( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:33:48.75 ID:8biDAVNaO
玄関の中に入って行くシューを二人が見つめる。
姿は人間その物、そして人間と同じく仕事をしている。

ξ゚ ゚)ξ「ブーンはあの人が肩に携えてた鎌が見えなかったのね」

( ^ω^)「全く見えなかったお」

ξ゚ ゚)ξ「仕方ないわ。死神は誰もが知っている存在だもの。
      "人々に信仰されているから"強いのよ」

( ^ω^)「つまり?」

ξ゚ ゚)ξ「有名になればなるほどウハウハ」

( ^ω^)「ふぅん」

ξ゚ ゚)ξ「まぁ、行きましょう」

二人はシューの後を追って、マンションの中へと入って行った。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:31:02.08 ID:8biDAVNaO
外装はさることながら、内装も素晴らしい物だった。
一階は全て吹き抜けとなっており、はめ殺しの大きな窓の側には
高価なソファーやテーブルが、ズラリと並べられている。

( ^ω^)「ホ……ホテル……?」

ξ゚ ゚)ξ「これで家賃二万円、ね。覚悟しておいた方が良いわよ」

物珍しそうに二人はキョロキョロと辺りを見回す。
エレベーターの前ではシューが待っていた。

lw´‐ _‐ノv「おそっ、死ぬかと思ったよ」

( ^ω^)「すみませんですお」

lw´‐ _‐ノv(死神が死ぬとか……って突っ込みが欲しかった)

( ^ω^)「お?」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:35:04.39 ID:8biDAVNaO
lw´‐ _‐ノv「いや、気にしないで欲しい」

シューはエレベーターの扉を開いて二人を誘い入れた。
閉ボタンを押してから六階のボタンを押した。
静かな駆動音を立ててエレベーターは登って行く。

lw´‐ _‐ノv「いやー、それにしても君達は物好きだね」

( ^ω^)「? どういう事ですかお?」

lw´‐ _‐ノv「君達に使って貰う666号室、六階のフロアだけどさ」

ξ゚ ゚)ξ(666号室て)

lw´‐ _‐ノv「――あの世と隣り合わせなんだよ」

エレベーターの駆動音が止んだ。
扉が開いたが、この階は本当に六階なのだろうか。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:36:20.62 ID:8biDAVNaO
lw´‐ _‐ノv「入居者がなかなか決まらなくてねぇ。
       知り合いの幽霊さんに頼んで仲介して貰ったんだよ」

( ^ω^)「ハハッワロス」

lw´‐ _‐ノv「本当笑える。……降りないの?」

( ^ω^)ξ゚ ゚)ξ(………………)

廊下に出たシューの後ろには夥しい数の悪霊が蠢いている。
手招きをする者、威嚇をする者、意味もなく叫び続ける者。

lw´‐ _‐ノv「なぁに、かえって免疫力がつく」

( ^ω^)「しかし、少しばかり多すぎやしませんかお?」

lw´‐ _‐ノv「んー、んー、ならこうしよう。家賃一万円で良いよ」

( ^ω^)「逝きます」

ξ゚ ゚)ξ「まじで」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:37:49.25 ID:8biDAVNaO
襲い掛かられるかも、と思っていたブーンだがそれは杞憂に終わった。
悪霊達はシューを避けるように道を開けてくれたのだ。
死神の威光のお陰で、何のアクシデントも無く666号室の前に立った。

後に廊下を通った際、ブーンは憑かれる事になるが。

lw´‐ _‐ノv「はい、鍵。狂って部屋を壊しちゃダメだよ」

( ^ω^)「中は案内してくれないんですかお?」

lw´‐ _‐ノv「自分達で見た方が早いんじゃないかな」

遠回しに面倒くさいと言うシューはブーンに鍵を手渡した。
あの世と隣り合わせの部屋の鍵にしては、何の変哲も無い銀色の鍵だ。

ξ゚ ゚)ξ「とっとと入らない? 今日は疲れたわ」

( ^ω^)「そうするお。シューさん、どうもでしたお」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:39:38.78 ID:8biDAVNaO
シューに礼を述べて、ブーンはドアノブの鍵穴に鍵を差し込んだ。
ゆっくりと回すとカチャリと鍵の開く音がした。

