( ´_ゝ`) (´<_` )兄弟はぐだぐだとゆくようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:46:18.20 ID:yJ+bSG6X0




流石兄弟思い立つ のようです




8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:48:09.01 ID:yJ+bSG6X0
朝から一歩も部屋の外に出てこない兄者を、
もう昼食の時間なのでおにぎりを持って呼びにいった。
部屋の扉をノックし、一応許可を得る。


(´<_` )「入るぞ」

( ´_ゝ`)「うぃー」


兄者はカーテンも開かず、布団を押し入れにもしまわないまま、
いつもの机に座ってパソコンを開いていた。

エアコンから出て来るひんやりした冷気と、
兄者がマウスをクリックする音だけが部屋の中を支配している。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:48:46.45 ID:yJ+bSG6X0
(´<_` )「兄者よ。父者がロスアンゼルスから1ヶ月ぶりに帰って来たぞ」

( ´_ゝ`)「フーン」

(´<_` )「またあの糞まずいお菓子を大量に持って帰って来たんだ。兄者も減らすのを手伝ってくれよ」

( ´_ゝ`)「やなこった。今手が離せない」


父者帰宅報告を聞いても、兄者は椅子から動こうとしない。
いつもなら渋々といった感じで動き出すのだが、今日は動く気配すら無い。

ひたすらマウスやパソコンをかたかたかちかち。
一日にこれだけやって、目が悪くならないのは凄いと思う。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:49:37.37 ID:yJ+bSG6X0
…最近兄者がやけに熱心にパソコンに向かっている。
まぁ、年がら年中兄者はパソコンに向かっている訳だが。
 
パソコンが叫びだす事もないし、12cmを握っているのも見ない。いつもとは様子がおかしい。
ついにあの年でインポテンツにでもなってしまい、治り方を必死で探しているのだろうか?


(´<_` )「…兄者よ。最近なんだか様子がおかしいぞ。頭でも打ったか?」

( ´_ゝ`)「俺は正常だぞ。どう見たって正常である!」


俺は兄者の机におにぎりの乗った皿を置いた。

兄者は「なにぎり?」と聞いたきりおにぎりに関心を示さない。
兄者の腹はさっきから悲痛な叫びをあげているのだが、気にも留めていないらしい。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:50:15.19 ID:yJ+bSG6X0
腹が減っている事を忘れるくらい集中しているようだ。
普段なら5分で集中が切れているのだが。 

一体何に集中しているのか、パソコンの画面を覗き見ると、
兄者に読解が可能なのかわからない程の小さな文字が並んでいる。
しかももの凄い早さでページが進むため、俺には文字が読み取れない。

 
(´<_` )「ブラクラを踏んでいる事もないし、蓮コラの奥にいるソニンにはぁはぁしている事もない」

(#´_ゝ`)「さんをつけろよでこ助野郎!!」
 
(´<_` )「金田乙。と言う訳で、兄者があの自堕落な生活から公正したとはどうしても思えない」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:51:35.97 ID:yJ+bSG6X0
この時俺の心の奥に少しばかり疎外感というか、
寂しさとか、そういうのに近い物がちょっぴり顔をのぞかせた。

気になる。教えてくれよ。昔からなんでも教えあって来ただろ。
…本当はこういう風にストレートに言いたいが、
それはいつもの俺の態度からすると気恥ずかしくて言えやしない。


(´<_` )「なぁ…本当にどうした兄者よ。何か困っているなら相談に乗るぞ」


結局こういうぶっきらぼうな言い方になってしまった。

だが別に兄者は気にも留めていないらしい。
俺がそう言うと兄者は丸く固まっていた背中を伸ばし、俺の方を向きながら何やら考えていた。
しばらく無言で見つめあった後、兄者はゆっくりと口を動かし始める。
 

( ´_ゝ`)「……弟者よ。これは重大な秘密だから絶対口外するんじゃないぞ」
 
(´<_` )「俺を信用しないのか兄者」
 
( ´_ゝ`)「いや、念を入れただけだ」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:53:33.87 ID:yJ+bSG6X0
兄者は天井に目を向け、色々と思案しているようだった。
そして よし、と膝に手をポンと当て立てた後、季節外れのストーブだとか、
まったく使わない初代プレステだとかが入っている押し入れ下段をあさり始めた。

