( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:50:24.72 ID:Q0M3tuDUO


「もしもし、私、渡辺さん」


「今、あなたの後ろに――――」


→振り向いて抱き締める。
→振り向いてキスをする。
→振り向いて愛撫する。
→振り向いて頭を撫でる。

 にげる。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:51:45.77 ID:Q0M3tuDUO


第二話「渡辺さん ―ね、携帯でしょ?―」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:53:07.40 ID:Q0M3tuDUO
マンションに引っ越してから三日後、ブーンは漸く重い腰を上げて、
搬入されていた荷物類を然るべき場所へと整理していた。

( ^ω^)「めんどくさ」

ξ゚ ゚)ξ「ショボン、お茶を入れてくれるかしら」

(´・ω・`)「くねくね」

あの世と隣り合わせの部屋は慣れてしまえば快適だった。

勝手に点くテレビはリモコンいらずと考えれば良い。
毎夜に起こる金縛りは寝相の悪いブーンには良い薬だ。
電気を消すと浮かび上がる人魂は暗い部屋を優しく照らしてくれる。

ξ゚ ゚)ξ「ありがと。ショボンは誰かさんと違って働き者ねぇ」

( ^ω^)「ソファーでくつろいでるツンに言われたくないお」

ξ゚ ゚)ξ「私は口裂け女、つまり女性よ? 女性に重い物持たせる気?」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:54:14.55 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「女性はむやみやたらと殺意を剥き出しにしないお」

ξ゚ ゚)ξ「それは幻想よ。女性だってヤる人はヤる」

( ^ω^)「KOEEEEEEEEEEEEEE!!」

(((;´・ω・`))ガクブル…。

ブーンは大袈裟に驚いてみせ、ヤる側の女性、ツンの横顔を見た。
お茶を啜る為、今は白いマスクを外している。

( ^ω^)「噛み付かれる前に退散しますかお……」

ξ゚∀゚)ξ「何か言った?」

( ^ω^)「いいえ! 別に!」

悪霊だろうが何だろうが、いつの世も女性が強い。
ブーンは素直に負けを認め、スゴスゴと作業を再開した。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:55:39.53 ID:Q0M3tuDUO
ブーンが住む666号室には洋室間が二部屋、和室が一部屋ある。
ブーンとツンが洋室間を使い、ハインは和室を使っている。
他の幽霊達とは違い、ツンとハインは人間の姿でいる事が多い。

( ^ω^)「有名であればあるほど強い、かお」

部屋を眺めて、ブーンは先日にツンが言っていた言葉を思い出した。
数多くの人間に知られているツンとハインは、
ブーンに憑く幽霊達の中でも強い部類に入る存在だ。
したがって、他の幽霊達が部屋を使わせて貰える事は無かった。

( ^ω^)「カワイソス」

所詮、幽霊の社会もこの世と同じ実力社会。
ブーンは胃に若干の痛みを覚えつつ、本棚に本を並べる。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:56:46.96 ID:Q0M3tuDUO
段ボールから本を取り出しては並べ、取り出しては並べ……。
いい加減ブーンが疲れて来た頃、誰かが扉をノックする音がした。

( ^ω^)「はいお」

ξ゚ ゚)ξ「お疲れ様。少し休憩したらどう?」

ケーキとコーヒーを乗せたトレイを持って、ツンが部屋に入ってきた。
コーヒーの甘い香りが部屋中に染み渡って行く。

( ^ω^)「おやつktkr」

時間は丁度15時。
ブーンは目を輝かせてテーブルの前に座った。
ケーキとコーヒーがブーンの目の前に置かれる。
ブーンはフォークを使わず、ケーキを手で掴んで食べようとする。

( ^ω^)「いっただっきまー…………」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:57:58.24 ID:Q0M3tuDUO
ケーキが口の中に運ばれようとした瞬間、ブーンの動きが止まった。
口を大きく開けて静止しているブーンをツンは怪訝な目で見る。

ξ゚ ゚)ξ「どうしたのよ」

( ^ω^)「………前から思ってたんだけど」

ブーンはケーキを小皿に戻し、前に座るツンに顔を向けた。

( ^ω^)「こういうの買うお金、どこから出てるんだお?」

ξ゚ ゚)ξ「知らない」

ツンはそっぽを向いて即答した。
悪霊のツンは働いていないのに、食べ物などを持って来る。
そして時には、ブランド物の服なども、どこからか仕入れて来る。

( ^ω^)「ツン?」

ξ゚ ゚)ξ「知らない」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 03:59:17.17 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)(待てお?)

