( ^ω^)ブーンが自伝を書くようです

  
37: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:42:42.26 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「誰も僕のエピソードなんて覚えてないのかお」

( ^ω^)「いいお。それじゃ、僕がはじめて付き合った女性について書くお」

( ^ω^)「それはそれは素敵な出会いだったんだお」

( ^ω^)「でも恋ってのはむなしいもんなんだお」



  
40: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:48:40.56 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)ブーンにはじめて彼女ができたようです


首相が変わり、アメリカが戦争を起こして、北朝鮮が核実験をした年。
その年は、どんな間抜けな人間の頭にも残る年だった。

大地震が起きて地方都市が壊滅に近い打撃を受け、日ごろ嫌われてばかりの自衛隊を見直した年。

登山に出かけた高齢者が何人も遭難して亡くなった年。

200x年に僕は一人の女性と出会った。


僕は高校を無事に卒業することができたが、大学の選択を間違えた。
将来はゲームクリエイターになりたかったのに、進んだ大学は私立2ちゃんねる大学。

そこに入ったものは、例外なく同名の会社が運営している一大テーマパークである
「2ちゃんねる」に就職させられることに決まっているのだ。

僕は皮肉にも勉強だけは得意だったから、優秀な成績で大学を卒業し、
誘われるままにテーマパーク内のVIPというところに就職した。



  
43: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 05:54:01.03 ID:jk1Ncj+U0
  
だがそのVIPの管理は大変だった。
実際に管理と調整をしているのはrootという女性だが、もろもろの雑用は僕の仕事だ。

入場者が好き勝手に立てていくスレという名のアトラクション。
それを盛り上げたり、人気のなくなったアトラクションを片付ける。

それだけでも大変だというのに、まろゆきという社長は、僕にさらに仕事を押し付けた。

まろゆき「ブーン君、君にぜひVIPのマスコットキャラクターになってもらいたい」

マスコットキャラクター。僕の頭にはすぐに黒い耳をつけたネズミが浮かんだ。
そのネズミは映画に出演したり、ゲームになったりと大忙しの毎日を送っている。
だがその分、収入もすごいと聞いた。

( ^ω^)(僕もいつかは、あのネズミのように大人気になれるかもしれないお)

そう考えたら、いてもたってもいられなかった。

僕は社長に向かって頭を下げた。

( ^ω^)「ありがとうございますお。がんばって、みんなから好かれるような
マスコットキャラクターになりますお」



  
44: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:00:44.67 ID:jk1Ncj+U0
  
まろゆきの判断は間違っていなかったのだろう。

確かに僕は、VIPに遊びに来るお客さんの間で大人気になった。
僕がスレに顔を出せば、それを一目みようとお客さんが詰め掛ける。

僕は飽きられないように不気味な笑顔を浮かべながら、両手を広げて走り回ったりした。
そのうち、僕を題材にした「ブーン小説」なるスレも立てられるようになり、
印税と出演手当てによって僕は一躍大金持ちの仲間入りをした。

たしかに遊んで暮らせるだけの金は手に入れた。
会社の上司に狐といわれる大御所がいて、彼は特にVIPの仕様や決まりを勝手に改造したりと
好き放題なことをやっていた。

僕は彼が嫌いだった。

だけど、僕は仕事をやめようとは思わなくなっていたんだ。
もう一度ゲームクリエイターを目指すという道もあったかもしれない。
それでも僕はVIPを、そして2ちゃんねるを選んだ。

僕はスレを盛り上げつつ、さまざまな雑用に勤しんでいた。
毎日同じことの繰り返し。

だからその日も、いつもどおりの日常だと思っていたんだ。

あるひとつのスレを覗くまでは。



  
46: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:06:51.40 ID:jk1Ncj+U0
  
その日は、いつも以上にお客さんが多かった。
なにか面白いスレが立ったのかもしれない。
だとしたら、そのスレをさらに面白くするために僕は頑張らなくちゃいけないな。
そう考えながら、人だかりの方へ足を向けた。