俺は、一体あの兄者の押し入れから何が出てくるのか、固唾を飲んで見守っている。
ごそごそと押し入れをあさった後、新聞紙に包まれた何かを取り出した。
所々虫食いの後があるのを見て、相当古い物だという事がわかる。


( ´_ゝ`)「ここを見てみろ」


メインは新聞紙に包まれた物ではなく、虫食い新聞紙の内容らしい。 
目を凝らしてよーく小さな文字を見てみた。


(´<_` )「…ツチノコ発見者に賞金1億円?」
 

まさか。いや、だが兄者ならあり得る。

俺は嫌な予感を振り切れないまま兄者の顔を見た。鼻の穴を広げてとても誇らしげな顔をしている。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:55:03.31 ID:yJ+bSG6X0
(*´_ゝ`)「見たか弟者!ツチノコだぞ!?一億!」
 
(´<_`;)「そうだねツチノコだね…」
 
(*´_ゝ`)「しかもまだ発見者はいないらしい。こうなったら俺たちが探し出して一億をゲットしよう!」


兄者が興奮した様子で俺にまくしたてて来る。
エアコンがきいているのにも関わらず、室温が1度くらい上昇した気がした。

あぁもう。時々兄者は何を考えているのかわからなくなる。
俺はため息を吐き、うやうやしく押し入れに新聞紙に包まれた何かをしまう兄者に説明する。


(´<_` )「兄者。これいつの記事だかわかってるのか?」

( ´_ゝ`)「? せいぜい10年以内だろ」

(´<_` )「…昭和48年」

( ´_ゝ`)「俺は年号は読めない。西暦に直してくれ」

(´<_` )「昭和に25足してみろ」

Σ(;´_ゝ`)「…48+25=63……40年前!? 」
 
(´<_` )「残念73年だ。35年も前の記事なんて、もう意味も無い」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:56:06.72 ID:yJ+bSG6X0
どうやら兄者は発行日を見ていなかったらしい。

俺の言葉を聞くと驚いて立ち上がり、その拍子に押し入れの仕切りに頭をぶつけて、よろよろとバックして出て来た。
そのままOTZのような格好になって、頭を抑えながらショックを受けている。

室温が元の温度を通り越して、2度程下がった気がした。
おでこを絨毯に押し付けて、そんな…そんな…と呟いている。ショック受けすぎだろ。

どれだけこの記事に希望を託していたのだろう。どれだけツチノコに夢を見ていたのだろう。
 

(´<_` )「…流石に35年もそのキャンペーンはやってないだろ。諦めな」
 
(  _ゝ )「………」


兄者は動かない。ぴくりとも動かない。呼吸をしているのかもわからない。
頭をぶつけたのが原因で死んだのかもしれないと思い、背中に手をかけようとした時だ。


( ´_ゝ`)「だが弟者よ! 共にツチノコを見つけにいくぞ!!」
 

突然復活した。
だがしばらくしゃがんでいたせいで立ちくらみを起こしたらしく、
ふらふらとしゃがみ込む拍子に、まだ開け放してあった押し入れのしきりにまた頭をぶつけた。
 
…さっきの人の話を聞いていたのだろうか。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:57:10.11 ID:yJ+bSG6X0
だが今度は兄者はしゃがみ込む事も無く、少しよろめいた物の、すっくと立ち上がった。

(´<_` )「兄者…人の話はよく聞けと母者に教わらなかったか?」
  
( ´_ゝ`)「よーく聞いたぞ」 

(´<_`;)「ならなんでまた…」
 
( ´_ゝ`)「俺はさっきまでパソコンでツチノコの情報を集めていたのだが」
 
( ´_ゝ`)「目撃情報は全国に多数あるものの、まだ一度として捕まった事のない幻の怪蛇だ」
 
(´<_` )「2へぇといった所か」


正直、今まで兄者が俺に隠していた内容が『ツチノコを探し出して一億を貰う』だった事に落胆している。
恋人が出来たとか借金が出来たとかそう言うもっと重大な事を考えていた俺の期待?を見事に裏切ってくれた。
俺は露骨に興味がなさそうな顔を出してみたが、気づいているのかいないのか。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:58:10.85 ID:yJ+bSG6X0
一切知らんふりして兄者は喋り続ける。


