(,,゚Д゚)ギコと从 ゚∀从ハインと学園都市のようです
- 4: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:11:04.54 ID:P8jhauxj0
――――第十八話
『Non-stop Step Dance』――――――――――
止まらない
苦痛を伴おうとも止まりはしない
止まればきっと、何かが届かなくなるから
- 7: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:12:57.99 ID:P8jhauxj0
- 都市の中心である学園敷地内。
ここも例外に漏れず、生徒会からの突然のメールに騒ぎが起きていたが、
すぐさま対応した生徒会メンバーによって沈静化しつつある状態にあった。
メールが使えない以上、通知の撤回を口頭で行なわなければならないため、
事情を飲み込んだ生徒達は、生徒会メンバーと協力して他の区画へと向かっている。
そんな中、敷地内に生徒がいた。
修練館の方から走って来るのは、計四人の男子生徒だ。
( ゚д゚ )「……誰もいないぞ。 今の内だ」
( ^ω^)「おっおっ、ラッキーだお」
( ゚∋゚)「ふむ」
事情を知らない彼らは、先ほどまで修練館の一室に身を隠していた。
ツン達と同じく、メールの文面から己の身の危険を感じ取ったからだ。
外が騒がしい内は動くまい、と決め込んでいたのだが、先ほどから静かになったことで行動を開始している。
体力有り余り系の三人が走る後を、少し遅れて行くのは兄者だ。
彼は両手に鞄を抱え、薄汚れた白衣を揺らし、汗を流しながら走る。
(;´_ゝ`)「ま、まったく……これだから野蛮な連中は困るんだ」
- 11: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:15:31.94 ID:P8jhauxj0
- 辿り着いたのはシロクロ門。
大きな正門を越えた先には下り道があり、視線を上げれば都市の南側を一望出来る。
そんな場所で足を止めた彼らは、後から来る兄者を待った。
( ゚∋゚)「ここなら問題あるまい」
(;゚д゚ )「……というか、本当にやるつもりか?
ここで――」
言葉をブーンが続ける。
( ^ω^)「――クックルの『黒翼』で、一気に飛んで行くんだお?」
( ´_ゝ`)「俺に任せておけば問題ない」
持ってきた荷物を地面に置き、中身を取り出しながら、
( ´_ゝ`)「ほら、これを各自持っておけ。
落ちる前に発動させれば、怪我なく着地できるだろう」
と、手渡されたのは数枚の符だ。
蛇のような文字が描かれており、時折、淡い光を発している。
衝撃吸収の簡易干渉系術式が登録された、ディスポーザブル(使い捨て)・デバイスだ。
- 14: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:17:26.45 ID:P8jhauxj0
- ( ´_ゝ`)「これを持ってクックルの背に乗り、『黒翼』を発動させる。
教育区画自体がそれなりの高度を持っているから、前へ飛ぶだけでもイケるぞ。
あとは高いところから仲間を見つけ、好きな時に飛び降り、着地寸前に符を起動させればいい」
( ゚д゚ )「……失敗した場合は?」
( ´_ゝ`)「高さにもよるが、死ぬだろうな」
( ^ω^)「この符のプログラムは完璧なんですかお?」
( ´_ゝ`)「発動しなかった、という報告は聞いていない」
そっかー、と呑気に言うブーンの後ろ、ミルナが符を見つめて汗を流している。
( ゚∋゚)「さて、のんびりしているわけにもいかんな。
すぐに準備しよう」
クックルが『黒翼』の召喚を始めた。
いくら人影が見当たらなくとも、いつ人が来るかは解らない。
もし懸念が事実なら、ハインと同じく自分達も狙われてしまうだろう。
その懸念の正しさを示すように、声が来た。
「そこの生徒! 止まれ――!」
見れば、正門――シロクロ門の傍に生徒の姿が複数。
自分達のことを知っているのか、彼らは学園に入りながら武具を抜く。
彼らもミルナ達と同じく、未だ本当の事情を知らないようだ。
- 17: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:20:05.07 ID:P8jhauxj0
- (;゚д゚ )「まずい、見つかったぞ!」
(;^ω^)「クックル急ぐお! ここで捕まったらマジ情けないお!
っていうか僕がツンに殴られるお!
い、いや、場合によっては殴打だけじゃ……お、おーん!」
( ゚∋゚)「気持ちは解るが、急かすな」
言い、オプションパーツを起動させる。
硝子を砕くような甲高い音が響き、クックルの頭上に『黒翼』が出現した。
バラバラとなっているパーツが組み上がる間も、生徒達はこちらへ走り寄ってくる。
( ゚д゚ )「くっ、迎撃するしかないか……?」
背負った刀に手を掛け、
( ´_ゝ`)「――ここは俺に任せてもらおう」
しかし、一歩前へ出た兄者によって動きを止める。
- 18: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:22:34.06 ID:P8jhauxj0
- (;゚д゚ )「兄者=流石……?」
( ´_ゝ`)「どうせ、お前らとはここで別れるつもりだったからな。
新生『黒翼』の飛ぶ姿を見ることが出来れば、あとはどうでも良い」
(;^ω^)「で、でも兄者さん、どう見ても貧弱ですお?」
( ´_ゝ`)「ホライゾン、そう言うお前も脳が貧弱だな?」
苦笑し、符を取り出した鞄とは別の荷物を手に取る。
手を突っ込み、しばらくゴソゴソして、
( ´_ゝ`)「俺に構わず行け。
俺は俺のやりたいことをやる。 お前らもやりたいことを果たしてこい。
それこそが――」
頷き、
フリーダム
( ´_ゝ`)b「――自由、ってもんだろ?」
- 21: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:26:35.53 ID:P8jhauxj0
- ( ゚д゚ )「大丈夫なのか?」
( ´_ゝ`)「他人の心配をする暇があるのなら、自分の心配をしておけ。
何せ今から、お前らは一つの機械翼を頼りに飛び立つのだから。
空へ……誰も何も保障できない落下運命の領域へ、な」
( ゚д゚ )「……解った。 貴方がそういうのなら従う」
( ´_ゝ`)「御理解感謝するよサムライ。 後ろは気にせず行ってこい」
(;^ω^)「兄者さん……!」
( ゚д゚ )「行くぞ、インサイドウィステリア! 彼の意思を踏みにじるな!」
( ゚∋゚)「装着完了。
兄者……お前が調整した『黒翼』、使わせてもらうぞ」
( ´_ゝ`)「行くが良いともさ野蛮人!
その野蛮さで、俺には見えない世界を見て来い!
そして再び会おう! 出来れば監房ではない場所で!」
『黒翼』が光を噴出。
金属で構成された翼が震え、飛び立ちの時を今か今かと待ち構える。
( ^ω^)「「っ!」」( ゚д゚ )
同じくしてブーンとミルナが、クックルの大きな肩にしがみついた。
- 23: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:28:25.63 ID:P8jhauxj0
- 「逃げるつもりか!? 止めるぞ!」
( ´_ゝ`)「悪いが、自由の邪魔はさせんよ?」
「あ、兄者!?
