( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:03:54.94 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「それ以上やったら駄目だお」
o川*゚ー゚)o「あ、無駄に優しさはあるんだね」
少女が首筋から手を下ろした。
そして、黒い空洞のような眼をブーンに向ける。
o川*゚ー゚)o「私の名前はキュー。短い付き合いになるだろうけどよろしくね、ブーン」
( ^ω^)「どうして僕の名前を? …またハインの悪戯かお?」
o川*゚ー゚)o「ハイン? ブーンは昨晩私の事、見てたじゃない」
( ^ω^)「僕が君の事を見てたのかお?」
o川*゚ー゚)o「本で」
( ^ω^)「あー」
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:05:14.47 ID:/2K+pdfo0
- ブーンは額に手を当てて白い天井を仰いだ。
昨晩、大学生活への不安で寝付けずにいた本を読んでいたのだ。
都市伝説の本を。恐らく、少女はその時に憑いたのだろう。
( ^ω^)「キュー、ここから出して欲しいお。大学に行くんで」
台詞の最後の方を強く言い放ち、キューの顔をじっと見る。
ブーンの目に映る可愛らしい顔が、悪霊に相応しい歪んだ笑顔になった。
o川*゚ー゚)o「ここから出る? それは無理な相談だよ」
( ^ω^)(ですよねー)
o川*゚ー゚)o「ブーンには、ここで永遠に生きるか――私に殺されるしか道は無いよ」
貴方には悲惨な末路しかない…キューはブーンにそう告げる。
ブーンは頭を掻いて、あどけない顔の割に残忍な悪霊から目を逸らした。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:07:14.13 ID:/2K+pdfo0
- ブーンは昨晩読んだ本の内容を一つずつ紐とこうとする。
キューがどの都市伝説に潜む怪なのか分かれば対策を取り易い。
だが病院という、ある種死に近い場所が使われる話は中々に多い。
( ^ω^)(…病院、病院にまつわる話は多すぎるお)
o川*゚ー゚)o「さ、どっちにする? 好きに選ばせてあげるよ」
( ^ω^)(というか、もう遅刻確定だお)
o川*゚ー゚)o「ねー、何で黙り込んでるの?」
(;^ω^)(遅刻→皆に話掛けにくい→ぼっちフラグ)
o川*゚ー゚)o「あ、もしかして私の事が怖くなったのかな」
(; ω )(…これは誰の所為?→キューの所為)
o川*^ー^)o「ねーねー、怖くなったんでしょー」
(#゚ω゚)「―――貴様か!」
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:08:37.22 ID:/2K+pdfo0
- o川;゚ー゚)o「へ?」
突然、ブーンが目を大きく見開いてキューを睨み付けた。
両腕がワナワナと震えていて今にも襲い掛かりそうな雰囲気だ。
キューはブーンのいきなりの変貌に後退りをする。
o川;゚ー゚)o「ちょ……こっちに来ないで………」
(#゚ω゚)「フヒヒヒヒ……フヒヒヒヒヒヒヒ………」
不気味な笑い声を漏らしつつ、ブーンは一歩一歩キューに滲み寄る。
キューは悲鳴を上げ、目に涙を浮かべながら逃げ出した。
どちらが悪霊なのか分からない光景だ。
o川*;ー;)o「きゃーーーー!! 誰か助けてぇーーーーー!!!」
(#゚ω゚)「待つお! 僕はキューに話があるんだお!!」
――立ち止まったら殺される。
キューは病室に飛び込み、急いでベッドの下に潜り込んだ。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:10:10.81 ID:/2K+pdfo0
- o川*;ー;)o(悪霊退散悪霊退散、南無阿弥陀仏……)
ベッドの下、キューが肩を震わせて仏に祈りを捧げる。
自分が悪霊な事を忘れる程にキューは恐慌に陥っていた。
「ここに入ったお? あぁ、今見付けるお」
o川*;ー;)o(来た!)