( ´_ゝ`)「今まで捕まった事もない、種類も分類も、果ては蛇なのかさえわからない」
 
( ´_ゝ`)「そんな蛇をこの現代に捕まえてみろ」
 
( ´_ゝ`)「特報2000X、USO、世界丸見え、アンビリバボー、世界仰天ニュース、動物奇想天外に出れる」
 
(´<_` )「……最初の二つはもう終わってるんだけどな。しかも嘘って…」
 
( ´_ゝ`)「そしてこの未知の蛇を学会に発表したら…」
 
(*´_ゝ`)「もうなんか色々がっぽがっぽ」


よく漫画とかで軽々しく学会に発表とか言うけど、実際どういう風に発表するのだろう。
 
しかし兄者の口は止まらない。エアコンから出る冷風の直撃を食らい髪を逆立て、
両手を慌ただしく上下させながらツチノコを捕まえた後の事をべらべらと話す。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 02:58:59.15 ID:yJ+bSG6X0
(*´_ゝ`)「それでこれを朝日新聞とかに投稿したり」 

(´<_` )「朝日はやめとけ」
 
(*´_ゝ`)「あわよくば繁殖させて莫大な財産を築き上げて美女メイドをやとったりなんかしちゃったりして」
 
(*´_ゝ`)「ツチノコ長者としてこの世に名を馳せる……」 

(*´_ゝ`)「素晴らしい! 実にスンバラしい!!」
 
(´<_` )oO(…ツチノコ兄者)


エロ画像・動画やオナネタを探してブラクラを踏んでいない、
顔と磨いていない歯を鈍く光らせて嬉しそうに喋る兄者を見て俺は思った。
 
いる訳がない、ある訳がない物に夢を託し輝いている者達とは、
未知の大陸に思いを馳せ海に乗り出す冒険者や、
まだ見ぬ古代文明を探して、ジャングルの奥地に進む探検隊なんかがそうだと言っていいと思う。
今の兄者は、そういうロマン溢れる人種と同じ思いを抱いている。

俺は、滅多に勉強をやろうとしないのびた君が必死に宇宙にいく方法や深海に行く方法を
ドラえもんに頼らずに考えだそうと、悩んでいる時ののびた君を見ているドラえもんと同じ心境のような、 
たとえが長いがこう…成長を見守る思いに全身が包まれた。
 

不思議だね。兄者の方が双子とは言っても兄で、俺が弟なのにね。普通逆だよね。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:01:15.80 ID:yJ+bSG6X0
(´<_` )「……兄者よ」
 
(*´_ゝ`)「そしてツチノコまんじゅう、キーホル……うん?」

(´<_` )「そこまで熱意を持っているのなら……協力してやらない事もないぞ。ツチノコ探し」
 

協力してやらない事もない、と可愛げのない事を言ったが、
正直さっきの兄者の話で興味がわいてきた。

決して金儲けの所に引かれたのではない。
未知の生き物を探し出す、という部分に引かれたのだ。
 
ツチノコを発見するという兄者のロマンに乗ってみるのも悪くない。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:01:53.48 ID:yJ+bSG6X0

( ´_ゝ`)「大丈夫。計画には最初から弟者も参加する事になってたから」

(´<_`;)「じゃあなんで秘密にしてたんだ」
 
( ´_ゝ`)「計画決まってから教えた方が面白いだろ?」
 
(´<_` )「いきなりそんな計画を持ち出されて、俺が承諾するとでも?」
 
( ´_ゝ`)「あぁ。もちろん」
 
( ´_ゝ`)「だから何やってるのか聞かれた時に、もう、今言うのと後で言うのとで同じような物かと思って」
 
(´<_` )「まぁ……承諾するんだけどな」
 
( ´_ゝ`)「ほうらやっぱり」 


なんだか勝ち誇った顔をされた。やっぱり協力するのやめようか。

俺の心境など気にも留めず、兄者はツチノコを見つけた後の夢を語るのをやめ、
パソコンでの情報収集の賜物と、兄者個人の考えを合わせた計画を発表した。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:02:54.80 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「んで、相手を知るにはまず相手の姿形を把握してなければ仕方がない」

(´<_` )「そりゃそうだな。写真とかそういうものは手に入れたのか?」
 
( ´_ゝ`)「残念ながら実物の写真はないらしい。そこで、ツチノコとはどんな生き物かを俺が特徴を元に書いてみた」
 
(´<_` )「おぉ、流石だな兄者。兄者の画力なら安心だ」


うちにはパソコンはあるもののプリンタとスキャナがないので、
(母者いわくそんな物までそろえたら本格的に引きこもりになるので)
 