lw´‐ _‐ノv「君は死にそうになさそうだね」

ドアが開かれようとした時、シューがボソリと呟いた。
ブーンは顔だけ動かせてシューの様子を見る。
細い目と無表情、死神が何を考えているのか顔では察せない。

lw´‐ _‐ノv「実を言うとこの階の部屋は、人間を弱らせる為に用意したんだよ」

ξ゚ ゚)ξ「……家賃に釣られた人間の魂を刈るのね」

lw´‐ _‐ノv「そう。定期的に魂が手に入るからね。
        医学の進歩やらで最近の人間はタフ過ぎる」

ほんの僅か語気を強くしてそう言うと、シューは二人に背中を向けた。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:41:01.32 ID:8biDAVNaO
lw´‐ _‐ノv「でも、当分の間は無理そうだ」

( ^ω^)「……?」

lw´‐ _‐ノv「君は霊を引き寄せる体質がある。
        そして、霊を離さない体質も兼ね備えている」

ξ゚ ゚)ξ(…………)

(;^ω^)「離さない、ですかお。それが本当なら最悪ですお」

lw´‐ _‐ノv「君、そんな事は言っちゃダメだよ。……まぁ、後は仲良くね」

その言葉を最後に、シューは背景に溶けるように消えた。
暫し立ち尽くしていたブーンだが気を取り直してドアを開けた。

(´・ω・`)「くねくね」


( ^ω^)



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:42:52.15 ID:8biDAVNaO
玄関で待ち構えていたのは奇妙な生物であった。
くねくねしている。
ブーンはこの生物を取り上げた本を読んだ事があった。

( ^ω^)「おおらっしゃああああ!! 僕は全く理解してないZE!!」

ξ゚ ゚)ξ「今の相当危なかったけどね」

ブーンはくねくねをアーティファクトとして居間に飾る事にした。
理解すると発狂してしまう生物はこれから居間でくねくねし続ける。

(´・ω・`)「くねくね」

( ^ω^)「シューさんが脅かすからどんな部屋かと思ってたけど、案外普通だお」

ξ;゚ ゚)ξ「くねくねの先制攻撃を喰らっといてよく言えるわ…」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:44:02.81 ID:8biDAVNaO
ツンは呆れて物が言えず、ブーンを放って部屋を探索し始めた。

ξ゚ ゚)ξ「こっちは和室。お風呂は……キッチンの横か」

ξ゚ ゚)ξ「ふんふん、あら? ベランダからの眺め結構良いわね」

ξ゚ ゚)ξ「このスペースにはお花を飾ろうかしら」

ξ゚ ゚)ξ「もうこんな時間なの? ブーンは何が食べたいのかな…」




ξ#゚ ゚)ξ「――ちょっと待てええぇーーーい!!」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:45:20.38 ID:8biDAVNaO
ξ;゚ ゚)ξ(何で私は同棲生活を満喫しようとしているの?
      違う、違うでしょ。こんな事をしに来たんじゃ…)

ξ゚ ゚)ξ(そうよ。私は隙を見付けてブーンを殺すんだったわ…)

ξ#゚ ゚)ξ(でないと、いつまで経ってもアイツに憑きっぱなしじゃない!)

ツンが鞄からハサミを取り出した。
ハサミは綺麗にヤスリで研がれていて、先端部は丸みが無い。
強くハサミの持ち手を握りしめ、ツンはブーンを探す。

ξ゚ ゚)ξ「フフフ…」

ツンは足音を立てないように、そろりとワックスで磨かれた廊下を歩く。
一つ一つ、部屋を確かめていると洋室間から話し声が聞こえてきた。

ξ゚ ゚)ξ(ここか)



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:46:21.22 ID:8biDAVNaO
( ^ω^)「うーん、君の名前はショボンに決めたお」

(*´・ω・`)「くねくね!」

ブーンはショボンと名付けられたくねくねと仲良く喋っている。
くねくねに握手を求めるブーンは、既に狂っているのかもしれない。

ξ;゚ ゚)ξ(きめぇ)