お前、どうしてアイツらの味方を……!」
( ´_ゝ`)「どうしてだと思う? 教えてやろうか?」
言いながら、荷物から何かを取り出す。
円盤状の金属板。
彼はそれをサイドスローで放り、走り寄ってくる生徒達の眼前に滑らせ、
( ´,_ゝ`)「――楽しそうだから」
瞬間、金属板が音を立てた。
地面を滑る音でも、砂を弾く音でも、跳ねる音でもない。
続いて光を発し、例えようのない『何か』がその場に広がり、
「何を――って、うぉぁっ!?」
「な、なんだ!? 身体が浮いたのか!?」
「この浮遊感、な、なんか気持ち良……ら、らめぇええええっ!」
見れば、生徒達の足が地を離れていた。
ジタバタともがくが、空を切るばかりで機能を果たし切れていない。
彼らは地面から一メートルほどの位置で静止し、フワフワと浮く。
- 25: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:30:22.17 ID:P8jhauxj0
- ( ´_ゝ`)「ほぅら楽しいだろう?
円盤状デバイスを中心とした空間、その重力数値を軽くマイナスに設定している。
本当は始業式の時に使う予定だったのだが、ギコとヒートに邪魔されたからな。
本格的な御披露目は今日が初だ」
「ば、馬鹿な……!
指定空間の法則を書き換えただと!?
それをこんな小さなデバイスで……くそっ! なんという!」
( ´_ゝ`)「そこに気付くとは見所があるな、名も知らぬ生徒よ。
だが、駄目だ。
お前は俺の趣向を理解していない」
言い終わるか終わらないかといったタイミングで、爆音が響いた。
振り返れば、そこには白煙と風が残るのみ。
上方向へなびく煙を目線で追えば、その先には黒い翼を広げた何かが飛翔していた。
- 30: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:31:48.30 ID:P8jhauxj0
- なんとか無事に飛び立ってくれたようだ。
安堵を感じつつ、兄者は口元に笑みを浮かべる。
( ´_ゝ`)「さぁ、ここからが俺にとっての本番だ」
「え……」
( ´_ゝ`)「目の前には無抵抗に浮遊する生徒が数名。
そして俺は仕事を終え、この後にすべきことはない。
ならば――」
荷物から新たなアイテムを取り出し、
( ´,_ゝ`)「――さぁ、あんな事やこんな事を試させてもらおうか!」
「「い、いやぁぁぁぁぁっ!!」」
壁|‐ _‐ノv …………。
- 32: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:33:08.30 ID:P8jhauxj0
- 生活区画と工業区画の狭間。
そこは居住と仕事場の境に等しく、建物も人の気配も少ない。
あるのは、工業区画で作業する者達が使う古びた倉庫や、資材置き場がほとんどである。
耳を澄ませば水の音。
都市を巡る人工川が近い証拠だ。
少しばかり水気を含んだ風が、資材を覆うシートを揺らす。
他には何もない。
強いて言えば、少しばかりの緑が植えられているくらいだ。
風に揺れて鳴るざわめきが、この場の静寂を更に際立たせている。
その中で、風を切る音が響いていた。
- 35: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:34:26.75 ID:P8jhauxj0
- リズムは早く、連打するように。
途中、靴裏が砂を噛む音や、布がはためく音も混じる。
更には息を詰め、吸い、発する音も。
それら全てを掛け合わせた音の集合は、一種の音楽だった。
一曲一曲は比較的短い。
数十秒続くこともあれば、数秒で終わることもある。
そのどれもが、一定のビートを刻んで始まり、そして終わりを告げていた。
(#゚Д゚)「ッ……!」
拳にアニマートを乗せた風切音。
( )「――――」
対し、一定のモレンドを刻み続ける風切音。
二人は踊るようにステップを刻み、近付き、離れ、それを何度も繰り返す。
互いの動きを邪魔するように腕や足をぶつけようとして、素早く、時に遅く動いていく。
- 36: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:36:01.25 ID:P8jhauxj0
- しかし放つリズムからして、実力差は歴然としていた。
炎のように激しく攻め立てるギコの動きは、確かにダイナミックで迫力が伴うが、
逆を言えば解りやすい動きをしているということだ。
戦闘慣れしている黒布の男にとって、それは良い攻撃の指標となってしまっている。
その黒布の男の動きは、逆に氷をイメージさせる。
姿勢を低くして滑るように疾駆。
後を追って黒布が動き、それが更に男の動きを見難くさせていた。
(#゚Д゚)(くっ……やっぱり強いな)
前回とは違い、今回は拳を使っての攻防。
しかし、それでも思うように戦況を組み立てられない。
戦いとは『呼吸の崩し合い』だ。
如何に己のリズムを保ったまま、相手のリズムを乱せるかが肝要である。
崩してしまえば、あとは持っている技能を総動員して畳みかければ良い。
それで勝負が決まらなければ、体勢を立て直してぶつかり合い、再びリズムを崩す。
そうするために必要なのは、先を読む力だ。
相手の動きから重心、角度、癖を読み取り、動きを予測した上で自分が有利になるよう動く。
もちろんいちいち考える暇などない。
頭ではなく身体で反射的に判断し、動かなければならないからだ。
日頃どれだけ鍛錬や経験を積んでいるかが顕著に表れるだろう。
- 39: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:37:12.99 ID:P8jhauxj0
- (;゚Д゚)(くそっ……!)
ギコは内心で歯を噛んだ。
速度こそ大差ないが、圧倒的に経験が足りていない。
( )「…………」
(#゚Д゚)「こンの――っ!!」
拳を放つ。
しかし当たらない。
それどころか、相手はこちらの懐に潜り込んでくる。
慌てて左足を引き、体重を傾けた。
風切音が耳の傍を掠めていく。
ギリギリだ。
離れるためにステップを踏むが、黒布が追ってくる。
読まれていた。
咄嗟に右腕を跳ね上げ、向かってきた刃の切っ先を弾く。
更に跳躍。
右足を地面に叩きつけ、反動で身体をロールさせる。
本来止めるべき位置で止めず、その勢いを利用して右のバックハンドを叩き込んだ。
打撃音。
- 41: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:39:11.30 ID:P8jhauxj0
- (,,゚Д゚)「!?」
だが、来る感触に手応えはない。
これは肉というより骨だ。
おそらく肘で防がれたのだろう。
攻防は続く。
右半身を前にしているギコは、そのまま膝を折って身体を前へ。
視線が落ちたところで跳ね上げ、肩から相手にぶつかった。
その肩に握りの感触。
まずい、と思った瞬間、力任せに引き剥がされる。
振りかぶっていた左拳を慌てて放つが、あっさりと弾かれてしまった。
同時、踏み込んだ右足の脛に何かが当たる。
相手の足が差し込まれていた。
( )「――――」
(;゚Д゚)「って、うぉっ!?」
思った時には一気に体勢を崩されていた。
咄嗟に足を出そうとするが、相手の足に阻まれて出せない。
崩しの定石である。
- 45: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:42:10.10 ID:P8jhauxj0
- (;゚Д゚)「しまっ――!?」
身体が前へ。
視線が落ちる。
背に殺気が来た。
最後に見た相手の姿勢から、余った左手に持つナイフが狙っているのだと判断。
このままでは、地面に組み伏せられると同時に突き刺される。
相手が殺しのプロだとすれば、まず腎臓を穿つだろう。
激痛に動けなくなったところを続いて――
(;゚Д゚)(――って、負けた時のことを考えてる場合じゃないって!)
