僕らは、まるで愛国者のようです

15: ◆g4hoCLAMbw :2008/06/04(水) 22:37:47.63 ID:QZ07gCBq0
【2話:すぎうら教】
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( ,_ノ` )y━・~「貝殻草って知ってるか。あのー、海沿いとかに生えてるやつ」

 たぶん、見たことはありますと曖昧な返事をして、十字路でハンドルを右へ切った。海沿いに生えてるやつって。タンポポだって海沿いに咲くこともあります、先生。
 買う物があるから、車の運転頼むと先生の買い物に付き添い、僕と先生は某有名百貨店に向かっていた。
 煙を吐き、先生は眉間にしわを寄せて話を続ける。
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「貝殻草の匂いを嗅ぐと、魚の夢を見るらしいぞ」

 魚の夢? 何かの比喩だろうか、と首を傾げる。それに気付いた先生が、さらに続けた。
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「なに。皿の上で人間にフォークで刺される夢なんて見やしねぇさ
         海の中で浮遊する、心地よい夢なんだと」

 何かそれは麻薬の一種で、その魚の夢も何か幻覚症状ではないのかと思ったが、なるほど確かに考えてみれば幻想的な夢ではある。
 鳥は羽を見にまとい、空で曲線を描いて飛び回る。人は羽を捨て、足で地球を踏みしめていく。それと同じように、魚も羽と足が無い代償として、水中で夢のような浮遊感に身を委ねる心地よさ……確かに、見てみたい気がしないでもない。

( ・ゝ・)「確かに心地良さそうですね」
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( ,_ノ` )y━・~「だろう?」



17: ◆g4hoCLAMbw :2008/06/04(水) 22:38:44.46 ID:QZ07gCBq0

 先生は煙を吐いて、微笑んだ頃に窓の外を見ると、いつ間にか駅前の広場に出ていた
あと数分で百貨店に着く、というところで先生は顔色を変えた
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「車を停めろ」

( ・ゝ・)「はい?」
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「日本語がわからねぇのか?」

僕は即座にブレーキを踏み、歩道側に車を寄せて先生の顔色を窺った
先生はじっと広場を見つめている。その視線を追ってみると、白いワゴン車が見えた
広場という席に無理矢理尻を突っ込んだような異風景とも言えるそのワゴン車を
先生はただじっと見つめていた。僕は疑問に思う

( ・ゝ・)「あの車がどうかしました?」
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「……あの車、覚えがある」

( ・ゝ・)「?」
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( ,_ノ` )y━・~「すぎうら教だ」

すぎうら教。僕はその聞き覚えのある単語を漁りながら、記憶をひっくり返す。
昨日のニュースで、僕は確かにその名前を聞いた。記憶の中で、ニュースキャスターが記事を読み上げる


――昨日午後4時過ぎ、住宅街にて拳銃を発砲する事件が発生しました
犯人の目撃証言などを頼りに捜査を進めると、またもや“すぎうら教”の犯行である可能性が高まりました
警察は以前までのケースなどの共通点などを明確にし、警察は捜査を……―――



19: ◆g4hoCLAMbw :2008/06/04(水) 22:39:35.23 ID:QZ07gCBq0
……ここ数日、過激さを増したテロとも言えない、カルト教団が各地で事件を起こしている
殺人、放火、窃盗……その宗教のトップ……杉浦の言うことには必ず頭を垂れる絶対王政

杉浦という男に憧れた者達の集まりが、もしくは助けを請う者達が群れを成して、
杉浦が支持を出して各地域で事件を引き起こしているということだ。
なぜそこまで杉浦という男に憧れを持つのか。それは、彼が過去に出たテレビ番組が全ての始まりだった
たしかその番組は、全国各地の特技を持っている日本国民がその芸を披露するバラエティ番組であった
笑い声が交差するスタジオに、一人特徴的かつ幻覚性を感じさせる極めて奇異な少年がいた。それが、杉浦だ

「では! 続いては何と超能力を持った男の登場です! 未来が見える男、杉浦ロマネスクさん! どうぞー!」

カメラが司会者から当時22歳、杉浦へと映り変わる。杉浦は何も言わず、立ち上がり、前に出てただこう言った

( ФωФ)「……聞け」

若い男が醸し出すものとは思えないその威圧感に、テレビの前の日本人達は言葉を失った



20: ◆g4hoCLAMbw :2008/06/04(水) 22:40:23.40 ID:QZ07gCBq0
( ФωФ)「これから日本国民の9割は死ぬ。1割は俺に協力したものだ」

司会者がどもりながらも、「ど、どういう意味でしょうかね?」と
無理矢理笑顔を作ってマイクを近づける。杉浦は、カメラに向かって指差してこう言った

( ФωФ)「生きたいヤツは、俺に協力しろ。死にたいやつは、抗え」

結局、そのバラエティ番組は適当に笑いでまとめ、その宣告を心のどこかに引きずりながらも番組を終了させた
だがその視聴率21%の番組を見た日本国民は、その杉浦の言葉を間に受け、人々に広めた

未来がわかるという名目でテレビに出演したロマネスクは「自分に協力しない者は死ぬ」と未来を予言したのだ
今から5年前の出来事だが、それから杉浦は味方を増やし、日本に反発している
無論、日本が杉浦ロマネスクを指名手配し、行方を追っている



23: ◆g4hoCLAMbw :2008/06/04(水) 22:41:50.77 ID:QZ07gCBq0
意識を記憶から先生へと戻した。先生は変わらず、白いワゴン車を見つめている
  _、_  
( ,_ノ` )y━・~「ここで待ってろ。」

先生は煙草を灰皿にねじ込むと、ドアに手をかけた。
僕は慌ててシートベルトを外し、先生の後を追う。

(;・ゝ・)「ど、何処へ行かれるんですか?」

嫌な予感はしていた。どうせあの先生のことだ、「あの迷惑な連中をぶっ飛ばしてくる」とでも言うのだろう。

  _、_  
( ,_ノ` )b「あの迷惑な連中をぶっ飛ばしてくる」

先生は僕に背を向け、すぎうら教徒たちのもとへ向かう。
すぎうら教徒たちは、ひたすら銃を発砲し、人々を恐怖させているのが見える



26: ◆g4hoCLAMbw :2008/06/04(水) 22:42:16.47 ID:QZ07gCBq0
2話 完



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