( ^ω^)は空蝉のようです

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:06:02.92 ID:UVEjZSPbO
ξ゚听)ξ「……『蟷螂』と『蜘蛛』が死んだみたいよ」

壁に立て掛けられた松明の明かりだけが、そこを照らしていた。
アーチ型の天井は湿っており、所々に水滴が見える。
そんな湿り気のある洞窟のようなこの室内の入口で奥に向かい声を発したのは女性。
女性は高く澄んだ声を室内に響かせた。彼女の金色の巻き髪が松明の炎に照らされ、オレンジ色が混ざる。

「そっかぁ……また、彼かな? 『空蝉』とか言われている……」

女性の声に対する返事が室内の奥から響き渡る。
まだ、幼さの残るややソプラノ寄りの声は何度か反響を繰り返した。

ξ゚听)ξ「みたいね。どうするの? 何故だか知らないけど私達『蟲』が多く殺されているわ」

「偶然では無いね……ただの無差別殺人鬼では無い
 どうやって僕たち『蟲』を選んでいるのかはわからないけど……でも最近までは、たいした力も無い下っ端ばかりを殺していた
 それから最近になって『蟷螂』や『蜘蛛』という『蟲の名』と力を持つ者を殺すようになっている
 ……これは少し問題だよ」

奥、松明の明かりも届かない暗闇から声は響き続ける。
そして、その声の区切れたところで女性は暗闇に向かって言った。

ξ゚听)ξ「私が行こうか?」

「んー……」

暗闇の中の者は考えを巡らせているのか一言唸り、しばらくの沈黙を続けた。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:07:18.79 ID:UVEjZSPbO
「僕が行くよ」

飄々とした、憂いや怒り、喜びなどの感情の感じられない平淡な声が沈黙を破った。

ξ;゚听)ξ「え!?」

女性は暗闇の主の発した言葉に呆気に取られたように口を大きく開けながら間抜けな声を出した。

ξ;゚听)ξ「い、いや……私が行くけど!?」

「いやいや、結構だよ。僕が行く
 彼、『空蝉』のことも見てみたいしね。一体どんな化け物なのか……」




――――第三話 『蟻』



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:08:15.08 ID:UVEjZSPbO
('A`)「あの『蜘蛛』も殺されたか……」

ドクオは洋館があった森の中の開けた所にいた。
そこには洋館のあったであろう広い敷地全体に黒い炭が被さっている。

('A`)「燃やされたのか……見てみたかったぜ
   あの『蜘蛛』がよだれやら小便やら垂れて恐れる姿をよ……
    でも、さすがに締め切った洋館の中には入れないってもんだ……」

残念そうに眉を落としながら、ドクオは煙草を尖らせた口先でくわえた。
その煙草に火を点けると、先から立ち上る煙を目で追い、上に見える曇り空を眺めた。

('A`)「俺が煙草吸い過ぎだから曇ってんのか?」

最近は雨が降りそうで降らない、はっきりとしない曇り空の陽気が続いている。
秋から冬に変わりかけの微妙な気候、天候の下で、ドクオは炭になった洋館に目線を戻すと考え込む。
煙草をくわえ、離し、煙を吐き出し。と一連の動作を数回繰り返す。
その度に煙草は体を失っていき、長かったそれは吸うことが出来ぬほどに短くなった。

('A`)「会ってみるしかねぇか」

ドクオは短くなった煙草を炭の山に投げ入れると、踵を返して洋館の跡地を後にした。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:09:09.16 ID:UVEjZSPbO
洋館へ行く道は一本しか無い。
ドクオは当然その道を来たときの逆を向きながら歩く。
道の両端は背の高い木々が生い茂っており、その木々から垂れる枝は狭いこの道をトンネルのように包んだ。
ただでさえ薄暗い天候の中、その枝はぼんやりとした陽の光を遮り深い陰りをもたらした。

('A`)「首なし山か……」

ドクオはそんな暗がりの道を抜けた先にある幅広い道へ出ると呟いた。

首なし山は洋館のある森を北にしばらくに歩いた所にある山だ。
その山は人の首のように垂直に伸びていて、頂上が頭だけを切り取ったかのように水平な地面である。
そのため、人はそこには昔『地球の頭』があった所と言うようになり、その頭の無い、『首だけ』だから『首なし山』と言われるようになった。

