( ^ω^)ブーンが自伝を書くようです

  
93: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 08:37:05.73 ID:jk1Ncj+U0
  
食事を終え、代金をカードで払うブーンの背後に立ちながら、あたしはこの先の展開を何度も検証してみる。

酔っ払ったふりをして、ブーンに部屋を取ってきてもらう。
ξ゚听)ξ(ありきたりかな)

素直に一緒に泊まろうと誘う。
ξ゚听)ξ(いくら親友の妻とはいえ、オーケーするはずないか)

いくら考えてもうまい手が思いつかない。

結局あたしが出した結論は、一番最初に考えた案だ。
そしてあとは色気でカバーすればいい。

自慢じゃないけれど、あたしは小さい頃からモテていた。
愛らしい外見をもっていたから、あとはつんつんしている自分の本性を隠して、
大人しくて純情そうな少女を装えば、たいていの望みは叶えられた。

( ^ω^)「よし。それじゃ帰るかお」

そういって振り返ったブーンめがけて、無造作に体を押し付ける。



  
94: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 08:40:38.90 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「おっと、大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ(ここで胸に顔をうずめてっと)

ξ゚听)ξ「ん〜。今日は帰りたくない〜」

自分で想像していた以上に甘ったるい猫なで声が、口から飛び出した。
ちょっとやりすぎたかとも思ったが、どうやら功を制したらしい。

(*^ω^)「おっおっ、そんなこといわれても困るお。
親友の嫁さんとはいえ、朝帰りをさせるわけにはいかないお」

満更でもなさそうな声でブーンがいう。
ここまでは成功だ。

あたしはそこでさらに体勢を崩してみた。

ブーンがあわててあたしの体を支える。

このときに胸を押し当てるのも忘れない。



  
96: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 08:45:16.11 ID:jk1Ncj+U0
  
そして得意の上目遣いだ。
すこしすねたような表情と、お酒でほんのりと赤く染まった頬があいまって、
あたしの上目遣いはそれなりの効果をそうしたようだ。

ξ゚听)ξ(ここでもう一押しかな?)

ξ゚听)ξ「ね、このホテルの部屋があいてないか、聞いてみてくれない?」
( ^ω^)「おま、それはさすがに……」

ξ゚听)ξ(ここですこし引いたほうがいいかも)

ξ゚听)ξ「別にブーンと一緒に泊まるわけじゃないんだから、いいでしょ?」
( ^ω^)「あうあう、それはそうだけどお」

ξ゚听)ξ(ここで酒乱を演出。なんか楽しくなってきちゃった)

ξ゚听)ξ「あれ〜? もしかして期待してたとか? もー。あたしはドックンのものなんだから駄目だよ?」
( ^ω^)「わかってるお」

ξ゚听)ξ(あれ、やりすぎたかな)



  
102: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:05:37.93 ID:jk1Ncj+U0
  
だがブーンは予約を確認しにフロントへ向かってくれたようだ。

レストランの待合室でしばらく待っていると、ブーンがすぐに戻ってきた。

( ^ω^)「なんとか部屋がとれたお。一階下の1035号屋だお」

ξ゚听)ξ「ありがと」

ξ゚听)ξ(おっと、もっと酔っ払ってる振りをしとかないと)

ξ゚听)ξ「ん。体がいうことをききまっせん! ブーンちょっと部屋まで担いでってよ」
( ^ω^)「はいはい。ほら、背中に乗れお」
ξ゚听)ξ「ありがっと」

それから部屋の前につくまで、わざとらしい会話をしつつブーンの耳に息をふきかけ続けた。

( ^ω^)「ついたお。自分で部屋には入れお?」



  
104: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:10:20.18 ID:jk1Ncj+U0
  
ξ゚听)ξ「そういわれても困るよ。ねえ、ベッドまで連れてってよ」
( ^ω^)「それはできないお。女性の部屋には入れないお。それも二人きりのときは」

そういわれても、こちらが困るんだ。

ξ゚听)ξ「ねえ、あたしのことどう思ってる?」

ブーンの怪訝そうな表情に笑みを返す。

ξ゚听)ξ「別にあたしとやりたいなんて思ってないでしょ?」
( ^ω^)「もちろん、思ってなんかないお!」
ξ゚听)ξ「だったらいいじゃない。あたし眠いの。このまま廊下で眠っていいの?」
( ^ω^)「そんなこといわれても」

