( ^ω^)ブーンはつかれやすい体質のようです

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 16:56:26.10 ID:QXk/wGbCO
自室に入ると、ブーンはパソコンの前にクーを座らせた。
キーボードに指を走らせ、遊びながらクーはブーンに問い掛ける。

川メメ゚ -゚)「で、何を調べて欲しいんだ?」

( ^ω^)「トソンの事についてだお」

川メメ゚ -゚)「……彼女は悪い幽霊には見えんがね」

ブーンの言葉を、何らかの警戒をしているとクーは読み取った。
しかし、ブーンは首を横に振り、その意見に対して否定の念を示す。

( ^ω^)「例え、正体が恐ろしい悪霊でも変わらずに接するお。
       今はトソンの言葉を信じて成仏の手掛かりを探すお」

川 ゚ -゚)「君は私達みたいに嘘を吐く事を覚えた方が良い」

そんな青臭いセリフを真顔で言うから、皆離れられないんだ。
そう呟き、クーはキーボードに走らせていた指を止めた。

川メメ゚ -゚)「…さて、どうやって調べようか」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 16:58:43.11 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)「んー」

トソンから得られた情報は本名と、珈琲好きな事と、ロープ。
本人に聞くのも良いが、何らかの事情があるから嘘を吐いたのだろう。
聞くのも気が引け、数少ない情報からトソンの正体を知り、成仏を目指す。

( ^ω^)「どうしたモノかお」

川メメ゚ -゚)「そう言えば、トソンの首。アレは首を吊ったんだろうね」

( ^ω^)「やっぱりそう思いますよね」

悪霊のクーが言うのだ。トソンの死因は首吊り自殺で間違いない。
腕を組んで唸るブーンに、クーがディスプレイを眺めながら低い声で言う。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:00:39.29 ID:QXk/wGbCO
川メメ゚ -゚)「……ブーンは自殺者の末路を知っているか?」

( ^ω^)「末路?」

顎を一度上下させ、クーはマインスイーパーを起動させて話を続ける。

川メメ゚ -゚)「自殺をした人間は死しても尚、死に続けるのだ。
      飛び降りなら、飛んではやり直しの繰り返し。
      首吊りなら、首を吊っては………あれ?」

地雷撤去に失敗したクーは、ディスプレイを覗き込んで首を傾げる。
一頻り凹んだ後、もう一度、ゲームをやり直し始めた。

川メ゚ -゚)「千や万では到底足りない苦しみ、痛みを与え続けられる。
     言うなれば、自殺者には無限の地獄が待っているのだよ」

( ^ω^)(……)

クーはマウスの動きを止めた。今度は地雷撤去に成功したようだ。
椅子をくるりと回転させて、クーはブーンに体を向けた。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:03:17.31 ID:QXk/wGbCO
川メ゚ -゚)「だが、どうやったのかトソンは地獄から抜け出せたようだ。
     けど、解放された彼女が今を生きる人間共を見て何を想うか。
     ……失礼、地獄ってヤツは酷く粘着質みたいだな」

トソンが幽霊として生きている限り、地獄は付きまとうのだ。
成仏を願う彼女は世界を、どのような想いで捉えているのだろうか。
ブーンは大きく深呼吸をしてから、クーに次のように頼んだ。

( ^ω^)「"都村トソン"で検索を頼むお」

まさか本名でトソンに関する都市伝説が出るとは思えないが、
これくらいしか、検索に使えそうなキーワードが無かった。

川メ゚ -゚)「分かった。このクー様の力、目に焼き付けるが良い」

検索に力も何も無いだろう。ネットに詳しそうなので頼んだのだ。
しかし、クーは意外な検索の方法を取り、ブーンの予想を裏切る。
クーは腰を上げて制服の袖を捲り、左腕を0と1の数字の羅列に変えた。

( ^ω^)「おお!? 何かカッケェ!!」



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:05:04.56 ID:QXk/wGbCO
そして、クーは薄緑の光を放つ左腕をディスプレイに突き入れた。
一瞬、目映い光が部屋に満ちた後、クーは左腕をディスプレイから抜いた。
クーはインターネット上に散らばる無量の情報を瞬時に選別したのだ。

