( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:24:01.84 ID:/2K+pdfoO
ある少女が、医師に余命3ヶ月と宣告されたそうだ。
難病という程では無い…が、発見が遅すぎた為に手遅れだった。
少女の母親は、その受け入れがたい事実に毎日嘆き悲しんだ。
ある日、少女と仲が良い友達が二人、お見舞いに来たらしい。
母親は『まだ、少女の体の自由が利く内に写真を撮ろう』。
と思い立ち、少女を真ん中に挟んで三人で写真を撮った。
それから一週間後、容体が急変してその少女は亡くなってしまう。
宣告通りの3ヶ月にはまるで届かない、呆気ない死であった。
三人で撮った写真が、少女の人生における最後の写真となった。
ブーンは本をパタンと閉じて眠りに就いた。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:26:43.92 ID:/2K+pdfoO
第三話「残念ですが、なーんて言われたけどね」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:27:56.15 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「ふぁーあ、よく寝たお」
ブーンの朝は早い。
毎朝決まって、4時44分44秒に目覚ましが鳴るからだ。
そのお陰でブーンは健康的な生活を送っている。
( ^ω^)(今日は入学式の日だお…)
今日はブーンが晴れて大学に入学するおめでたい日だ。
しんと静まり返っている洋室間でブーンは物思いに耽る。
( ^ω^)(……人と仲良くなれるかお?)
遠く故郷では霊達とだけ遊んでいたブーンにとって心配な点だった。
大学に行けば、嫌でも同年代の人間と顔を合わせる。
ブーンは不安をほぐそうとベッドから起き、ベランダへと出た。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:29:46.53 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「寒っ!」
外はまだ暗く、星がない夜空には赤い半月が登っている。
時折マンションに吹き込む風は、春にも関わらずまだ冷たい。
ブーンは体を震わせ、ベランダの縁に腕を置いて遠くを眺めた。
( ^ω^)(………)
そこには故郷のような山々はなく、都会特有の灰色の建物が並んでいる。
思えば遠くまで来たものだ、とブーンは欠伸混じりの溜め息を吐いた。
( ^ω^)(……まぁ、頑張るかお)
部屋に戻るべくブーンは踵を返そうとした。
すると、
「隙あり」
女性の声と同時、ブーンの背中に硬い物が突き付けられた
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:31:23.61 ID:/2K+pdfo0
- ゆっくりと両手を上げて、ブーンは反抗の意志が無い事を伝える。
しかし、背中に伝わる硬い物の感触は強くなる一方だ。
仕方なく、ブーンは後ろに立つ後ろの女性に声を掛ける。
( ^ω^)「ツン、朝っぱらからひどいお」
ツンはハサミをグッと握りしめて笑い声で返した。
ξ゚ ゚)ξ「霊に朝も夜も無いわ。ただ、やるべき事をやるだけ」
確かな殺意を背に、ブーンはツンと同じく笑みを浮かべた。
静かに両手を下ろしてブーンも笑い声で返事をする。
( ^ω^)「でも、ハサミの持ち手じゃ無理だお」
ξ゚ ゚)ξ「そうね」
ブーンは背中を伝っていた殺意から解放された。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:32:23.92 ID:/2K+pdfo0
- ブーンの隣にツンが並んだ。
( ^ω^)「お」
ブーンが横目で見ると、血が通っていない青白いツンの横顔。
ツンは遠くの景色を見つめていて、ブーンに一瞥もやらない。
( ^ω^)「……………」
ξ゚ ゚)ξ「……………」
ベランダに立つ二人を静寂が包み込む。
妙な沈黙に堪えかねたブーンが口を開こうとする。
( ^ω^)「おっぱ――――」
ξ゚ ゚)ξ「ブーンはやっぱり都会暮らしは不安?」
(;^ω^)「お?」
ブーンが言おうとした言葉はツンの質問に飲まれてしまった。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:33:26.18 ID:/2K+pdfo0
- ξ゚ ゚)ξ「おっぱ?」
( ^ω^)「何でもありません」
ξ゚ ゚)ξ「ふぅん……で、どうなのよ? 都会暮らしは」
ツンがブーンに顔を向けて再び問い掛ける。
丁度、似たような事を考えていたブーンは素直な気持ちで答えた。
( ^ω^)「それは当然だお。……いきなりどうしたお?」
ξ゚ ゚)ξ(…都会にはタチの悪い霊達がひしめいてる。
いくら耐性があってもブーンは人間。
私が守ってあげなくっちゃ)
ξ゚ ゚)ξ(………………って、あれ?)