叩きつけられた。
咄嗟に左手を出したが耐えられるわけもなく。
背けた顔の頬に砂利が刺さり、弾けるような痛みを脳に伝える。
( )「――――」
黒布の腕は未だ腕を掴んだまま。
更に、膝をギコの尻に乗せて固定。
逃げられない。
刃が落ちる。
風が来て――
- 48: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:44:28.70 ID:P8jhauxj0
- (;゚Д゚)(――って、風!?)
思った瞬間、
「――ぉぉぉぉぉぉおおおおッ!!」
( )「!?」
何者かの雄叫び。
遠くから、高速でこちらに近付いてくる。
圧し掛かっていた黒布の男の動きが止まり、すぐさまギコから離れる。
一瞬遅れて、刀の切っ先がギコの目前の土を抉った。
弾けた土が顔に掛かり、思わず片目を瞑る。
(;>Д゚)「!? う、うぉ……!?」
慌てて顔を上げれば、
( ゚д゚ )「……情けない格好をしているな、レコイド」
(;゚Д゚)「ミルナ……!?」
- 50: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:47:19.16 ID:P8jhauxj0
- そこにはミルナが立っていた。
右手には刀を、左手には破れて風に消えていく符を握っている。
片手で刀を振り下ろした姿勢から、腰を上げ、中段に構えながら、
( ゚д゚ )「俺のライバルが、そんな様ではいかん。
故に手を貸そうレコイド。
お前一人で出来ないことを、俺に手伝わせてくれ」
(;゚Д゚)「……な、なんでお前がここに? 他の奴らはいないのか?」
( ゚д゚ )「俺だけで来た」
(;゚Д゚)「何処からだよ?」
( ゚д゚ )「空からだ」
必要最低限の応答に、ギコは少しばかり考えて、
(;゚Д゚)「ミルナ、お前まさか遂に現実と幻想の境が……」
(;゚д゚ )「……そこまで現実から目をそむけているのか、普段の俺は」
変わらずの無表情だが、どことなく落胆しているような後姿。
尻尾と獣耳があれば、きっと悲しげに垂れ下がっていることだろう。
- 53: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:49:49.24 ID:P8jhauxj0
- だが、それを悠長に眺めている暇はなかった。
( ゚д゚ )「む……来るぞ」
(,,゚Д゚)「応! 礼は後だ!」
ミルナの声に、勢いよく身を立ち上げる。
既に黒布の男は動いていた。
(#゚Д゚)「ンの野郎、この都市であんなモノ振り回しやがって……!
御父さんは許しませんよ!!」
( ゚д゚ )「先ほどまで死にかけていたというのに、随分と余裕があるようだな」
(#゚Д゚)「なんか頭に血が上ってるっぽい。
あとで膝がガクガクなるだろうけど、皆には黙っててくれ」
( -д- )「いいだろう。 お前と肩を並べて戦えるなら目も瞑る」
まずミルナが駆け出した。
長刀である『不見』を両手にホールド。
そして、ワンテンポ遅れてギコも行く。
( ゚д゚ )「とりあえずどうしたい?
これはお前の戦い故、お前の指示に従うが……」
(#゚Д゚)「殴って黙らせて全裸に剥いて土下座コース!」
( ゚д゚ )「把握した」
- 56: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:51:30.72 ID:P8jhauxj0
- 金属音を立て、ナイフと刀が激突する。
だが、動きは終わらない。
眼前で身を回した黒布が、反対側の手に持つ短刀を振るった。
風を切る音が一つ。
間一髪で避けたミルナは、反撃として刀ごと押し、敵の姿勢を崩しにかかる。
( ゚д゚ )「刀の重量がある分、俺が有利だ……!」
( )「……!」
相手が思わず一歩足を下げた時、
(,,゚Д゚)「ナイスだミルナ! そのまま抑えとけ!」
回り込んでいたギコが、姿勢を低くした状態で攻め込んできた。
怪我をしている方の手を前へ出し、黒いグローブを纏う左拳を振りかぶる。
たとえカウンターが来ても、右手で捌いて確実に攻撃を決めるつもりだ。
( )「――――」
対する動きは鋭い。
(;゚д゚ )「む」
まずミルナの刀を押し返し、生まれた僅かな隙間を縫うように体重移動。
目前まで迫っていたギコに対し、真横への足刀蹴りを繰り出したのだ。
- 58: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:54:14.65 ID:P8jhauxj0
- (;゚Д゚)「しまっ――!?」
狙いはギコの右拳。
当たる。
(; Д )「ってぇ!?」
怪我をしていることを知った上でのピンポイント攻撃だ。
『防ぐ』のではなく『捌く』つもりであった右手に、この衝撃はキツい。
涙が滲み出るほどの激痛が走り、思わず足が止まる。
(;゚д゚ )「レコイド!」
(,,;Д゚)「こ、この野郎、的確に当てやがって……!
でも戦いのセオリーだから文句は言えない!」
鈍い痛みが鼓動する。
もしかしたら、治りかけていた傷が開いたかもしれない。
出血を確認したいが、そんなことをしている暇はなかった。
( )「――!」
更なる追撃。
二人相手でも尚、黒衣の舞は終わりを見せない。
むしろ、その速度と鋭さは増していた。
刃の塊を前にしたかのようなプレッシャー。
迂闊に触れれば切れてしまいそうな動きに、ミルナとギコが食らいついていく。
- 62: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:56:22.84 ID:P8jhauxj0
- (#゚Д゚)「ミルナ、そっち行ったぞ! 気をつけろ!」
ギコの警告と、ミルナの防御は同時。
(#゚д゚ )「む!」
( )「――ホルホル」
連撃の開幕。
ステップを踏み、回転しながらの裂線が幾重にも走る。
(;゚д゚ )「ぬぅ、くっ、お、ん、っ、って、ぬぁ!!」
金属音が連続した。
紙一重で捌いていくのはミルナだ。
いや、
(;゚Д゚)(げっ、普通にいくつかもらってる!?