兄者はお小遣いをちまちま貯めてそれらを買おうと目論んでいる。
しかし目標金額に達する前に、漫画やゲーム等に費やしてしまう。
そういう資金不足も、今回あんなぼろっちい新聞記事から兄者をここまで駆り立てた要因の一つであろう。
 
そこまで漫画を読みふけり本棚から溢れてくるくらい所持しているだけあって、
漫画家のコツを心得ているのか兄者は絵がうまい。主に漫画絵だが。

そして兄者が、勉強机の引き出しから例のツチノコが書いてある絵を引っ張りだして来た。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:04:21.39 ID:yJ+bSG6X0
( ´_ゝ`)「これを見ろ! ツチノコの特徴を全て盛り込んだ大作だ!」
 

ででん!と効果音でもなりそうな勢いで、兄者が俺の目の前にツチノコの絵を見せつける。
気味の悪い、出来損ないのビール瓶みたいなものが描いてあった。
青褐色で、輪のような模様がついていて、しっぽのようなものがビール瓶からひょろんと出ている。

しかしどう見ても頭がチンp


(´<_`#)「兄者! こういうのは真面目に描かないとわからないだろ!!」

(#´_ゝ`)「だって特徴をあわせると本当にそんなになるんだぞ!」


あぁ、今思い出した。兄者は漫画絵は得意だが、こういう写実的な物は苦手なんだった。
 
理科のタンポポの観察なんかはいつもDだった。
なのでこの蛇も、リアルに描こうとして失敗したのだろう。
所々にある消しゴムの後が痛々しい。というか哀れ。

特徴を聞くと、ビール瓶のような形状、しっぽは短いと兄者は言った。
俺は今までツチノコという単語は聞いた事がある物の、一切関わった事がない。
ツチノコの図という物も今まで一度も見た事が無い。

なので正直言うと兄者の言う事は信用出来ない、出来ようがない。あんな蛇がいるものか。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:06:21.38 ID:yJ+bSG6X0
その後、兄者にまともな物を見せてもらった。
 
さっき兄者が必死になって読んでいたサイトはツチノコの情報サイトだったらしい。 
そのサイトのトップページに、ツチノコの(まともな)図があった。


( ´_ゝ`)「な?さっきの絵とくりそつだろ?」
 
(´<_`;)「あぁ…悔しいけどくりそつだ」
 

また勝ち誇ったような顔をされた。心無しか兄者の鼻がのびた気がした。



ターゲットの姿も把握し、俺たちは本格的にツチノコ探しの準備をする事に。
幸いもう近いうちに夏休みがやって来る。
宿題は…まぁどうにかなるだろう。きっと



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:07:19.14 ID:yJ+bSG6X0
兄者計画によるとツチノコとは本州のいたる所に出没するそうなので、
宿泊代を浮かすために、すでに結婚した姉者がいる秋田に行く事となった。
パソコンに詳しい兄者が、交通機関の検索や対ツチノコアイテムを探しだし、
俺は母者への言い訳と、出来れば資金提供をしてもらう。無理に近いが。

後、資金の尽きぬ限り買い出し、何かと好奇心旺盛な妹者にこの計画を隠す役割。
父者は特に問題ないだろう。いざとなったら父者からも金を借りるくらいか。


夏休みまで後三日。準備期間は十分にある。

でも、本州のいたるところにいるならば、東京にもいるかもしれないじゃないか。
なぜ兄者は秋田に行くと言い出したんだろう。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:07:59.48 ID:yJ+bSG6X0
そしてまずは俺の部屋で作戦会議となった。
ちなみに冷房のついている兄者の部屋で作戦をたてる事は却下。
兄者は掃除を全くしないため、部屋が大変汚いのだ。
それならエアコンは無いが、綺麗な俺の部屋の方がよく頭が回るって物だ。
 
カルピスとチューペットを兄者が持って来た。外からかすかにアブラゼミの声が聞こえる。
紙とペンを用意し、扇風機に紙が吹き飛ばされないように注意しながら、俺たちはしばし息をひそめる。

兄者は階下に耳を澄ませた後特に何も感じなかったらしく、
ふぅ と一息ついてから、置いてあった紙を裏返した。


そこには筆跡からして兄者が書いたと思われる、買い物リストがあった。


( ´_ゝ`)つ□「これに買い出しリストが書いてあるからな。ぬかるんじゃないぞ」
 
(´<_` )「どこのやくざだよ」 

(´<_` )「所でこれを買う金はどうすんだ?」
 
( ´_ゝ`)「割り勘で」
 

(´<_`#)



