从 ゚∀从明日のようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 02:44:25.70 ID:6j9PmwHfO

( ・∀・)「今日もお疲れさん」

 薄暗い店内でモララーは何時もの台詞を吐いた。

从 ゚∀从「あ…お疲れ様です」

 そして、この台詞も何時もと変わらない台詞だ。

( ・∀・)「今日も疲れたでしょ?
 ほら、飲みなよ」

 そう言ってテーブルの上に置かれたのは、ロックのウィスキーとナッツ。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 02:51:09.19 ID:6j9PmwHfO

从 ゚∀从「ありがとうございます」

 軽く礼だけを述べ、液体を一気に飲み干した。
 ちょっと前まで、酒なんて無縁だったが仕事が変わってからは嘘のように強くなった。
 液体が喉を通った後の、焼き付くような感じがたまらないのだ。

从 ゚∀从「ごちそうさまでした、それじゃ…

 「お疲れ様でした」と言おうとした瞬間。目の前に座るモララーさんは口の端を微かに吊り上げ言った。

( ・∀・)「おかわりが、いるだろう?」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 02:56:23.00 ID:6j9PmwHfO

 前からモララーさんは、こんな人だった。彼が振り回されたのもよく解る。
 そんなことを考えていたら、自然と僕も微笑んでいて、「是非」と言って笑った。

( ・∀・)「いやー、久しぶりだねぇ」

从 ゚∀从「…はい?」

( ・∀・)「こうやって、仕事終わりに呑むのがだよ」

( ・∀・)「前はよく呑んだものさ、朝まで呑んでた事もあったよ」

从 ゚∀从「知ってますよ、二日酔いと寝不足が酷いって愚痴を言ってた時もありましたから」

( ・∀・)「ははは、それは悪いことをしたなぁ……」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:01:37.28 ID:6j9PmwHfO

 不意に、モララーさんは遠くを眺めるような目をしていた。
 うっすらと、涙が浮かんでいるようにも見えた。

( ・∀・)「今、ブーンは?」

从 ゚∀从「知らないんですか?」

( ・∀・)「店の遣り繰りで一杯一杯でね、ブーンのお見舞いにも行けないんだよ」

从 ゚∀从「……術後の経過も順調ですよ、早ければもうすぐ退院です」

 僕は、自然と笑った。
 理由なんてないけど、笑っていないとモララーさんまで、笑えなくなりそうだから。

( ・∀・)「……そうか、それは良かったよ」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:06:00.74 ID:6j9PmwHfO

( ・∀・)「お店には、復帰するのかい?」

从 ^∀从「はいっ!本人はやる気満々です」

( ・∀・)「はははっ、彼らしいね」

 一日中働き詰めで、とても疲れているだろうにモララーさんは、本当に嬉しそうに笑った。
 誰よりも、ブーンの帰りを心待ちにしているのは、ショボン君でもドクオさんでもでぃさんでも僕でもない。
 ずっとずっと共に働き続けていた、唯一無二の親友でもある、この人なのだろう。
 そう思わせる程、その笑顔は輝いている。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:11:00.34 ID:6j9PmwHfO

从 ゚-从「長かった……、ですね」

( -∀-)「あぁ、長かった」

 「本当に長かった」とモララーさんはしみじみと呟き、「でも」と続けた。

( ・∀・)「ブーンが帰って来て、終わる訳じゃないだろう」

( ・∀・)「ブーンが帰って来たら、ピッツァやパスタ、定食のメニューが数多く復活する」

( ・∀・)「そうしたら、また忙しくなる」

从 ゚∀从「…………」

( ・∀・)「僕達の役目が終わる訳じゃない、また新しく始まるんだよ」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:16:33.40 ID:6j9PmwHfO

 何処か楽しげに、モララーさんは語った。

从 ^ー从「そうですね」

从 ゚-从「彼が倒れて、この店は少し変わってしまいました」

 一つ一つ言葉を紡ぐ、じっと見つめるモララーさんの目が僕を捉えている。

从 -∀从「常連さんも少し減りましたし、収入も落ち込みました」

从 ゚∀从「僕は……、僕の非力さを呪いました」

从 ∀从「力になりきれず、彼が居なくなったこの店を守ることも出来なかった」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:23:13.95 ID:6j9PmwHfO

