( ^ω^)ブーンが自伝を書くようです

  
1: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:04:29.63 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「おいすー。僕はブーンだお。VIPのマスコットキャラといえば僕のことだお」

( ^ω^)「だけどお、こんな僕でもお金がほしいんだお」

( ^ω^)「だから、自伝でも発売してお金もうけがしたいお」

( ^ω^)「>>2さん、僕のエピソードってなんかあったっけお?」



  
2: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:04:57.71 ID:KZh7bG600
  
前世では亀だった



  
4: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:10:30.82 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)ブーンの前世は亀のようです


あれはいつのことだっただろう。たしか、高校をそろそろ卒業する頃のことだったか。
いじめられっこだった僕は友達も少なくて、みんなが卒業旅行の話をしているのを聞きながら、
自分の机で寝たふりをしていたんだ。

「やっぱ沖縄なんかいいよな」

なんて豪勢な話をしているやつがいれば、

「近くの温泉でよくね?」

と妥協しているものもいる。

クラスメートの楽しそうな声が響き渡る教室に嫌気がさして、僕はトイレに向かった。



  
6: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:17:48.54 ID:jk1Ncj+U0
  
だがトイレの扉をあけようとして、僕はそのままの体勢で固まった。
トイレ内から、微かに男のあえぎ声が聞こえてくる。

( ^ω^)(そろそろ授業がはじまるっていうのに、セクロスしてんのは誰だお!)

友達のいない僕は当然、彼女だっていたことがない。
だからセクロスなんてテレビの中だけでしか見たことがない。

怒りの感情がふつふつと体内から湧き上がってきた。
僕はわざと大きな音を立てて扉を開けた。

バタン。

トイレに踏み入った瞬間、個室から息を呑む声が聞こえてきて、すぐに静かになった。

(#^ω^)「おい、トイレでセクロスしてんの誰だお!」



  
8: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:22:41.91 ID:jk1Ncj+U0
  
「あれ、ブーンか?」

個室から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
誰だっけ。数少ない友達の声と顔を照らし合わせていく。

( ^ω^)「……ショボン、ショボンなのかお?」
(´・ω・`)「ああそうだよ」

そういって扉を開けて出てきたのは、小学校から付き合いのあるショボンだった。
ブーンがいじめられているとき、時々助けてくれるいいやつだ。

(´・ω・`)「どうしたんだい?」
( ^ω^)「どうしたもこうしたも、トイレでセクロスなんかするなお。
見せつけかお? 嫌味かお? モテない僕に対する嫌がらせなのかお」
(´・ω・`)「いや、そんなつもりじゃ」
( ^ω^)「相手は誰だお? 下級生か? 下級生なのか?
おい、そこに隠れてるやつ、とっとと出てこいお」



