(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです
- 6: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:43:31.72 ID:OuzEm0r20
――――第十六話
『真相真偽』――――――――――
与えられる事実と
自らが求める真実は表裏一体
間に潜む偽りを探せ
- 8: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:45:45.13 ID:OuzEm0r20
- 学園都市VIPの南側を範囲とする『生活区画』。
そこを真ん中から東西に分断するように、サウス・メインストリートが敷かれている。
生徒の多くは、朝、この道を都市の中心へ向かって登校するわけだが、
その途中、『生活区画』を抜けると右手に一つの広場があった。
位置的には山形の都市の中腹部分。
ベンチがあり、木々が植えられてているだけの簡素な公園である。
そこに、ハインの姿があった。
从 ゚∀从「…………」
生活区画のほとんどを見渡せる位置で、欄干に腕を乗せて景色を眺めている。
視点を落とせば、下の方に寮の屋根が見えた。
落ちれば怪我をするだろうが、上手くやれば着地も出来そうな高さだ。
そんな計算をしつつ、ハインは目を上げる。
再び生活区画を見下ろす景色を視界に収めつつ、吐息。
- 9: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:47:38.40 ID:OuzEm0r20
- ローラーブレードの車輪を地面に擦らせる。
何か考え事をする時の癖だ。
じゃり、という砂を擦る音を耳に入れながら、思考していく。
从 -∀从「――――」
思うは、学園都市に来てからのこと。
ここしばらく学園中を歩き回ってみて、いくつか解ったことがある。
一つは、学園都市VIPが持つ特有のバイタリティ。
一つは、学園地下への入り口。
一つは、隙が無いこと。
- 10: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:49:44.75 ID:OuzEm0r20
- 一つ目は、この都市で少しでも過ごせば誰でも解ることだ。
若者が大半だというのもあるのだろうが、異常なまでの活気に満ち溢れている。
皆、『生きる』という行為を最大限に楽しんでいるような空気だ。
失敗や挫折にめげず、何度も挑戦しようとする気概。
常に周囲に気を張り、何もかもを興味の対象とする好奇心。
他人でありながら、友人以上の絆の強さを生む仲間意識。
都市を歩いていて気付くことがある。
それは、誰もが明るく、強い表情を持っている、ということ。
決して余裕があるわけではない。
常に何かに追われるように忙しく動き回り、自分の為すべきことをこなしているわけだが、
そこに焦りなどの負の感情は、まったく見受けられないのだ。
他の都市では見られない独特な活気。
慣れないそれは、ハインの調子を少しばかり狂わせていた。
- 15: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:51:40.32 ID:OuzEm0r20
- 二つ目に関しては、ハイン本来の目的に関係のあることだ。
このために学園都市へやって来たようなもので、
以前、彼女自身が自分のことを『ウイルス』と称した理由がこれである。
場所は教育区画――つまり学園の敷地内。
隅の方にポツンとある、小さな黒い箱のような施設が、それだ。
中にはエレベーターがあり、それを使って地下へ降りるようになっていた。
調べたところ、この学園の地下は第二階層まで存在している。
第一階層には図書館や独房が、第二階層には『ゲート』なるものがあるらしい。
普段から生徒達が利用するのは第一階層だ。
そこへ至るためには当然、今述べた地下への入口を通る必要がある。
問題は、それだ。
これは三つ目の『解ったこと』にも関わることなのだが、
地下へのエレベーターを利用する際、生徒カードが必要なのだ。
つまり使用した時間なども全て記録されることになり、動かぬ証拠となってしまう。
これでは、迂闊に地下へ入ることが出来ない。
- 16: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:53:54.68 ID:OuzEm0r20
- 从 -∀从(どーしたもんかなぁ。
セキュリティを誤魔化すにしても、色々と調べたり用意せにゃならんし……。
かと言って正面から行くっつったって、用事が用事だしなぁ)
思っていた以上に手こずりそうな予感がした。
下手な行動をとれば、先に挙げたバイタリティに満ちた矛先が、自分へ向くことになる。
それだけは避けなければならない以上、やはり慎重に動くしかないようだ。
更には気にかかることもある。
学園都市へ編入した直後に自分とギコを襲った、あの影。
目的は未だハッキリしないが、自分を狙ったと考えれば、あれはまさか――
从 ゚∀从「――――」
と、そこでハインは思考を打ち切った。
高回転していた脳内回路の動きを切り替え、背後へ意識を送る。
从 ゚∀从「……何か俺に用かい?」
振り向く。
そこにいたのは、
('、`*川「…………」
一人の女子生徒。
腕章に『G3』と表示されている。
それが正しいなら、彼女は一般教養学部の三年生のはずだ。
- 17: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:55:29.38 ID:OuzEm0r20
- 面識はない。
記憶にもない。
どう考えても初対面だ。
とはいえ、『状況的』には初めてというわけでもない。
レクリエーションで名が広まってから、こういうことは度々あった。
武器を問われたり、渋澤を出し抜いた方法を問われたりした頃を思い出す。
最近はそういうことも少なくなってきたが、今でもたまにあることだ。
しかし、
从 ゚∀从(一般教養学部……?)