首があるでは無いか、と思うだろうが、そこは言葉のあやと言うものだろう。
『首だけ山』だと、何か語呂が悪いのか、なんなのか、とにかくその山はそのようなことにより、首なし山と言われている。

('A`)「……まあ、とにかく行ってみるか……さすがに登れはしねぇけどよ」

ドクオは呟くと、洋館への道から出た先を左に曲がり、首なし山へ向けて洋館の周りの森を迂回する為に歩き出した。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:10:10.04 ID:UVEjZSPbO
洋館の北へ向かうには森を迂回しなければならない、森はとにかく危険で熊や毒虫が大量に出没する。
いったい何があってそんなに熊や毒虫が大量発生しているのかはわからない。
だが、その熊や毒虫は街へ出てくる事は無く、森の中だけで生活しているために大きな被害など無い。
首なし山へ行くのには森を迂回して行く。それは誰しもが人は殺さない、と思うように、ごく自然にしていることだ。

('A`)「長いんだよなぁ……この道が……」

ドクオ煙草を口にくわえ、歩きながらぼやく。
キョロキョロと森のみが広がる周りの風景を眺めながら退屈そうにただただ脚を動かすのだった。





(;'A`)「なげぇ……まだかよ」

額から大粒の汗が噴き出し、それは顎や首を伝って服を濡らした。
背中は汗で服が張り付き、不快な感触をもたらした。
ドクオは袖で額の汗を拭うと、その場に立ち止まった。

(;'A`)「あー、秋でもやっぱ運動すると暑いな……」

そう言いながら服の胸元を指でつまみ汗でくっついた胸と服を剥がした。
それからその胸元をつまんだまま前後させて少しでも風を自らに贈ろうとするが
それはほぼ無意味で汗は止まること無く噴き出し続けた。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:11:00.67 ID:UVEjZSPbO
しばらくの間、道の端の木陰で体を休めていると、不意に視界の端に何かが映ったのをドクオは感じた。

('A`)「?」

いや、映ったと感じたわけでは無いかもしれない。
ただ、何かが来ると本能が自然と感じ取った。
そして、その場で耳を澄ませて自分が行く先の道へと神経を集中させた。

('A`)「……やっぱり、誰かが来る」

ドクオは確信すると、すぐにその場から道から逸れた森へ入り、近くの草影に身を潜めた。
静かに音を起てず、草の隙間から道を伺う。
地面を乱暴に踏み締める音が近づいてくる。
ざっざっ。っと砂を舞わせながら、やや足速に歩くそれは容易に想像できる。
そして、それはドクオのいる草の茂みを通り越した。

( ^ω^)

('A`)(――『空蝉』!)

みすぼらしいよれたズボンと薄茶色いTシャツを着て、腰には小柄なナイフが挿してある。
疲労からか、どこか憂いに帯びているように見える笑みを浮かべながら歩く『空蝉』がドクオの目の前を通った。
そして、ドクオに気がつかないまま『空蝉』はドクオの来た、街へと戻るための一本道をしっかりとした足取りで歩いて行った。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:12:25.01 ID:UVEjZSPbO
('A`)「やっぱり、そうだったのか……『空蝉』は首なし山に行っていた……!」

ドクオは足音が遠くに消えたのを確認し、茂みから先程まで『空蝉』のいた道へ出た。

('A`)「首をいつも首なし山に持って行っていた……やはり、一度登る必要があるのかもしれないな……」

ドクオは『空蝉』の歩いて行った道の先を見据えながら呟く。
そして、それから数秒瞼を下ろし考え込むと「だが」と言ってから続けた。

('A`)「今は『空蝉』を追おう」





ドクオは『空蝉』に比較的速くに追い付いた。
目の前を靴の裏を地面をこすりつけるようにしながら歩いていた。
真っ直ぐ前を向き歩く姿はどこか勇ましい軍人のようにも見える。
そんな堂々たる態度で音を鳴らしながら歩く『空蝉』には、ドクオの尾行には少したりとも気付いていないようだ。
ドクオは『空蝉』の事を遠く、40メートルほど離れた場所から、気の影に隠れながら足音を消して尾行している。
そのため『空蝉』が気付かないのは極めて普通なことだろう。