ツンは自分が抱く気持ちに納得がいかない様子だ。
混乱をきたし、頭を抱るツンへとブーンが疑問の視線を投げ掛ける。
( ^ω^)「???」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:35:01.57 ID:/2K+pdfo0
- ξ;゚ ゚)ξ(私はブーンの命を奪うのが目的でしょ?
だから、さっきの考えは根本的におかしい訳で……)
思考回路が暴走を起こし、ツンはベランダの縁に頭を打ち付け始めた。
ツンの突然の奇行に、普段胆が座っているブーンも流石に目を丸くする。
(;^ω^)「ツン、落ち着くお!」
ξ#゚ ゚)ξ「いいえ! 落ち着いてなんていられないわ!」
何度も頭をぶつけるツンをブーンが羽交い締めで取り押さえた。
だが、ツンの暴走は止まる気配を見せない。
(;^ω^)「止めるお! それ以上したら死ぬお!」
( ^ω^)「あ、既に死んでた」
ξ#゚ ゚)ξ「止めないでよ! 殺すわよ!!」
ξ゚ ゚)ξ「……………?????」
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:36:38.19 ID:/2K+pdfo0
- 脳内がオーバーヒートし、ツンが頭から湯気を出し始めた。
そして、混乱を極めたツンの抵抗はより一層激化していく。
ξ#゚ ゚)ξ「離せええええぇぇぇぇぇぇ!!」
( ^ω^)「離したら殺されそうだからヤだ」
ξ#゚ ゚)ξ「これでも―――」
( ゚ω゚)「!」
ツンがブーンの足を思い切り踏みつけた。
突然の痛みにブーンの腕の力が抜けて、ツンの体が自由になる。
そして間髪入れず、
ξ#゚ ゚)ξ「喰らいなさい!!」
ブーンの股間へ強烈な蹴りを放った。
( ω )
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:38:02.94 ID:/2K+pdfo0
- ξ;゚ ゚)ξ「はーっ……はーっ………」
( ω )
ツンは荒い息遣いで、足元で気を失っているブーンを見下ろす。
またとないチャンスが訪れた瞬間だが、
明け方の静けさが、ツンの興奮を落ち着かせて行く。
ξ;゚ ゚)ξ「………! ブーン! 大丈夫!?」
多少身勝手な女性、ツンはブーンの上半身を抱き起こした。
しかし反応はなく、ブーンは泡を吹いて気絶している。
ξ;゚ ゚)ξ「い、一体誰がこんな事を………」
他の誰かに罪を擦り付けようと周りを見回したが、
運の悪い事にブーンに憑く悪霊共は居なかった。
ξ;゚ ゚)ξ「だ、誰か……誰か助けてください!!」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:39:00.02 ID:/2K+pdfo0
- *****
从;゚∀从「なんぞ?」
朝食を摂る為、居間に訪れたハインは張りつめた空気に圧倒された。
(#^ω^) ビキビキ
ξ;゚ ゚)ξ「………」
ブーンが料理に手を付けずに、ふてくされた顔で椅子に座っていた。
隣に縮まって座るツンから顔を背けて、あさっての方向を向いている。
何だかんだで仲の良い二人故、ハインにとっては珍しい光景だった。
从 ゚∀从「………あー、夫婦喧嘩か」
(#^ω^)「誰と誰が夫婦だお」
从*゚∀从「はいはい、そう否定してやるなって」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:40:16.51 ID:/2K+pdfo0
- ハインは赤い袖口をヒラヒラと振りながら悪戯っぽく笑った。
それからブーンの前の席に座って朝食を食べ始めた。
女性とは思えない豪快な食べ方で料理を減らして行く。
(#^ω^)「もっとおしとやかに食べられないのかお」