困るのはわかってる。でもこのまま部屋にはいってもらわなきゃ、あたしが困る。

あたしが目をつむって寝そうな振りをすると、ブーンはやれやれといった体であたしの体を持ち上げた。



  
106: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:14:53.38 ID:jk1Ncj+U0
  
ブーンは妙にかしこまった顔つきのまま、あたしをベッドにおろした。
そのまま引き上げようとしたので、首に回した手に力をこめた。

( ^ω^)「離してくれお」
ξ゚听)ξ「やだ。一人で寝るのなんて久しぶりだから、あたしが寝るまでここにいてくれない?」

ブーンはさらに困った顔を見せた。
ベッドの横、あたしの背後にある窓をみつめながら、ブーンは思考にふけっている。

ξ゚听)ξ「別にあたしとやりたいなんて思ってないでしょ?」

という先ほど打っておいた布石が、ここで功を奏す。

ブーンは諦めたようにベッドの近くまで椅子を引きずってきて、そこに腰掛けた。

あと一つ願いを聞いてもらえば、どうにかなるだろう。



  
108: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:18:41.91 ID:jk1Ncj+U0
  
だが先を急いで失敗してはどうしようもない。
しばらく目をつむって、時期が来るのを待った。

あたしが寝たとブーンが思ってしまえば、部屋から出て行ってしまうだろう。
そう考えさせないために、さりげなくブーンの手を握った。

ブーンはもう反抗する気力もないようだ。
やはり諦めた様子で、あたしのすることを受け入れている。

ξ゚听)ξ(もういいかな)

ブーンはじっと足元に視線を落としたまま、微動だにしない。
いい兆候だ。ここであたしはわざと握った手の力を抜いた。
ベッドからはみ出したあたしの腕が、そっと床に触れる。

ブーンが立ち上がって部屋の入り口に向かおうとした。



  
109: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:22:41.55 ID:jk1Ncj+U0
  
あたしはさっと起き上がると、後ろからブーンに抱きついた。

( ^ω^)「な、なんだお急に」
ξ゚听)ξ「寂しいの。帰らないでよ」

ブーンの意識があたしに向いたのを感じる。

( ^ω^)「どうしたんだお。今日のお前は朝から様子がおかしかったお」

そう、朝からあたしの作戦ははじまっていた。

ホテルを出て、会社に向かうまでの電車の中で、あたしは考えた。

もっと浮気をしよう、と。

なぜ浮気をしようとしたのかはわからない。
浮気をしてなにが変わるのかもわからない。

ドクオの意識をもっとあたしに向けさせるため?

もっとあたしのことを気にしてほしいから?

わからない。わからないけど、浮気を続けていればなにかが変わるような気がして。



  
110: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:27:02.50 ID:jk1Ncj+U0
  
昨夜のことは覚えていないが、不倫をしたのは確かだろう。
それも、見知らぬ初対面の男性と。

どこで出会ったのか。どちらから誘ったのか。相手の顔さえ思い出せない。

日々の生活に倦んでいるのは、主婦だけじゃないかもしれない。女だけじゃないかもしれない。

朝早く起きて、朝食を作って、洗濯をして、夫を送り出して、掃除をして、テレビを見て、
洗濯物を取り込んで、夕食を作って。

これが主婦の生活だとしたら、外で働いている夫の生活はもっと単純かもしれない。

妻が作ってくれた朝食をとって、出社して、定時まで仕事をして、上司に嫌味をいわれて、
部下からは疎まれて、そして残業もして。

どちらの生活も変わりはないのに、主婦は夫を、夫は妻を羨んでいる。



  
112: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:30:55.78 ID:jk1Ncj+U0
  
そしてその妬みが抑えきれなくなったとき、浮気をしたり、喧嘩をしたり、情緒不安定になってみたりする。

そうして同じことの繰り返しで生きていくのが人生だ。

だからこそ、あたしは浮気をしたのかもしれない。
たとえそれが無意識のうちだったとしても。

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ξ゚听)ξ「あたしは女なんだから、ちょっとは考えて残業させなさいよね」