( ^ω^)(ツン→悪霊→消える→店に行く→マジで)

( ^ω^)「マジで」

ブーンの推測によれば、ツンは万引きをしているらしい。
神隠しならぬ、金隠しを働いているというのだろうか。
ブーンは横を向いているツンの顔をまじまじと見つめる。

ξ;゚ ゚)ξ「な、何よ……気持ちの悪い」

( ^ω^)「別に」

ξ;゚ ゚)ξ「さ、さっさと食べなさいよ!」

ツンは慌てふためきながらブーンに食事を促した。
動揺して目が泳いでおり、ツンは何かを隠している様子だ。

( ^ω^)「……………………」

ξ;゚ ゚)ξ「……………………」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:00:05.41 ID:Q0M3tuDUO
気まずい静寂の後、ブーンが再びケーキを掴んで口に入れる。
ツンは沈黙攻撃から解放され、ほっと胸を撫で下ろした。

( ^,ω^)「もぐもぐ…それにしても荷物が、もぐ、片付かないお、もぐ」

ξ゚ ゚)ξ「喋るか食べるかどっちかにしてよ、汚い」

( ^ω^)「ゲフゥ!」

ξ#゚ ゚)ξ(……)

ブーンはコーヒーを一気に喉に流し込んだ。
暫し、舌触りの良い味の余韻に浸ってからツンに話しかける。

( ^ω^)「荷物が片付かないお」

ξ゚ ゚)ξ「それは聞いた」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:01:06.91 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「ツン〜、ちょぉっと手伝ってくれないかお〜?」

ξ;゚ ゚)ξ「きもっ」

( ^ω^) ニコニコ。

ブーンの気味が悪い猫なで声にツンは露骨に不快感を示す。
しかし、ブーンの屈託の無い笑顔にツンが折れた。

ξ゚ ゚)ξ「……はいはい、軽い荷物なら良いわよ」

( ^ω^)「ありがとだおー!」

ブーンは喜びを抑えきれず、テーブルに置いたツンの手を両手で包んだ。
案の定、ツンの頬が真っ赤に染まって行く。
ツンは必死に振り払おうとするが、強く握られている為に離れない。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:01:58.21 ID:Q0M3tuDUO
ξ////)ξ「バ、バカッ! わ、私は何をすれば良いのよ!」


( ^ω^)「アルバムの整頓を頼むお」


ξ////)ξ「わ、分かったら、早く手を離しなさい!」


( ^ω^)「こうしたら好感度が上がるかなと思って」


ξ#  )ξ(……………)



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:03:30.76 ID:Q0M3tuDUO
(自主規制)「前が……見えないお……」

ふざけ過ぎたブーンは、切れたツンにボコボコに殴られた。
ツンは怒りつつも、しっかりとアルバムの整頓をしている。

(自主規制)「お? 小学生の時読んでた漫画……ナツカシス」

ブーンは作業を一時中断して古い漫画を読み始めた。
ツンはアルバムを整頓しながらブーンを横目で睨む。

(自主規制)「ヴィルガスト面白いおー」

ξ゚ ゚)ξ「あら! この写真!」

アルバムの間に挟まっていた一枚の写真を見て、ツンが高いを上げた。
口元はマスクで見えないので分からないが、
目尻が垂れている事から察するに、微笑んでいるようだ。

(自主規制)「写真? 何の写真だお」

( ^ω^)つ自主規制



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:04:54.93 ID:Q0M3tuDUO
ξ*゚ ゚)ξ「ほら! 見て見て!!」

( ^ω^)「うーん?」

ブーンはツンと寄り添うように座り、ツンが持つ写真を一緒に眺めた。
そこには緑の山々を背景にして、一人でブーンがピースをしてる姿が映っていた。

(*^ω^)「懐かしいお! 僕が中学生の頃の写真だお!」

ξ*゚ ゚)ξ「ブーンの隣に立ってるのが私ね」

( ^ω^)「ハインは僕の後ろに立って何を」

一般人には分からないが、霊能力者が見れば卒倒しそうな物が写真に映っている。
真ん中に映るブーンを中心に、背景は全て悪霊達でひしめき合っている。

( ^ω^)「本当楽しかったお!」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:06:55.27 ID:Q0M3tuDUO
ξ*゚ ゚)ξ「ターボばーちゃんvsターボばーちゃんMK-U」