小さなパンを掴んだ手をピタリと止めて、ハインが一言。
从 ゚∀从「おしとやかに食ったらお前、死んでくれんのか?」
(#^ω^)「……」
从 ゚∀从「何があったのかは知らんが、ツンを許してやれ」
ξ゚ ゚)ξ「ハイン」
ハインが大きく両腕を広げ、語気を強めて言う。
从 ゚∀从「我々、悪霊はか弱い。人間が存在しなければ生きて行けない。
……だから、あまりいじめるなよ」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:41:20.38 ID:/2K+pdfo0
- ハインは腕を下ろしてパンをかじった。
小さいとはいえ、大人の拳サイズあるパンが半分以上なくなった。
( ^ω^)「ハイン」
从 ゚∀从「んあ?」
( ^ω^)「漫画のパクリ乙」
从*゚∀从「でひゃひゃ! バレてやんの!!」
ξ゚ ゚)ξ「?」
強張っていたブーンの頬が緩み、いつものにこやかな物になった。
漫画に詳しくないツンは盛り上がっている二人を呆然と眺めている。
ハインのジョークで重々しい空気は去り、普段通りの空気が戻ったのだ。
从 -∀从(こうじゃねーとな。殺伐とした空気は堪えられん……)
从#゚д从「――――って、殺伐で良いじゃん!!!」
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:43:10.40 ID:/2K+pdfo0
- 突如、ハインがテーブルを両手で叩き付けた。
心臓に響く音と共に、テーブルの上に置かれた食器類が激しく揺れる。
从#゚д从「俺は何で仲を取り持とうとしてんだ!!」
从#゚д从「ちげぇ! ちげぇだろ! 俺達悪霊はよッ!!」
从#゚д从「人間を奈落に突き落としてこそじゃねーか!!」
椅子を蹴り飛ばすかの勢いでハインは立ち上がった。
そして爪が肌に食い込みそうな程、拳を強く握り締めて空に翳す。
从#゚д从「いつまでも人間染みた生活を送っていても良いのか!?」
从#゚∀从「答えは否ッ! ツン! 今こそブーンを殺めるんだ!!」
ハインが怒鳴り声を上げてツンをビシィッと指差した。
だがしかし、そこにはツンの姿はなかった。
ブーンも居なくなっており、ハイン一人だけが居間に取り残されている。
从 ゚3从「……あるぇ〜?」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:44:54.72 ID:/2K+pdfo0
- ハインが居間で演説を繰り広げている頃、二人は玄関に居た。
ブーンは一張羅のスーツを着て、慣れない革靴に足を通している。
ξ゚ ゚)ξ「ご飯、食べなくても良いの?」
( ^ω^)「時間がないから良いお。それよりさっきはごめんだお」
ξ゚ ゚)ξ「…ううん、私の方こそごめんね」
二人はお互いに謝り合い、視線を合わせた。
僅かな静寂の後、ブーンはドアノブに手をかけた。
( ^ω^)「憑いて来ないのかお?」
ξ゚ ゚)ξ「初日くらい迷惑かけないようにしてあげるわよ」
変わった悪霊も居るものだ、とブーンから自然に笑みが溢れた。
ツンはブーンの顔を見て、決まりが悪そうに口を尖らせる。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:46:38.00 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「それじゃ、いってくるお」
ξ゚ ゚)ξ「逝ってらっしゃい。通りすがりの悪霊には気をつけるのよ」
( ^ω^)「はいはい」
子供扱いするツンに軽く手を振ってブーンはドアを開けた。
開かれて行くドアの隙間から外界の光が部屋に射し込む。
ξ゚ ゚)ξ(?)