刀剣の扱いが上手いミルナでも駄目か……!)
見れば、彼の腕や腹に赤線が刻まれていた。
今のところ出血するほどの傷はないが、あの調子ではいずれ致命的な一撃を喰らってしまう。
そうなる前に、ギコが動いた。
- 63: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 20:58:55.04 ID:P8jhauxj0
- (;゚д゚ )「レコイド!」
(,,゚Д゚)「ちょっとは良いところ見せてやらなきゃな!」
真横から割り込むように身体を入れる。
寸前で攻撃を止めて退いた敵を追い、
(#゚Д゚)「いい加減、一撃くらいは当たれよ……!!」
渾身の左ストレートを放った。
前へと出している右の足首を外側へ捻ることで、腰の可動域を更に延長。
それを助走とした拳が、最速を以って打ち出される。
狙いは身体の中心部。
人体の構造上、『一番避けにくい』位置だ。
直撃する。
( )「ッ……!」
衝撃が円状に迸った。
ば、という服と肉を叩く音と、が、という骨を穿つ音が重なる。
- 65: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:00:37.93 ID:P8jhauxj0
- (#゚Д゚)「――っつぁッ!」
更に押した。
力を籠めるため歯を噛み、全体重を前へ倒し、その勢いを肩から肘へ伝え、打撃として完遂させる。
殴るだけではない。
殴り飛ばしてこそ、打撃と呼べるのだ。
相手の身体が浮かない程度の攻撃は、『殴打』で充分だとギコは考えている。
だから、これは打撃だ。
( )「!?」
思いを証明するかのように、黒布が弾けた。
ギコの拳を受けた敵が、後方へ吹っ飛んだのだ。
結果、積まれていた資材に激突し、大きな音と砂埃を舞い上げる。
( ゚д゚ )「おぉ……!」
初めて入った攻撃らしき攻撃に、ミルナが感嘆の声を発した。
しかし、その隣にいるギコの表情は納得していない。
(;-Д-)「ううむ、やっぱ左手だと駄目だな……。
ホントはもっと吹っ飛ばすつもりだったんだけど」
(;゚д゚ )「……おぉ」
- 68: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:02:23.10 ID:P8jhauxj0
- (,,゚Д゚)「でもまぁ、これであの時の借りは返せたかな」
( ゚д゚ )「借り、とは?」
(;゚Д゚)「え? あ、いや、こっちの話」
そうだった。
生徒会メンバーとハイン以外は、あの黒衣の男の存在を知らないのだ。
右手の怪我が、奴のナイフによって生じたものであることは言えない。
(,,゚Д゚)「……とにかく、これでダウンしてくれれば御の字だ。
ただでさえ急がなきゃならないのに、これ以上足止めを食うわけにはいかないからな」
( ゚д゚ )「ハイヒールを探すのか?」
(,,゚Д゚)「それもある。 けど、今はクー生徒会長に会うのが先だ」
( ゚д゚ )「成程」
それだけでギコの行動の意図を把握したミルナは、
( ゚д゚ )「……だが、そう簡単にはいかないらしいぞ」
と、崩れ音立てる資材の方を見る。
濛々と立ち込める茶色の煙の中、動く影を見つけたからだ。
- 71: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:05:04.37 ID:P8jhauxj0
- ( )「…………」
身体に落ちる瓦礫や砂を落としながら敵が姿を見せる。
落ちてしまいそうな深黒を発していた布は、砂埃で薄汚くなってしまっていた。
それを片手で打ち払うと、黒色が濃くなると同時に周りの煙が逃げていく。
いなくなった煙の代わりか、彼の周囲が暗い雰囲気に満たされていくのが解った。
(;゚Д゚)「やっぱり駄目だったか……。
今更だけどアイツ、相当な手練だぞ」
( ゚д゚ )「そんなもの一度刃を合わせれば解る」
頷き、
( ゚д゚ )「――だからギコ、ここは俺に任せて行け」
僅かな沈黙。
ミルナの言葉の意味を、少し遅れて理解したギコは慌てて振り向いた。
(;゚Д゚)「……へ?
『だから』っておま……言ってることメチャクチャじゃね?
ここで一人残ったら、それこそ危ないだろ」
- 72: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:06:43.55 ID:P8jhauxj0
- ( ゚д゚ )「気にするな。
そして、このまま足止めを食うわけにはいかないのだろう?
だったら戦える者がここに残り、その間にお前は目的を果たすべきだ」
(,,゚Д゚)「仲間を置いていけるかよ」
( ゚д゚ )「仲間の足を引っ張れるか」
(;゚Д゚)「引っ張ってなんかないだろうが!
全然強いくせにどーしてそういうこと言うかね君は!」
( ゚д゚ )「お前が俺を一人残すことを心配するのなら、それは足を引っ張っていると同じだ。
だから言おう。 俺に足を引っ張らせないでくれ、と」
(;゚Д゚)「ぐっ、ぬぅ……」
ミルナの目は真剣そのもの。
冗談抜きで、そして本気で言っているのだ。
確かに先を急ぎたいとは思う。
ここで時間を掛ければ、何かが間に合わなくなるかもしれない。
だが、だからと言って彼を一人残して行くのが正しい選択なのだろうか。
相手は、あの黒衣の男だ。
本気ではないとはいえ、クー生徒会長の攻撃をも捌く実力を持っている。
何より二人掛かりで戦った今でさえ、押し切れないどころか逆に押されているというのに。
- 74: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:08:53.72 ID:P8jhauxj0
- (;゚Д゚)(どうすりゃいい……?)
理想は、すぐさま黒衣の男を倒してしまうことだ。
そうすれば、その後も二人で行動出来て互いの安全度も上がる。
(;゚Д゚)(でも……そもそもあの野郎を倒せるかどうか、ってのが問題なんだよな)
このままでは無駄に時間を費やすばかりではなく、命の危機にも晒される。
勝つか負けるか、というより、どう生き残るか、が大切な状況。
だとすれば尚更、ミルナを一人置いていくわけにはいかなくなる。
しかし、彼自身はその迷いを断ち切っている。
自分の身が危なくなろうとも、友人であるギコの目的の完遂を優先してくれたのだ。
それも本人の口から直接放たれた言葉なら、その覚悟も推して知れるというもの。
……ここでミルナの身を案じて残るのは、彼の覚悟を踏みにじるということ。
(;゚Д゚)「けど――!」
それで大切な友人を失うのも嫌だ。
しかし同時に思う。
ならば、彼の覚悟を踏みにじれるのか、と。
- 75: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:11:13.25 ID:P8jhauxj0
- 命と誇り。
どちらも、人によっては比べることの出来ないほど大きなもの。
それを解っているが故に、ギコは心の底から逡巡した。
( )「…………」
黒布の男が体勢を立て直した。
落としたナイフを拾い上げ、軽く振るい、調子を確かめる。
隣でミルナが刀を構える。
何も言わない。
それは、ギコがミルナの言ったことを選ぶと思っているからだ。
信じられている。
それが余計に、ギコの中で泳ぐ迷いを増長させた。
俯いた視界の外から、ミルナの声が来る。
( ゚д゚ )「……俺達がやっているのは『仲間ごっこ』なのか?