病室にブーンが入って来た。
キューの耳に届くカーテンを開ける音が段々と大きくなってくる。
そして、とうとうキューが居る場所のカーテンが開かれた。
「あれ? どこにも居ないお? 僕の見間違いかお」
ブーンの足音が遠くなって行く。
無事、やり過ごせたキューは胸を撫でおろして安堵した。
o川*;ー;)o(ほっ……)
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:11:30.69 ID:/2K+pdfo0
- ベッドの下から這い出たキューは冷や汗を拭った。
o川;゚ー゚)o(何なの? あの人間は)
あの様な気持ちの悪い人間とは一秒たりとも居たくない。
キューは心底そう思ったが、ブーンを現世に戻すには問題があった。
o川; ― )o(……)
キューはどうするべきか思い悩んだ末、気楽な結論に達した。
o川;゚ー゚)o(……まぁ、その内発狂するだろうからほっとこっと)
考えが纏まり、キューは口笛を吹いて病室を後にしようとする。
( ゚ω゚)
o川*゚ー゚)o「〜〜♪ ん?」
全身を舐め回すような視線をキューが感じ取った。
恐る恐る横に並ぶベッドに顔を向ける。
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:13:04.86 ID:/2K+pdfo0
- ( ゚ω゚)
o川;゚ー゚)o
ブーンがベッドの上で仁王立ちをしていた。
悪霊が人間を驚かす時に使う常套手段をブーンは利用したのだ。
元より生気が無いキューの顔が、より一層青冷めて行く。
o川;゚ー゚)o「ま、待ってよ。私達、話せば分かり合える仲じゃない(?)」
( ゚ω゚)「きょーーーーーー!!!!」
キューの制止など聞く耳持たず、ブーンは奇声を発して飛び掛かった。
o川*;ー;)o「!」
飛び付く暴漢。掴もうとする腕。床に押し倒す変態。
キューの双眸に映る全てがスローモーションだった。
( ゚ω゚)「ぐえ」
蛙のような声を出して吹き飛ばされたブーンでさえも。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:14:26.54 ID:/2K+pdfo0
- *****
( ´ω`)「……お?」
ブーンは目を覚ました。
瞼を擦って不鮮明な視界をはっきりとさせる。
白い天井、側にはカーテン、ブーンは病室のベッドの上で眠っていた。
ξ゚ ゚)ξ「やっと起きたわね。この変態」
( ^ω^)「ツン……? どうしてここに」
ツンはブーンの隣に立って汚い者を見る目で見下ろしていた。
ブーンがゆっくりと体を起こすと、わき腹に鈍痛が走った。
(;^ω^)「いたたたた……お?」
ツンの背後に隠れている少女をブーンは見付けた。
ブーンが四苦八苦する原因を作り出した少女、キューだ。
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:15:30.76 ID:/2K+pdfo0
- o川;゚ー゚)o「まさかバットであんなコト……」
ξ゚ ゚)ξ「しぃー!」
(#^ω^)「キューの所為で初日から大遅刻だお!!」
ξ゚ ゚)ξ「うるさい」
(;^ω^)「痛っ! 何するんだお」
怒鳴り散らすブーンの頭にツンが拳骨を入れた。
ブーンは涙目で自分には非が全く無いと頻りに訴える。
ξ゚ ゚)ξ「女の子に襲い掛かるのはどうかと思うけど」
( ^ω^)「う」
一部始終を見られていたのか、痛い所を突かれたブーンは静かになる。
口をすぼめるブーンの膝に一冊の本が置かれた。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:16:55.85 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「これは……僕が読んでた都市伝説の本だお」
ξ゚ ゚)ξ「ブーンの部屋を掃除してたら見付けたの。
もしや、と思ってブーンを追ったらここに着いたわ」
呆れ返った口調でツンが説明する。
人より憑かれ易いブーンが、悪意の塊である都市伝説の本を昨晩読んだ。
その時、ブーンの体質に釣られてキューが姿を現したのだった。
( ^ω^)「……ここは一体どこなんだお?」
ξ゚ ゚)ξ「病院と少女……それと写真が登場する話は32頁だけね」
o川;゚ー゚)o「写真!? どうして知ってるの?」
ξ゚ ゚)ξ「ごめんなさい。少女と病院が登場する話は
多かったから引っかけさせて貰ったわ」
