( ^ω^)“ブーン”が閉じ込められたようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:12:35.53 ID:1hBgerNc0
    


かり、かりかりかり。


(  ω )「う…あ……」


 混濁した、意識の中で突然目がさめた。
 きりきり、かりかり、がりがり、と、
 故障寸前のハードディスクのように頭が痛む。 

 

きりきりきりきりきりきりきりきり。
 鋭い痛みが今まで得てきた何かを削る。

 かりかりかりかりかりかりかり。
 鈍い痛みがずっと錆付いていた何かを動かす。


 狂ったほうへ。狂ったほうへ。




        ―――――( ^ω^)“ブーン”が閉じ込められたようです



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:13:39.60 ID:1hBgerNc0
  

 鋭い痛みの中で、目が覚めた。
 鉛の中にいるように、体が重い。


( ^ω^)「う…ナンだ…一体ここは何処ナンなんだ…?」


 最初に見えたのは頼りなくともった裸電球で、
 しんしんと辺りを仄かに灯していた。

 驚くほどに、空虚な空間。



 起き上がろうとすると、
 頭だけでなくギシギシと体が痛む。



 長時間、寝ていたのだろうか。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:14:05.25 ID:1hBgerNc0
    

( ^ω^) 「ナンだナンだ…どういう事だ?」




 痛みに耐え、あたりをキョロキョロと見回してみると、
 まわりはコンクリートでできた部屋のようだった。


 壁際にかけられている、
 無駄に大きな時計だけが目に入った。

 今時めずらしい、はとぽっぽ時計だ。


 電灯があまりに頼りなく、
 どのくらい部屋が広いのかはわからない。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:16:31.02 ID:1hBgerNc0
        
 
( ^ω^)「うう……」


 誰に言うでもなく、言葉を漏らす。
 


 手で体を支えて立ち上がろうとすると、
 地面についた手のひらから、
 地面のゴツゴツとした無慈悲な硬さを感じた。

 「優しさが足りないねぇ、今の日本は」
 不意に亡くなった祖母の言葉を思い出した。
 たしかに、そうだ。

 この硬い地面にも、現代日本にもやさしさが足りない。 
 まったく、理不尽だ。

 骨まで沁みるような冷たさ。

 何故か、ひどく気分が悪い。



( ^ω^)「げぷぷ…吐き気がしてきた。。。。」


 げぷぷ、寝ゲロは禁物である。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:20:49.40 ID:1hBgerNc0
   


 終の栖になるかもと、
 予感させる、そのやさしさが足りない部屋は、
 四面がざらざらとしたコンクリートの壁で囲まれ、

 その上に同じような殺風景な天井が被せられ、
 部屋の中を冥いものにしていた。


( ^ω^)「まるで牢獄のやうだなあ」


 無機質で、汚らしい風景に、
 うーん、と一捻りすると電灯以外の光源が目に入った。


 唯一ある、小さな小窓からは、
 暗く重い色のした雲と怪しく光る月が見え、
 今は夜である事を、教えてくれている。


 部屋は、やはりそれほど広くないやうだ。
 現代風にいうと1Kくらいだろう、家賃でいうと6万だろうか、大金だ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:23:53.89 ID:1hBgerNc0
    

 まったく状況が飲み込めない。
 何故此処にいるのか、というか此処はどこなのだろうか。

 きりきりと痛む頭を押さえ、考えてみるものの、
 霧の中でジクソーパズルに挑むような無意味な感覚に囚われる。

 それに。。。。
 いつもより体が重いやうな。。。それになんか視点も高く。。。?


( ^ω^)「やや、あそこにあるのは!」


 そこまで思考を進めたとき
 ふと、部屋の隅に洗面台があるのが見えた。
 
 壁にはカガミもかかっている。
 丁度いい、喉が渇いていたところだ。

 彼はニヤリと笑うと、洗面台に走り寄った。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:25:16.05 ID:1hBgerNc0
   
     

( ^ω^)「おうふおふう、うましうまし」


 幸いにも、蛇口からは水が出てくれた。

 赤錆の味が、ひどくしたが、
 喉の渇きを癒し、頭を少し冷静にさせた。


 がぶがぶがぶ
 水を飲む。

 がぶがぶがぶ。
 彼には水以外目に映らない。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:34:20.32 ID:1hBgerNc0
    

 水を飲み終わった彼は、驚愕した。
 いや、驚愕というには、少しヌルいかもしれない。

 鳩が豆鉄砲を食らった、ではなく
 鳩が戦闘力53万の方からデスボールを食らった。
 その方が適切かと思われる。

 もっとも、彼はそんなに感情を表に出すほうではないので。
 「それはちょっと、おおげさじゃないかあ?」と言う意見がでるかもしれないが

 ともかく、彼はそれほど驚いた。


( ^ω^)「はて…これは…どういう……?」

 鏡に映る、水を金玉唇の端から垂らす
 だらしのない、ニヤけた顔。
 小太りの体、つるつるの頭。
 

( ^ω^)「こいつは…だれだ…?」

 いや、正確には、知っている。
 だが、こいつは僕ではない、ありえない。

( ^ω^)「ブーン…?ブーンなのか…?」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:44:07.11 ID:1hBgerNc0
        