川メ゚ -゚)「検索終了。関連性が高い物だけウィンドウに出してやったぞ」

( ^ω^)「sugeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!」

クーは自慢気に腕を組んで鼻を鳴らし、ブーンに席を開けた。
ブーンは感嘆の声を上げながら、ゆっくりと椅子に腰を下ろす。

( ^ω^)「いやー、正直クーの力を侮ってたわ」

川メ゚ -゚)「これからは私を崇め奉れよ」

( ^ω^)「でも」

検索精度が高い程度の能力だよね。言いそうになる口を手で押さえた。
だが、貴重な能力、これから検索はクーに一任しようとブーンは企む。

( ^ω^)「どれどれ…………お?」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:06:46.11 ID:QXk/wGbCO
パソコンの画面にはウィンドウが二つ映し出されていた。
まず、一つ目のウインドウをブーンは開いてみる事にする。

( ^ω^)("盲目の少女の呪い"……この野郎)

隣からククク…と笑い声が聞こえて来たので、ブーンは即座に閉じた。

川メ゚ -゚)「あ」

気を取り直し、ブーンはもう一方のウィンドウを開いた。

"首を吊っている 少女 都市伝説"

ブーンが頼んだキーワードとは違う物で検索されている。
あの一瞬で、クーは考えうる限りのキーワードを入力したのか。
これには恐れ入り、胸中でクーを称える。口にすると調子に乗るのでしない。

川メ゚ -゚)「トソンの本名じゃ何も出なかったのでね。工夫してみた」

ブーンはクーが探してくれた検索画面の文字を目で追って行く。
すると、どのサイトにも同じような文字列が並んでいた。



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:08:06.72 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)「星を見る少女?」

検索画面には"星を見る少女"という文章が踊っていた。
都市伝説と銘打たれているのに、何とも素敵なタイトル名だ。
ブーンは一度検索ワードを消し、そのタイトル名で検索をする。

( ^ω^)「……一杯出てきたお」

従って、この話で生じた悪霊は知名度が高く、力が強いと言える。
ブーンは一番上に表示されているサイトを開いてみる事にした。

( ^ω^)「これは」

川メ゚ -゚)「どんな都市伝説なの?」

クーに聞かれ、ブーンはその都市伝説の内容を読み上げて行く。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:10:17.93 ID:QXk/wGbCO
 ある大学に通う男性には、最近気になって仕方がない事があった。
 深夜、アルバイトから帰る道にあるアパートの窓から、
 星を眺めている少女がいるのだ。
 その少女は飽きる事もなく、毎夜、夜空に輝く星々を眺めていた。

 最初はそれほど気に留めていなかった彼も、そんな日が何度も続き、
 自分の心の中で少女の存在が大きくなっていくのを感じていた。
 そしてある日、自分の中の想いに耐え切れなくなった彼は、
 アパートの少女に告白を決意する。

 胸を弾ませながら階段を上り、とうとう少女の部屋の前までやってきた。
 インターフォンを鳴らすが返事がない。留守かな…と思い、
 ドアノブを回すと何の抵抗もなくドアが開いた。
 そこで彼は全てを悟ってしまった。自分が心を寄せていたのは、

 ………窓際で首を吊っている少女だったのだ。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:12:55.76 ID:QXk/wGbCO
正しく都市伝説、だが、何処となく切なさを感じさせる話だった。
静寂が訪れた部屋で、クーが視線を窓の外に向けながら言う。

川メ゚ -゚)「男が恋したのは首を吊った少女、か」

( ^ω^)(……)

男性にとっては災難な話……しかし、少女にとってはどうだろう。
幽霊と化した少女は、告白に訪れた男性を見てしまうのだ。

自殺をするという事は耐え難い絶望に陥っていたという事だ。
もし、生きていれば男性と出会い、少女の人生も変わっていたかも知れない。
この少女がトソンであるとするならば、彼女は何を想ったのだろう。

ブーンの心の中で、少女を成仏させたい気持ちが大きくなった。

川メ゚ -゚)「だが、この少女を成仏させるのは、まだ簡単な方だ」

( ^ω^)「……お?」

クーは窓際に立ち、空を見上げた。
今は何時だろうか。ブーンは壁に掛けられた時計に目を遣った。
七時二十三分。クーは星が輝いている筈の夜空を見上げている。



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:15:59.90 ID:QXk/wGbCO
川 ゚ -゚)「心を満たしてあげると良い」