o川; ― )o(……)
- 76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:20:05.09 ID:/2K+pdfo0
- キューがツンの側からサッと離れて向かいのベッドの端に座った。
暗い面持ちのキューの横顔を見、ブーンはツンの恐ろしさを再確認した。
ツンは何食わぬ顔で壁に掛けられている時計を見ている。
( ^ω^)(おお、怖い怖い)
ブーンはわざとらしく身震いして本のページを捲って行く。
ツンが言っていた32ページを開き、先ず目に飛び込んだのは絵だ。
溌剌とした表情で描かれている少女が二人。
少女達の間には、車椅子に座った少女らしき者が一人描かれている。
らしき者と呼んだのは、少女が凡そ人間の姿とはかけ離れていたからだ。
少女らしき者の腕には点滴のチューブが延びているので、場所は病室と見てとれる。
( ^ω^)(……)
ブーンは絵から肝心要の文章へと視線を移動させた。
文章の内容を簡潔に纏めると次のようになる。
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:21:59.63 ID:/2K+pdfo0
- ある少女が、医師に余命3ヶ月と告げられた。
母親は少女への無情な死の宣告に悲しんだ。
そんな中、少女と仲が良い友人二人が見舞いに訪れた。
母親は記念にと思い、友人二人の間に少女を挟ませて写真を撮った。
それから一週間ほどして少女は息を引き取った。
葬式が終わって気持ちが落ち着いた頃、母親はあの時撮った写真を思い出す。
母親が娘の最後の写真が収められているフィルムを現像に出した。
しかし、おかしな事に手元に返って来た物には娘の写真が見当たらなかった。
写真屋に聞くと「現像に失敗しまして……」との事。
だが、写真屋の様子が何やら妙なので母親は執拗に迫った。
母親の気迫に圧された写真屋はしぶしぶと少女の写真を見せた。
「見ない方が良いと思いますけれど……驚かないで下さいね」
という言葉を添えて。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:23:37.13 ID:/2K+pdfo0
- 写真を見た母親は心臓が飛び出そうになる程驚いた。
自分の娘がミイラの如く気持ちの悪い姿で写っていたのだ。
母親は供養をして貰う為、その写真を持ち帰る事にした。
次の日、母親は早速霊能者に供養を頼みに行った。
霊能者によるお祓いの時、娘思いの母親は写真について尋ねた。
あまりにも恐ろしい写真だったので何かの暗示ではないだろうか、と。
すると、霊能者は沈黙して言いたがらなかった。
ここでもやはり、母親はしつこく食い下がった。
無理に頼み込んで漸く話を聞ける事になった。
その霊能者が言うには、
「残念ですが、あなたの娘さんは地獄に落ちました」
なのだそうだ。
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:26:34.15 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「ほう」
ξ゚ ゚)ξ「キューには悪いけど、死が近い娘の写真を撮るなんてどうかしてるわ。
ましてや真ん中に挟んで撮るだなんて」
o川*゚ー゚)o(……)
( ^ω^)「きっと、お母さんは娘さん思いだったんだお」
ブーンは遠回しに攻撃されているキューを擁護した。
ツンが肩を竦めて溜め息を吐く。
( ^ω^)「話は分かったけど、ここから脱出するのと関係あるのかお?」
ブーンはまだ時計を眺めているツンの横顔に視線を遣る。
話の内容ではキューの世界から出られる方法が思い浮かばなかった。
ξ゚ ゚)ξ「大有りよ――写真を渡して頂戴」
そう言うと、ツンは時計からベッドに座るキューを視線を移した。
キューはツンの空気の変わり様に恐怖を抱き身構えた。
ツンがポケットからハサミを取り出してキューに近寄る。
- 91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:28:11.31 ID:/2K+pdfo0
- o川;゚ー゚)o「!」
危険を察知したキューは廊下に続く扉へと脱兎の如く逃げ出す。
しかし、いざ扉を開けようとした際、キューに異変が襲う。
いくら力強く扉を引いても開かなかったのだ。
o川;゚ー゚)o「なんで!?」
ξ゚ ゚)ξ「貴女ごときが私に敵うとでも?