そこに疑問が残る。
ハインに質問してきた生徒のほとんどは、武術専攻・術式専攻学部の生徒だった。
あとはローラーブレードに興味を示す科学技術学部の生徒が少々、というくらいである。
最も離れた位置にある一般教養学部の生徒が、何の用なのだろうか。
- 19: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:57:14.70 ID:OuzEm0r20
- ('、`*川「ハインリッヒ=ハイヒールね?」
从 ゚∀从「え? そうだけど……?」
('、`*川「そう。 ようやく二人っきりになることが出来たわね。
ずっと機会を窺っていたのだけど、気付いていたかしら?」
从;゚∀从「いや、悪いけど全然」
('、`*川「当然ね。 気配消してたもの」
何なんだ、この女は。
思うと同時、
从;゚∀从(一般教養学部所属のくせに『気配を消していた』だと……?)
不思議な空気を纏っている。
この都市に暮らす人間にしては、少し違和感があった。
('、`*川「今日は貴女と少し言葉を交わそうと思って。
ずっと隠れたままの観察じゃあ、ストーカーでしょう?」
从 ゚∀从「……は?」
('、`*川「調子はどうかしら? 普段の振る舞いに隙はないかしら?
偽りの関係と立場に心を引き摺られていないかしら?」
从;゚∀从「っ!?」
- 20: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 20:59:03.16 ID:OuzEm0r20
- 彼女の言葉一つ一つがハインに突き刺さる。
全ての問いかけに心当たりがあった。
疑念が、確信へと変わっていく。
('、`*川「…………」
从;゚∀从「お前、何だ?
何を――いや、どこまで知ってやがる?」
慌てて言った時だ。
ハインの制服のポケットから、甲高い電子音が鳴り響く。
从;゚∀从「……メール?」
取り出したのは新品の白い携帯端末だ。
レクリエーションが終わった後、ギコ達に案内を受けて買ったもの。
頻繁に連絡を取るような相手もいないので、実はあまり使っていなかったりする。
新規メールが一件。
学園生徒会からで、件名は『緊急【Lv.3】』とある。
从;゚∀从(緊急? どういうこった?)
このレベルが何を示すのかは知らないが、察するに重要な案件らしい。
慣れない指捌きで決定キーを叩いてメールを開く。
そこには、
从;゚∀从「――っ!?」
- 22: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:02:15.25 ID:OuzEm0r20
― 緊急通知 ―
送信者:学園生徒会
春季初期にVIP学園へ編入した、
ハインリッヒ=ハイヒール(武術専攻学部2学年)の正体が、
本国である『チャンネル・チャンネル』からのスパイであることが判明した。
詳細は不明だが、
学園都市に関する何らかの情報を得ることが目的だと思われる。
潜伏期間から見て、既に目的を果たしている可能性もある。
よって彼女の見かけた者には、可能な限りの捕獲を試みてもらいたい。
このメールが配信された時点で武具ホルダーの解除は承認とし、
更に拿捕する際に怪我を負わせても、ある程度は容認する。
尚、彼女の深く関わっていた者にも同じ疑いがあるため、
その点においても十分気を付けてほしい。
以上。
- 26: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:06:42.60 ID:OuzEm0r20
- 目が見開かれるのを止められなかった。
一瞬で背筋が凍り、そして粘っこい汗が皮膚に浮き始める。
それが額から垂れ、頬を通り、顎に達した時、ようやく事態を頭に把握させることが出来た。
从;゚∀从(どういうこった……!?
何故、いきなりこんな!?)
あり得ない。
あのクー=ルヴァロンが、このような軽率な行動に出るとは。
こんなメールが都市中に送られることで、どのような混乱と不安が広がるか解っているのだろうか。
文面に関してもおかしいところがある。
彼女ならば、決して書くことをしないであろう部分が。
そして、
从;゚∀从(そもそも何故、全生徒に知らせるようなことを……!
これじゃあ、結果がどうなろうと全てが晒されてしまうじゃねぇか!)
