( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです

5: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:16:21.97 ID:qtwLDuFS0
運良く、僕は二巡目を初級のクリアという形で通過した。
これで残るランクは中級一つとなった。

そして二巡目最後のプレーヤーはショボン君。
最年少マインスイーパー。下眉=ボーノン。
彼がクリアすれば、僕らは解放される。

何かの歯車が一つ違えば、中級をやるのは僕だったのかも知れない。

でもとにかく、僕は先に指名され、初級の選択権を得て、クリアした。
今から、ショボン君は中級をプレイする。
モララーさんが二度クリアしてくれた、最悪のランクを。



8: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:18:20.18 ID:qtwLDuFS0
(´・ω・`)…………中級ですか……

( ・∀・)アドバイスなんてのはないんだ。
     普段なら中級くらい余裕でクリアしてるだろう?
     リラックスしてやれば、そう難しいランクじゃないはずだ。

中級は、確かに5回やれば3回はクリアできるランクだ。
そう難しくは無いのだが……
なんと言っても、かかっているのは自分の命。

(´・ω・`)…………わかりました。

彼の返事が頼りないものになるのは、仕方ないことだ。


ショボン君のプレイの価値は、もはやそれ単体で考えることはできない。
もし失敗すれば、僕が指名される危険だってある。
指先一つで、僕はまた崖っぷちに立たされる

( ・∀・)

モララーさんがもっと具体的なアドバイスを送ることができれば、クリアの可能性は上がる。
しかし、マインスイーパというゲームの特性上、アドバイスは中々難しい。
ある程度の実力があれば、あとは経験でしか物を語れないからだ。



11: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:19:59.35 ID:qtwLDuFS0
(´・ω・`)…………ブーンさん。

突然話しかけられ、驚く。
しかし、このコンクリート部屋には既に3人しか居ない。
モララーさんとの話をやめれば、僕に矛先が向くのは当たり前だ。

( ^ω^)なんだお?

(´・ω・`)………………
     もし、僕が失格したら、山梨県の甲府に住んでる兄に、遺言を伝えてください。

また遺言か。
託される遺言が、また一つ増えるというのか。
いい加減、鬱になりそうだ。

( ^ω^)いやだお。
      君が生き残って、山梨に帰れお
 
(´・ω・`)それができれば良いんですが、万が一を考えて、のことです。
      なんせ、プレイするランクは中級しか無いんですから

( ^ω^)…………

ちょっと皮肉をこめられた。
遺言くらい、聞くことにする。



13: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:21:10.76 ID:qtwLDuFS0
(´・ω・`)良いですか?

( ^ω^)分かったお。
      お兄さんの名前は、何ていうんだお?

(´・ω・`)下眉=シャキン。今は姓を変えて上繭=シャキンとなりました。
      甲府の郊外に住んでる、大柄な男です。
 
シャキンさん、か。
別に珍しい名前では無い。
上繭という、特殊な苗字から探す方が見つかりやすいだろう。

(´・ω・`)伝えてほしい内容は、こうです。
     「結婚おめでとう。これからもお幸せに」

( ^ω^)…………

遺言としては、やや不適切な内容の気がする。
きっと、色々な事情があるのだろうけれど、僕には違和感しか感じなかった。
彼の遺言にケチをつけるつもりは無い。言葉通り伝えようと思う。



15: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:22:12.28 ID:qtwLDuFS0
ショボン君を陥れたという罪悪感は確かにあった。
だからこそ、僕は彼の遺言を伝えようと思ったのかも知れない。

(´・ω・`)それと、お二人とも、ありがとうございました
      お二人が居なければ、僕らはきっと全滅していました……

( ・∀・)’
( ^ω^)…………

確かに僕とモララーさんの功績は大きい。
初級を2回クリアした者と、中級を2回クリアした者だ。
他のメンバーは運に恵まれなかったが、僕らは運に恵まれた。

僕ら二人のプレイが無ければ、ショボン君の言うとおりになっていただろう。
10人全員が失格。という、最悪の結果に。



18: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:24:54.08 ID:qtwLDuFS0
「最悪の結果」というのは、あくまで生者の立場から見たモノだ。
死んでいった人たちにとっては、1人死のうが10人死のうが関係ない。
しかし、その遺言が伝わるかどうか、は残された人間にも、死んだ人間にも、大きな問題だ。