('A`)「……へっ、空気になるスキルは人一倍あるんだぜ」

ドクオは自嘲気味にそう呟きながら、『空蝉』の後ろを常に視界にいれ尾行を続ける。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:13:28.96 ID:UVEjZSPbO
('A`)「……なんだ?」

それからしばらく、時間にして約5分ほど歩いた時だった。
前を歩いていた『空蝉』がピタリとその場で動きを止めたのだ。
ドクオは木の影から一体何かと様子を伺っていると、『空蝉』のさらに前に何者かが現れたのを見た。

('A`)「誰だ……? ……近づくか」

ドクオからはその何者かは遠すぎるために顔を見ることは出来ない。
興味という欲求から、ドクオは道の横へそれ、木々の生い茂る中を歩いて近づき始めた。

落ちた枝などを踏まないように、慎重に、だが迅速な動きで踏むべき地面を選び脚を乗せて行く。
ドクオは暗殺の技術に長けていた。体術も一通り『蟲』の元で熟したのだが、いかんせん体格が良くないせいで不利になる。

そこで、小さな体と身軽な動きを出し惜しむことのないような
『暗殺』という行為を何度もその身で体験し、その行為が自分に合うものとわかると、ドクオは技術向上を目指し日々鍛練をした。
そして、ドクオはその素質があり、頭角を現した。
失敗といった失敗もほとんど無い暗殺を自分の物にすることができたのだ。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:14:43.81 ID:UVEjZSPbO
('A`)「誰だ……小さい、子供か?」

『空蝉』の後ろ5メートルほど離れた森の茂みの中でドクオは『空蝉』の前にいる人物を見た。

(-_-)「……」

それはドクオよりかは少し高そうな、身長約160センチ程の小柄な、陶器のように肌が白い少年であった。(ちなみにドクオは156センチである)
少年は『空蝉』の事を顔を上げて、じっと見上げながら見つめている。
その見つめられている当の本人はというと、少年をじっと見つめ返すだけでぴくりとも表情を変えない。
わかっているのだろうか。少年の放つ何か異質な雰囲気を。

(-_-)「へぇ、君が『空蝉』かぁ……思ったより貧弱そうだね」

( ^ω^)「……!」

少年の言った自らの呼び名を聞いた『空蝉』は僅かに訝しむような表情を作った。

(-_-)「なんていうかさ……もっとガタイの良くて、狂気じみた雰囲気を漂わせていて……
    なんか殺人鬼って感じじゃ無いね……心が弱そうだ」

飄々とした態度で、時折額に手を当てて考え込むような仕草を交えながら少年は言った。

( ^ω^)「……何者だお」

(-_-)「そういえば自己紹介がまだだったね
    そうだね……えっと、僕は『蟻』っていうんだ」

(;'A`)(!! なんだって!? 今あいつは『蟻』って言ったのか!?)



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:16:17.70 ID:UVEjZSPbO
ドクオは『蟻』と名乗った少年の言葉に驚き、生唾を飲み込んだ。

(;'A`)(あの子供が『蟻』!? 今まで顔や姿は見たことがなかったが、まさか子供だったなんて!
     ……小さいから『蟻』なのか? それともなにか特別凄い力を持っているのか?)

( ^ω^)「……お前が『蟻』?」

『空蝉』も、やや驚愕の混じった口調で『蟻』と名乗る少年に対して言った。
二人が疑問に思うのも当たり前である。
『蟲』という比較的大きな組織の最高権力者がまだ幼さの残る子供なのだ。
普通ならば組織のボスといえば、髭面の脂肪を蓄えた男や顔に傷の入った、風格あるこわもての男だったりを思い浮かべるだろう。
だが、『蟲』の最高権力者、所謂ボス、頭は子供だった。疑わないわけが無い。

(-_-)「そうだよ? 僕が『蟲』という組織の首領――『蟻』さ」

( ^ω^)「……」

(;'A`)(こいつが……本当に……いや、しかし……)