  
9: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:26:02.46 ID:jk1Ncj+U0
  
('A`)「お、おう」
( ^ω^)「ど、ドクオ」

てっきりショボンの相手は下級生かと思っていたが、個室から出てきたのは
ショボンと同じ僕の小学校からの同級生であるドクオだった。

( ^ω^)「ど、どういう」
(´・ω・`)「いや、断じて君が考えているようなことはない」

僕が考えていること。
ショボンとドクオの関係。ホモ。

( ^ω^)「別に二人がそういう関係でも、僕はなんとも思わないお。
そ、それじゃ僕はそろそろ授業がはじまるから教室にもどるお」

急いでその場から逃げようとした僕の腕を、ショボンがつかむ。



  
10: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:30:10.32 ID:jk1Ncj+U0
  
(´・ω・`)「待ってってば」
( ^ω^)「離してくれお。誰にも話さないからお」
(´・ω・`)「だから、誤解だっていってるだろ?」

誤解もなにもないだろう。男二人が狭い個室に入っていたのだ。
"それ"以外考えられないじゃないか。

(´・ω・`)「ドクオ。君もなんとかいってくれ」

僕とショボンがうつむいているドクオを見つめる。
その視線を受けて、ドクオの目が泳いだ。

('A`)「い、いや、俺は」
(´・ω・`)「ドクオ。僕にもはなしたんだから、ブーンに知られたっていいじゃないか」

二人のやりとりを見て、僕は怪訝そうな表情を浮かべていたはずだ。
それに気づいたドクオがうつむき、ショボンはそんなドクオを見てため息をついた。



  
11: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:34:10.85 ID:jk1Ncj+U0
  
(´・ω・`)「埒が明かないね。ドクオ、僕から話すけど、いいかい?」

ドクオがしぶしぶといった体でうなずく。

(´・ω・`)「いいかいブーン。なにを聞いても驚かないでくれよ?」

なにを聞いても。驚くはずがない。だって答えはわかっているんだから。
二人がホモの関係で、どっちかがどっちかの穴にあれを差し込んで……

(´・ω・`)「ドクオに彼女ができたんだ」
( ^ω^)「わかってるお。二人ともお幸せにだお。結婚式には呼ばなくてい」
('A`)「俺に彼女ができたんだ」

( ^ω^)「え?」

二人はホモじゃなかったのか?
ホモビデオをこっそり見ていたのは、僕だけじゃない。
ドクオもショボンも、行為の勉強をするために見ていた。

そう考えていた僕には、二人のいった言葉の意味がしばらく理解できなかった。



  
12: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:38:48.77 ID:jk1Ncj+U0
  
(´・ω・`)「ドクオに彼女ができたんだ。だから、僕はセクロスのやりかたを教えていたんだよ」

そんな馬鹿な。二人はホモじゃなかったのか。

二人はホモじゃない。二人はホモじゃない。二人はプリキュアじゃない。

( ^ω^)「そんなわけないお。二人はホモのはずだお」
('A`)「違うつってんだろ。確かにお前は童貞だし、彼女いない暦=年齢だから
彼女なんて信じられないだろうし、信じたくないんだろうが、俺に彼女ができたのは本当のことだ」

信じられずに、ショボンのほうに視線を移す。
ショボンがうなずきながらいった。

(´・ω・`)「うん。本当のことなんだ」

僕はなにがなんだかわからなくなって、トイレを飛び出して目的も定めずに走りだした。



  
14: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:44:31.86 ID:jk1Ncj+U0
  
授業終了のチャイムが鳴り響くのを、屋上のすみでぼんやりと聞いていると、急にうしろから声をかけられた。
背後を振り向くと、そこにはショボンとドクオが立っていた。

( ^ω^)「なんだお。話すことなんてないお」

二人が口を開く前に、そういった。
口を開きかけていたショボンがそのまま口を閉じた。
再び空を見上げながら、僕は続ける。

( ^ω^)「ドクオ」
('A`)「あ?」
( ^ω^)「おめでとうだお。一生幸せになってくれお」

目から知らず知らずのうちに涙があふれてくる。

小学校のころから、僕たちはいつも一緒だった。
どこへ出かけるにも三人で連絡をとりあって出かけた。
カラオケやゲームセンター。映画館に本屋に買い物にと、三人はいつも一緒だった。
それこそ、家族以上に親密な付き合いをしてきたのだ。

( ^ω^)(急にドクオが遠くなった気がするお)



  
16: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:50:03.51 ID:jk1Ncj+U0
  
結婚相手を連れてきた娘に感じるような感覚。
僕はあふれ出てくる涙をぬぐいもせずに、そのまま空をみつめつづけた。

空は雲ひとつない晴天だ。
日差しはすこしきついが、その日差しが僕の心を癒してくれるような気がした。

(´・ω・`)「ブーン、漫画の読みすぎだよ。
自分にひたってないで、話を聞いてくれよ」
( ^ω^)「話? 話ならもう済んだじゃないかお」
('A`)「済んでねぇよ。肝心なこというの忘れてた」

( ^ω^)「肝心なこと?」

ショボンがドクオのあとを繋いだ。

(´・ω・`)「うん。僕たちは無事に高校を卒業できそうじゃないか。
それでだ。卒業旅行にいこうと思うんだけど、どうかな?」

卒業旅行。クラス中がその話題で盛り上がっていたっけ。
自分だけ孤立しているような感じを思い出して、ブーンは思わず身をすくめた。



  
18: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:55:23.70 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「卒業旅行かお。そんなの、僕には関係のないことだと思ってたお」

ぼそっと呟く。すると、心の中に刺さっている棘がさらに大きさを増したような気がした。

(´・ω・`)「うん。いいだろ? 卒業祝いだ。みんなでパーッとやろうじゃないか」
('A`)「そうだな。まあクラスのやつから誘われてるんなら、無理にとはいわないが」
( ^ω^)「僕がいじめられっこだってわかってて、そういうこというのかお?」

(´・ω・`)「あはは。そうだね、ブーンを誘うようなやついるわけないよね」
('A`)「そうだな。お前は一人が似合う男だもんな。お前を誘うとか。考えただけで涙が出てくるぜ」

( ^ω^)「二人ともひどいお。それより、どこにいくか決めたのかお?」

('A`)「海なんかどうだ? 2月じゃ寒いかもしれないけど、最近海なんていってないしな」

海。その言葉に、なにか惹かれるものを感じた。

(´・ω・`)「僕はやめようっていったんだけどね。
なんでも、ドクオの彼女が海にいきたいっていったらしいんだ」



  
19: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 04:59:28.10 ID:jk1Ncj+U0
  