解らないことだらけだ。
問い掛けに答えを求めるように、顔を上げる。
しかしそこには、先ほどまでいたはずの女子生徒の姿がない。
从;゚∀从「……?」
疑問に思い、同時に気付く。
公園の入口にいる生徒が、携帯端末片手にこちらを見ているのを。
- 28: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:08:08.45 ID:OuzEm0r20
- それだけではない。
更に複数の視線が、いつの間にかハインの身体を刺し貫いている。
まだ疑念の域を出ていないため仕掛けてくることはないが、
いつその緊張が決壊するかは解らなかった。
从;゚∀从(くっ……まずいな。
ここで逃げてしまえば、後ろめたい理由を持ってる証拠になっちまう。
でも、だからと言ってこのまま何もしないのも……)
ベストは、このまま素直に捕まって潔白を示すことだ。
学園生徒会長であるクーは聡明で、こちらに理解があるのは解っている。
下手に抵抗するよりは、よほど可能性のあるやり方だろう。
从;゚∀从(けど……)
手にある携帯端末へ目を向けた。
画面に写ったメールの文面を読み直し、やはり違和感があることを確かめる。
从;゚∀从(駄目だ。 イマイチ信じられねぇ。
あの生徒会長がこんな手段を使うなんて……)
そして、
从 ゚∀从(! いや、待てよ……まさか――)
ふと思い至った。
この状況になって得をする人物がいる、と。
- 30: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:09:32.98 ID:OuzEm0r20
- 从;゚∀从(そういうことか……?
なら、ここで捕まるわけにはいかねぇ)
そうと決まれば簡単だ。
あとは行動に移すだけ。
小さく頷いたハインは、一歩下がり、欄干に腰を押し付け、
从 ゚∀从「――よっと」
上半身を逸らし、欄干に身を預ける。
スカートの中身が見えないよう手で押さえながら、ローラーブレードを履いた重い足を振り、
そのままの勢いで欄干の向こう側へと飛び出した。
「「っ!?」」
一見すれば投身自殺にも見える光景に、見ていた生徒達が息を呑む。
そんな気配を背後に感じながら、ハインは着地地点である寮の屋根を見据え、
从 ゚∀从「まずは生徒会の奴らと接触するしかねぇな……!」
腰にある大型ナイフを意識しつつ、落下していった。
- 32: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:11:20.31 ID:OuzEm0r20
- 人影も疎らな生活区画。
男子寮が密集する西側の路地に、生徒会メンバーであるギコとヒートがいる。
二人とも驚きの表情で携帯端末を見つめていた。
ノハ;゚听)「どういうことだ、これ……っ!?」
(;゚Д゚)「ど、どうって言われても……」
文面通りに受け取るなら、
(;゚Д゚)「ハインがスパイだから捕まえろ、って……嘘だろ、おい」
俄かには信じられなかった。
メールコードを確認したが、表示された数値は生徒会のみが使用するもので、
間違いなく学園生徒会から送られてきている、という事実しか解らなかった。
つまりこのメールは、学園生徒会に属しているギコとヒートにとって遵守すべき指令である。
- 33: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:12:56.37 ID:OuzEm0r20
- (;゚Д゚)「…………」
そこまでは解っている。
しかし、次にどうすべきかが解らない。
いきなりのことに、頭が上手く働いてくれなかった。
自分は生徒会メンバー。
メールは生徒会が発信している。
つまり、これから自分がすべきことは、
(;゚Д゚)「――ハインを捕まえる」
いや、それよりも思うのは、
(;゚Д゚)「アイツが、スパイだった……?」
ハインがこの都市へ来てからのことを思い出す。
最初に見せてくれた眩しい笑顔。
学園都市のテクノロジーに驚いていた表情。
レクリエーションで垣間見た本気の顔。
それらが全て、偽りだったとでも言うのだろうか。
自分は裏切られたのだろうか。
- 35: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:14:24.92 ID:OuzEm0r20
- 表情が強張っているのが自分でも解る。
だが、どうしようもない。
それよりも頭の中を回る疑問の方が、意識の大部分を奪っていた。
その疑問が警鐘を鳴らしている。
何かがおかしい、と。
学園生徒会を疑うわけではない。
逆にハインを疑うつもりでもない。
ただ、この状況に微妙な違和感があるのだ。
ノパ听)「――ギコッ」
(,,゚Д゚)「! ヒート……」
ノパ听)「何をボーっとしているッ。 行くぞッ!」
(,,゚Д゚)「え……」
ノパ听)「あーもうッ! 何やってるんだッ!
学園生徒会からの通知である以上、私達が最速で動かないでどうするッ!」
それはつまり、
ノパ听)「一刻も早く、ハインリッヒ=ハイヒールを捕らえるんだッ!!」
普段は使わない呼び方であるフルネームを口にするヒート。
それは、ハインを完全に敵と見なしている証拠であった。
- 37: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:16:03.88 ID:OuzEm0r20
- (;゚Д゚)「ちょ、待て……! おかしいって絶対!」
ノパ听)「何がだッ!」
(;゚Д゚)「いきなりスパイ扱いして『捕えろ』なんて……どう考えてもおかしいだろ!
それに、なんでわざわざ全生徒に伝える必要があるんだ!
これじゃあ、ハインが――」
ノパ听)「――そんなこと私達が知る必要なんてないだろッ!
姉さんには姉さんの考えがあるッ! 私はそれを信じるだけだッ!」
(;゚Д゚)「……っ!」
そうだ。
コイツはそういう奴だった。
姉であるクー=ルヴァロンを心から尊敬している故に、疑問を持たない。
クーが黒と言えばヒートも黒と見るし、逆もまた然り。
本人の意志の強さもあって、こうなったらクー以外の言葉ではテコでも動かないだろう。
(;゚Д゚)(まずいな……クー生徒会長に近いコイツでもこうなるんだから、
このメールを読んだ他の生徒は……!)