俺は、お前に心配されるほど弱いのか?」
一息。
( ゚д゚ )「そう思うというのなら、ここに残って俺と共に戦ってくれ。
だが、その後は知らん。
その時点で、俺とお前は仲間――いや、対等ではなくなるのだから」
(;゚Д゚)「ッ……!」
- 76: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:13:31.92 ID:P8jhauxj0
- ( ゚д゚ )「もう一度言うぞ、レコイド」
相手が一歩踏み出したのを見ながら、
( ゚д゚ )「俺に足を引っ張らせるな。
お前の背負うはずだった戦いを、今ここで俺が引き継ぐから。
だから、お前はお前の目的を果たしに行け」
(;゚Д゚)「お、俺は……俺は……!」
知らずに両拳を握り締める。
意志は理解出来るが、命も大事だと思うが故の迷い。
どちらも大切だからこそ答えが出せず、そして思考の渦にはまっていく。
それこそが、一番時間を無駄にしてしまう行為だとも気付かず。
( ゚д゚ )「レコイド……!」
(;-Д-)「……!」
その時だった。
「――行きなさい、ギコ=レコイド」
- 80: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:15:45.05 ID:P8jhauxj0
- 鋭く、そして冷たい声。
まったく人気のなかった方角から、それが来た。
ギコとミルナと黒布の男が、同時に視線を送る。
工業区画側、少し離れた場所にある大きな倉庫。
その上に、二つの人影があった。
(゚、゚トソン「ふぅ……まったく、相変わらず面倒な後輩ですよ貴方は」
爪'ー`)y-「若い、若いねぇ。 昔を思い出すなぁ」
トソン=シティビレッジ。
そしてフォックス=ヴェルヘルン。
生徒会メンバーの水と油である二人が、こちらを見下ろすように立っていた。
(;゚Д゚)「せ、先輩……?」
(゚、゚トソン「そこにいるミルナ=コッチオーは、貴方を信じているのですよ?
仲間の信頼に応えなくて何がVIPの生徒ですか。
彼の覚悟を理解出来ぬ貴方ではないでしょう?」
(;゚Д゚)「解ってる、解ってるけどさ――!」
- 82: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:17:21.68 ID:P8jhauxj0
- 爪'ー`)y-「ギコ君、君は優しいんだね。
仲間の気持ちと命を天秤にかけ、そして迷えたんだ」
二人が飛び降りる。
着地の音がして、フォックスが言葉を続けた。
爪'ー`)y-「だからね、ここは僕らも加勢するってことでどうだろうか?」
(;゚Д゚)「え?」
(゚、゚トソン「貴方の代わりに私達が戦おう、と言っているのです。
そうすれば貴方の迷いは消える。 そうでしょう?」
トソンが武具を解放した。
その細い手指に絡まれるのは機械弓。
高い信頼性を誇る今北産業製で、彼女らしいチョイスでもある。
銀色のそれを徐に構えながら、
(゚、゚トソン「心配することも、申し訳なく思うこともありません。
あの敵は……元より私達が相手すべきなのですから」
射撃した。
魔力で編まれた光矢が一直線に走る。
それはギコとミルナの間を突き抜け、
( )「ッ!?」
彼らの背後から襲いかかろうとしてた男のナイフを、甲高い音と共に弾き飛ばした。
- 83: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:19:15.30 ID:P8jhauxj0
- 隙が出来る。
ギコが、この場から離脱できる隙が。
(゚、゚トソン「行きなさい! 行って、納得してきなさい馬鹿後輩!」
(,,゚Д゚)「! ……了解!」
駆け出す。
この場を仲間と、先輩に任せて。
ようやく迷いを振り切ったギコが、真っ直ぐに工業区画を目指す。
( )「――!」
続いて動いたのは黒衣の男。
弾かれ、飛ばされたナイフは拾わず、懐から新たな得物を取り出しながらギコを追う。
その無防備な背中目がけ、刃を投擲しようとして、
( ゚д゚ )「やらせるものか……!」
しかし、目前に振り下ろされた刀によって動きを阻害された。
(,,゚Д゚)「ミルナ!」
( ゚д゚ )「もう迷うなよレコイド!
お前の懸念を、俺が必ず否定する! だから行ってこい!」
言葉に、ギコが強く頷いた。
そんな気がした。
互いに背を向け合った状態だったが、どこか確信があった。
- 87: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:23:48.77 ID:P8jhauxj0
- 目の前、敵がいる。
ミルナの介入によって苛立つ敵が。
( ゚д゚ )「…………」
刀を握り直して相対する。
ここから先には行かせない、と雰囲気で示しながら。
相手の動きを注視し、次の展開に対応するため重心の高さを調節する。
光矢が来た。
トソンの狙撃だ。
ミルナに気を取られていた黒布の男は、直前に身を躍らせることで回避する。
(゚、゚トソン「ミルナ=コッチオー。 あまり無理はしないように。
貴方は私達のサポートへ回って下さい」
( -д- )「……断る」
(゚、゚トソン「え」
( ゚д゚ )「俺が任された戦いだ。 だから、俺が戦う」
言い、トソンの意図に反して切り込んでいく。
逆らう後輩にトソンが何かを言おうとすると、フォックスが肩を掴んで止めた。
爪'ー`)y-「ま、いいじゃない。 やらせてみよーよ。
もし本当に危なければ僕らが助ければいいんだし、ね?」
- 120: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:33:58.92 ID:P8jhauxj0
- (゚、゚トソン「…………」
爪'ー`)y-「うわぁすごい睨み」
はは、と笑ったフォックスは、ブレスレッドを装着した腕を掲げながら、
爪'ー`)y-「男の子にしか解らないことってあるんですよ。
そういうわけで、ここは彼に一つ譲ってあげましょう」
(゚、゚トソン「……いい加減なのか、そうじゃないのか判断しかねますね。
解りました。 先輩の指示に従います」
そして二人は戦場に立つ。
前で戦うミルナを見て、その邪魔にならない位置に移動。
遠距離で効果を発揮する二人の武具は、サポートに回っても力を発揮するので問題はない。
(゚、゚トソン「……しかし、最近の後輩は馬鹿ばかりで困ります。
ギコ=レコイドにしてもそうです。
どうせクー生徒会長に事の真相を聞きにいったのでしょうが、
同じ情報を持つ私達が目の前にいたというのに――」
爪'ー`)y-「――それは違うんじゃないかなぁ」