ドクオの彼女も一緒にいくのか。
いった本人もブーンの感情の変化に気づいたらしく、すまなそうな顔を向けてくる。
だが、卒業旅行の計画をしているのだ。
そんな小さなことに構っていられない。

( ^ω^)「そうかお。そういえば、僕も海はとんとご無沙汰だお」
('A`)「よっしゃ。それじゃ決まりだな」
(´・ω・`)「うん。海パンは用意しなくていいから、ブーンのピザボディを見なくて済むね」
( ^ω^)「ちょ、今日はショボン毒舌だお」

そういって、三人で笑いあった。
高校を卒業しても、その後、別々の道を進んだとしても。
三人はいつまでも今のままの三人でいられる気がした。

気がしたんだ。だけど僕はまだ知らなかったんだ。

この卒業旅行がきっかけで、僕たち三人が離れ離れになるなんて。



  
21: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:04:55.77 ID:jk1Ncj+U0
  
春休みに入り、一週間ばかりの休暇を使ってブーンたちは卒業旅行を計画した。
海までは、電車一本で二時間もあれば着くことができる。
午前六時にドクオの家に集まって、それから始発にのって僕たちは卒業旅行に出発した。

ドクオの家で、ドクオの彼女を紹介された。

ξ゚听)ξ「ツンです。よろしくしてくれなくてもいいから」

薄い栗毛に、同じ色の瞳。
少々吊りあがりの目は見る人に冷たい印象をあたえるが、話してみると意外と優しい人だった。
四人はすぐに意気投合し、長い電車での旅も楽しく過ごすことができた。

二時間なんてあっという間だ。
授業の合間の休み時間の十分はあんなに長いのに。
一人で寝たふりをして、楽しそうに話しているクラスメイトの声を聞いている時間はあんなに長いのに。

それがすごく新鮮だった。
卒業旅行の滑り出しは順調だ。



  
22: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:09:11.89 ID:jk1Ncj+U0
  
ξ゚听)ξ「あ、海が見えるよ。ほら、ドクオ。綺麗だね」
('A`)「ああ、そうだな」
ξ゚听)ξ「もう、ちゃんと見てよ。真夏の海もいいけど、寒いときに見る海ってのもいいもんだね」

二人のいちゃいちゃっぷりは少々むかついたけど。

海岸は人気がなかった。
冷たい海風が吹いてきて、思わず身震いをする。
夏にはひとであふれかえっているだろう海の家も、いまはただの廃屋にしか見えない。

だが天気は快晴だった。
あの屋上で見たときと同じような、雲ひとつない澄みきった青空。
それが僕たちの気分をさらに盛り上げる。

ξ゚听)ξ「うわ、冷たい」

ツンがジーンズのすそをめくって海水に足を浸す。
それにならうようにして、僕たちも海に飛び込んだ。



  
23: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:13:37.22 ID:jk1Ncj+U0
  
(´・ω・`)「うひゃあ、冷たいね。だけど気持ちいい」
('A`)「そうか? やっぱ海ってのは夏にくるもんだなって思うよ」
ξ゚听)ξ「もう、いつもそんなことばっかいってる。少しは楽しそうにしなさいよ」
('A`)「はいはい。うわー楽しいな! 美人な彼女と親友で海なんて!
冷たい水も、乾いた空気も新鮮に感じるね! すごいね!」

(´・ω・`)「ドクオ……わざとっぽいよ」
('A`)「うるせぇ。わざとだよ」
ξ゚听)ξ「ほら、ブーン君も入りなよ。気持ちがいいよ」

砂浜に座って三人の様子を眺めていた僕に、ツンがそういった。
ドクオとショボンも笑いながら僕の方をみつめている。

( ^ω^)「そうだおね。楽しまなくちゃだお」

僕は両手を広げながら、海に向かって走った。
だがなにかに躓いて、体勢を崩して海に頭から突っ込んでしまった。

('A`)「おま……」
ξ゚听)ξ「あはははは。ブーン君おもしろい」
(´・ω・`)「ブーン、だいじょうぶかい? 早く海から上がって服を乾かさなくちゃ」



  
25: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:17:52.66 ID:jk1Ncj+U0
  
ショボンに引きずられるようにして、砂浜まで引き上げてもらう。

( ^ω^)「はっくちゅん」

外見にあわない僕の可愛いくしゃみに、一同が大声を上げて笑った。
僕はブリーフにショボンのコートを着て、さきほどと同じ位置に腰をおろす。

ドクオは持ってきたビーチボールを膨らませて、ツンとバレーに夢中になっている。

(´・ω・`)「だいじょうぶかい? ブーン」
( ^ω^)「くちゅん。だ、だいじょうはっくちょん」
(´・ω・`)「ふう。せっかくの旅行なのに、風邪でも引いたら大変だよ。
それにしても、なにに躓いたんだろ」