しかし、ブーンの門出を祝う筈の光は優しさがまるで無い。
時間が止まっているかのような、どこか凍り付いた光。
ξ゚ ゚)ξ(ブーンに憑いてる誰かが悪戯でもしてるのね)
ツンは奇妙な違和感を経験則で解釈した。
ツンの考える通りならば、ブーンは対抗手段を知っているので心配はいらない。
バタン。
ドアが閉じられ、外の光は見えなくなった。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:48:00.23 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「ワロタ」
玄関開けたらそこは異世界。
別段、貴重でもないブーンが憑かれた瞬間である。
外に出た筈のブーンは、何故か病院らしき建物の中に立っていた。
清潔感あるリノリウムの白い廊下、規則正しく配置された窓。
( ^ω^)(遅刻するんじゃね?)
腕時計を見たブーンは暗澹たる気分に陥った。
大学生活という物は最初が肝心だ。
大学デビューをする訳では無いが、授業の説明等を聞き逃すと不味い。
( ^ω^)(取り敢えず、ここから脱出しないと)
ブーンはコツコツと革靴の足音を立てて歩き出した。
前から歩いて来る者は誰一人として居ない。
何者かが潜む世界から現世に戻る為、つかれやすい青年は出口を探す。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:49:12.50 ID:/2K+pdfo0
- ………。
二十分程歩いた結果、脱出の手掛かりになりそうなヒントは無かった。
長い一本道の廊下で、上に登る階段やエレベーター、そして出口も見当たらない。
時々、病室を覗いてみたりもしたが人間に敵愾心を燃やす悪霊も居ない。
( ^ω^)「………」
ブーンは立ち止まり、自分が歩いて来た廊下を振り向いた。
遥か向こう側に吸い込まれそうな不気味な静けさが漂っている。
ふと、ブーンが窓の外に目を向けると太陽が天高くに登っていた。
( ^ω^)(この世界は昼なのかお?)
ブーンが部屋を出たのは朝だった。
しかし、現在ブーンが居る世界の時間は昼時のようだ。
昼、この空間を作り上げた主の身に何かが起きたのだろうか。
( ^ω^)(でもそんなのは関係ないお)
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:50:56.14 ID:/2K+pdfo0
- ブーンの第一目標はこの世界を脱出し、笑顔で入学式を迎える事だ。
悪霊を鎮めたり、祓ったり等の漫画に有りがちな事はしない。
それにブーンにはそんな能力は無い。ただ、人より憑かれ易いだけ。
( ^ω^)「もう一度病室を調べてみるお」
ブーンはスライド式の真っ白な扉を開いた。
『ギャー!』
なんて陳腐な悪霊の登場シーンは無く、すんなりと病室に入った。
病室には丁度六人の患者が入院可能なようでベッドが六つある。
その六つともにカーテンが引かれていて中は見えない。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:52:10.61 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)(ホラーによくあるパターンその1)
ブーンはカーテンを一つ一つ素早く開けていった。
こう言った状況に慣れたブーンにとって、悪霊が現れてくれた方が話は早い。
だが、どのベッドにも悪霊は鎮座しておらず、ブーンの期待は外れた。
( ^ω^)「…まだだお! ホラーによくあるパターンその2!」
何も起こらなくて安心しきった人間の背後には悪霊が付き物だ。
ブーンは願いを込めて背後に振り向いた。
( ^ω^)「あれれ〜?」
しかし、ブーンの背後に立つものは何も存在しなかった。
余程恥ずかしがり屋の悪霊なのだろうか。
遅刻の線が濃厚となり始め、ブーンに焦りが生じる。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:54:20.66 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「えー? まじでかお?」
ホラーのフラグを試し倒したブーンは首を傾げながら病室から出る。
帰り際、病室の扉で待ち構えているというサプライズすら無かった。