これがあたしの考えだったが、同僚のブーンからいわせれば、この考えは間違っているらしい。

( ^ω^)「男尊女卑をなくしたのが、この会社のシステムだと思うお。
性別の境をなくした雇用に、男女関係なく仕事を与えている。
だから女性の役員もいっぱいいるし、お茶組だって一番の下っ端がやってるお」

つまり、性別にかかわらずに出世ができる代わりに、女性にも残業をさせているのだという。
これがツンにはわからなかった。
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だが、いまならわかる気がする。

男も女も関係ないのだ。性別など気にしなくても、どちらも同じ人間だ。
だから、同じように残業させ、同じように働かせる。

そしてそれに不満をもっているなら、主婦をすればいい。



  
113: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:36:36.58 ID:jk1Ncj+U0
  
ξ゚听)ξ(できることを精一杯やればいい。男のように働けるなら社会へ出る。
働けないなら、家庭に入る。そんな単純な話だったんだね)

ブーンはあたしに抱きつかれたまま、身動きひとつしない。

浮気をするなら、相手は選ばないと。
そう考えたあたしは、その相手にブーンを選んだ。
性病を持っているような気配はなかったし、乱暴もしなさそうだし。

ξ゚听)ξ「ブーン、抱いて?」

これがあたしの最後の願い。
受け入れてもらば、なにかが変わると思う。

くせになって不倫を続けるかもしれないし、これっきりでやめるかもしれない。

ブーンは黙ったまま、入り口のほうを見つめている。

あたしはスーツを脱ぎ始めた。
胸が高鳴り、脈拍がはやくなる。
呼吸が苦しくなって、頭がのぼせたように朦朧としていく。

体が熱いよ、ねえドクオ。
いまなにしてるの? もう寝てる? それとも、あたしの帰りを待っててくれてるのかな?

でもあたしは今日も帰れそうにないよ。



  
115: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:40:51.23 ID:jk1Ncj+U0
  
ξ゚听)ξ「ねえブーン」

あたしが裸になったのは気配でわかるはずなのに。
ブーンはこちらを振り向きもしない。

あたしは裸の胸をおしつけた。
ブーンの体が一瞬痙攣したように震える。

ξ゚听)ξ「ねえ」
( ^ω^)「だめだお!」

腹のそこから搾り出したような苦しげな声。
その声を聞いて、あたしは安心した。
ブーンは耐えているんだ。それはつまり、あたしを抱きたいって思ってるってことだよね。

だけど、ブーンの意思は強固なようだ。

あたしは美人だ。胸は小さいし、足も腕も余分な肉はついていない。
魅力に欠ける体だと自分でも思う。だけど、スタイルはいいはずだ。



  
116: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 09:44:10.78 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「だめだお。だめだめだめ、だめなんだお」

ブーンがこちらを振り向いた。
その顔は言葉通り鬼の形相といった感じだ。

ξ゚听)ξ「ブーン?」
( ^ω^)「ふざけるなお! お前は、ツンはドクオを愛してるんだお? 好きなんだお?」

考えるまもなくうなずき返した。

好き。ブーンも好きだけど、ドクオのほうが好き。
ドクオのいない生活なんて考えられない。

( ^ω^)「だったら、はやく家に帰れお! ドクオはまだ起きてツンを待ってるんだお」
ξ゚听)ξ「え?」



  
122: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 10:01:39.34 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「フロントにいったときにドクオに電話したんだお。ドクオは、ドクオはすぐに電話に出たお。
ツンと一緒にいるっていったら、そうか、って安心したような声でそういったんだお。
それなのにお前は、なにをやってるんだお。自分でなにをしてるか、わかってるのかお」