- 38: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:18:25.29 ID:OuzEm0r20
- 根拠もない焦りが広がる。
早く行動しないと何かが間に合わなくなる、と言わんばかりに。
しかし何も解らず、明確な指針がない以上、自信を持って動くことが出来ない。
迷い。
この状態のことを言うのだろうな、と頭のどこかが納得していた。
だが、そんな呑気な思考もすぐに打ち切られる。
ノパ听)「…………」
ヒートが、鋭い目でギコを見たからだ。
ノハ;゚听)「ギコッ……お前、まさか――ッ」
(;゚Д゚)「え……」
ノハ;゚听)「まさかお前、ハインリッヒ=ハイヒールに味方するつもりじゃあ……っ!?」
(;゚Д゚)「んなっ!?」
- 40: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:19:56.10 ID:OuzEm0r20
- ノハ;゚听)「このメールに書いてあるぞッ!
『尚、彼女の深く関わっていた者にも同じ疑いがあるため、
その点においても十分気を付けておいてほしい』ってッ!
そういえばギコ達は、普段から私以上にハインリッヒ=ハイヒールと一緒にいたよなっ!?」
無茶苦茶だ。
思うが、反論が出来ない。
疑われている現状、下手な言葉を吐けば泥沼である。
(;゚Д゚)「待てよヒート! 頭を冷やせ!
俺は決してハインの仲間じゃ……って、そういう次元の話じゃない!
そもそもアイツがスパイだって証拠はあるのかよ!?」
ノパ听)「そんなの姉さんが既に掴んでるから、こんなメールが来たんだろッ!」
(;゚Д゚)(くそっ、話がまともに通じない!)
焦りが焦りを呼ぶ。
ああなった彼女を言葉で止められるのは、もはやクーだけだ。
それらのことも含め、一旦クーに話を聞くべきか、と迷った時。
ヒートの腕が、武具ホルダーへと伸びた。
- 43: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:21:50.67 ID:OuzEm0r20
- (;゚Д゚)「!? ヒート、お前……!」
ノパ听)「生徒会メンバーとして動けないというのならッ。
ハインリッヒ=ハイヒールの味方をするというのなら――」
武具を解放。
レッドカラーのトンファーが両腕に確定する。
軽く振り回し、身構えながら、
ノパ听)「――姉さんへの敵対行動と見なし、ここで罰するッ!!」
直後、炎色が翻った。
ロングの赤髪を散らし、一気に来る。
一瞬呆気にとられたギコは、しかし慌てて回避。
薙ぎ払われたトンファーが鼻先を掠め、一瞬遅れて鋭い風が吹き付ける。
少しでも遅れていれば、間違いなく顔面直撃コースだった。
(;゚Д゚)「おいおい本気か……! お前の短絡さにはほとほと呆れるぞ!」
ノパ听)「学園を裏切ったお前の根性の方が呆れるッ!!」
(;゚Д゚)「なんで俺が裏切り者になってんだよ!」
問答無用、と言わんばかりに迫って来るヒート。
後退しながら紙一重で避けるギコの焦りは、既にピークに達していた。
- 46: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:23:11.29 ID:OuzEm0r20
- (;゚Д゚)(殴って止めるか……いや、仲間にそれは無理だ。
何より明確な理由がない!)
となれば、
(;゚Д゚)「悪ぃ!!」
ノパ听)「っ!?」
突っ込んできたヒートの腕を取る。
引き寄せるように引っ張り、まずは体勢を崩した。
その隙に腕を引っ張った反動で真横へ回り、軽く足を差し出す。
前へ倒れる身体を支えるために足を出したヒートが、思惑通りに引っ掛かった。
ノハ;゚听)「うわ……っ!?」
転倒する。
右手と足を取られ、前へ倒れるヒートは必然、左手を前へ出すことになり、
(,,゚Д゚)「よっと」
しかしその直前、ギコが握っていた右腕を高く引き上げた。
引っ張り上げられたヒートの身体は、左肩を下にしてギリギリの場所でストップすることになる。
- 48: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:25:31.74 ID:OuzEm0r20
- 何が起こったのかを見失ったヒートは、両瞼を何度か開け閉めして、
ノハ;゚听)「お、おぉ……っ!?」
(,,゚Д゚)「ちょっと制服が汚れるかもしれないけど、これくらいは許してくれよ」
と、ゆっくりヒートの身体を地面へ寝せた。
頭を打っていないことを確認したギコは、ヒートが起き上がる前に駆け出す。
ようやく事態を把握した彼女が身を起こした頃には、ギコの背はずっと遠くにあった。
上半身だけを立てた姿勢で、ヒートは己の傷一つ無い身体を見回し、
ノハ;゚听)「ア、アイツ……こんなこと出来たのか……ッ」
てっきり打撃系とばかり思っていたのだが。
投げ技とまではいかないが、今の姿勢崩しは見事としか言い様がなかった。
体術や、人体のメカニズムについて詳しくなければ出来ない芸当である。
そして、
ノハ;゚听)(敵と見なした私に怪我をさせることなく切り抜けたッ。
『理由』がない限りは拳すら振るえないのにッ。
それだけのハンデを背負っておいて、どうして――ッ)
そこで一つ思い至る。
逆説的な考え方だが、納得のいく理由だった。
ノパ听)(まさかアイツ……っ?)
