払う気はあるの?」

( ^ω^)「追い払う? それは違うお。僕は」

その時、再び携帯の着信音が部屋に鳴り響いた。
ブーンは数秒間考えてから、渡辺との会話に挑んだ。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:38:01.58 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「はーい! もしもし、僕は内藤ホライゾン!」

「わ、わた」

( ^ω^)「あだ名は何でか知らないけどブーン!」

「ぜぇ、ぜぇ、わ、私」

( ^ω^)(?)

( ^ω^)「そんなこんなでよろしくチェケラ!!」

「すーはー…すーはー……」

( ^ω^)(…………)

「わ、私、渡辺さん、今あなたのマンションの前にいるの」

( ^ω^)「ケーキとか用意して待ってますお」

「本当ー!? あ、しまっ、今のなしぃー」

そこで先程と同じく通話がブツリ、と切れた。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:39:48.82 ID:Q0M3tuDUO
ξ;゚ ゚)ξ「どんな会話してんのよ」

( ^ω^)(………)

今しがた、延ばしに延ばした会話をブーンは脳内で反芻する。
やけに息切れをしていた事、割りとドジッ子属性を持っていた事。
ブーンは二つの点と点を一本の線で結んでみた。

( ^ω^)「渡辺さん、走ってここに向かってるお」

ξ゚ ゚)ξ「は? ヤる気あるの?」

从 ゚∀从「何で渡辺さん、すぐ飛んでしまわんの?」

人あらざる者は概ね空を飛べる物だ。
そうでないと、全国各地の人間に憑き回るのに苦労する。

( ^ω^)「これは僕の憶測だけど、渡辺さん、多分ど忘れしてるお」

ブーンは渡辺がドジッ子であると暗に言った。
ツンとハインがお互いの顔を見合わせる。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:40:55.70 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)(走って来るとなると、時間はまだあるお)

ブーンは雑念を徹底的に締め出し、対処法の考察だけに思考を絞る。
今は無音にも近い暗い部屋の中でブーンは目を閉じた。
耳に入って来るのはツンとハインが話している声だけ。

ξ゚ ゚)ξ「そう言えば都市伝説の渡辺さん」

从 ゚∀从「あん?」

ξ゚ ゚)ξ「後ろを振り向いた人間がどうなったか、書いてあるのは少ないのよね」

从 ゚∀从「んなの悪霊のするこった。やったに決まってる(人生オワタ的な意味で」

ξ゚ ゚)ξ「そうかもね。……でも、何で後ろを取るのかしら」

从 ゚∀从「正面から挑めない雑魚なんだろ」

( ^ω^)(後ろ? 渡辺さんは必ず後ろを……)

( ^ω^)「!」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:42:05.51 ID:Q0M3tuDUO
ブーンはスックと立ち上がった。
突然の行動に、ツンとハインの目はブーンに釘付けとなる。

( ^ω^)「おkおk。渡辺さんに後ろを取らせてやるお」

ξ;゚ ゚)ξ「……正気なの?」

やっぱりショボンにあてられたんだ、とツンはため息を吐いた。

( ^ω^)「正気だお」

从 ゚∀从「振り向いたらパイルバンカーでズドン、だぜ?」

( ^ω^)「振り向かないお」

从 ゚д从「じゃあ、さっき言ってたヤツと同じじゃんか」

( ^ω^)「後ろは取らせるお。でも、取らせる場所はここじゃないお」

ξ゚ ゚)ξ从 ゚∀从「??」

( ^ω^)「ショボン、ちょっと出掛けてくるから留守番頼んだお」

(;´・ω・`)「……………くね」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:43:06.20 ID:Q0M3tuDUO
从;'ー'从「はぁ、はぁ……つ、つかれたー」

渡辺は巨大な武器を背負い、非常階段をひたすら上っていた。
マンションの玄関はセキュリティでロックされていて入れなかった。
悪霊らしく、すり抜けを使わない所が渡辺の性格を映し出している。

从;'ー'从(えっと、六階……あ、ここだ)

時折躓きそうになりながらも、渡辺は廊下を一生懸命に走る。
渡辺が通った道は霊気にあてられ、異形の空間になって行く。

从;'ー'从「とうちゃーくー」

皆から恐れられる大悪霊は漸くブーンが住まう部屋、666号室の前に着いた。
一つ、大きな深呼吸をしてから渡辺は携帯を操作する。
携帯を駆使する者だけあって、凄まじい指捌きだった。

从'ー'从「私、渡辺さん、今あなたの部屋の前にいるの」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:44:09.95 ID:Q0M3tuDUO
あっという間にダイヤルし、ブーンに電話を取らせた。
ブーンは沈黙していて、先程みたいに饒舌に喋っては来なかった。

从*'ー'从(怖がってる、怖がってるぅー)

調子に乗った渡辺は、少しだけでもブーンの怖がる声を聞こうと通話を切らずに待つ。
暫く黙っていたブーンだが、渡辺へと声を発した。

「僕、ブーン、今屋上にいるお」

地獄の底から聞こえて来るような声を。

从;'―'从「―――!?」

自身の専売特許で返されて、渡辺は始めこそ怒りが沸いたが、
それは徐々に焦りに変わって行った。

从;'―'从(屋上……? 誘き寄せられてるの?)