( ^ω^)「心を満たす」

川 ゚ -゚)「そう。自殺をした為、男性と出来無かった事……デート」

"もし自殺していなかったのならば"、ifの話を作れとクーは言った。
だがしかし、"星を見る少女"がトソンと決まった訳ではない。
ブーンはウィンドウを閉じて、音楽プレイヤーを起動させた。

('A`)「何なんだよ、あの女」

川 ゚ -゚)「うわ! びっくりした」

歌を聴いて気分を落ち着かせていると、ドクオが部屋に現れた。
ふわりふわりと浮遊して、定位置であるブーンの肩に止まった。
煩わしく感じ、ブーンが手で払っているとドクオが言ったのだ。

('A`)「空ばっか見上げやがって盗撮のし甲斐がねぇじゃん」

『安請け合いして…。どうなっても知らないわよ』
ブーンは生まれて初めてデートをする事になってしまった。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:17:46.07 ID:QXk/wGbCO

 深夜、少女は夜空を見上げている。

  「成仏したら、何処に行くんだろ」  

 もしかしたら、あの世なんかなくて、無になるのかも知れない。

  「怖いな」  

 だが、決めたのだ。
 もう、後戻りを、するつもりはない。

  「次は、もう少し、上手に生きよう」  

 何度も見て来た星空に、願ってみた。
 結局、星座の名前は、一つも覚えられなかった。

 少女は珈琲を飲み干して、自嘲の笑みを浮かべる。

                      少女は最期の夜を過ごした。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:19:58.32 ID:QXk/wGbCO
次の日、ブーンはマンションの玄関前でトソンと待ち合わせた。

( ^ω^)「それはツンの服かお?」

(゚、゚トソン「はい、貸して貰ったんですが、何だか高そうな服ですね」

白いYシャツとチェックのスカートには馬に跨がった騎士のロゴ。
ロープの下に覗く赤いネクタイには地球に王冠を被せたようなロゴ。
ファッションに疎いブーンにはどうでも良い事だった。

( ^ω^)「行くかお」

(゚、゚トソン「鞄は? 重いんじゃないですか?」

トソンがブーンが持つ教科書で満載の鞄を見て言った。
ブーンはズシリと重い、鞄を持ち上げて笑顔で口を開く。

( ^ω^)「なに、ちょっとした修行だ……」

ブーンは嘘を吐いた。部屋に鞄を置きに行く時間が惜しいのだ。
昨晩、ブーンは適度に眠って考え、ある結論に達したのだ。
トソンは調査に行った後、人知れず成仏する気なのでは無いのかと。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:23:02.14 ID:QXk/wGbCO
調査と言えども、男女が一緒に歩いている姿を他の者が見れば、
仲睦まじくデートをしている姿と見間違えるのでは無いだろうか。
それに、トソンがデートだと言い張ればきっと、デートになる。

時限装置の如く、デートが終わるとトソンは成仏する仕掛け。

( ^ω^)「じゃあ、どこに行こうかお」

(゚、゚トソン「…? 私の家を調べに行くんじゃないですか?」

( ^ω^)「おー、そんな事になっていたかも分からんね」

頭を掻いて、ブーンは灰色のコンクリートの道を歩き始めた。
トソンはただ呆然と立ち尽くし、ブーンの背中を見つめている。
そして、数メートル程離れた所で、ブーンの背中に呼び掛けた。

(゚、゚トソン「……私の正体、知っちゃったんですね」

ブーンの足が止まった。
背中を向けたまま、一度俯いた後、トソンに振り返った。

( ^ω^)「悪霊マスターなんで。……何で正体を隠したんだお?」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:25:35.35 ID:QXk/wGbCO
何度考えても、トソンが正体を隠した理由が分からなかった。
正体を隠さなかった方が、スムーズに成仏へと事が運べる筈だ。
隠す程の理由が、星を見る少女という話の中には見当たらなかった。