既にギコの姿が見えなくなった道を、ヒートはしばらく呆けたように見つめたままであった。
- 51: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:27:15.48 ID:OuzEm0r20
- 何とかヒートから逃げることの出来たギコは、東を目指していた。
現在位置は、都市の南一帯を占める『生活区画』。
ヒートと一悶着あったのは、その南西部だ。
つまりギコの目指す先には、
(,,゚Д゚)「生活区画を東西に仕切る南主街道――サウス・メインストリート、か」
何もかもが解らない状況の中、ギコが選択したのは『クーから直接話を聞く』ことであった。
そのためには『教育区画』へ行く必要があり、
その最短ルートがサウス・メインストリートだと判断する。
南主街道に出さえすれば、あとは一直線に北上するだけだ。
弾む息を吐きながら、ギコは思う。
もしクーの口から、あのメールと同じ内容が語られたらどうしよう、と。
(,,-Д-)(やっぱり、従うしかないのか……?)
それは『ハインを捕らえる』と同義だ。
どうなのだろう、と自分に問う。
それは嫌なのか、と。
- 53: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:29:07.42 ID:OuzEm0r20
- (;゚Д゚)「……ちっ」
解らない。
ハインとは、そう長い付き合いではなかった。
ただ生徒会メンバーとして、都市案内することから始まった関係だ。
その証拠に、今では以前ほど一緒に行動することがなくなっている。
たまに遊びに誘ったり、食事をしたりはする。
何かを仲間内でする時も同様だ。
別に特別なことはない。
ハインとは、単純に『友達同士』なのだ。
決して、学園生徒会の命令に背いてまで守らなくてはならない存在ではない。
では何故、自分はこうして走っているのだろうか。
(,,゚Д゚)「…………」
それもよく解らなかった。
ハインがスパイであることに対し、確かにショックはある。
しかし、だからと言って彼女がスパイではない、と断ずることが出来ないのも事実。
自分は一体何をしているのだろう。
この胸にあるモヤモヤは何なのだろう。
全てが解らない。
- 55: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:30:34.53 ID:OuzEm0r20
- (,,゚Д゚)(だからこそ走る、ってか……?)
答えを求めてひたすらに疾駆。
そこにハインのことや、学園のことなど無い。
ただ、己の納得と諦念を求めて走っているに過ぎないのだ。
(,,゚Д゚)「ん」
そんなことを考えている内に、サウス・メインストリートが見えてきた。
左折して、そのまま北上すれば教育区画へ辿り着く。
あとは体力勝負だ。
一気に行く。
しかし、
(;゚Д゚)「……っ!?」
サウス・メインストリートに出た瞬間、ギコは勢いを止めた。
ざ、と地面を軽く滑り、素早く周囲へ視線を向ける。
そこには、何十人かの武装した生徒が立っていた。
- 57: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:31:58.03 ID:OuzEm0r20
- 「! いたぞ!」
その内の一人がギコを見つけ、他の者へ知らせる。
何かを探すようにしていた生徒らは、その声に駆け足で集まってきた。
あっという間に囲まれてしまったギコは、軽く腰を落として身構える。
すると、彼を囲う集団のリーダーらしき生徒が一歩前へ出てきた。
腕章には、武術専攻学部四年生を示す『M4』が記されている。
「ギコ=レコイドだな?」
(;゚Д゚)「……そうですけど」
「お前が以前、よくハインリッヒと行動を共にしていたのは解っている」
一息。
「多くは言わん。
彼女の居場所を教えてほしい」
(,,゚Д゚)「……聞いてどうするつもりですか?」
「我らが学園生徒会長の意志に従うのみ、だ。
彼女のおかげで平穏を得ている俺達が、その意志に準じるのは当然のこと。
何より、俺達は生徒会長を信じる」
- 58: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:33:34.97 ID:OuzEm0r20
- ギコは眉を浅く立てる。
今の言葉で二つの事実が解った。
一つは、この生徒もヒートと似たタイプであること。
一つは、彼自身がメールの内容に微かな疑問を持っているらしい、ということ。
「お前がスパイであるハインリッヒの仲間だとは思わないし、思いたくない。
だが、それとは別にハインリッヒの居場所を知っている可能性が高いのも事実。
故に問うてみたのだが……どうだろうか」
(,,゚Д゚)「……悪いけど、俺も知りません」
嘘だった。
実は何ヶ所かに心当たりがある。
確定とは言えないが、そのどれかにいる可能性が高い、と。
「本当か?