術式ウインドウを生みだしながら、フォックスがぼやくように言った。
- 123: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:42:49.27 ID:P8jhauxj0
- (゚、゚トソン「? どういうことですか?」
爪'ー`)y-「彼もそれに気付いていたと思うんだ。
仮にも一年と少しという期間、一緒に活動してる仲なんだからね。
でも、彼は敢えて聞かなかった」
術式起動。
高い音が響き、ミルナとトソンの身体に光が灯る。
運動神経の活性化と、反応速度の上昇補正だ。
(゚、゚トソン「……そういうことですか」
爪'ー`)y-「彼の中で、僕らに聞くことより、クー生徒会長から直接聞く方が大事だったんだよ」
(゚、゚トソン「まぁ、ここにいるのは無駄に厳しく当たる先輩と、
やる気の欠片も見せない副会長ですからね……」
爪'ー`)y-「おや、自覚があったのかい?」
(゚、゚トソン「元より嫌われるのは承知の上です」
と、そこでトソンは首を振った。
まるで今言った言葉を否定するように。
フォックスが見る中、彼女は本格的に弓を構え、
(゚、゚トソン「そろそろ無駄口を叩くのは止めて、戦いに専念しましょう。
もしあの黒衣の男がネットワークを破壊したのなら、彼を辿れば敵の大元へ辿り着けますからね」
爪'ー`)y-「了解了解。 んじゃ、怒られない程度にやりますかね」
- 127: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:48:34.16 ID:P8jhauxj0
- 所変わって逆の方角。
東の方角でも、一つの対決と呼べる動きがあった。
ハハ ロ -ロ)ハ「――――」
N| "゚'` {"゚`lリ「――――」
ハローと阿部だ。
二人は道の真ん中に立ち、睨み合っている。
視線を逸らした方が負け、と言わんばかりに睨み合っている。
ハローは制服姿のまま、両腕を浅く組んだ姿勢。
阿部は作業衣を着てはいるが、その上半身は完全に晒されている。
見方によっては、変質者に睨まれている美女、という大変危険な構図であった。
爪*゚〜゚)「…………」
ξ;--)ξ「…………」
それを、スズキとツンが見守っている。
一応、武具は解放済みだが、二人の対決を邪魔しないよう構える程度だ。
周囲、その他の動きはない。
たまに風が通り抜けていく以外は、静かなもの。
ハインを探しまわる生徒達も、今はこの周囲にはいないようだ。
- 130: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 21:54:52.45 ID:P8jhauxj0
- 実は先ほどまで、この場は大いに騒がしかった。
というのも、、何か通じ合ったハローと阿部が、己の意見をぶつけ合っていたのだ。
ξ;--)ξ(…………)
ツンに、その時の討論は記憶にない。
BLやらASやらFFやら、果ては主童やら張飛やら色々と聞いたこともない単語が飛び交っていたが、
途中から気分を悪くし、耳をふさいで、あーあー、と屈んでいたからだ。
隣にいたスズキは、何やら感心した様子でメモをとっていたが、深くは聞かないでおいた。
どうせあとで被害を被るのはモララーだ。
言葉のぶつかり合いは、しばらく続いた。
やがて互いが、似ているようで相成れないモノだと認識したのか沈黙を発し、今に至る。
ハハ ロ -ロ)ハ「――――」
N| "゚'` {"゚`lリ「――――」
両者不動。
視線に敵意はない。
かといって、友好もない。
どうやら、ツンには理解できないレベルの戦いらしい。
- 139: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:01:37.77 ID:P8jhauxj0
- N| "゚'` {"゚`lリ「……ふっ」
ハハ ロ -ロ)ハ「……ふふ」
両者が同時に笑う。
肩を揺らし、大胆にも目を瞑り、口端を吊り上げる。
そして言った。
N| "゚'` {"゚`lリ「君とは良い友達になれそうだったのだが……残念だな。
ともあれ、久々に熱いトークだった」
ハハ ロ -ロ)ハ「えぇ、なかなかハードだったわ。
残念なのは、互いの性別が決定的に違っていた、という点ね」
N| "゚'` {"゚`lリ「これでも俺達も生物の一種。
だったら、性別を超えて愛することが――」
ハハ ロ -ロ)ハ「――出来ないわよ。
性別を超える? 異性に何の魅力があるのかしら?」
N| "゚'` {"゚`lリ「ふっ……いいね。 君に会えただけでも、ここに来た甲斐があった」
阿部が手を差し出し、ハローが握る。
友情ではなく、別の何かが繋がっている証拠であった。
爪*゚〜゚)(熱い……! 熱いであります……!)
ξ;--)ξ「あーあー、私は何も聞こえないー」
- 145: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:06:19.54 ID:P8jhauxj0
- と、その時であった。
ξ゚听)ξ「え?」
まず気付いたのはツン。
塞いでいた耳を開放し、そばだてる。
何か聞き覚えのある、そして待望していた何かが聞こえた気がしたのだ。
しかし、小さな耳は何も捉えない。
幻聴か。
そう思った時。
N| "゚'` {"゚`lリ「……ん?」
続いて阿部が首をかしげた。
その動きで、空を見上げる。
声が、聞こえていた。
「――ぉ」
ξ゚听)ξ「!」
真っ先に確信する。
勢いよく立ち上がり、金髪が大きく弾み、そして阿部と同じように空を見上げた。
- 150: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:10:10.13 ID:P8jhauxj0
- 爪*゚〜゚)「?」
ハハ ロ -ロ)ハ「…………」
スズキとハローも気付いた。
同じように空を見上げる。
「――ぉぉぉ」
声が接近してきている。
お、という音を伸ばした声は、若い男のものだ。
目を凝らせば、小さいが姿も見える。
だから、言った。
ξ;゚听)ξ「――ブーン!!」
⊂二(#^ω^)⊃「――おぉぉぉぉぉぉ!!」
ニコニコ顔の生徒が、こちら目掛けて一直線に落下してくる。
視界の端で阿部が唇を舐めたのを見てしまったが、ツンはその記憶を速攻でかなぐり捨てた。
- 160: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:16:08.62 ID:P8jhauxj0
- 爪*゚〜゚)「ホライゾン君でありますか!