ああ、姿を消そうとしても無駄だからね。
姿を消すよりも先に貴女の心臓を貫くから」
( ^ω^)「やめるお!」
ツンが口だけで、本当はやるつもりは無い事を知っているブーンだが、
恐怖で萎縮しているキューがいたたまれなくなって一喝した。
そして、ベッドから降りて軋むわき腹を押さえながら駆け寄る。
(;^ω^)(この痛みは何なんだお?)
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:29:39.45 ID:/2K+pdfo0
- ξ゚ ゚)ξ「何? ここから出たくないの?」
( ^ω^)「僕達は話せば分かり合える仲なんだお」
何処かで聞いた言葉を用い、ブーンが二人の間に割って入る。
扉に背中を預けて完全に力を失っているキューの肩に腕を通した。
ξ゚ ゚)ξ「……私が悪者って訳ね。実際、悪霊だからそうなんだけど」
ツンはマスクに手を当てて視線を床に落とした。
これ以上空気が重苦しくなるのを避ける為、ブーンは慎重に言葉を選ぶ。
( ^ω^)「おっ――――いや、写真って何の事だお?」
ξ゚ ゚)ξ「おっ? …その娘の母親が撮った写真の事よ」
o川* ― )o(………)
ξ゚ ゚)ξ「カメラに撮られた時、その娘に悪霊がとり憑いた。
それと同時に悪霊の手によって地獄に落とされたのよ」
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:31:18.17 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「地獄かお」
ξ゚ ゚)ξ「そう、写真の中の世界に閉じ込められた」
( ^ω^)「だから時間が止まってたのかお」
キューは命を落とした後、写真の中へと悪霊に連れて来られた。
理不尽な死、更にその後待ち受けていたのは永遠の監獄生活。
牢獄で長い月日が流れるにつれ、生ある者に憎悪を抱き始め、
キュー自身も悪霊になってしまったのだ、とツンは説明する。
ξ゚ ゚)ξ「写真をどうにかすれば現世に戻れるわ」
( ^ω^)「どうにかって……でも、肝心の写真はどこに?」
o川* ー )o「あるよ」
キューはボソリと不適に呟いた。
二人の視線が写真という名の牢獄に囚われた悪霊に集まる。
- 96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:32:50.16 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「あるなら早く渡して欲しいお。大遅刻でも行くんで」
o川*゚ー゚)o「はい」
キューは素直にポケットから写真を取り出してブーンに手渡した。
薄汚れた写真の中央には確かにミイラとして写っている少女が居る。
( ^ω^)「素直で良い娘だお」
o川*゚ー゚)o「ありがと……でも、君達はここから抜け出せないよ」
( ^ω^)「?」
キューはブーンから体を離し、窓際へと歩いて行く。
足取りは軽く、口笛を吹く後ろ姿からは嬉しさが滲みでている。
( ^ω^)「キュー?」
ブーンが呼び掛けるとキューはくるりと振り向いた。
子供特有の得意満面な笑みで、全く悪びれる様子もなく告げる。
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:34:51.32 ID:/2K+pdfo0
- o川*゚ー゚)o「私には君達を元の世界に戻す力なんてないから。
写真、霊能者が無理だったんだからどうにも出来ないよ。
私が正気を保っていた頃、何度も色々と試してみたし」
o川*^ー^)o「だから、私と、私の世界で生きながら――死ねば良いよ」
笑顔から悪意が感じられないのが逆に不気味だった。
感極まったキューは姿を消して病室を荒らし始めた。
カーテン、窓ガラス、時計……様々な物が壊されて行く。
( ^ω^)「んー、どうすれば良いんだお」
ブーンは病室の散乱具合を気に止めず、写真を見つめて考えている。
霊能者が匙を投げた呪いの品。
一般人のブーンには解呪方法が皆目検討もつかない。
( ^ω^)「ぬー…………」
唸り声を上げて悩むブーンからツンが写真を取り上げた。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:36:05.19 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「あっ」