それだけ一息で言い切ると、ブーンは荒く息を吐き出した。
肩が小刻みに震えている。いや、肩だけじゃなく、全身が。


( ^ω^)「そこで僕の登場だお。完全に孤立しているドクオ君を、クラスでも人気者だった僕が
さっと手を差し伸べたんだお。そしたら、あっという間にドクオの疑いも晴れて一件落着だおだお」


レストランで、ブーンはそういった。
ただの見栄張り、もしくはギャグのつもりだと思っていた。
だけど、いまのブーンを見れば、その言葉が本当なんだと思える。

ブーンは本気でドクオのことを心配しているんだ。
まるで自分のことのように。



  
124: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 10:08:08.95 ID:jk1Ncj+U0
  
嬉しい反面、ならどうしてあたしのことも同じように想ってくれないの?という考えが沸いてくる。

( ^ω^)「ツン」

先ほどとは打って変わった、優しく諭すような声。

その声音といい、哀しそうな顔といい、すべてがあたしに気に障る。

ξ゚听)ξ「……る、のよ」
( ^ω^)「ツン?」

ξ゚听)ξ「う、うるさいっていってるでしょ?!」

久しぶりに出した。大きな声。おなかの底から搾り出すような、必死な声。
怒鳴っているのに、なんでこんなに哀しく聞こえるんだろ。

( ^ω^)「ツン」
ξ゚听)ξ「うるさいっていってるでしょ。結局あんたもあれよ、男尊女卑肯定派なんでしょ。
あんたの親友のドクオを家庭に追いやっておいて、あたしがのうのうと仕事しているのが気に入らないんでしょ?
ねえ、なんなの? そうやって自分のことばかり考えてる男って最低よ、最低。
そんなにドクオのことが好きなら、とっととドクオのところにでもいったら?
あたしのことはもうほうっておいてよ」



  
126: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 10:13:13.69 ID:jk1Ncj+U0
  
部屋に乾いた音が響いた。
頬が熱い。あたし、ぶたれたんだ。

( ^ω^)「もう、いいお。ドクオからは僕から話す。
お前はしばらくここに泊まっていろお。会社のほうにも僕から伝えておくお」
ξ゚听)ξ「痛いわね。なんなのよ、あんた何様?
僕から伝えておくって、あんたはあたしのなんなわけ?
関係ないんだから、ほうっておいてよ」

ブーンはあたしに構わずに、部屋の入り口に向かった。

あたしはその背中に思いっきりぶつける言葉を捜したが、あたしの中にはなにも残っていなかった。

ゆっくりとドアが閉まる寸前に、ブーンがぼそっとなにかを呟いた。

ξ゚听)ξ「え?」



「僕が会社でいったことがわかるようになったら、会社に出ておいでお」



  
128: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 10:16:43.25 ID:jk1Ncj+U0
  
急に静まりかえった部屋の中央に座りながら、そっと目を瞑ってみる。

浮かんでくるのは、ブーンの言葉。ブーンの顔。

そして、ドクオ。ドクオが微笑んでいる。
出会ったときのままの優しいドクオ。

高校のとき、ドクオが涙ぐみながら叫んだ言葉。

それが頭で何度も再生されていく。

ああ、その言葉が、ドクオなんだ。
その言葉がドクオのすべてなんだ。

あたし、なんでこんなことしてたんだろ。



寒いよ。裸だからかな。ねえ、ドクオ。好きだよ


ξ゚听)ξツンは不倫をしているようです:おしまい



  
129: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 10:19:29.64 ID:jk1Ncj+U0
  
( ^ω^)「どうだお? 自信作だお」

61「あの、この話と、俺が出した手紙のどこに関連性が?」

( ^ω^)「うるせーお」


( ^ω^)「次は>>63のおかげで思い出した、ショボンの話だお」

( ^ω^)「>>123のリクエストも一緒に交えるお」



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