なんかかっこいい登場でありますよこれ!」
ハハ ロ -ロ)ハ「……でも、どうやって着地するつもりなのかしら」
ハローの言葉に、スズキとツンの表情が凍った。
確かに、あれだけの高さから落ちてくれば、着地姿勢など関係なくアウトだろう。
というか、普通に死ぬのではなかろうか。
ξ;゚听)ξ「ちょ、何やってんのよあの馬鹿は……!」
慌ててデバイスを起動させた。
脚部強化の術式を選択し、プログラムを走らせる。
着地の寸前に足を強化する算段だ。
N| "゚'` {"゚`lリ「ほほぅ……成程」
ξ;゚听)ξ「!?」
いつの間にか阿部が背後にいた。
興味深げに、ツンの傍にあるウインドウと、落ちてくるブーンを見比べる。
いきなりのことに身体が震え、
⊂二(#^ω^)⊃「――そこの半裸! ツンに近寄るなおぉぉぉぉッ!!」
そしてブーンが、足を下にして、阿部目掛けて落ちてきた。
- 166: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:21:38.86 ID:P8jhauxj0
- ξ;゚听)ξ「ブーン!?」
しまった。
タイミングがズレてしまった。
慌てて術式を走らせるが、効果を発揮し終える前にブーンと地面が激突する。
ハローが、胸ポケットから青色のスティックを出していた。
スズキが、腰のハードポイントから簡易小型テントを取り出そうとしていた。
どちらもブーンの落下の衝撃を受け止めるため。
だが、間に合わない。
ξ;゚听)ξ「ブーン……!!」
早く、早くと指輪を見るツンに、
( ^ω^)「安心するお、ツン! 僕はここにいて、そして大丈夫だお!!」
懐から符のような紙を取り出したブーンが、不安の欠片もない表情で声を放った。
中空で一回転。
足の位置と角度を調節し、阿部に落下軌道の蹴りを食らわせるため、一気に行く。
そこには、まったくの焦りも躊躇もなかった。
N| "゚'` {"゚`lリ「――!」
阿部が身構える。
同時、ブーンが激突した。
- 171: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:24:57.25 ID:P8jhauxj0
- 大きな激突音が、
爪;゚〜゚)「――!」
ハハ ロ -ロ)ハ「…………」
しかし、響かなかった。
ξ;゚听)ξ「え……?」
思わず背けていた視線を、元に戻す。
音も、風も、衝撃もなかったことに違和感を得たからだ。
そして、結果を見る。
(#^ω^)「…………」
N| "゚'` {"゚`lリ「…………」
下方へ右足を突き出したブーン。
上方へ左腕を掲げている阿部。
その状態で、二人は完全に止まっていた。
- 174: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:29:57.85 ID:P8jhauxj0
- (;^ω^)「……あれ?」
阿部の腕に乗る形にあるブーンが、まず疑問を放つ。
何度か首をかしげ、
(;^ω^)「なんで……吹っ飛ばないのかお?」
ξ;゚听)ξ「……!」
僅かに震えるブーンの声に、ツンは阿部を見た。
あの速度、そしてそこから放たれた蹴りを、阿部は片腕で防いだのだ。
仮にも武術専攻学部で鍛錬しているブーンの蹴りは、そこらの生徒より強力。
それを一番よく知るツンは、目の前に事実を信じきることが出来ない。
どういうことか、という視線を受けた阿部は、
N| "゚'` {"゚`lリ「さぁ? 俺は特に何もしていないが……」
と、予想外の答えを言う。
ξ;゚听)ξ(どういうこと……? 何か能力を隠し持っているの?)
今までの阿部の言動から、その正体を突き止めようとするツン。
すると、未だ阿部の腕に立つブーンが、両手を叩き、
(;^ω^)「あ、衝撃吸収の符を使ったから、蹴りの衝撃も全て消えちゃったんだお!」
直後、ブーンはツンのアッパーカットを食らい、再び空へ舞い上がった。
- 183: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:37:11.11 ID:P8jhauxj0
- (#)ω^)「げふぅ……!」
ξ#゚听)ξ「この馬鹿っ、馬鹿っ!
考え無しでっ、行動するからっ、そうなるっ、のよっ!!」
地面に転がったブーンを、更にけたぐり回すツン。
蹴りを受ける度、ブーンは魚のように地面を跳ねた。
(#)ω^)「あうっ、この感じ、なんか、久々っ!」
そんないつもの光景を、スズキとハローが遠くから眺め、
爪*゚〜゚)「……心配して損した、ってこのことを言うのでありますよねぇ」
ハハ ロ -ロ)ハ「ふふ、もう心配する時点で間違いなのよね、あの二人に関しては」
何やら和やかになる空気。
打撃音を背景に、スズキとハローが肩をすくめる。
だが、
N| "゚'` {"゚`lリ「まぁ、目の前で死体を見るのは回避できて良かったとして、
……そろそろ俺も仕事に戻らないと、なぁ?」
忘れがちだが、彼女達の敵は、最初から存在しているのだ。
- 187: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:42:32.83 ID:P8jhauxj0
- 空気が一変する。
色に例えるなら、オレンジからグレーだ。
楽しげな色彩が一気に失せ、戦いを知らせる色が支配する。
足を乗せて説教していたツンは、その変化をすぐさま察知して戦闘態勢に入った。
ξ゚听)ξ「……!」
N| "゚'` {"゚`lリ「さて、最初の問いに戻ろうか。
ハインリッヒ=ハイヒールは知っているな?」
爪*゚〜゚)「え……」
ハハ ロ -ロ)ハ「知らない、という答えは通用しないようね。
なら、別の問いを……彼女を見つけてどうするつもりなのかしら?」
N| "゚'` {"゚`lリ「君達が知る必要はない」
阿部の腕がゆっくりと動いた。
背の鉄槍を掴み、身体の前へ持ってくる。
彼自身の背も高いが、その槍は更に長かった。
N| "゚'` {"゚`lリ「別に答えなくとも良い。
どちらにせよ俺の姿を見られた以上、君達には少しばかり気を失ってもらう。
俺達の仕事が終わるまで、ね」
- 192: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:48:09.71 ID:P8jhauxj0
- ξ;゚听)ξ「……どちらも断る、と答えたなら?」
N| "゚'` {"゚`lリ「関係ない、と答えようか」
戦闘は避けられないようだ。
スズキとハローも、各々の武具を取り出して身構える。
だが、そこに楽観的な空気は微塵もない。
ふざけた男に見えるが、言動の端々から強者の臭いが漂ってきているのだ。
たとえ多人数で立ち向かえる現状でも、不安の方が大きい。
ξ;゚听)ξ「くっ……」
どうにかして切り抜けなければ。
この男の危険性を、誰かに知らせる必要がある。
だが、この状況でどう戦うか――
( ^ω^)「――ツン」
ξ;゚听)ξ「え?」
( ^ω^)「アイツは僕らに……そしてツンに危害を加えようとしているんだお?」
ξ゚听)ξ「ブーン……?」
( ^ω^)「ちょっと行ってくるお」
言い、ブーンはツンを守るように立ちはだかった。
- 198: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:53:49.66 ID:P8jhauxj0