(゚、゚トソン「……"星を見る少女"。素敵な名前ですよね」

( ^ω^)「だお。都市伝説にしては珍しい方だと思うお」

(゚、゚トソン「勘弁して下さい。私は首を吊って死んだだけなんです」

トソンはブーンから目を逸らし、忌々しげに声を低くして言った。
続いて、空を仰いだ。今日は生憎の曇り空だった。

(゚、゚トソン「馬鹿な死に方したのに……恥ずかしいですよ」

トソンが曇り空を睨みながら、名付けられたタイトルに愚痴を溢す。
何となくトソンらしい、と言えばらしい理由だなとブーンは思った。

(゚、゚トソン「だから、陳腐な幽霊として最期を迎えたかった」

視線をブーンに戻し、トソンは首に掛けられているロープに触れた。
ブーンはもう一つ、疑問をトソンへと静かな声で問い掛けた。



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:28:00.99 ID:QXk/wGbCO
( ^ω^)「…一人で成仏したかったのかお?」

(゚、゚;トソン「まぁ! 流石は悪霊マスターさんなんですね!」

驚いたトソンは目を丸くして両手で口を覆い隠した。
一方、変な称号を口走ってしまった事をブーンは激しく後悔した。
トソンは手を下げ、口調を普段のトーンに戻して口を開く。

(゚、゚トソン「説明し難いんですが、それは、ツンさんに配慮したんです」

( ^ω^)「ツンに?」

本当にブーンとデートのような事をすれば、ツンがどう思うか。
奥ゆかしいトソンの気遣いは、朴念仁のブーンには理解出来ない。
トソンは破顔一笑して次のように言葉を付け足した。

(^ー^*トソン「その内、分かる日が来ますよ」

( ^ω^)「なんのこっちゃ」



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:29:51.51 ID:QXk/wGbCO
わざとらしく肩を竦めて見せ、ブーンは再び歩き始めた。
トソンはゆっくりとブーンの後ろにつきながら呟く。

(-、-トソン「おぼしき事言わぬは 腹ふくるるわざ……」

( ^ω^)「お腹が減ったのかお」

ブーンは足を止めて、的を大きく外した言葉をトソンに掛けた。
本心では、本当のデートをして成仏したいとトソンは思っている。
心の中でツンに深く頭を下げ、トソンはブーンの隣に駆け寄った。

(゚、゚*トソン「そうですね。少しお腹が空いたかも知れません」

( ^ω^)「じゃあ、友達のショボンに教えて貰った所に行くお」

デートが終わると、泡沫の魂は消え、トソンは現世をあとにする。
それならば、良い思い出を作ってあげよう、とブーンは張り切っていた。



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:31:47.95 ID:QXk/wGbCO
のだが、ブーンはデートをした事が無いので失敗に終わりそうだ。

( ^ω^)「道に迷ったぞ!」

(゚、゚;トソン「みたいですね」

ショボンに、悪霊カップル御用達の廃墟喫茶店を訪ねようとしたは良いが、
O阪府に来てまだ四ヶ月のブーンは、道に迷ってしまった。
トソンも方向感覚が弱いらしく、現在地をさっぱり把握出来ない。

( ^ω^)(ひゃ、ひゃくしたとりやはた……?)

ブーンがショボンに書いて貰った地図を広げるが分からない。
周りを見回せば自身が住む、N居とそう変わらない風景の街だった。

(゚、゚トソン「取り敢えず、人が少ない場所に行きましょう」

トソンは人には見えないので、会話をすればブーンは独り言を言う人となる。
これは他の仲魔達と同様で、彼らと話す時は人気の無い場所を選ぶ。

( ^ω^)(田舎と違って面倒臭いお)



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:33:47.55 ID:QXk/wGbCO
暫く、道なりに歩いていると木々が生い茂る大きな公園を発見した。
トソンが公園の入り口を指差し、後ろを歩くブーンに呼び掛ける。