ドクオと『空蝉』、二人の間に緊張が走る。
疑問が頭の中を駆け巡るが、少年の言う言葉と態度、雰囲気は何か言い知れぬ圧迫感を感じさせる。
第一自分よりも頭一つ分ほど大きな男に対して物おじしないのは普通の子供では異常であろう。
子供でも馬鹿で無謀な悪ガキなら話しは別だが、少年は見たところ馬鹿にも無謀にも見えない。
少なくとも相手との力の差を感じる事が出来るはずだ。
そして、自らがある組織の首領であると宣言する子供がいるであろうか。それは否だ。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:17:13.35 ID:UVEjZSPbO
(-_-)「信じて無いのかな? まあ、無理もないよね」

少年はそう言いながら『空蝉』ににじり寄る。
背筋を伸ばし、『空蝉』を細い目で見つめながら少年は数歩脚を進み、『空蝉』の前までたどり着く。

( _ )「これを見ても、まだ信じられないかな?」

『空蝉』にそう言いながら少年は口の端を吊り上げて笑った。
白い歯を覗かせ、口を横に長く広げていく。
しかし、何か不自然、異様である。
少年の口は音も無くゆっくりと横に裂けたのだ。

(;'A`)(な、なんだありゃあ!! く、口が裂けている……!!)

(;^ω^)「ば、化け物……!」

『空蝉』はそれを見て口をぱくぱくと開閉させながら震えた声を出した。
それは悍ましい光景だった。漫画や小説のような空想をそのまま映し出したかのような奇っ怪な姿。
少年の口は耳まで裂け、そして裂けた口からは横に開いたすき鋏のような、クワガタの鋏のような褐色の大顎が生えて来たのだ。
粘り気のある唾液を滴らせるその大顎は、まさに『蟻』のそれそのものだった。

(゚{w}゚)「そうだね……僕は化け物……さ!!」

( ゚ω゚)「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

『蟻』は最後の言葉を言うと同時に勢い良く『空蝉』の肩に噛み付いた。
褐色のおどろおどろしい大顎が肩に食い込み、肩に焼けるように鋭い痛みが走る。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:18:03.79 ID:UVEjZSPbO
( ゚ω゚)「うあぁ……! 痛……!! 熱……!!」

『蟻』の大顎から開放された『空蝉』は両手で体を抱え込むと、呻くような掠れた声を発しながら悶えた。

(゚{w}゚)「南米にはパラポネラっていう蟻がいるんだ
     その蟻の尻には毒針があり、それに刺された者は体中焼けるような熱さに襲われる!
     まあ、尻につけると要領が悪いから僕は大顎につけた、それだけさ」

そう姿は変わったが、飄々な口調は変わらない。
『蟻』はくつくつと含み笑いを零しながら言った。

:(;'A`):(南米の蟻? つけた? 意味がわからない! 人間に蟻の体の一部がつけられるわけがない!!
     一体なんなんだ!? 現実にありえることなのか!? これは!)

ドクオは自分の体が震えていることに気付いた。
目の前にいる悪魔のような異業の化け物。
その恐ろしい姿にドクオの心臓は激しく脈打ち、それが焦りと恐怖心を煽った。

(;゚ω゚)「あ"あぁぁぁ……!! う……っ! うが……ぁ!!」

『空蝉』は血走った目を見開き、額から大粒の汗がまるで涌き水のように噴き出している。
今にも死にそうな程に唸るその声は獣の咆哮よりも低い重低音。それは地鳴りのようにも聞こえる。

(゚{w}゚)「苦しませながら逝かせるのもいいけど、僕は優しいから今楽に殺してあげよう
     いろいろと目的とか聞きたいこともあったよ
     まあ、でも君を殺せばもう障害はなくなる。それだけで十分だ」

『蟻』はそう言って、口を上下左右に開くと細い目を三日月のように歪ませ、恐ろしい笑みを見せた。
そして、苦しそうに悶える『空蝉』の元へと一歩近づくと唾液が糸引いている口を大きく開いた。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:19:14.93 ID:UVEjZSPbO
( ゚ω゚)「う"、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

(゚{w}゚)「!?」

突然『空蝉』は耳をつんざくような叫びとも唸りともわからぬ声を上げると、腰に挿してあったナイフを手に取った。

( ゚ω゚)「う"ぅぅあ"あぁぁぁぁああぁぁぁ!!」

そして、そのナイフの刃を自らに向けると、刃を肩にあてがい、一気に突き刺した。
さらには突き刺したナイフを下に下げ、大きな傷を肩に作った。

(;'A`)(毒でも出そうっていうのか!? 馬鹿か! もう、あの様子では大分毒は廻っている!!)