从;∀从「彼が必死で守っていたモノが、音を立てて崩れていった気がして……」

 涙ながらに言葉を発し、嗚咽が混じりながらも必死で繋げた。
 ずっと内に溜めていた自分の、ふがいなさを吐き出すために。

( ・∀・)「君が落ち込むことじゃない」

( ・∀・)「僕にも至らなかった点は多々ある、もちろんでぃさんにもある」

( ・∀・)「この店は、ブーンの宝物だ。その宝物を任された僕達は至らなかった」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:27:47.04 ID:6j9PmwHfO

( ・∀・)「それでも、その宝物は今ここにある」

( ・∀・)「確かに至らなかったが、僕達は守り抜いたんだよ。この店を」

 モララーさんの言葉に、溜めこんでいたモノが留まることを知らずに流れ出す。

( ・∀・)「ブーンが倒れる前、あいつは僕にこう言ったんだ」

( ・∀・)『この店は宝物だ、それと一緒にこの店で働く君達も、大事な宝物だ』

( ・∀・)「ってね…」

从 ∀从「僕も……ですか……?」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:33:36.57 ID:6j9PmwHfO

 僕は不安だった、前から良く働けた訳じゃなかったし、よくドジをしてブーンを困らせることもあったから。

( -∀-)「はぁ…」

( ・∀・)「ブーンも鈍感だけど、君も鈍感だね」

从;゚∀从「……え?」

( ・∀・)「君が働き始めてすぐのことだけど、ブーンは『ハインと働くのが楽しみ』って言っていたよ」

( ・∀・)「その後も、ずっとね」

从;゚∀从「え…ぁ……あぅあぅ」

( ・∀・)「ははは、想いを打ち明けるのも大切だと思うよ、特に君達は」

 そう言って、モララーさんはカラカラと笑った。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:36:43.16 ID:6j9PmwHfO

( ・∀・)「おっと、もうこんな時間か……」

从 ゚∀从「……えぇ」

 時計の短い針は3を指していて、普通なら誰もが寝静まる時間だ。

( ・∀・)「話しこんでしまったね、最後に聞くけどブーンはいつ帰って来るの?」

从 ゚∀从「明日です」

( ・∀・)「ははは……悪い冗談が好きだね」

从;゚∀从「本当ですよ?」

( ・∀・)「…………」

( ・∀・)「そうか、明日帰って来るのか……」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:40:37.98 ID:6j9PmwHfO

 「そうか」「明日か」とモララーさんは何度も呟き、突然笑いだした。

(  ∀ )「そうかそうか…」

(  ∀ )「戻って来るんだな、ブーン。ははは」

( ;∀;)「ははははっ、良かったよブーン」

 モララーさんの目から、大粒の涙が流れていた。モララーさんは狂ったように笑い続けた、そんな姿を見て僕も少し笑った。



( ・∀・)「明日だなんて唐突だね、どんなサプライズだよ」

从 ゚∀从「ちなみに、常連さんの皆には集合するように言ってありますよ」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:44:09.35 ID:6j9PmwHfO

 本当はモララーさんとブーンを驚かそうと、僕とでぃさんで考えてた事だった。

( ・∀・)「それじゃあさ…」

 モララーさんが口を開いた瞬間、私の脳裏をブーンの言葉が掠めた。
 『モララーには、本当に敵わないお』


( ・∀・)「明日のパーティーの下ごしらえをしようっ!」

从;゚∀从「えぇーっ!?」

 確かに、敵わないなぁと思った。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:48:40.74 ID:6j9PmwHfO

 ブーンは前に口癖のように言っていた。
 『この店も、君も、モララーも日々変わらないお』
 ブーンがいなくなってから、少し変わってしまったこの店。
 それでも、私達の気持ちは何も変わらずに当然のように明日を迎える。それはとても嬉しい事ねのような気がした。
 一日に明日があるように、この店にも、ブーンにもモララーさんにもでぃさんにも、そして私にも明日がある。

 今まで何も変わらなかった明日、それが、急に色付くんだろうなぁと考えたら、幸せな気持ちになった。

从 ゚∀从「ありがとう、ブーン……」

 心から、そう思った。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/29(月) 03:52:24.84 ID:6j9PmwHfO
 




(゚;;-゚)「何言ってるの?」

从;゚∀从「………え?」

 いつの間にかそこにでぃさんがいた。でぃさんがいた。大事なことなので二回言った。

从//∀从「ななな、何でも、ないです……」

(゚;;-゚)「ふぅーん」

 本音を聞かれたかと思うと恥ずかしかった、顔も真っ赤になっているだろう。
 けれど、知らぬ間に姿を見せている朝日が上手く隠してくれているはず。


 朝日が目に染みる。
 そんな明日がやって来た。



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