(゚、゚トソン「広そうな公園ですね。あそこで休憩しませんか?」

( ^ω^)「歩き疲れたし、そうするお」

二人は公園に入り、綺麗に植えられた草花を眺めながら歩く。
外観では分からないが、此処は相当大きな公園らしく、案内板がある。

( ^ω^)「ほーん、図書館もあるのかお」

(゚、゚トソン「ブーンさん、あれ、何をしてるんでしょうか」

見ると、広場でブラスバンドの練習をしている子供達の姿があった。
フリーダム過ぎる公園だな、とブーンは眉を潜めて思った。

( ^ω^)「どっか空いてるベンチはないかおー」

ベンチは数多くあるにも関わらず、そのどれもが人間が座っている。
仕方なく、自販機でジュースを買ってから公園の奥へと歩を進める。



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:36:34.74 ID:QXk/wGbCO
十分程歩き、漸く二人は木々に囲まれた場所に、空いたベンチを見付けた。
他のベンチとは離れており、幽霊と会話をするには打ってつけだ。
トソンを先に座らせ、ブーンは背筋を伸ばしてから腰を下ろした。

( ^ω^)「ふっひ! マジで疲れたお」

(゚、゚トソン「ふふ、ブーンさんは憑かれ易い上に疲れ易いんですね」

( ^ω^)「昔は山道とか楽勝だったのに……」

ブーンは重くなった足の膝を両手で押さえて落胆した。
そして、ベンチにだらしなく背中を埋もれさせて耳を澄ませる。
遠くからは楽器の音、人間達がはしゃぐ声、そして蝉の鳴き声。

(゚、゚トソン「私の命日、今日なんですよ」

ふと、トソンは顔を前に向け、この平和な場所に似合わない事を言った。
だが、そのような言葉に慣れ親しみ過ぎているブーンは平然と返す。

( ^ω^)「命日に成仏かお。何か理由があるのかお?」



116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:37:55.65 ID:QXk/wGbCO
(゚、゚トソン「いいえー、何となくです。本当に何となくなんです」

( ^ω^)「大切な事だから二回言ったのかお」

(゚、゚トソン「え?」

( ^ω^)「いえ! 何でもありません!」

トソンにこのネタは通じないようだ。ブーンは姿勢を整えて座った。
ブーンを横目で見、トソンは少し困った様子を含んだ笑みを溢す。

(゚ー゚;トソン「今日は付き合って頂いてすみません」

( ^ω^)「別に良いお。妙な世界に閉じ込められるよりはマシだお」

(゚、゚トソン「はぁ、悪霊マスターさんも大変なようですね」

( ^ω^)「それやめて! ちょっと恥ずかしいから!」

耳を塞いで頭を振るブーンにトソンは悪戯っぽく笑った。
ブーンは自分で言った称号が子供ぽくて酷く気に入らないらしい。



117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:39:10.73 ID:QXk/wGbCO
それから、とりとめの無い会話をした後、二人は帰る事にした。
ショボンの助力を無駄にしてしまった事が悔やまれる。
ブーンは今は無音となった暗い公園の景色を見回し、腰を上げた。

( ^ω^)「さて、帰るかお」

(゚、゚トソン「……そう、ですね」

風が吹けばかき消されそうなトソンの声、ブーンは首を動かせる。
すると、そこには身体が徐々に透明になって行くトソンの姿。
心が満たされたのか。彼女はこれから成仏するのだろうか。

ブーンは身体をトソンに向けて、胸に響く低い声で引き止めた。

( ^ω^)「待てお」

誰がどう考えても成仏は良い事ではないか。
しかし、ブーンは消え行くトソンに言葉を放ったのだった。
ブーンはトソンの半透明になった手を取って複雑な表情で言う。

( ^ω^)「まだ、僕はデートらしい事が何にも出来てないお」



120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/21(月) 17:40:49.87 ID:QXk/wGbCO
一応、喫茶店に行った後の事も考えていたが、それらは全て無駄になった。
ブーンは極めて自分勝手な意見をトソンへと投げ付ける。

( ^ω^)「こんなのが僕の初デートだとしたら困るお」

(゚、゚トソン「……でも」

( ^ω^)「馬鹿らしい事になって、恥ずかしいんだお」

(゚、゚トソン(……)

出発前のトソンの台詞を借りて、ブーンは忌々しげに言った。
ブーンに握られているトソンの手が元の色を取り戻して行く。
トソンは大きなため息を吐き、ゆっくりと立ち上がって口を開いた。

(-、-;トソン「…自分勝手な男の人って嫌われますよ」

( ^ω^)「ごめんだお」

(゚、゚トソン「良いんですけどね。…何処に連れて行ってくれるんですか」

( ^ω^)「……屋上かな」



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