茂みに隠れているドクオは震える体を無理矢理押さえ付けながら、二人のようすを食い入るように見ていた。

( ゚ω゚)「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

その時だった『空蝉』の血管をいくつも裂いたのか、肩から勢いよく赤々とした血が噴き出した。

(゚{w}゚)「う……」

それは呆気に取られていた『蟻』の顔や肩に吹き掛かかった。
ちょうど『蟻』の頭は『空蝉』の肩を辺り、『蟻』はもろに血を顔に浴びた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:19:58.38 ID:UVEjZSPbO
(#゚ω゚)「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ここぞとばかりに『空蝉』は激しい熱さを抱えながらも、その熱さをぶつけるかのように『蟻』に体を勢いよく当て
そして、その勢いと体重を全て『蟻』へ掛けた。
『蟻』と『空蝉』は体重と身長にかなりの差がある。『蟻』は呆気なくされるがままに倒れ込んだ。

(#゚ω゚)「あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

(゚{w}゚)「ぐっご……!」

『空蝉』は『蟻』の顎を掌で押し上げると、あらわになった細い首に噛み付いた。

( {w} )「ぐがっ! ぼ……っ!」

歯は首の組織を裂いて突き抜け、そして太い頸動脈を噛みちぎった。
大量の血液が『蟻』の首から噴水のように噴き出した。
『空蝉』はそれを浴びながらも、何度も何度も首に噛り付いた。





(;'A`)「あ、『蟻』が死んだ……?」

ドクオは自分が凄まじい殺し合いを見ていたが、いつの間にか放心状態になっていることに気付き、我に返った。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:21:31.46 ID:UVEjZSPbO
ドクオの目の前は地獄のような光景だった。
奇怪な化け物が血溜まりの上で首をだらし無く垂らして白目を剥き倒れ、
その上には目を血走せた鬼のような男が荒い呼吸をしながら、なんとか生き延びてやろうと必死に意識をそこに留めていた。

('A`)「ち、近づいても……大丈夫だよな……」

ドクオは茂みから恐る恐る右足を出すと、それに続けて左足、体とゆっくり動かした。
そして、重なり合う二人に近づくと、まずは『蟻』の腕を手に取った。
その手首に指をあてがうと脈を確かめる。

('A`)「……死んでる」

脈は何の反応も示さなかった。
それはこの生命体は活動していないことを表していた。つまり、死んでいる。

('A`)「こっちは生きている……」

ドクオは手に持った腕を地面に置くと、次に『空蝉』に顔を向けた。
『空蝉』は荒い呼吸を繰り返しながら、なにやらぶつぶつとか細い声を出している。

(  ω )「……まだ、死ねない……まだ……死ねない……まだ、死ねない」

('A`)「……」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:22:30.34 ID:UVEjZSPbO
ドクオは小さい体で、なんとか『空蝉』の体を地面へ降ろした。

('A`)「……まあ、二つに一つだ。生きるか死ぬか
   俺は一応頑張るぜ? あとは神様とお前次第だ」

聞こえているかもわからないが、ドクオは『空蝉』にそう言うと、
何度も体の角度を変えて試行錯誤を繰り返し、ようやくその小さな背中に『空蝉』の体を乗せた。

(;'A`)「別に、俺は仲間だとは思ってなかった……
    それによ……『蟲』の頭は死んだ……
    頭が潰れたら、それでおしまいだ……だから、俺は……」

顎から汗を滴らせながら、ドクオはおぼつかぬ足取りで歩き出した。
『空蝉』の足を引きずりながらも一歩一歩地面を踏み締めた。
背中からは荒い呼吸の音だが生命の証が聞こえている。

(;'A`)「なにやってんだろうな……俺は……だけど、人助けしてんだ
    神様よう……こいつは弱い気がするんだ……だから……助けてやってくれよな……」

空からはぽつりぽつりと雫が降り出した。木々は雫を受けて軽い音を鳴らした
そして、薄茶色い道を濃い色に変えていった。




――――第三話 『蟻』 終わり



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