この問いに嘘を吐くのは、クー=ルヴァロン生徒会長の意志に反する、ということだが」
(;゚Д゚)「…………」
一度だけ心臓が高鳴った。
確かに彼の言う通り、今のギコはクーの意志を裏切っている。
だから、彼の言葉に自信を持って返事をすることが出来ない。
- 60: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:35:03.09 ID:OuzEm0r20
- そこでギコは気付いた。
自分は、あのメールの内容を半ば信じている、ということに。
だから問いに答えることが出来ず、こうして黙ってしまっている。
ならば、どうして事実を確かめようとしていたのか。
簡単だった。
単純に、やり方が気に入らなかったからだ。
スパイとはいえ一人の女の子を、皆で追い詰めていくやり方が。
そして何より、
(,,-Д-)(あのクー生徒会長が、こんな無茶苦茶な手段を選ぶわけがない……!)
これでは学園に不安を蔓延させるだけだ。
ハインが本当にスパイだというのなら、生徒会メンバーだけで密かに接触し、
その上で内密に事を済ませるべきだったのだ。
ようやく疑問が解けた。
自分もまた、目の前に立つ上級生と同じようにクーを信じている、と。
ただ、その信義に対する姿勢が異なる、というだけだった。
- 64: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:36:43.63 ID:OuzEm0r20
- (,,゚Д゚)(中途半端に意志が同じである以上、言葉を交わしたって平行線で終わってしまう。
更には、意志が同じなら先輩達を殴る『理由』が無いってことだ。
何とか逃げるしかないか……?)
相手は上級生がほとんどだ。
自分の技能では、逃げ切ることは難しいだろう。
かと言って諦めるつもりなど毛頭無いが、さりとて楽観的にもなれない状況だった。
「「…………」」
周囲にいる生徒達の気配が変わっていく。
ギコの沈黙を、都合の良いように解釈したのだ。
このままではまずい。
彼らが危害を加えてくるとは思えないが、後のことを考えて捕縛くらいはしてくるはずだ。
疑わしき要素を逃がす道理はない。
ギコが向こうの立場であっても、同じことを考えるだろう。
(;゚Д゚)(こんなところで足止めを食うわけにはいかないってのに……!)
駄目元で逃走を試みるしかないか。
何もしないで、流れに身を任せるよりはマシだ。
思い、静かに足へ力を入れた時。
か、という硬い音が場に響いた。
- 66: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:38:35.88 ID:OuzEm0r20
- 「!?」
「何の音だ?」
(;゚Д゚)「……!」
まず音の根源を見つけたのはギコだった。
見開かれた視線は、下方を向いている。
ギコと、リーダー格の生徒との間の地面に、それは存在した。
丸くて黒い小さな物体。
ゴツゴツした外装の中、一つ飛び出した小さな金属片が目立つ。
それは小さな硬い音を立てながら転がり、そしてピタリと止まった瞬間、
「「――っ!!?」」
猛烈な光と共に、白煙が一気に撒き散らされた。
音は、空気が抜けるようなそれに近い。
あんな小さな物体の何処に入っていたのか、
煙は短い時間で、周囲の視界を完全に覆ってしまった。
「な、なんだぁ!?」
「げほっげほっ、ちょ、何も見えん!」
「誰だ今俺のケツ触ったのは!?」
- 70: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:40:10.51 ID:OuzEm0r20
- (;ぅД゚)「な、何が……? いや、それよりも――」
強烈な閃光にクラクラとしながらも、周りで混乱が起きているのを見る。
逃げるチャンスだと判断。
もたもたしていては手遅れになる。
学園生徒会で培ってきた即断力で、走り出そうとした時。
その右腕を掴む動きがあった。
(;゚Д゚)「うぉっ!?」
抵抗する暇もなく引っ張られる。
ギコでも抵抗出来ない強い力だ。
慌てて踏ん張ろうとするが、引っ張る速度に足が追いつかない。
そのままギコは、何も見えぬ白煙の中に消えていった。
- 74: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:41:44.31 ID:OuzEm0r20
- やがて煙が晴れていった。
風に乗って空へ溶けていく白色の中、混乱を終えようとしている生徒達の姿が見えていく。
戸惑いの表情を浮かべた彼らは、まず仲間同士で無事を確認し合い、そして、
「! ギコ=レコイドが……!?」
いない。
先ほどまでいたはずの彼は、その場から忽然と消えてしまっていた。
それが事実であることを確認したリーダー格の生徒は、勢いよく腕を振るう。
「逃げたか……?