- ブーンの行動に、阿部が微笑を浮かべた。
N| "゚'` {"゚`lリ「女の子を守るナイト、といったところか?」
( ^ω^)「男が前に出るのは当たり前だお」
N| "゚'` {"゚`lリ「古い考え方だな。 今や女性も剣や槍を持って戦う時代だ。
もはや、女の子は守られるような存在じゃあないんだ」
( ^ω^)「でも、それでも――」
頷き、
(#^ω^)「――僕はツンを守るんだお!」
行った。
落下直前に起動したツンの術式により、既に足には強化術式が掛かっている。
補正された速度を武器に、ブーンは阿部へ正面から立ち向かった。
N| "゚'` {"゚`lリ「面白い」
対する阿部は余裕を示す。
前から来るブーンを見据え、しかし特に防御も回避も選ばず、
N| "゚'` {"゚`lリ「だが、言葉だけじゃあ何も出来ない」
片腕で槍を振るい、ブーンの身体を薙ぎ払った。
- 204: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 22:58:42.67 ID:P8jhauxj0
- 強烈な一撃だ。
遠心力を味方につけた槍は、容易くブーンの身体を砕こうとする。
だが、その直前、ブーンは片膝を上げることで防御姿勢をとっていた。
(;^ω^)「ぐ、ぅぅぅ……!!」
右の脛に鉄槍がブチ当たっていた。
強化術式のおかげで痛みは少ないが、それでも痛いものは痛い。
しかも身体は結局、薙ぎ払われてしまっている。
(#^ω^)「でも!」
吹き飛ばされる身体を回す。
進行方向へ足を出し、膝を軽く折った。
寮の壁に足がついたのは直後。
ほとんど脊髄反射で、ブーンの鍛えられた足が壁を蹴り飛ばす。
槍で叩き飛ばされ、しかし壁に当たって跳ね返ったかのような光景だ。
N| "゚'` {"゚`lリ「ほぅ」
(#^ω^)「VIP学園の生徒の名は伊達じゃないお!!」
更に速度をつけ、行った。
- 210: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 23:05:21.11 ID:P8jhauxj0
- 放つは最速の蹴り。
全身で飛び込むように撃てば、通常以上の威力を出せるだろう。
如何に阿部が強靭でも、砲弾と化したブーンの蹴りを受ければ、少しは効くはずだ。
N| "゚'` {"゚`lリ「器用な動きだが――!」
既に阿部は捕捉していた。
猛スピードで来るブーンに対し、槍を構えて待機する。
ブーンの速度。
そして槍を振るう速度。
それがぶつかれば、どちらにも多大な衝撃が走る。
当然、生物ではない槍にはダメージなどないが、生身であるブーンには――
N| "゚'` {"゚`lリ「む」
だが、そこで邪魔が発生した。
足下から勢い良く生えてきた触手が、阿部の腕を絡め取ったのだ。
更には、何処からか飛来した銃弾が槍を弾き、大きく振動させる。
ハローとスズキだ。
二人が呼吸を合わせ、タイミング良くブーンのサポートを行なったのだ。
(#^ω^)(いけるお――!!)
一瞬の隙。
だが、高速で飛ぶブーンにとっては十分過ぎる空白だった。
- 216: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 23:11:36.92 ID:P8jhauxj0
- 衝突する。
打撃音が大きく響いた。
一拍遅れて衝撃が迸り、大気が揺れる。
今度こそ、ブーンの攻撃が成功したのだ。
誰もがそう思った。
だが、
N| "゚'` {"゚`lリ「惜しかった、と言っておこうか」
(#)ω゚)「あ、れ……?」
倒れてしまったのはブーンの方だった。
高速故、何が起きたのか解らず、しかし身体にくる痛みに顔をしかめる。
視界に広がる青空を見ながら慌てて立ち上がろうとするが、足腰が言うことを聞いてくれなかった。
そこでブーンは理解する。
強烈なカウンターを入れられたのだ、と。
(#)ω゚)「そんな――っ!?」
N| "゚'` {"゚`lリ「意思もある。 思い切りも良い。 技量も悪くない。
だが、それら全てをまとめた上で……俺の方が強く、速かっただけのことさ」
阿部がこちらを見下ろしていた。
憐れむような、しかし苦笑に近い表情を浮かべて。
- 220: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 23:17:08.52 ID:P8jhauxj0
- N| "゚'` {"゚`lリ「だが如何せん、まだまだ発展途上だな。
俺を相手するには十年早い」
(#)ω゚)「こ、この……!」
N| "゚'` {"゚`lリ「あまり無理に動こうとしない方がいい。
もがけばもがくほど、後に響くだろうよ」
ξ;゚听)ξ「ブーン!!」
爪;゚〜゚)「そんな……! 武器は封じたはずなのに!」
N| "゚'` {"゚`lリ「タイミングは完璧だった。 だが、方法が悪かったな。
生半可な妨害は意味がないのさ」
未だ腕に絡みつく触手を、腕の一振りで引き千切る。
軽く槍を回転させ、その石突を、未だ仰向けに倒れるブーンへ向けた。
N| "゚'` {"゚`lリ「まずは君からだ。 アタッカーの君が落ちれば、残りも諦めがつくだろう?」
(#)ω゚)「う、ぐ……っ!」
絶体絶命。
その只中、ブーンは妙に冷静な頭で思い出していた。
こんな状況が、前にもあったような気がする、と。
- 224: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 23:21:01.69 ID:P8jhauxj0
- 今にも落ちてきそうな石突を見て、思い出した。
(#)ω゚)(そうだ、これってレクリエーションの時と……)
あの時も、ブーンやギコなどのアタッカーが全滅したが故に、
後に残ったツンやモララー達が呆気なくやられてしまった。
自分は最初にやられてしまったが、後にギコ達から詳しい状況を聞いていた。
思う。
アタッカーである自分が負けるということは、支えてくれる仲間の敗北でもある、と。
(#)ω゚)「そ、れは……」
駄目だ、と言い、無理にでも起き上がろうとした時。
N| "゚'` {"゚`lリ「っ!?」
こちらにトドメを刺そうとしていた阿部が、素早く槍を振るって何かを叩き落とした。
金属音を立てたそれは、ブーンの顔の横に落ちて地面に刺さる。
それは、
(#)ω゚)(ナイフ……?)
どこにでも売っていそうなものだ。
だが、どこかで見たことがあるような――
- 231: ◆BYUt189CYA :2009/01/11(日) 23:24:29.22 ID:P8jhauxj0
- 「――おいおい、そりゃあ駄目だろうよ」
声は意外な方角から。
スズキやハロー、そしてツンよりも更に後方からだ。
ナイフを防御した阿部が視線を向け、そして口に笑みを浮かべる。
そこにいたのは、
_、_
( ,_ノ` )「いけない、いけないなぁアンタ……俺の可愛い生徒に何やってんだよ?」
N| "゚'` {"゚`lリ「お前は……」
_、_
( ,_ノ` )「名乗るほどでもねぇ、ただの中年のオジサンさ。
そう――」
頷き、ツン達に視線を送りながら、
_、_
( ,_ノ` )「――そこにいる生徒達をイジめるのが大好きな、ただの教師だよ」
そして、天から打撃が降ってきた。
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