( ^ω^)「あれは歴史に残る名山道レースだったお」

ξ*゚ ゚)ξ「結局、同着だもんね。おばあちゃんの走りに生きる姿は燃えたわ」

( ^ω^)「僕、一回肩に乗せて貰った事があるけど怖かったお」

ξ*゚ ゚)ξ「そのまま死ねばよかったのに」

( ^ω^)「wwwwwwwwwwwww」

寄り添い、過去の郷愁を語り合うブーンとツン。
その二人の体は余りに近く、気付いた時には顔がすぐ側にあった。

ξ*゚ ゚)ξ(…………)

( ^ω^)「お?」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:07:48.98 ID:Q0M3tuDUO
マスクを外さないまま、ツンがブーンの頬に顔を寄せて行く。
そして、頬まであと数センチという所で。




ξ#゚ ゚)ξ(――ちょっと待てええぇーーーい!!)

ξ#゚ ゚)ξ(私は一体何で青春しようとしてんのよ!
      違うでしょ。そうじゃないでしょ……)

ξ#゚ ゚)ξ(私はブーンを殺さないと駄目なんだから!!)



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:08:53.56 ID:Q0M3tuDUO
( ^ω^)「どうしたお?」

ξ゚ ゚)ξ「いえ、なんでもないわ。作業の続きをしましょ」

( ^ω^)「?」

合点が行かなかったが、ブーンは本棚に本を並べ始めた。
屈みながら作業をするブーンの背中は、無防備でツンにとってチャンスだ。

ξ゚ ゚)ξ(ハインは居ない…。ショボンはキッチンでくねくねしてる)

ξ゚ ゚)ξ(ヤれる!)

ツンはポケットの中から、先端が鋭く尖ったハサミを取り出した。
クルクルと一回転させて持ち手を強く握り締める。

(;^ω^)「ふたりエッチ読んでも実践した事ないお」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:10:24.87 ID:Q0M3tuDUO
ξ#゚ ゚)ξ(童貞のまま死ぬのも良い物よ!)

ツンはハサミを高く振り翳してブーンの背中を狙う。
ハサミを握る力が強くなって行く。
そして、ハサミを降り下ろしたその時――ツンは後ろへと引きずり込まれた。

( ^ω^)「ツン、部屋で暴れちゃ駄目だお」

ξ;゚ ゚)ξ「くッ! 一体何が!?」

ツンはうつ伏せ状態のまま、自分の足元に顔を向けた。
そこには顔が長い髪で覆われている女性の姿があった。
女性は寝そべりながらツンの足首を必死に掴んでいる。

川д川「ブーンさん、タイムリミットの件なんですが」

( ^ω^)「ああ、貞子さん。それはまた今度で」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:11:57.25 ID:Q0M3tuDUO
川д川「今度はちゃんと死んで下さいよ? でないと、私、泣きますよ…」

( ^ω^)「善処します!!」

川д川「はぁ……。ツンさんを連れて帰ります」

ξ;゚ ゚)ξ「なんでよ!」

川д川「他の方に殺されたら私のプライドに関わりますので……では」

ξ#゚ ゚)ξ「ちっくしょおおおおぉぉぉぉ!!!」

貞子はツンを連れて、テレビの中に帰って行った。
嵐が過ぎ、静まり返った洋室間でブーンは一人考える。

( ^ω^)「さっきのキス……まっさかぁーー」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:13:16.43 ID:Q0M3tuDUO
********************

从 ゚∀从「おい! もっと骨のある奴はいねぇのか!!」

春の透き通るような青い空の下。
ハインは墓地で、この街を占めている悪霊達と喧嘩をしていた。
ハインと悪霊達を囲むように亡霊達が観戦している。

悪霊A「いやー、お強いですね」

悪霊B「ッ……痛くて死にそうだ! でも死なない! ふしぎ!」

悪霊A「もう既に死んでますからね……立てますか」

悪霊B「ああ、まだまだやれるぜ!!」

今、ハインが対峙しているのは
黒いスーツを着たホスト風の悪霊と、リーゼント風の悪霊の二人だ。
他の悪霊達はハインに敗れ、今は地面で転がっている。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:14:18.04 ID:Q0M3tuDUO
从 ゚∀从「おっ! まだやるってのか!?」

ハインは地面に倒れている悪霊を思い切り踏みつけた。

悪霊C「あふん!」

悪霊B「貴様あああぁぁぁぁぁッッ!!」

弄ばれている仲間の姿を見て悪霊Bは絶叫した。
悪霊Bは全身に力を込めて、体と心を奮い立たせる。
そして、ハインへと一気に駆け寄り魂の篭った拳を放った。

悪霊B「死ねぇい!!!」

悪霊A「もう死んでますってば」

だが、ハインはその拳を掴んで悪霊Bが驚くより前に、
ボディへとハンマーのように重いパンチを見舞った。
吹き飛ばされ、遥か後方の地面に悪霊Bは背中から叩き付けられる。