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:09:07.74 ID:yJ+bSG6X0
(´<_` )「兄者、この前金が無いとか言ってたよな」
 
(´<_` )「ようするに殆ど俺持ちだろ?」

( ´_ゝ`)「うん」

( ´_ゝ`)「でも大丈夫だ。『ツチノコ 一億』で検索したらなんかいっぱい引っかかった」
 
(´<_` )「と言う事は?」

と言う事は?も何も無いんだけどな。一応聞いてみる事にした。


( ´_ゝ`)+「ふっふっふっ…まだ一億円のチャンスがあると言う事だよ弟者君」
 
(*´_ゝ`)「ツチノコを見つけたら、本当にメイドさんを雇えるかもしれんぞ」
 
( ´_ゝ`)「しかも今時ツチノコなんてブームじゃない。競争率も低いはずだ」

(´<_` )「よかったな兄者。もしかして、それで見つけた一億で俺への借金を返そうとかは思ってはいないよな?」
 

Σ(;´_ゝ`)



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:09:55.54 ID:yJ+bSG6X0
(´<_` )「だから『大丈夫だ』とか言ったんじゃないよな?」
 
(;´_ゝ`)「俺がそんな取らぬ狸の皮算用で物事を考えているとでも思っているのか!!」

(´<_` )(一応自覚しているのか)


やはりそんな事だろうと思った。

しかし俺もツチノコ捜索隊のメンバーとなったんだから、ここで金を出さねば何も始まらない。
貯金が無いと言っていても、兄者だって千円くらいは持っているだろう。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:10:35.81 ID:yJ+bSG6X0
(´<_` )「まぁ、俺も協力すると一度言ったんだ。金は出すよ」
 
(*´_ゝ`)「流石我が愚弟」

(´<_` )「…愚はいらないと思うが。しかし学生の貯金ではたかが知れている」
 
(´<_` )「俺の貯金は…三万四千円かな。兄者は?」
 
( ´_ゝ`)「八円」

(´<_` )「真面目に答えてくれよ兄者。大事な質問なんだから」

( ´_ゝ`)「マジで。ケツの毛までむしり取られた」
 
(´<_` )「かつあげでもされたのか?」
 
(#´_ゝ`)「うん。酷いんだぞアイツらは…アニメイトとゲーマーズとメロンブックスと…」
 
(´<_`#)「もういい」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:11:17.16 ID:yJ+bSG6X0
だがもういいとは言った物の、三万四千八円では秋田に行く飛行機代で精一杯だろう。
しかも兄者の買い出しリストの中身を見てみると

・テント                        
・寝袋               
・虫取り網&魚取り網それぞれ×2
・虫かご
・双眼鏡
・ランプor懐中電灯
・デジカメバッテリー
・ラジオ
・折りたたみ椅子
・折りたたみ机
・バーベキューセット
・釣り竿(餌はカゲロウ、毛針使用)
・漫画

現地調達品

・罠
・肉
・草
・髪
・その他必要に応じて



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:12:50.66 ID:yJ+bSG6X0
いくつか、どころかかなり削れそうな物もあるが、やはりお金が足りそうにない。
後、現地調達品の『髪』とはいったいなんのだろうか。もしかして呪術にでも頼るつもりなのか?
その前にバーベキューセット等の有無について兄者に確認をとる。


(´<_` )「兄者よ。買い出しリストのバーベキューセットだとかは俺の見間違いだろう?そうだろう?」

( ´_ゝ`)「何を言うか弟者よ。せっかく山に行くんだからバーベキューセットを持っていかなくてどうする」
 
( ´_ゝ`)「山と言えば川。川と言えば釣った魚でバーベキュー!!」

(´<_` )「はい消去ー。後漫画と折りたたみ椅子と折りたたみ机と肉も消去ー」
 

そう言って俺はその項目にペンで横線を引く。
一本引くごとに兄者のわめき声が聞こえるが、ここは心を鬼にして引かねばなるまい。
外から聞こえる蝉の声が一層大きくなった気がした。