( ^ω^)(たくされた遺言は、クーさん・モナーさん・ペニサス・ハインさん・ジョルジュ
       そして今、ショボン君……6人分かお……)

きっと僕は、ドクオさん・ペニサス・クーさんの3人よりも下手だった。
だけど生き残っているのは、さっきも言ったように、運による所が大きい。
今、死んでいたのは、彼らではなく僕だったかも知れない。

彼らの遺言を、僕らは運ぶことになるのだが……
……彼らが、僕の遺言を運んでいた可能性だってあったのだ。

( ・∀・)礼は、脱出した後に言えよ

(´・ω・`)……………………



19: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:26:33.00 ID:qtwLDuFS0
「では、次のプレーヤーを指名する」
「オリジナルランクは、箱捨=シィがプレイ中であるため、挑戦はできない」
「故に残るランクは中級のみであるため、次のプレーヤーは中級をプレイすることになる」

「次のプレーヤーは、下眉=ボーノン」
「プレイするランクは中級だ」

(´・ω・`)…………では、行ってきます。

ショボン君の座っていた所から、椅子までの5メートル。
小学生の歩幅でも、数歩でたどり着いてしまう。
数歩先で、ショボン君の命運が決まる。

(´・ω・`)…………謝らないと、ね。
      きっと、きっと…………この口で…………

安っぽい椅子の上に、ショボン君の腰が下ろされた。
画面は僕がクリアしたMeの初級。
それが今から、中級に切り替わる。



22: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:28:57.29 ID:qtwLDuFS0
「表示は?」

(´・ω・`)XP

「わかった。では少し待て」

今までなら、ランクは? という問いもあった。
それが無い。
他のランクを全てつぶし終えたから。

その事は、脱出が目前に迫っていることと、有無を言わせず中級をプレイさせること。
どちらも意味していた。

やはり、ここでショボン君がクリアしなければならない。
もし失敗すれば、三巡目に突入してしまい、僕にもモララーさんにも指名の可能性が来る。
そこで僕が先指名されてしまったら、中級をやる羽目になる。

それだけは、なんとしても避けたい。
でも、避けるために僕ができることは、何もない。



23: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:30:09.29 ID:qtwLDuFS0
画面が切り替わり、時計が動き出した。
ショボン君のプレイが開始された合図だ。

ショボン君が中級をやるのは初めてだ。
一巡目では上級をやると宣言したが、それを覆し、初級をクリアした。
そのことは、僕らの士気を著しく上げた。

しかし、その勇敢なショボン君でさえ、中級には怖じ気づいているように見えた。
理由は簡単だ。
中級は、このマインスイーパにおいて最悪の条件でのプレイが要求されるから。

一歩間違えれば死。
難易度自体も、初級とは比べものにならない。

(;´・ω・`)……

100%の生が約束されている一手目は、定石としては辺のマスを狙う。
ショボン君もそれを知っているし、きっと打つだろう。
だが、それでどの程度の戦果が得られるかは分からない。

大きく開かなければ、まだ死と隣り合わせなのだ。



24: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:31:45.92 ID:qtwLDuFS0
だからと言って、力一杯打てば良いマスが開くというわけでも無い。
僕にできることも、ショボン君にできることも同じだ。
神に祈るだけ。

マインスイーパの神様がいるなら、お願いだ。
この中級、クリアさせてくれ。

(´-ω-`)…………やります!

誰に向かって言ったのかは、分からない。
僕か、モララーさんか、スピーカー男か、シャキンというお兄さんか。
それともマインスイーパの神様か。

とにかく彼は、一手目を打った。
打ったマスは、中級盤16×16の上辺やや左。
定石といえるマスだ。

マウスを握る手が、ゆっくりと弛緩していく。



26: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:35:20.41 ID:qtwLDuFS0















マインスイーパの神様は、僕の願いを聞いてくれた















28: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:36:47.15 ID:qtwLDuFS0
出てきたのは空白マス。

やや小さめだが、それでも十分ヒントがちりばめられている。
クリアするには十分のマスだ。

( ^ω^)!!!
( ・∀・)…………!