そこにはひとつの看板が立っていた。

「ブーンが好きで好きで仕方がありません」

その後ろで口を開けている仮設テントの入り口には、長蛇の列ができていた。
僕はじゃれついてくる厨房どもを押しのけながら、テントの入り口をくぐる。

テントの中はなにもなかった。

ただ奥に机を並べただけの貧相なステージが設置されており、その上にマイクをもった女性が立っているだけだ。

周りに集まったお客たちの口から、さまざまな煽りの言葉が聞こえてくる。



  
47: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:12:54.77 ID:jk1Ncj+U0
  
「きめぇwwwwwwwwwwwwwww」
「ちょwwwwwおまwwwwいくらなんでもブーンはねーよwwwwwwwww」
「メンヘラ乙」

だが女性は煽りの声に負けず劣らずの大声で、自分の想いを吐き出していた。

「ブーンが好きで好きでたまりません。いまのあたしには、寝ても覚めてもブーンのことしか考えられないんです」

不細工な女性だった。太った締りのない体に、にきびだらけの顔。
目は小さく、鼻が大きい。厚すぎるぽっちゃりした唇は、見ていて可哀想になるほど醜かった。

顔のパーツもまるでだめだし、まごうことないピザ体系。

僕がそう思ったってことは、他のお客さんもそう思っているということだ。
それを証明するように、人ごみから次々と罵声が飛び出してくる。

「ピザが調子にのってんなよwwwwwwwwwwwww」
「やばいって。マジでこいつ頭いかれてんな」
「死ね。氏ねじゃなくて死ね」



  
49: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:17:36.96 ID:jk1Ncj+U0
  
聞くに堪えない罵詈雑言の荒らし。
ブーンはこのまま削除依頼を出しにいこうと後ろを向いたが、次に聞こえてきた声に思わず体が反応してしまった。

「まあブーンもピザだし、お似合いなんじゃね?」

ピザ? まあピザってのは百歩譲っていいとしよう。
だがお似合いじゃね? は言い過ぎだろう……常識的に考えて……

「あるあるwwwwwww」
「ねーあるあるwwwww」

観客たちから同士を示す言葉が次々とあふれてきた。
このままではまずいな。

誰かが僕のことに気づくだろう。
そしていまのスレの空気から考えれば、僕と壇上のブスをくっつけようとするのは火をみるより明らかだ。

( ^ω^)(このまま逃げるお)

だがその考えにいきつくのが、すこし遅かったようだ。



  
50: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:22:17.32 ID:jk1Ncj+U0
  
「お、ピザの登場だぜwwwwwwww」
「ktkrwwwwwww」
「彼女が壇上で待ってるぞwwはやく迎えにいってやれよwwwww」

客の声に気づいた女性が、大声でブーンの名前を連呼する。

「ブーン、ブーン。きて、ここに、壇上に上がって。あたし、あなたのことが好きなの」

女の告白にあわせるように、人垣から冷やかしの声が次々と上がる。

(#^ω^)(さっきまではブスを叩いてたくせして、もう寝返りかお。
くそが。いくら温厚な俺様だって、キレることはあるんだぜ)

「はやくしろよwwピザwww壇上に上がれww」
「女が待ってんぞ」

(#^ω^)「おまいら落ち着けお。すぐいくからお」

そういって、僕は両手を水平に広げた。



  
51: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:27:05.71 ID:jk1Ncj+U0
  
⊂二二二(#^ω^)二⊃「ブーン」

両手で次々と客を跳ね飛ばしながら、壇上に飛び乗る。
首かな、という考えが頭に浮かんだが、適当なまろゆきのことだから、減給もありえないだろう。

「ブーン!」

ピザが僕に向かって抱きついてきた。

「あなたが好きなの。VIPではじめてみたときからずっと。ずーっと好きだったの。
それからは、もうあなたのことしか考えられなくなっていたんだよ」

だが僕にはrootたんという初恋の女性がいるのだ。

いくらピザ女の真摯な想いをぶつけられようとも、周りの厨房どもが囃し立てても、
それで僕の気持ちが変えられると思ったら間違いだ。

だから僕はいってやった。

(*^ω^)「ぼくにはrootたんがいるんだお! rootたんしか見えないんだお!」



  
52: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:32:04.08 ID:jk1Ncj+U0
  
rootたんにはじめて出会ったのは、2ちゃんねる大学の講義室でだった。
彼女は講師として、僕は大勢いる中の目立たない生徒として。
それがはじめての出会いだった。

僕はrootたんに一目ぼれしていた。
彼女は美しかった。
知的なまなざしに、可愛らしい声。
いっていることはまるで理解できなかったが、それでも僕は彼女の講義をとり続けた。