探せ! 姿を消したということは、後ろめたいことがある証拠だ!」
同時、武具やデバイスを持った生徒達が一斉に散っていった。
彼らを視線だけで見送ったリーダー格の生徒は、小さく息を吐きながら、
「会長……俺達は、貴女を信じますよ」
視線を向ける。
そこには、彼女がいるであろう学園が遠くに見えていた。
- 79: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:43:13.41 ID:OuzEm0r20
- (;゚Д゚)「ぬぉっ!?」
何者かに連れて行かれた先は、寮と寮の間にある狭い空間だった。
表の通りからは見えない位置にあるここは、
手入れが行き届いていないのか、雑草が鬱蒼と茂っていた。
騒ぎが終わったらこの件を報告しておこう、などと呑気に考えると同時、右腕を握る感触が消える。
何が何やら、と後ろを振り向けば、
( ・∀・)「や」
見知った面々が、この狭い場所に詰め込まれていた。
モララーの他にはハロー、スズキもいる。
そして、
<_プー゚)フ「ほれ、助けてやったんだから礼を言えギコ坊」
と、今の今まで腕を掴んでいた張本人が、歯を見せて笑っていた。
(;゚Д゚)「え? え? 何? 何がどうなってんだ?」
<_プー゚)フ「ははは見ろよ皆、コイツおろおろしてンぜ! だっせぇ!」
とりあえず蹴りを入れておく。
うぐっ、と脛を押さえてうずくまったエクストを足下に、ギコはモララーを見た。
- 81: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:45:26.14 ID:OuzEm0r20
- ( ・∀・)「うーん……どこから説明すればいいのかな。
とりあえずメールは見たよね?」
(;゚Д゚)「あ、あぁ」
( ・∀・)「その最後に
『尚、彼女の深く関わっていた者にも同じ疑いがあるため、
その点においても十分気を付けておいてほしい』ってあったわけだけど……」
成程。
彼らもギコと同じ境遇にいるらしい。
おそらく、既に他の生徒から干渉を受けたのだろう。
(,,゚Д゚)「そういうことか……でも、何でお前らまで?
俺に比べれば接点薄いと思うんだが」
ハハ ロ -ロ)ハ「レクリエーションの時に一緒に行動してたのを見られてるから、じゃないかしら。
ほとんど接点のない他の生徒達からすれば、
仲間同士だと思われても不思議じゃないわ」
(,,゚Д゚)「……まるで、ハインと仲間同士に見られるのを嫌がってるみたいな言い方だな」
ハハ ロ -ロ)ハ「彼女が本当のスパイなら、ね。
貴方の様子だと、その情報も疑って良いみたいだけど?」
(,,゚Д゚)「悪いが、俺にも解らない。
一番多くアイツと一緒にいたからって言っても、な」
- 82: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:47:02.04 ID:OuzEm0r20
- ( ・∀・)「じゃあ、さっきまで何をしようと走っていたんだい?」
(,,゚Д゚)「本当のことを知りたい。
クー生徒会長から、直接」
( ・∀・)「成程ね。 気付いてないわけだ」
(;゚Д゚)「え?」
モララーが懐から携帯端末を取り出した。
メール作成画面を開き、適当に文字を打ってから送信してみせる。
( ・∀・)「今、ギコ宛てにメールを送信した。 どうだい?」
(,,゚Д゚)「……いや、来てない」
( ・∀・)「そういうこと。
あのメールが来た直後から、この都市で全ての通信が使用不可になってしまっている。
これがどういうことか解る?」
(,,゚Д゚)「皆、混乱からメールを送って混雑してるんじゃないのか?」
( ・∀・)「だったら『今は混雑してる』っていう旨のメールが返ってくるはずなんだ。
だけど、君に送ったメールは君に届かず、そして僕の端末にも何も送られてこない」
- 84: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:48:22.35 ID:OuzEm0r20
- (,,゚Д゚)「?」
<_プー゚)フ「?」
爪*゚〜゚)「つまりメール自体は発信されたのですが、
どこかで堰き止められているわけであります。
あまり私も詳しいわけではありませんが……おそらくジャミングの一種かと」
ジャミング。
電波によって妨害すること。
また、妨害電波のことを指す言葉だ。
この通信不能な状況は、誰かの手によって引き起こされている。
(,,゚Д゚)「誰が……? 一体どこのどいつがこんなことを?