(;´_ゝ`)「あぁっ!酷い! せっかく久しぶりに外に出るんだからアクティブに行こうと思ったのに!!」
 
(´<_` )「そこらへんに石とかあるだろ。折りたたみ椅子とかはそれで代用」
 
(´<_`;)「後どう考えたって漫画はいらないだろう……」
 
( ´_ゝ`)「釣りの指南書に釣り◯チサンペーを持っていこうと思ったのに…」
 
(´<_` )「ずぶの素人の兄者が釣りをやったって、ビギナーズラックすら無いと思うぞ」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:13:58.50 ID:yJ+bSG6X0
兄者が気温34度のまっただ中に出る事をもの凄く嫌がったのと、
兄者は無駄遣いをしそうなので俺が買い出しとなった。
内容を削りに削った買い出しリストを持って、
俺は近所のリサイクルショップに向かった。

ここまではいい。問題は、買い出しだけで全て使い果たしてしまった資金の再度調達と、
兄者のパソコンを駆使したツチノコ計画が本当に信用出来る物かという事だ。
それと…母者に秋田へ行く事をどう言うかと、後どうにかして母者から資金を貰えないかどうか。

まずは俺は母者のいるリビングへ向かった。勝率は……4%くらいか。

 @@@
、@#_、_@      
 (# ノ`) 「……」

(´<_`;)「……」


母者がスーパーのチラシと家計簿を交互に睨んでいる。

凄まじい威圧感だ……。このまま近づくと多分俺ははじけ飛ぶだろう。
俺は母者を刺激しないように足音をたてずに近づき、そっと声をかける。
とりあえずストレートに母者に小遣いを貰えないか頼んでみよう。まずは突撃あるのみ。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:15:10.29 ID:yJ+bSG6X0

(´<_`;)「はh」

 @@@
、@#_、_@      
 (# ノ`)  「小遣いならもうやらないよ!」


OK、計画を練り直そう。
直接金をねだるのはやはりヤバそうだ。鼻が消し飛ぶ。
 
俺は数秒のうちに頭の中で会議を始める。
母者が食いつき、なおかつ金を出してくれそうな話。

母者の心配事は何だ?オイルショックと国産野菜の高騰と冷凍食品に手を出せなくなった事。
父者の育毛剤が馬鹿にならない事、電気代が増えてきた事、妹者は特になかったと思う。
後……兄者が夏という事も手伝って、中々外に行かずに引きこもり寸前な事……。これだ。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:16:11.22 ID:yJ+bSG6X0
(´<_`;)「イヤ、違うんだ。ついに兄者が本気を出した」

 @@@
、@#_、_@      
 (  ノ`) 「……」
 
母者は黙って電卓を打っている。鼻が飛ぶ事はもうなさそうなので、俺は話を続ける。


(´<_`;)「なんでも、あの根暗な性格を直すために夏季限定ボーイスカウトに入るそうだ」
 
(´<_`;)「山に行ってテントを張り、大自然の中で生きる知恵を仲間とともに学ぶ…」
 
(´<_`;)「弟の俺が言うのもなんだがこれは兄者にとって、母者にとっても、明るい未来を掴むためのチャンスだと思うんだ」

(´<_`;)「今のうちからアクティブになっておけば、将来嫁さんも貰えるだろうし母者の老後も安心だ」

(´<_`;)「後、温度変化に弱い兄者が少しは熱に耐性をつけて戻って来るだろう。冷房の使用回数もきっと減る」

(´<_`;)「それに兄者がそれをきっかけに野菜の自家栽培でも覚えてくれば、きっと野菜も食べ放題」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:16:41.29 ID:yJ+bSG6X0
少し大げさな気もするが、これくらい言っておいて損は無いだろう。
まぁ、ボーイスカウトでキャンプもツチノコでキャンプも似たようなもんだ。そんな間違った事は言っていない。
しかも母者の心配事 (1)兄者の将来 (2)母者の老後 (3)電気代削減 (4)野菜高騰問題打開策 を練り込んだ。

これで食いつかなければ…俺はいったいどうなってしまうのか。

 @@@
、@#_、_@      
 (  ノ`) 「…本当にやる気はありそうだったかい?」
 

(´<_`;)!