('A`)「おーい、ショボンもこっちにこいよ。ビーチバレーしよーぜ」
(´・ω・`)「ああ、わかった。すぐいくよ。
それじゃブーン、体を冷やさないようにじっとしてるんだよ」



  
27: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:21:29.89 ID:jk1Ncj+U0
  
僕は寒さに震えながら、三人が興じているバレーをぼんやりと眺めていた。

それにしても、なにに躓いたんだろ。

ショボンの言葉が妙に気にかかる。

( ^ω^)(僕は、なにに躓いたんだお)

自分が転んだあたりまで足を伸ばしてみる。
そこは砂浜がすこしやわらかくなっているようだ。

( ^ω^)「お、なんか埋まってるみたいだお」

三人の笑い声を背中で聞きながら、僕は必死に砂浜を掘り起こし始めた。

もともとやわらかい砂浜がさらにやわらかくなっているので、
素手でも簡単に掘り進めることができた。

( ^ω^)「ん。これは……」

砂浜から頭をだしたのは、白い卵だった。



  
28: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:24:38.50 ID:jk1Ncj+U0
  
鶏の卵より大きい。
冬眠している蛇の卵だろうか。いや、そんなはずはない。
海蛇ならまだしも、普通の蛇がこんなところに卵を産むはずがない。

( ^ω^)「たしかにそうなんだけどお」

卵が妙にいとおしく感じる。
僕は傷つけないように、そっと卵を持ち上げた。
とくんとくん、と微かに鼓動しているのを感じる。

僕は卵を優しく抱きしめた。

暖かい。そして、ひどく懐かしい。

僕は思い出していた。高校にはいるときに、奨学金制度を申し込んだとき。

戸籍を見たとたん、僕は自分のことを呪った。

親は本当の親ではなく、家は自分の家ではなかった。

ブーンは養子だった。



  
30: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:27:52.66 ID:jk1Ncj+U0
  
それとなく親に尋ねてみたことがあるが、
なんとなくはぐらかされたまま、その問題にはけりがついていない。

自分は本当の子供じゃないんだ。
自分は誰の子なのか。親はどんな人か。
親は生きているのか、死んでいるのか。
遠くにいるのか、近くに住んでいるのか。

さまざまな疑問が渦巻いて、夜も満足に眠れない日が続いた。

そして結局なんの答えももらえないまま、高校を卒業しようとしている。

だが、卵を持った瞬間に、すべての記憶がもどった。

固い殻を突き破って生まれた瞬間に見た空のこと。
優しく微笑む両親のこと。

そして両親を見たとたん、卵の中で感じていた温かさの正体がなんとなく感じられたこと。



  
32: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:30:57.12 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「僕は、ピザでも豚でもない。亀だったのかお」

そんなはずがない。ブーンは確かに人間だ。
見た目も、そして心も思考回路もすべてが人間のものであり、亀であるはずがない。

だが、ブーンは「自分が亀である」という思いにとらわれて、抜け出せなかった。

ブーンはそっと背後を振り返った。

相変わらず笑いながらビーチバレーに興じているドクオ、ツン、ショボンの顔が見えた。

だが、それは先ほどまでと違い、なんとも遠く感じるものか。

ブーンは卵を砂浜に埋めなおすと、静かに海に向かって歩いていった。

冷たく感じた水ももうなんにも感じない。

ただ温かかった。卵を持ったときに感じた温かさ。

それを感じながら、ブーンは海へと帰っていった。



  
34: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:33:59.68 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「という話だけどお、実際僕は亀じゃなくて人間だって気づいたのは、
溺れているところを漁師さんに助けられてからだったんだお」

( ^ω^)「きっと前世の記憶が、僕に自分は亀なんだと思わせたんじゃないかって思ってるんだお」

そう、僕は亀ではなかった。

たしかにとんまでうすのろで、なにをするにももたもたしていたが、それでも自分は人間だった。

そう気づかせてくれた漁師さんには感謝している。


( ^ω^)ブーンの前世は亀のようです:おしまい



  
35: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:36:16.99 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「これで僕の自伝の一話が完成したお」

( ^ω^)「だけど、これだけじゃ売れないお」

( ^ω^)「短すぎるし、とっぴのない変態だと思われてしまうお」

( ^ω^)「でもいろんなことがあったせいで、過去のことをよく覚えてないんだお」

( ^ω^)「どんなことがあったか、誰か教えてくれお」



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