( ^ω^)「え? ショボンには彼女がいるのかお。羨ましいお」

(*´・ω・`)「くねくねくね」

何やら彼等は意気投合し、会話が弾んでいるらしい。
これはチャンスと、ツンは洋室間に足を踏み入れた。

ξ゚ ゚)ξ(……これでやっと解放される)



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:47:59.12 ID:8biDAVNaO
(´-ω-`)「くねくね……」

( ^ω^)「そんな顔するなお。いつか良い事あるお」

(´・ω・`)「………」

何やら悩み事をブーンに打ち明けたショボンは静かに瞼を開いた。
その目にブーンの真後ろに立つツンの姿が映った。
首元を刺そうと、ツンがハサミを高く振り上げている。

(;´・ω・`)「くね!?」

( ^ω^)「ショボン? 後ろ?」

ξ゚ ゚)ξ「もう遅いッ!」

ブーンが振り向くよりも早く、ツンはハサミを降り下ろした。
尖った刃先が寸分違わず、ブーンの後ろ首に迫る。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:49:23.84 ID:8biDAVNaO
(;´・ω・`)「ッッ!!!」

間に合わない。
ショボンがそう思った時、金属がぶつかる音が洋室間に響いた。

ξ゚ ゚)ξ「くぅ………アンタも憑いてきてたのか」

从 ゚∀从「ブーンは俺の餌だからな」

上下、赤一色の和服を着た女性がツンの前に立ちはだかっている。
女性が手に持っている短刀がハサミを受け止めていた。

( ^ω^)「ハインも来てたのかお?」

从 ゚∀从「当たり前だ! ……そろそろ赤い服着たくなったろ?」

ハサミを短刀の腹で防ぎながらハインと呼ばれた女性はブーンに問う。
ブーンはキッパリと一言で答えた。

( ^ω^)「断る」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:51:15.78 ID:8biDAVNaO
从;゚∀从「何でだよ! ここは"はい"って答える場面だろ!?」

ツンから離れてハインはブーンに詰め寄る。
激しく体を揺さぶられながら、ブーンは目を逸らして口を開いた。

( ^ω^)「えー? だって、言ったら殺されるお??」

从;-∀从「チッ!」

ハインは舌打ちをしてブーンの体から手を離した。
そして苛立った表情を浮かべ、壁際で胡座をかいた。

从#゚∀从「ツンには"キレイだお"って言う癖に」

ξ*゚ ゚)ξ「それは」

( ^ω^)「好感度うp作戦です」

ξ#゚ ゚)ξ(……)



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:52:31.58 ID:8biDAVNaO
問答系の悪霊は間違った答えを聞くまでは襲う事を許されない。
全く赤い服を着たがらないブーンにハインは苛ついているのだ。

从#゚∀从「あーあ、早く次の人間に憑きたいぜ!」

ハインは愚痴を溢して床に寝転んだ。
赤い和服が大きな血溜まりのように見える。

( ^ω^)「フヒヒ! 残念でした!!」

ブーンはハインの神経を逆撫でする言葉をわざと放った。
しかし、ハインは怒らずに不気味な薄ら笑いを浮かべた。

( ^ω^)「お?」

从 ゚∀从「幾ら霊に耐性があるお前でも流石に終わったな」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:53:49.80 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「それは言えてるわね」

口を閉じたハインにツンが続く。

ξ゚ ゚)ξ「この部屋、一通り調べたけど凄いわよ。
      例えばここの壁」

コンコン…とツンが壁を叩く。
ハインは目を閉じて聞き、ブーンはその様子を見つめる。

ξ゚ ゚)ξ「壁紙の下にびっしりと厄除けの御札が貼られてるみたい」

从 -∀从「それでも昼間からやって来る悪霊」

(´・ω・`)「?」

微動だにしなかったハインがショボンを指差した。
ショボンは理解が行かない顔でくねくねしている。

( ^ω^)「御札の効果が破られる程、この部屋に霊が居るのかお」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:55:08.41 ID:8biDAVNaO
ツンは一つ頷き、話を進める。

ξ゚ ゚)ξ「日が射す内は大丈夫みたいだけどね。
      でも、夜になればどうなる事やら」

从 -∀从「夜は悪霊だらけのオリンピック!」

(´゚ω゚`)「!」

突然、ハインが拳を天井に向けて威勢良く振り上げた。
ショボンが驚いて一際大きく体をくねらせた。
気が動転しているショボンをブーンが落ち着かせる。

( ^ω^)「心配するなお、ショボン。僕がついてるお」

(;´・ω・`)「……………」

だが、ショボンの顔から恐怖の色が払拭される事はなかった。

ξ;゚ ゚)ξ(逆じゃないの?)