(´<_`;)「あぁ、もちろん。だけど少し問題があって……」

(´<_`;)「ボーイスカウトの一番有名な所が秋田にあって、なんでも兄者はそこに入隊したいそうだ」

(´<_`;)「だがそんな遠い所に行く金を母者が出してくれるかどうか。とても無理だと、兄者は夜な夜な枕を濡らしていた」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:17:39.72 ID:yJ+bSG6X0
(´<_`;)「だから直接言えない兄者の代わりに俺が母者に頼みに来たんだ…」
 
(´<_`;)「お願いします。どうか兄者をボーイスカウトに入れるための資金と飛行機代を出してあげて下さい」


実際ボーイスカウトがどんな制度になっているかなんてわからないが、
とにかく今はどうにかして金を手に入れなければならない。

俺はジャンピング土下座もする覚悟だった。しかし損な役回りだ。
それにここで金を手に入れなければ、兄者にぶちぶちと文句を言われるだろう。

 @@@
、@#_、_@      
 (  ノ`)  「期間は何日間だい」

 
やばい。そう言えば何日間か聞いていない。
とりあえず一週間とでも言っておけばいいか。


(´<_`;)「一週間。山で遭難体験コースだから一番長い」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:18:55.06 ID:yJ+bSG6X0
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、@#_、_@      
 (  ノ`) 「……」


母者の沈黙が怖い。アブラゼミに混じって、にいにいゼミの声が聞こえて来る。
しばらくフローリングを見つめて黙っていたら、母者がいきなり俺を指差した。
何事かと思い体を硬直させていると、母者はゆっくりと口を開く。

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、@#_、_@      
 (  ノ`) 「台所の調味料入れの上に五万円が入ってるから持っていきな!」


どうやら俺を指差していたのではなく、後ろの台所を指していたらしい。
俺が調味料入れを覗きにいくと、確かに茶封筒に入った諭吉が五人いた。
俺が感謝の礼を述べて自室に帰ろうとすると、母者が無言で親指を立てていた。『good luck』

リビングにカーテン越しに入る夏の午後の陽ざしのおかげかはわからないが、
いつも厳格な母者の顔が、柔和で優しい顔になっていた気がした。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:19:29.12 ID:yJ+bSG6X0
(´<_`*)「やったぞ兄者!少し心が痛むが五万円ゲットした!!」

(*´_ゝ`)「流石だな弟者。俺もさっき父者からマイルが大量に貯まったカードをもらったぞ!!」
 

兄者も俺が苦戦しているうちに、父者からカードを受け取っていた。
なにげに父者は海外を飛び回るいい会社に勤めているので、飛行機代は経費で落とし、
その時に出るマイルはちゃっかり自分の物として、コツコツ貯め込んでいたらしい。
 
兄者に聞いてみると、国内線を二人往復できる分は余裕であるとの事。
これで秋田へ行く交通機関は飛行機ときまった。
 

( ´_ゝ`)『流石だよな俺ら』(´<_` )


そして最後の仕上げとして、姉者に俺らが遊びにいく事を伝えたら喜んでくれた。
馬鹿兄弟がやってくると、旦那に大声で叫んでいるのが電話越しに聞こえて来るくらい。

買ったテントだとか大きな荷物は先に秋田の姉者宅に送り、後は夏休みに入るのを待つだけとなった。
あれだけ家の中をうろうろしていたら家族全員に秋田に行く事はばれてしまうが、
表向きはボーイスカウトの合宿となっているので特に問題は起きなかった。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/19(土) 03:20:06.84 ID:yJ+bSG6X0
ちなみに母者にはその後、俺も秋田に行く事を伝えておいた。
ボーイスカウトに俺は出ないが、ただ兄者の付き添いとだけ言っておく。
母者は黙って財布から諭吉をニ人出し、これで俺に兄者をしっかりと見張ってくれと言った。

飛行機代は自分でなんとかすると言ったので、これで資金の合計は7万円。
 
後、妹者が一緒に行きたいと駄々をこねていたが、ボーイスカウトは男しか参加出来ないと言ったら
頬を膨らませて自室にこもってしまった。お土産をいっぱい買って戻って来るとでも言えば、多分機嫌は治るだろう。


( ´_ゝ`)「弟者よ。UMOとトランプどっちを持っていこうか」

(´<_` )「二人しかいないのにそんな大人数用のゲームを持っていくのか」

( ´_ゝ`)「いや、俺と弟者と姉者と義兄さんがいるジャマイカ」

(´<_`;)「俺と兄者はともかく、働いている大の大人をカードゲームに誘うのか」

( ´_ゝ`)「大人向けに花札の方がよかったか?」

(´<_` )「そういう問題じゃない」



おわり



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