何をしても悪霊が登場する気配は無く、ブーンは途方にくれた。
( ^ω^)「ヤバいお、ヤバいお」
ブーンが此処に来てから凡そ一時間が経過している。
入学式に間に合うには絶望的な時間が進んでいた。
病室の前に立つブーンは溜め息を吐いて腕時計を見た。
( ^ω^)「お?」
ブーンは間の抜けた声を漏らした。
腕時計の針が先程確かめた時と同じ数字を指したからだ。
そして、よくよく確かめれば秒針もピタリと止まっている。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:55:58.34 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「ここは時間が止まってるのかお?」
再び、ブーンは病室の中へと戻る。
病室の壁に備え付けられている丸型の時計を見れば、
12時45分36秒を指したまま針が止まっている。
( ^ω^)(………)
――ガタッ。
ブーンが腕を組んで時計を眺めていると、物音が無人の病室に響いた。
音が聞こえた方へとブーンが歩を進める。
すると、ベッドの横にある貴重品入れの戸が開いていた。
( ^ω^)(あるある)
貴重品入れを調べると、中には二本のアルカリ性電池と一枚の紙切れが入っていた。
紙切れにはでかでかと赤い文字で『死ね』と書かれている。
( ^ω^)「電池。あと、死ねとか軽々しく使うなお」
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:57:50.92 ID:/2K+pdfo0
- 紙切れは置いておき、ブーンは電池を手に時計の下へと向かう。
時計を眺めている所、見計らったかのように現れた道具が電池なのだ。
悪霊『こ、これ時計に使いなさいよ! そしたら現れてあげるんだから!』
十中八九、ブーンに憑いた悪霊はそう言いたいのだろう。
ブーンは側にあった来客用の椅子を土台にして、時計を取り外した。
( ^ω^)「うほっ!」
電池入れの蓋の中には女性の物らしき、長い髪の毛が詰め込まれていた。
ブーンは恐れる事なく髪の毛を取り除け、二本の電池をセットする。
カチカチ……。
時計の針が動き始めた音。
――パリィン!
遠くで窓ガラスが割れた音。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 20:59:59.45 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「よっしゃあ!」
歓喜の声を上げ、ブーンは喜び勇んで廊下へと駆け出した。
窓ガラスの割れた音がした方向へと全速力で走る。
( ^ω^)「あそこだお!」
ブーンはガラスの破片が散乱している場所を見つけた。
漸く脱出へと近付き、胸が踊るブーンがその場所で足を止める。
( ^ω^)(ホラーによくあるパターン)
現場に駆け付けて驚いた人間の背後に立つのは悪霊のお家芸だ。
ガラスの破片を一枚拾い上げて、ブーンは"怖がっているフリ"をした。
( ^ω^)「うおお! 何だお! これは一体!!?」
「めっちゃわざとらしいんだけど……」
精一杯演じるブーンの背後から、まだ若い少女の物らしき高い声がした。
ブーンは心の中でガッツポーズを作りながら体を後ろに向けた。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:02:29.65 ID:/2K+pdfo0
- o川*゚―゚)o「何それ……つまんないんだけど……」
ブーンの目の前に立つのは淡いピンク色のパジャマを着た少女。
リアクションがお気に召さなかったのか、
少女は自身の細い首筋をガリガリと爪で引っ掻く。
o川*゚―゚)o「マジ有り得ないし」
( ^ω^)(………)
少女を怒らせては脱出のヒントが聞けなくなるかもしれない。
そう考えたブーンは必死に驚いているフリをしてみせた。
( ^ω^)「わー、怖い」
o川*゚―゚)o「……こんな屈辱を受けたのは初めてだよ」
ブーンの行動は逆効果だったようだ。
少女の自傷行為が激しさを増し、首筋から血が垂れるまでに発展する。
( ^ω^)(o o←これ何だお?)
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