そして、その日がやってきた。

ただの生徒と講師の距離が一気に縮まった日。

僕は大学の敷地内を迷っていた。
まろゆきに呼び出されたのはいいが、2ちゃんねる大学はテーマパークである
2ちゃんねると同じ敷地内にあるため、非常に複雑な構造をしていた。

( ^ω^)「あっちがキャラネタ板だから、運営はもっとこっちだったかお」



  
56: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:39:32.17 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「お、運営の看板が見えたお。ということは、あれが運営板の入りぐ」

僕はそこで思わず声を失った。
運営板の、マホガニーで作られた重厚そうな扉を開けて出てきたのは、紛れもないrootたんだった。

(*^ω^)(おっおっ、休講の日にまで会えるとはお。これはもう運命じゃないかお)

rootたんは片手に種類の詰まったファイルケースを、もう片方の手には重そうなHDを抱えて階段を下りてきた。
彼女の細い腕では巨大なHDは支えきれないだろう。
実際、そのとおりだった。rootたんは体勢を崩して階段から転げ落ちそうになった。

⊂二二二(;^ω^)二⊃「危ないお」

僕は全力で階段を駆け上がり、rootたんを支えようと手を伸ばす。
手は脂汗でぎとぎとになっていたが、なんとかrootたんを掴まえることができた。

「ありがとう。HDが想像以上に重くてさ」

そういって恥ずかしそうに笑う彼女を見て、僕はこれで彼女との距離が縮まったと思った。



  
57: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:42:58.57 ID:jk1Ncj+U0
  
そう思ったのだ。だから僕はピザ女にいってやった。

(*^ω^)「ぼくにはrootたんがいるんだお! rootたんしか見えないんだお!」

周りが急にしんと静まり返った。

(*^ω^)(おっおっおっ。人気マスコットとメンテナンス係の関係に、ため息も出ないかお?)

僕は自信気に客のほうを振り向いた。
客はみんな壇上に背を向けている。

なんだ? なにをみているんだ?

僕は客の視線を追って、一人の女性と目があった。

手で口元を押さえて、目を見開いている女性の姿。

それは紛れもなくrootたんだった。



  
59: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:48:29.90 ID:jk1Ncj+U0
  
「えっと……」

rootたんは、その場にいる全員の視線を受けて、恥ずかしそうに口を開く。

「私は付き合っている人がいるんですけど……その……」


付き合っている人。そうだ、いってやれ。僕と付き合っていることを。
あれ。でもおかしいぞ。僕とrootたんって本当に付き合ってたんだっけ?
僕は告白してないし、向こうから告白された覚えもない。
あれれ〜。

(;^ω^)(おっおっ)

僕の勘違いだったのかお。

rootたんから僕にうつった全員の視線を受けながら、僕はその場に崩れ落ちた。

こうして僕の淡い初恋は幕を閉じた。
でもいまは新しい彼女がいるんだ。

ツンっていうんだけど、これが「あたしはあんたの彼女なんかじゃないわよ」って平気でいうんだよね。
それがまた可愛いんだけど。


( ^ω^)ブーンにはじめて彼女ができたようです、改め、ブーンは勘違いをしていたようです:おしまい



  
60: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 06:50:19.76 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「僕の淡い初恋の話も書き終えたし、飯でも食ってくるお」

( ^ω^)「僕のエピソードを覚えている人がいたら、教えてほしいお」

( ^ω^)「聞いたら多分思い出すと思うんだお」



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