そうすることでどんな得がある?」
( ・∀・)「学園生徒会がやった、って考えるのが普通なんだけど……」
(,,゚Д゚)「クー生徒会長がこんなことをする、と?」
( ・∀・)「だよね。 それは僕もちょっとおかしいと思う。
だからこうして身を隠してたんだ。
それでさっき、偵察に出てたスズキが君を見つけてね」
- 87: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:49:44.54 ID:OuzEm0r20
- 先の煙幕はスズキの仕業だったらしい。
銃器に詳しいことは知っていたが、まさかニンジャ的な道具も持っているとは侮れない。
面白そうなのであとで一つ貸してもらおう、と思いつつ、
(,,゚Д゚)「状況は解ったが……他の連中は?」
爪*゚〜゚)「ここにいるのは私とモララー君とハローさん、エクスト君だけであります。
他は現在地すら掴めていないであります」
学園都市の午後は活気に満ち溢れる。
授業から解放された生徒達が、各々好き勝手に動くからだ。
よく連んでいるとはいえ、いつも全員の居場所を把握しているわけではなかった。
それに確認したいならメールを使えば良い。
しかし今は、その手段が封じられている。
ハハ ロ -ロ)ハ「私達でさえ疑われたのだから、ミルナ達も似たようなものでしょうね。
捕まってなければいいけど」
<_プー゚)フ「なに? 心配してんの? お前にもそんな感情があったか!」
ハハ ロ -ロ)ハ「当然よ。 助けるの面倒じゃない」
<_;プー゚)フ「お前……たまに優しいのか冷たいのか解ンねぇ時があるよなぁ」
エクストのぼやきは無視される。
現状の確認が終われば、あとは行動を選ぶだけだ。
皆に示すように、モララーが大きく頷いた。
- 90: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:51:23.07 ID:OuzEm0r20
- ( ・∀・)「さて、どうしたものかな。
このまま騒ぎが終わるまで隠れてる、ってのはどうだい?」
皆の視線を受けてモララーは、冗談だよ、と肩をすくめた。
( ・∀・)「冗談だけど選択肢の一つなのは確かだ。
その他には……そうだな、やっぱり渦中に近い位置にいるギコの意見を聞きたい」
(,,゚Д゚)「んー、とりあえずクー生徒会長と話がしたい。
あとハインの無事も確認したいし、他の連中の状況も知りたいし、危なかったら助けたい」
ハハ ロ -ロ)ハ「望みの多い男ね……将来、何股もかけて全員に手痛くフラれるのが目に見えるわ」
<_プー゚)フ「いやいや、そんなことねぇよ。
ギコ坊は一途な男だからな! 俺には解る!」
(;-Д-)「お前ら……」
こめかみ辺りを指で押さえて俯く。
だが、決して嫌な気分ではなかった。
- 94: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:53:09.88 ID:OuzEm0r20
- (,,゚Д゚)(コイツらといると安心するんだよな。
あぁいつも通りだ、って)
どんな状況になってもペースを乱さない連中だ。
小さなことで悩んでしまう自分にとっては、貴重な存在だと思う。
事実、先ほどまであった漠然とした不安が、今はどこかへ吹き飛んでいた。
何とかなる。
彼らと共にいると、そう思わずにはいられないのだ。
<_プー゚)フ「お? お? ギコがなんか変な顔してンぞ!
こりゃあおまえエロいこと考えてるな!? あとで教えろよ!」
前言一部撤回。
馬鹿はやはり馬鹿だ。
( ・∀・)「さて、気分転換はそこまでにしよう。
そろそろ動きと担当を決めたい」
爪*゚〜゚)「担当、でありますか?」
( ・∀・)「そう、担当だ。
これから、今ギコが言った三つの選択肢を同時に片付けるんだからね」
(,,゚Д゚)「え……?」
- 95: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:54:36.47 ID:OuzEm0r20
- ( ・∀・)「生徒会長に事実を確認すること。
ハインと、他の皆の状況を確認すること。
その全てが、比べられないほどに重要だと僕は思う」
そして、と続け、
( ・∀・)「そのどれかが欠けても駄目だとも思うんだ」
<_プー゚)フ「だな」
ハハ ロ -ロ)ハ「まぁ、無駄かもしれないけど――」
爪*゚〜゚)「何もしないよりはマシなのであります!」
(,,゚Д゚)「お前ら……」
( ・∀・)「言っておくけど、別にギコのためにやるんじゃないよ?
偶然、君の意見が僕らと同じだったって話だから」
言葉に、エクスト達が円を組んで額を突き合わせ、
<_;プー゚)フ「やべぇ、やべぇよアイツ……マジモンだよ」
ハハ ロ -ロ)ハ「たぶん自覚ないのでしょうね。
あの男、ああ見えて20%くらい天然入ってるから」
爪*-〜-)「そこが良いのでありますよぅ」
<_;プー゚)フ「スズキ、お前最近ちょっと開き直ってきてね?」
- 98: ◆BYUt189CYA :2008/12/28(日) 21:58:57.55 ID:OuzEm0r20
- 円陣を組むエクスト達に、モララーは腰に手を当てて溜息を一つ。
そして口から放たれるのは、
( ・∀・)「あのさー、どーして君らは僕を怒らせようとするのかなー」
(;-Д-)(ここまでいつもの流れ、と……)
そう、いつもの通りだ。
そして、いつもの通りなら、
(,,゚Д゚)(何とかなる、よな?)
結果がどうなるかは解らない。
今からの行動が正しいのかも解らない。
ただ、知るために動くだけ。
でも、
(,,-Д-)(……ありがとな)
ギコは心の中で呟く。
不安な自分を救ってくれる、掛け替えのない友人へ向けて。
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