( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:29:23.30 ID:8biDAVNaO


ねぇねぇ、聞いて聞いて。

私の友達の友達が実際に体験した話なんだけどさ。

とある心霊スポットに肝試しに行ったんだって。

それで、それでね――――。


     ( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:30:52.59 ID:8biDAVNaO


第一話「口裂けお前らの嫁」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:32:33.81 ID:8biDAVNaO
今年、大学生になるブーンはつかれやすい体質の持ち主だ。
少し歩けばつかれるし、立っているだけでもつかれてしまう。
これは生まれついての体質なので、どうする事も出来ないでいる。

そんなブーンではあるが、大勢のナカマがいつも側に居るので、
周りの者からすれば不幸な青年には決して見えないだろう。

( ^ω^)(…………)

ξ゚ ゚)ξ(…………)

ブーンは小学生の頃からの憑き合いであるツンと新幹線に乗っている。
住んでいた山奥の村から、大学があるO府へ引っ越しの途中である。

ξ゚ ゚)ξ「お腹減ったんだけど」

ブーンが窓の外の山々に視線を遣っていると、ツンのくぐもった声が聞こえた。
ツンは大きなマスクをしているので声が篭るのだ。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:34:24.44 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「トイレで食べて来ると良いお」

そう言って、ブーンは駅弁をツンに差し出した。

ξ#゚ ゚)ξ「レディに対して失礼ね!」

(;^ω^)「レディて……」

ツンに気圧されてブーンは駅弁を膝の上に置いた。
もう一度、外を眺めると緑の山々から黒い景色に変わっていた。
現在、新幹線は長いトンネルの中を通過している。

ξ゚ ゚)ξ「まるで地獄に向かってるみたい」

( ^ω^)「地獄」

ξ゚ ゚)ξ「そう、地獄。人口が少ない田舎とは違って、
      都会には沢山の悪霊がいるでしょうね。
      流石のアンタでも死ぬかもね……というか死ね」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:36:28.65 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「誰が死ぬかおwwwwwwwwww」

ブーンは腹を抱えて笑い、ツンは目を細めて微笑む。
新幹線がトンネルを抜けて太陽の淡い光が車内に射し込んだ。
他の乗客達は眠っているのか、車内は異様な静けさで満ちている。

ξ゚ ゚)ξ「あら? おかしいわね」

ツンは椅子から身を乗り出して周りの様子を見た。
静かな事は良いが、度が過ぎると不気味になる。

( ^ω^)「お? どうしたんだお?」

ξ゚ ゚)ξ「こんなに他の客少なかったかしら」

ツンに促されて、ブーンも他の客席を覗き込んだ。
今、ブーン達が居る車両には数人の乗客しか居ない。
その数人の乗客が奇妙だった。
全員、ブーン達を睨むようにジロジロと見ているのだ。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:38:14.54 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「憑かれたわね」

( ^ω^)「……つかれたお」

ブーンは大きな溜め息を吐いて、ガックリと肩を落とした。

( ^ω^)「でも、慣れてるから大丈夫ですけどNE!」

ξ゚ ゚)ξ「御守りもあるし……その所為で私は近寄れない訳だけど」

( ^ω^)「そう! 旅立つ前、僕の為に母ちゃんがくれたこの――」

ブーンはポケットの中に手を入れて御守りを探す。
母親が息子の身を案じて、高名な霊能力者に祈祷して貰った御守りを。
しかし、

( ^ω^)「あれれ〜? 御守りが無いお〜?」

無かった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:40:32.42 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「あら、てっきり持ってるんだと思ってたわ」

ツンが鞄の中から一本のハサミを徐に取り出した。
鋭く尖ったハサミの刃先がキラリと輝く。

ξ゚ ゚)ξ「ねぇ、ブーン。私、キレイ?」

( ^ω^)「こいつは参ったお」

ブーンの席の側には死人のような肌をした乗客達が立っている。
皆一様に大きく目を開いて、ブーンを見下ろしていた。

ξ゚ ゚)ξ「さぁ、死んで貰うわよ」

前の席にはハサミを構えているツンが座っている。
今にも襲い掛かりそうな気迫を全身から放っていた。
間違いなく、ブーンは四面楚歌の真っ只中にいた。

\( ^ω^)/「人生オワタ」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:42:28.28 ID:8biDAVNaO
お手上げのポーズをするブーン。
そんなブーンに対し、