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:46:07.02 ID:Q0M3tuDUO
从'―'从「でも」


渡辺は必ず後ろを取る。

どんな罠が待ち構えていようが必ず。

都市伝説として生きる者の誇りにかけて。

从'―'从「行こう」



        渡辺はマンションの屋上を目指した。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:47:04.07 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「うっひょー! 超こええwwwwwwww」

ξ゚ ゚)ξ「ねぇ、突き飛ばして良い?」

从 ゚∀从「やっちゃえ、やっちゃえ」

( ^ω^)「だめだお、今から友達が来るんだお」

ブーンは屋上の縁に腰を下ろしていた。
――夜の街並みという背景を後ろに遣りながら。

从;-∀从「これで来たら、渡辺に盛大な拍手をくれてやるぜ」

ξ゚ ゚)ξ「もう来てるわよ」

从;゚д从「……渡辺選手に盛大な拍手を」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:48:11.04 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「……………」

从;'―'从「……………」

渡辺は縁のギリギリの所でつま先立ちをし、
体を不自然なくらいに曲げて何とかバランスを保っている。

( ^ω^)「こんばんわ」

从;'―'从「こ、こんばんわだよー」

( ^ω^)「僕の後ろを取る為に壁を登って来たお?」

从;'―'从「は、背後に立つトコを、見られたら、カッコ悪いでしょ」

ブーンは、天然だがプライド高き悪霊に振り向いて賞賛を送りたくなった。
しかし今はそんな訳には行かず、渡辺に背中を向け続ける。

从;'―'从「………君、変わった体質だねぇ?」

( ^ω^)「よく言われるお」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:49:14.55 ID:Q0M3tuDUO
从;'―'从「……振り向いてくれない?」

( ^ω^)「良いけど、僕と友達になって欲しいお」

从;'―'从「友達?」

( ^ω^)「そうだお。僕はたくさんの仲魔を作りたいんだお」

この人間は何を言っているのだろうか。
渡辺は考えようとするが、少しでも気を抜いたら落ちそうになる。
渡辺は仕方なく、ブーンの肩に手を置いた。

从;'―'从「無理、私は次の人間に憑かなきゃならないの」

( ^ω^)「そこを何とか」

从;>o<从「無理だってばー! 早く振り向いてよー!」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:50:09.63 ID:Q0M3tuDUO
我慢の限界が訪れたのか、渡辺は涙交じりの声で叫んだ。
肩に置いている手に力が入り、ブーンの体が傾けられる。

(;^ω^)「ちょ、おま」

从'ー'从「ふぇ?」

ブーンの背中が渡辺の体を押し出した。
ドジッ子の力が最高にまで極まった瞬間だ。


从'д'从


都市伝説と云ふは死ぬ事と見つけたり。



                渡辺、最期の言葉。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:51:25.46 ID:Q0M3tuDUO
にはならず、渡辺は現在、ブーンの部屋でケーキを食べている。

从*'ー'从「おいしー」

( ^ω^)「………」

やはり、ブーンはホイホイ出てくるケーキの出所が気になった。
だが、ツンに質問の視線を送っても目を逸らして返される。

从'ー'从「ご馳走さまでしたー」

あの後、渡辺は即座に振り向いたブーンの手に掴まれ事なきを得た。
死ぬかと思った、と渡辺は泣きじゃくったが、悪霊は死なない事も忘れている。
ツンとハインは言いたくて言いたくて仕様がなかったようだ。

( ^ω^)「渡辺さん」

从'ー'从「良いよ、友達になるよ」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:52:52.25 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「本当かお?」

从'ー'从「相手は手強い方が殺し甲斐があるし。
     それに、ブーンの体質で離れられないみたいだし」

( ^ω^)「殺し甲斐て」

確かな殺意を秘めて、渡辺がブーンの申し出を受け止めた。
そして、渡辺はブーンから目を逸らして小さな声で言った。

从*'ー'从「………さっきの、ちょっとだけ嬉しかったよ」

( ^ω^)「お」

二人のやり取りを見ていたツンとハインが大きな溜め息を吐く。
目標のブーンSATSUGAIに新たな障害物が増えたからだ。

ξ゚ ゚)ξ「また変なのが増えるのね」

从;-∀从「早く死んでくんねーかなー」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:53:36.15 ID:Q0M3tuDUO
和やかなムードに場が包まれた時、ブーンは何となく疑問を口にした。
これが後にハインが数日間、行方をくらます事件の引き金となる。

( ^ω^)「そう言えば渡辺さんはどうして僕を狙ったんだお」

从;゚∀从「………………」

从'ー'从「それはねぇ――――」






つづく。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:58:02.10 ID:Q0M3tuDUO
今回のあとがき。

ID:cHX+4iDHO氏の支援が半端ない事に全俺が震撼。

ゆ、ゆっくり寝てくれよ……?

支援ありがとうございました。



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