悪霊B「く……このままだと成仏しちまう……」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:16:03.25 ID:Q0M3tuDUO
悪霊A「…………」

从 ゚∀从「次はお前の番だぜ!」

悪霊A「待って下さい。私は喧嘩が得意ではない」

从#゚д从「知るか! そんなこたぁ!」

悪霊A「貴女はここら一帯を占めたいんですよね?」

从 ゚∀从「そうだ。新しい土地の奴等に俺様の強さを見せつけんとな」

悪霊A「それならば、ここら辺を仕切る渡辺さんと一騎討ちなんてどうです」

从 ゚д从「渡辺さん?」

この街を取り仕切る大悪霊の名前は渡辺と言うらしい。
数多の部下に"さん"付けをさせる程の大悪霊。
ハインは厳めしく、恐ろしい姿の渡辺を想像した。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:17:53.18 ID:Q0M3tuDUO
从 ゚∀从「…………そいつは強いのか」

悪霊A「強いですよ。何せ最先端の武器を使いますからね」

从 ゚∀从(銃かなんかか……こいつは気を引き締めんとな)

从 ゚∀从「良いぜ、その一騎討ち買って――――」

ここでハインは、一つの悪戯が頭に思い浮かんだ。
無造作にハネた赤い髪の毛を掻きながら考えを纏める。

从 ゚д从「あー、そうだ、俺思い出したわ」

悪霊A「?」

从 ゚д从「俺のバックにブーンっていうボスが居てよ」

悪霊A「ブーン………」

从 ゚д从「どうせ一騎討ちならボス対ボスのが派手で良いんじゃね」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:19:43.84 ID:Q0M3tuDUO
悪霊A「……良いですよ。なら、ブーンさんの携帯番号を教えて下さい」

从 ゚∀从「携帯番号?」

悪霊A「渡辺さんが追って連絡を入れられると思います」

从 ゚д从「成る程。えーっと確かー、xxx-boon-boonだった筈だぜ」

从 ゚∀从(初めて携帯買ったからって見せびらかしたのが運の尽きだ)

二日前、生まれて初めて携帯を買って喜んでいたブーン。
そのブーンに向けてハインは心の中で舌を出した。

悪霊A「分かりました。では失礼します」

遠ざかって行く悪霊達の背中をハインはジッと眺める。
これから大悪霊渡辺さんに報告に向かうのだろう。
そして、渡辺さんに狙われる羽目になったブーンは――。

从 ゚∀从「終わったな」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:21:26.25 ID:Q0M3tuDUO
********************

町外れの廃工場内。
薄暗い廃工場内には百を越える渡辺の部下が徘徊していた。

从'ー'从「ふえぇー、それで逃げ帰って来たんだぁー」

恐らく"へぇー"と発音したかったのだろう、舌足らずな少女が机の上に座っている。
大人しそうな顔付きとは裏腹に、どす黒い霊気が少女から滲み出ている。

悪霊A「すみません、渡辺さん。それで――」

从'ー'从「良いよぉー、そのブーンって言うコ、殺してあげるー」

この少女こそが街を取り仕切る大悪霊、渡辺だ。
渡辺は机から降りようと腰を捻ったが、着地に失敗して躓いた。

从;'ー'从「おっとっとっと」

从'ー'从「…………」

悪霊A「見てません」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/24(土) 04:22:56.09 ID:Q0M3tuDUO
窓からは赤色の光、断末魔の悲鳴、一人でに動く機械、歪んだ背景……。
これらは全て、渡辺の霊気が及ぼしている現象だ。
渡辺の配下の者でさえ恐れ戦き体を震わせている。

从'ー'从「怖いもの知らずも居たもんだねぇー」

悪霊A「……全くです」

コツコツ…、と足音を鳴らして渡辺は機械と機械の間を通る。
悪霊Aは幹部クラスなのか、渡辺の後ろをついて歩く。
渡辺に側を通られた部下は体を凍り付かせて崩れ落ちて行く。

从'ー'从(意味ありげに歩くのって難しいなぁ)

从;'ー'从(というか、後ろの人どっか行ってよ)

一人でゆっくりしたい渡辺を尻目に悪霊Aは次の言葉を待っている。
廃工場内を数十回往復した頃、漸く渡辺は口を開いた。

从; ― 从「今日の……夜9時に……決行……する」



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