ξ゚ ゚)ξ「でもねぇ……」

ツンはマスクの紐に指を掛けて言った。
マスクが外れてツンの正体がゆっくりと鮮明になっていく。
耳元まで裂けている口――……。

ξ゚∀゚)ξ「ブーンを殺すのはこの私! 誰にも邪魔なんてさせない!!」

ツンは金切り声を上げて乗客の一人にハサミを突き刺した。
そして即座に引き抜き、他の乗客の首元目掛けて斬り付ける。
余りの早業に乗客達は何一つ悲鳴を上げず、血を流して床に倒れた。

ξ゚ ゚)ξ「さぁ、早くここから逃げるわよ!」

いつの間にかマスクをしたツンがブーンに手を差し出す。
ブーンは何の躊躇もせず、その冷えきった手を掴んだ。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:45:19.47 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「逃げるって、どこにだお?」

ξ゚ ゚)ξ「良いから! 着いてきなさい!」

ツンはブーンを引っ張って最後尾の車両を目指して走る。
二人の様子はまるで勇敢な王子と、非力なお姫様のようだ。
どっちがどっち? 等とは聞かないで頂きたい。

ξ゚ ゚)ξ(次の駅は地獄ですって? 小賢しいわね)

ツンは新幹線の行き先を示す、電光掲示板を見て苦虫を噛み潰した。
走る二人を先程の乗客達が追いかけて来ている。

(;^ω^)「ひぃ、ひぃ……休みたいお」

ξ#゚ ゚)ξ「今すぐこの手を離してあげよっか!?」

( ^ω^)「サーセン」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:47:25.08 ID:8biDAVNaO
ブーンとツンは最後尾の車両まで無事に辿り着いた。
この車両は他と違って乗客が多く、活気に満ち溢れていた。
突然現れた二人に目もくれず、会話やゲームをしたりと賑やかだ。

( ^ω^)「お? これは……」

ξ゚ ゚)ξ「さっさと出るわよ」

( ^ω^)「え?」

ブーンが疑問の表情を浮かべた。
訳が分からぬまま、ツンに引っ張られて出口へと向かう。

( ^ω^)(……?)

扉の前に立った時、ブーンは後ろに振り向いた。
そこには、入った時に見た騒々しさは跡形もなく消え去っていた。
ただ、胸の奥を刺す寂しさだけが微かに車内に残っている。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:48:52.41 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「脱線事故?」

最後尾の扉の先は何と、ブーン達が座っていた車両だった。
椅子に腰を掛けたツンが、事の概要を説明した。

ξ゚ ゚)ξ「随分と昔、さっきのトンネルを抜けた先で起きたの。
      大勢の死傷者が出た痛ましい事故だったわ。
      最後尾に乗ってた人達は怪我一つ無かったみたいだけど」

( ^ω^)「最後尾………」

最後尾の光景は亡くなってしまった人々の無念の表れだろうか。
死しても尚、あの車両の扉先、天国を目指しているのだろうか。
ブーンは深く目を瞑り、哀悼の念を表した。

ξ゚ ゚)ξ「悪霊の多さは人間の多さに比例する。
      まともな大学生活が送れるとは到底思えない」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:50:41.01 ID:8biDAVNaO
ツンの白いマスクが少し動いた。
この先の憂鬱を感じて溜め息を吐いたのだ。

ξ;゚ ゚)ξ(……? 私はブーンを憑き殺すのが目的でしょうに)