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:56:31.42 ID:8biDAVNaO
ξ゚ ゚)ξ「ま、まぁ、この部屋が危険な事に間違いないわね。
      管理人が言う通り、ここは彼岸と此岸の狭間に位置してる」

从 -∀从「そんなトコに憑かれやすい体質のブーンが足を踏み入れた」

それがどういう事か分かるよな? ハインは目を開けた。
ブーンは腕を組んで次の言葉を待つ。

ξ゚ ゚)ξ「引き返すなら」

从 ゚∀从「今の内だ」

( ^ω^)「――だが断る」

ブーンは二人の得体の知れない重圧に飲まれながらも言い切った。
拒否の言葉を聞いたツンが、鬼のような形相でブーンに食ってかかる。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:57:47.17 ID:8biDAVNaO
ξ#゚ ゚)ξ「私はアンタの事を思って忠告してあげたのよ!?」

从 ゚∀从「やめとけ。どうせ、ブーンは聞きゃあしない」

ハインが体を起こしてツンを制止する。
そして、大きな欠伸をしてから立ち上がった。

ξ#゚ ゚)ξ「でも!!」

从 ゚∀从「ブーンが憑かれて弱ればチャンスが増えるじゃねーか。
      …つーか、何でお前そんな必死なの?」

ξ゚ ゚)ξ「あ」

ハインの言う通りだ。
憑かれに憑かれて、ブーンが弱まった時にやれば良い。

从*゚∀从「あー……、お前らもしかして好き同士なの?」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 23:58:42.78 ID:8biDAVNaO
ハインが仲良く並んで立つ二人を見て茶化した。
ツンの顔がみるみる内に真っ赤に染まって行く。

ξ////)ξ「ば、ばか! なに言ってんのよ!?」

( ^ω^)「僕はツンの事好きだお」

ξ////)ξ「ちょ、アンタも否定しなさいってば!」

( ^ω^)「ハインも好きだお」

从 ゚∀从「……うれしーねー」

( ^ω^)「そして、今日から仲魔になったショボンも好きだお」

(*´・ω・`)「くねくね!」

ブーンは一人一人に自分の思いの丈を述べて行く。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/23(金) 00:00:28.79 ID:+vGj68FJO
ブーンが洋室間の真ん中に立ち、彼の仲魔達の顔を見回した。
そして、ブーンは誓いを立てるかのような真面目な顔で口を開いた。

( ^ω^)「僕はここに住むお。
        憑かれ過ぎてしんどくなる日もあるだろうけど…。
        でも、僕はこの部屋で仲魔と楽しく暮らして行きたいお」

ξ゚ ゚)ξ从 ゚∀从(´・ω・`)「…………………」

( ^ω^)「もっと友達が増えたら良いお!」

悪霊を友達と呼ぶブーンを、三人が思い思いに見つめる。
ブーンがこの様に温かい性格故、悪霊達は今まで殺せずにいたのだ。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/23(金) 00:01:41.08 ID:+vGj68FJO
( ^ω^)「新生活頑張るおー!!」

ξ゚ ゚)ξ「まじッスか」

从 ゚∀从「新人共にヤキ入れんとな」

(*´・ω・`)「くねくね!」



こうして、つかれやすい体質を持つブーンの新生活が始まった。
ブーンは仲魔を増やし、華々しい学園生活を送る事が出来るのだろうか。


つづく。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/23(金) 00:06:55.19 ID:+vGj68FJO
今回のあとがき

都市伝説系が好きなのでやってみました。
くねくねが大好きです。
仕事が忙しいので続きいつになるか分かりませんが頑張って書きます。


ブーンはでろでろの留渦タイプで見ると分かりやすいかもしれません。
ストーリー中で某彼みたいに鉄拳制裁はない物と思われます。



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