これには、僕らも思わず声を出しかけた。
当たり前だ。
すぐそこに外の世界があり、最後の扉の鍵が、今開いたのだから。

あとはゆっくりドアノブを回し、クリアするだけ。

(*´・ω・`*)来た……来た…………

ショボン君も高揚しているようだった。
それも当たり前か。この脱出を、自分が決めたのだから。



32: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:39:34.58 ID:qtwLDuFS0
一手目に空白マスが出たからといって、最後まで完遂できるとは限らない。
不可予知などの存在があるからだ。
数手で詰まってしまうことだってありえる。

(*´・ω・`)行ける……

しかし、そんなことも起きず、プレイはどんどん進んでいった。
中級盤のマスは既に過半数が開いている。

だが不安なのは、このペースだ。
異常なまでに速い。
僕のハイスコアを上回るペースでクリックしている。

ハイスコアを狙う時や、ハイペースでクリックする時はミスが生まれやすい。
理由の説明など不要だろう。

(*´・ω・`)よっしゃ………………

もしも、ショボン君が中級を無事クリアできたら、礼を言おう。
そして、蹴落としたことについて謝ろう。
ショボン君は許してくれるだろうか?

まあ、どっちでも良い。
礼を言って、謝ろう。



34: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:42:15.52 ID:qtwLDuFS0
(*´・ω・`)早く……早く!
     ここはどうなの? セーフだよね……?

急いては事をし損じる。

ショボン君、急ぐ必要は無いんだ。
だから、そんなにマウスを強打しないでくれ。
もし間違えて、隣のマスをクリックしたらどうするんだ?

ガチガチガチガチ
ガチガチッ

ガチッ
カチッ

(*´・ω・`)うふふふふ

突然モララーさんが目を閉じた。
安心したからというよりは……何か、不吉なモノを見たような態度だ。

反射的に盤面を見る。



37: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:44:42.21 ID:qtwLDuFS0
不幸が近づくのはいつだって突然だ。所構わず、時構わず、誰彼構わず。
ベッドの中でも、風呂の中でも、トイレの中でも。
コンクリート部屋にだって近づいてくる。

ショボン君のプレイしている中級盤が、呼び出すための魔法陣。

(;^ω^)(…………なんだお? この盤面……)

マスの左上の旗。
それに対し、何か異常なほどの恐怖を覚えた。

他と同じ調子で打った一手。
旗を立てただけだから、別に即死ということはありえないが……

( -∀-)………………

なんだろう、この違和感は。
明らかに、僕らを悪い方向へと導こうとしている。

ショボン君が、では無い。
ショボン君を媒介にした、何か不吉なものが。
マインスイーパの悪魔が。



39: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:46:28.16 ID:qtwLDuFS0
         マインスイーパの悪魔は、前にも一度……

(*´・ω・`)行ける

         そう、あの時も中級だったような

(*´・ω・`)イケル……

         たしか、あの人の時と同じ

(*´・ω・`)…………

         嘘だろ?

(*´・ω・`)…………

         テンドンなんて要らない

(*´・ω・`)…………イケル!!

         気付いていないのか、ショボン君!!



41: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:47:56.23 ID:qtwLDuFS0
盤面の右側。2と1で構成されているあたりのマス。
一見、ミスは無いように見えるが、そこは確かに地雷が一つ多く計算されている。
つまり、安全マスに旗を立てている。

旗の立て間違えで、中級を失格。
モナーさんの時とまったく同じだ。
こんな初歩的なミスで、再び扉が閉ざされるなんて、嫌だ。

(*´・ω・`)

一つくらい失敗したって……なんていう考えは通用しない。
慎重で繊細なプレイを重ねた上に、ある程度の運が乗って、初めてクリアできる。
一つのミスも許されない。

だが、ショボン君は一つのミスを作ってしまった。
たった一つだが、致命的なミスを、作り上げてしまった。



42: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:49:16.64 ID:qtwLDuFS0
プレイは進む。
僕らの意志とは関係無く。