( ^ω^)「でも、ツンが守ってくれるから大丈夫だお」

ξ゚ ゚)ξ「いえ、その理屈はおかしいわね」

( ^ω^)「ツン、さっきの答え。……キレイだお」

ξ////)ξ「な、何よ!? お世辞言ったって成仏しないわよ!!」

( ^ω^)「こうやって好感度上げとけば助けてくれるかなって」

ξ゚ ゚)ξ「あるあwwwwwwwwwwww死ね」

******************



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 22:53:14.61 ID:8biDAVNaO
ブーンは生まれつき霊を引き寄せる体質の持ち主だ。

幼少の頃は度々遭遇する人あらざる者共に恐怖を抱いていた。

しかし、何事も限度を越えれば慣れてしまう物だ。

恐怖は諦めへと次第に姿を変えて行ったのだった。

「今日は楽しかったお」

ブーンが住んでいた所は、四方を山に囲まれた小さな村だった。

人口が極めて少なく、ブーンと同年代の友達はいなかった。

そんな村に生まれたブーンは幽霊達と毎日遊んでいたのだった。

「じゃあ、また明日だおー!」

その幽霊達は昔と変わらない姿で、今もブーンに憑いている。

ブーンは幽霊と一緒に青春時代を過ごして来たのだった。



20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [鯖重] 投稿日: 2008/05/22(木) 23:11:39.67 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「そろそろ起きなさいよ」

( ‐ω‐)「んー」

ξ゚ ゚)ξ「もうすぐ新O駅に着くわよ」

(;^ω^)「まじかお! って、頭いたっ!」

目を覚ましたブーンは頭を擦った。
何やら鈍器で殴られたが如く、頭に痛みが走っている。

ξ゚ ゚)ξ「寝すぎたのよ」

(;^ω^)「そうなのかお? 何かタンコブ出来てるんですけど」

ξ゚ ゚)ξ「気のせい」

ツンは窓の外へと目を逸らした。
新幹線はK都駅に停車している。
ツンの言う通り、新O駅まで後少しである。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:14:38.73 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「どんな所なのかwktkするおー」

ξ゚ ゚)ξ「O阪と言えば、たこ焼きね」

( ^ω^)「ツンの好物だお、僕が奢ってあげるお!」

ξ゚ ゚)ξ「それくらい自分で買うわよ」

( ^ω^)「何時も一緒に居てくれてるから、良かったら」

ξ*゚ ゚)ξ「こ、今回だけなんだからねっ!! ……ありがと」

ツンは頬を赤く染めて控えめに喜んだ。
ブーンもツンの喜ぶ顔を見て笑顔を溢している。
二人のやり取りは、まるで恋人同士のようだ。

新幹線がゆっくりと動き始めた。
K都駅から新O駅までは二十分程度の距離だ。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:17:05.75 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「持ち物よーし!
        と言っても、重たい荷物は引っ越し屋さんに運んで貰うけどお」

ξ゚ ゚)ξ「あ、そう言えば私達が住む所ってどんなの?」

その声を聞いたブーンはニヤリと不敵に口元を歪ませた。
そして、ブーンが手提げ鞄から間取り図を取り出した。

( ^ω^)「高級マンション、3LDK、ネット環境、冷暖房完備、水道光熱費無料!!」

ξ゚ ゚)ξ「は?」

(*^ω^)「そして家賃は二万円、敷金礼金無し!!」

ξ;゚ ゚)ξ「胡散臭過ぎるんだけど……」

ツンはブーンが掴んでいる間取り図を強引に奪った。
間取り図にはブーンが言った通りの間取りがあり、家賃も二万円と記されている。

ξ゚ ゚)ξ「こんな美味しい話………あれ?」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:21:12.39 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「この霊道って、あと霊暖房完備って」

( ^ω^)「なん……だと……?」

ブーンは間取り図を取り返した。
見ると母親と吟味して契約した要項とは違う事が記載されている。

霊道、幽霊が通る道。
霊暖房、幽霊の存在でひんやり。

(^ω^)「ツン」

ξ゚ ゚)ξ「こっち見ないで。これは曰く付き物件なのよ」

( ^ω^)「前に住んでた人が亡くなったとかかお?」

ξ゚ ゚)ξ「最悪、惨殺されたとかかもね」

( ^ω^)「………まぁ、良いお」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:23:26.98 ID:8biDAVNaO
ξ;゚ ゚)ξ「良いの? こういう場所には悪霊が居るわよ」

