(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです

2: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 20:59:43.74 ID:a28KdYqV0

――――断章

            『光の標』―――――――




         全ての原因は過去から
         全ての結果は現在に
         全ての望みは未来へ



3: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:01:37.20 ID:a28KdYqV0
暗闇に音が響いていた。
靴が足元を叩く音と、荒い吐息による小さな声だ。


誰かが、この闇の中を歩いている。


もうどれほど歩き続けただろうか。
体力は限界近くまで削られ、既に足の感覚は薄い。

(   )「はぁ、っ……ッ」

ふと気付けば、吐息に白色がついていた。
どうやらかなり深いところまで来ているようだ。

酸素を求めて肺を動かす度、凍えるような冷気が身体の中を走っていく。



6: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:03:19.88 ID:a28KdYqV0
周囲、光はほとんどない。
あるのは手や足に来る、岩のような感触だけだ。

時折、光の粒のようなモノが浮いているのが視界に入るが、
これが現実なのか幻覚なのか、既に何時間も暗闇を歩いてきた者には判断出来なかった。
ただ、己の感覚を頼りに深淵部を目指すのみだ。

(   )(しかし、これがもし現実の……そしてあの光ならば……)

そう願わずにはいられない。
何しろ、この光の発生源こそが目的なのだから。
この目的の達成のために金も、地位も、名誉も、そして命をも削ってきたのだ。

目的がある以上、原因もある。
そして、その原因を断ち切るために必死に足を動かしていた。

既に記憶は朽ちかけている。
長い年月に劣化を重ねていき、今はもう思い出せることの方が少ない。

それでも、忘れない想いがあった。

ちぐはぐで歪になってしまった記憶の中、しかし自分が果たすべきことを忘れることはない。



8: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:04:48.57 ID:a28KdYqV0
(   )「……ッ……っく」

ふと不安が広がった。
自分の求めているモノがここに無かったら、と。
最悪な結果を予想する頭を、払うように振る。

と、その時だ。

(   )「!」

一瞬、光が見えた。
幻覚かすらも解らない小さなものではなく、はっきりと。
思わず目を擦り、そこで自分の手がぬめった液体で汚れていることを自覚。
しかし意識は、先に見えたはずの強い光ばかりを探していた。

行く。

自然と足が前を目指した。
何度も躓き、倒れそうになりながらも、一直線に。
そして、

(   )「……!」



10: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:06:14.16 ID:a28KdYqV0
一気に光が増した。

まるで昼間のような強い光だ。
視界が一気に白色に染まり、思わず腕を目の前にかざす。
ややあって目が慣れた頃、改めて眼前の光景を見た。

(   )「ぁ……――」

声が漏れるのを抑え切れない。
広がる光景が、自分の理想と寸分の狂い無く同一だったからだ。
安堵によってか、身体から力が抜けそうになるのを何とか堪える。

(   )「これで……これで、この世界は変わる……」

しかし、

(   )「!」

見る。
目的としたそれの奥に、隠れるように何かがあることを。
気付いた時には遅かった。


【――――】



12: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:07:50.63 ID:a28KdYqV0
(   )「がっ!?」

頭を強く殴られたかのような感覚。
鈍痛が響き、思わず身体がよろめいた。
数歩下がったところで足を止め、今起きたことを冷静に考える。

この脳に直接響くような訴えは、

(   )「『感情』、か……!
    成程……確かに、この場に留まっていたのは妥当な判断だな」

震える息を吐き、だが、と続け

(   )「それは私がここに来るまで、だ……!
    安心しきって根まで張ったのはやり過ぎだったな」

右手が素早く動いた。
腰に引っかけられた機械を取り、口に近付ける。

(   )「シナー……控えさせていた隊をここへ。 大至急だ」

返事が来る。
素早い応答は肯定を示しており、その速度に満足げな笑みを浮かべる。

視線は終始、広い空間の奥にいる何かに向けられていた。



14: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:09:24.66 ID:a28KdYqV0
対する動きはない。

様子を窺っているのか、単に身動きがとれないのか。
どちらにせよ、自分がここにいる時点で勝負は決まっているようなものだ。


(   )「始めよう。
    断片化した過去を繋ぎ、全ての約束と責任を果たすために。
    たとえ廃れた記憶だろうとも、今、私の胸にある想いは決して偽物ではないのだから」


さぁ、と言い


(   )「今こそ、久しい続きを――!!」



16: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:10:51.26 ID:a28KdYqV0


――数十年後。


その日、人々の頭上にある全天は晴れを示していた。
青色パレットに白い雲が浮かび、軽い熱を持った光が地上を照らす。

いつも通りで、清々しい天気だ。

直下。
広い大地がある。
地平線の向こうまで広がる大地は、豊潤な緑に覆われている。


山があり、森があり、草原があり、谷があり、川湖があり、滝があり、海があり、島がある。



そして、一つの都市があった。



17: ◆BYUt189CYA :2008/09/01(月) 21:13:00.13 ID:a28KdYqV0
大地の中に都市がある。

ほぼ円の形を持つ都市だ。
それは遠くからでも解るほど、活気に満ち溢れていた。
だが、普通の都市とは異なるであろう点がある。

人々の大半が若者である、という点だ。

少年少女に見える者から、青年と呼べる者がほとんどを占めている。
彼らは皆して同じような服装に身を包み、希望と自信に溢れた表情で都市を行く。



――武装学園都市VIP。



ここは、都市でありながら『学園』の名を冠する、活気に満ちた街都。
学び、競い、何かを得るために若者が集い、去っていく通過点。


今日もまた、誰もが高みを目指していく――



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