プレイは進む。
口を挟むことが出来ぬまま。

プレイは進む。
プレイヤーの笑い声と共に

プレイは進む。
僕ら二人を置き去りにして

プレイは進む。
兄を慕う少年を殺そうと。

プレイは進む。
外への扉を閉ざすため。

プレイは進む。
重大な失敗を残したまま。

プレイは進む。
モナーさんと同じ失敗を残したまま。

プレイは止まった。
その失敗が、止めた。
プレイは止まってしまった。



46: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:50:21.99 ID:qtwLDuFS0
「下眉=ボーノン」

そこから先は、聞きたくなかった。
目を閉じ、耳をふさいでも、鉄の扉が開き、閉まる音だけは聞こえてしまった。
ごめんなさいショボン君。

その涙は、僕が流すべきだった。
その叫びは、僕が上げるべきものだった。
その銃弾は、僕が受けるかも知れなかった。

それら全てを、君に押しつけてしまったんだ。

ごめんなさい。ショボン君。
僕は生きて帰る。
そして、君の遺言を届けてみせる。

ごめん、ショボン君。
本当に、ごめん。



55: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:54:47.37 ID:qtwLDuFS0
ひとしきり泣いて
―――それでもまだ涙は流れていたし、すっきりなんてしなかったけれど―――
僕は、喋れるほどには回復した。

だが、喋る相手は既にモララーさんただ一人となってしまった。
十人いたプレイヤーは、既に三人にまで減った。
そして、その内一人は別の部屋にいる。

( ;ω;)モララーさんだけでも生きて、帰ってくださいお

( ・∀・)……………………ああ。
     次に指名された時は、確実にクリアしよう。
     だが、君も生きて帰るんだ。
     絶望して、ドクオのようにはなるな。

( ・∀・)サダ……じゃない
      素直=クールのように、最後まで戦え。

それしかできないのか。
僕が皆のためにできることは、それしかないのか。
この後悔は、その程度では拭えない。



59: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 20:58:20.36 ID:qtwLDuFS0
僕はショボン君を蹴落とした。
僕が彼を殺したも同然なんだ。

蹴落としたことの罪深さを、今になって知るなんて。
僕は馬鹿だった。
彼を追いつめたのは僕で、殺したのは僕なんだ。

執行人でも無い。スピーカー男でも無い。
一番の大罪人は、僕だった。

( -∀-)…………

( ;ω;)…………おっ…………おっ…………

泣き声だけが、コンクリート部屋に響いていた。
人の少ない部屋だと、声はよく響く。
それがまた、とても悲しくて。

( -∀-)…………

( ・∀・)あのさ……。



68: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 21:01:20.40 ID:qtwLDuFS0
( ・∀・)ショボン君より先に指名され、初級を選んだことを悔いているようだけど…
     僕も一つだけ、君らに隠していたことがある。
     これはとても罪深く、人生を何度繰り返しても消せる過去では無い。

( ;ω;)…………なんの話ですかお?

僕は、彼の話を聞いて、少しでも楽になろうとしたのだろうか
確かな理由は分からない。単なる興味だったのかも知れない。
でもとにかく、聞いてみたかった。



けれど、聞かされる話のイントロは、とんでも無いものだった。

( ・∀・)僕はね、たくさんの人を裏切った。
     そうだな、ジョルジュやペニサスと一緒なんだ。



モララーさんが、あの二人と一緒?
どういう……?

( ・∀・)たくさんの人を裏切った。
     その時の話をしよう
     君がこの話から何を見出すかは分からないが、有意義なモノであってほしい。



70: ◆Dti7WkoCEo :2009/03/15(日) 21:02:58.61 ID:qtwLDuFS0
彼の罪を聞こうとした理由。

ショボン君の死から立ち直るため。
だったかも知れない。

人を信じられなくなった僕が元に戻るため。
だったのかも知れない。

この話次第では他人を信じてみよう。
死んでいった7人とモララーさんを――できることなら、シィも――信じてみよう。





( ・∀・)ぼくはね、前にも一度、マインスイーパに集められたことがあるんだ。




(ショボン初級編、終わり)



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