( ^ω^)「今から契約を破棄したら、次の家探しに間に合うか分からないお」

ξ゚ ゚)ξ「そうだけど…」

( ^ω^)「家賃が安い事に変わり無いし、母ちゃんに迷惑を掛けたく無いお」

ξ゚ ゚)ξ「…………」

( ^ω^)「それに」

ブーンは上半身を起こしてツンの冷たい手を握る。
突然の事でツンは顔を赤くして慌てふためいた。

( ^ω^)「友達が居るから大丈夫だお」

ξ゚ ゚)ξ「………馬鹿」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:25:38.26 ID:8biDAVNaO
ブーンとツンは新O駅を降りてO駅を目指した。
そして、O駅から環状線に乗り換えてT王子駅に向かう。
T王子駅からは一直線で、目的地のN居駅へ着くのに時間はかからなかった。

( ^ω^)「何でこの駅の周辺、ラブホが多いんだお」

ξ;゚ ゚)ξ「知らないわよ、そんな事!」

( ^ω^)「さて……」

ブーンはポケットから一枚の紙切れを取り出した。
紙切れにはN居駅からマンションまでの道程が書かれている。
地図によると、駅のすぐ近くにあるようだ。

ξ゚ ゚)ξ「あれじゃない?」

( ^ω^)「あれかお」

駅のホームに立つツンが外の方に向けて指差した。
ブーンが指先を追った所には、大きな建物が建っていた。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:26:41.24 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「憑いてくる憑いてくる」

( ^ω^)(…………)

改札口を抜けて、大通りに出たブーンは驚いた。
故郷とはまるで違う車と人の多さ、そして霊の多さに。
ブーンが少し歩けば釣られて、地縛霊やオーブが憑いてくる。

( ^ω^)「これで何人目だろう」

ξ゚ ゚)ξ「さー、目標の千鬼夜行に近い事は確かね」

( ^ω^)「そんなの目標にしてねーお」

ξ゚ ゚)ξ「あ、また増えた」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:28:08.42 ID:8biDAVNaO
幽霊達を引き連れて、ブーンは漸くマンションの前に着いた。
外壁は城のように綺麗で、一大学生が住める建物とは考え辛い。
呆然とマンションを見上げている二人に女性が声を掛けて来た。

lw´‐ _‐ノv「何か御用ですか?」

エプロンをした若い女性は細い目でブーンとツンを交互に見る。

( ^ω^)「あ、あの、今日ここに引っ越して来た内藤という者ですお」

ξ゚ ゚)ξ「……………」

lw´‐ _‐ノv「あー、内藤さんね。私はここを管理しているシューという」

( ^ω^)「お若いのにマンションを管理してるなんて凄いお」

ξ゚ ゚)ξ「全然若くはないでしょ」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:29:58.70 ID:8biDAVNaO
感嘆の声を上げるブーンにツンが割って入った。
マンションの管理人、シューは細い目でツンをチラリと見た。

ξ゚ ゚)ξ「霊気、隠しているつもりだろうけど、隠せてないわよ」

lw´‐ _‐ノv「……へぇ、やっぱり口裂け女さんくらいになると分かるんだ」

(;^ω^)「!?」

ブーンはシューの言葉に驚愕した。
マスクをしているツンは、外見的には普通の人間と変わらない。
それなのに、シューは正体を言い当て、尚且つ平然としている。

ξ゚ ゚)ξ「ご名答、私は口裂け女のツン。よろしくね、死神さん」

(;^ω^)「死神!? 死神ってあの鎌で命を刈る――」

lw´‐ _‐ノv「*おおっと* 立ち話も何だからまずは部屋に案内しよう」



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