ξ゚ ゚)ξ「なーに難しく考えてんのよ」
( ^ω^)「ツンには良い考えがあるのかお?」
ξ゚ ゚)ξ「馬鹿言わないで。私は昭和の時代から生きてるのよ。
ブーンみたいなゆとりには負けないわ」
( ^ω^)「ゆとり……」
項垂れるブーンを尻目に、ツンはハサミの刃を写真に当てた。
途端、病室で暴れ回っていたキューの動きが完全に止まる。
o川;゚ー゚)o「だめ!」
ξ゚ ゚)ξ「あらあら、戻す力は無いって言ったのは嘘だったのね」
姿を現したキューに向けてツンは悪戯な微笑みを送る。
キューは相当な焦りの色を顔に浮かべていた。
ハサミの刃が写真の端をほんの少し切り裂いた。
- 101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:37:49.55 ID:/2K+pdfo0
- o川;゚ー゚)o「やめてーーーーーーーーー!!!」
キューは正に悪霊と呼べる程の凄まじい形相で飛び掛かった。
ξ゚ ゚)ξ「案外、自分から進んで地獄に落ちたんじゃないの」
死に物狂いでキューは写真に手を伸ばす。
o川; ― )o「――――ッ!」
残り1メートル、50センチ、20センチ、5センチ…。
届かない。
キューの手がツンが持っている写真をかすめた。
「アンタ、そんな顔してるって」
キューの牢獄は真っ二つにハサミで切り裂かれた。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:38:59.13 ID:/2K+pdfo0
- *****
明るい春の陽射しがマンションの廊下に差し込んでいる。
遠くから子供達が仲良く遊ぶ騒がしい声や、鳥の鳴き声が届く。
ブーンとツンは元の世界へと戻る事が出来たのだ。
( ^ω^)「キューは残念とは思ってないのかお? …だとしたらお母さんが」
ξ゚ ゚)ξ「さぁ。悪霊の考える事なんて分かんないわ」
( ^ω^)「悪霊のツンでも分からないのかお」
ξ゚ ゚)ξ「人間のブーンは他人が考えている事が分かるの?」
子供達の声、鳥の鳴き声、そして全ての生活音が途絶えた。
ブーンは無音の中で人間ではないツンの黒い双眸を見つめた。
そして、
( ^ω^)「どうだろうかお」
酷く曖昧な答えを口にした。
- 103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:40:38.70 ID:/2K+pdfo0
- ξ゚ ゚)ξ「……ふふっ、ブーンらしいわね」
ツンはマスクに手を添えて小さな笑い声を溢した。
それに釣られてブーンの頬も緩む。
( ^ω^)「じゃあ、遅刻も良いとこだけど行って来るお」
ξ゚ ゚)ξ「いってらっしゃい。悪霊に……は言ったっけ」
ξ゚ ゚)ξ「車に気を付けるのよ」
ツンは母親のような注意をしてブーンの背中を見守る。
そうしていると、ブーンの歩が止まった。
ブーンが振り向いて、照れ臭そうな顔で礼の言葉を述べた。
(*^ω^)「助けてくれてありがとうだお!」
言い終えると直ぐ様、エレベーターに向かって駆け出した。
ツンは見えなくなったブーンの背中に小さく呟いた。
ξ゚ ゚)ξ「……ばーか」
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:41:57.99 ID:/2K+pdfo0
- ( ^ω^)「ワロタ」
エレベーターに乗りこめばそこは異世界。
別段、貴重でもないブーンが憑かれた瞬間である。
学習机、ランドセル、床に散らばった教科書……。
ブーンは何処かの民家の子供部屋に立ち尽くしていた。
( ^ω^)「遅刻ってレベルじゃねーぞ!」
「死ぬまで憑いて行くから精々頑張ってね」
まさかの連戦に憤るブーン宛に応援のメッセージが届いた。
聞き覚えのある少女の声、ブーンは天井を見上げた。
( ^ω^)「キュー」
悪霊である彼女もご多分に漏れず、
つかれやすい体質の青年に憑いて来たのだった。
つづく。
- 107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/29(木) 21:43:13.12 ID:/2K+pdfo0
- 今回のあとがき。
本当に右腕と右足が麻痺してるので辛かったです。
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