( ^ω^)「いや、まて僕はブーンではない」


 徳川将軍の名前を3代くらいしか自信を持っていえない彼も
 それだけは、自信をもっていえた。

( ^ω^)「そうだ……僕はAAなどではない」



 決して多くはないが、友達にも恵まれ。
 実を結んだことはないが、幼馴染に密かに恋心を抱く
 勉強もスポーツも普通のどこにでもいる高校生のはずだ。


( ^ω^)「そうだ……僕はけっしてAAなんかじゃない」
 

 オタクとバカにされるから、友人には黙っているが
 ニュー速VIPのパートスレの一部である
 “ブーン系小説”という書き物の世界に魅了され
 
 それで、恋愛小説を多く書いてきた、それだけの、人間だ。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:52:58.34 ID:1hBgerNc0
        

( ^ω^)「なのに、なんだこの現実は?」


 カガミに映る自分の姿を否定するかのように、
 ペタペタ、と自分の顔を触って確認する。

 ぷにぷにした、金玉唇。
 ニヤけた、どこか狂気を孕む細い目。
 ぷっくりとした輪郭。

 ブーンだ。ブーンだ。ブーンだ。
 ブーンだ。ブーンだ。間違いない。愛をもって接してきた僕にはわかる。

 自分がいままで、小説で使ってきたブーンに
 自分がなっている、いや、自分の魂がブーンに乗り移ったといったほうがしっくりとくる。
 整形や、姿を似せたなんてもんじゃない
 AAのブーンになってしまっている。

 だからこそありえない、
 ありえちゃいけない。

 ブーンや、他のAAたちに
 物語を与え、演じさせてきた、作者のぼくが
 あろうことか、ブーンになっている。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 21:58:44.08 ID:1hBgerNc0
     

( ^ω^)「ありえない、ありえない……」


 理解不能な状況に体中の血液が一気に降下し、
 めまいを起こしかけたがなんとか耐える。

 何故だ、何故僕なんだ。

 たまたまアルファベットで戦うようですのスレを開き、心奪われ。
 その勢いで総合案内所に出向き
 そのまま“ブーン系”にノメりこんだ、ただの一作者じゃないか。

 恋愛物やほのぼのを得意とし、
 それほど有名でも、スレを伸ばしたりもしないが
 たまにファンから絵を貰い、まとめてもらい、一人満足感に浸っていた、ただの一作者じゃないか。


( ^ω^)「ありえない、ありえない……」
 

 思考を進めようとしたとき、
 カチカチという時計のおいかけっこ音が耳に入った。
 ズキリ、それにあわせ頭がまた音を立てた。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:01:02.56 ID:1hBgerNc0
     

( ^ω^)「これは一体…どういう……」

 奇妙な感覚が、
 肌にぬとりとまとわりつく


 カチッカチッカチ……
 長針が、短針を追いかけている。
 思考は止まらない。


 カチッカチッカチ……
 長針が、短針を追いかけている。
 思考が定まらない。


 奇妙な感覚が、
 体内まで浸透してくる。

 カチッカチカチ
 長針が短針に追いついた
 時計から、ポッポッと鳩が飛びだしてくる。


 その時、バタンッ と音が部屋に響いた。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:13:05.01 ID:1hBgerNc0
     
( <●><●>)「ほう、もうお目覚めでしたか」

( ^ω^)「キミ…は…?」

 ぬるり、と思考の沼におぼれかけた時
 後方から人の声が聞こえた。
 扉があったのか、いまさらながら気づく。
 

( <●><●>)「私は私ですよ、ご存知でしょう?」

( ^ω^)「……僕が言っているのは、そういう事じゃぁない」

     「確かに、僕はキミがワカッテマスという名のAAであるという事は知っているし」
     「使ったこともある、性質も作品で使う際の使い勝手もわかっているつもりだ」

     「だが」
     「目の前にいる君は、僕が知っているワカッテマスと別人だろう
     僕は、ブーン系の作者として、AAである君を扱う術を知っているにすぎない」
     「自由意志の元に動く、君はどういった人物なのかも知らないのだ」

( <●><●>)「ふうむ…」
       「ズイブンと」「難しいことをお考えのようですね」

 そのやさしさが足りない部屋に似合わない
 漆黒のスーツを着ている彼はぽりぽりと頭を書くと、更に言葉を続けた。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:23:31.15 ID:1hBgerNc0
       

( <●><●>)「ですが本当に聞きたいのは」
       「そういう事じゃ、ないんでしょう?」「わかってます」

( ^ω^)「……」

 目の前にいるワカッテマスも、
 自分が知っているワカッテマスのように、
 わかってますが決め台詞らしく、少し安堵する。


( <●><●>)「此処はいったい何処なのか?」
       「何故ブーンの姿に」「何故自分がAAに」
       「そういった事を、お聞きになりたいんでしょう?」
       「わかってます」「わかってます」
       「私には、わかってます」


( ^ω^)「ならさっさと…」


( <^><^>)ニコリ


( ^ω^)そ



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:24:47.40 ID:1hBgerNc0
          

( <●><●>)「先生、そうお急ぎにならないでください」
       「物事には、なんにしろ、順序がある」「そうでしょ?」
       「仮にも、物書きである先生にはわかっているはずです」「わかってます」



( <●><●>)「先生、疑問文を疑問文で返すようで」
       「悪いのですが」
       「一つ、質問いいですか?」


( ^ω^)「どうぞ…」

 やはり自分の知ってるワカッテマスとは違うのかな
 そう思いながら、返答をした。

 ふわふわとした、
 現実味のない奇妙な感覚には、もう慣れていた。


( <●><●>)「先生」「先生にとって」
        「ブーン小説とは、なんですか?」


( ^ω^)「ブーン小説とは…?」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:40:29.45 ID:1hBgerNc0
        

( ^ω^)「自分を試す場、かな」

( <●><●>)「ほう?」

( ^ω^)「元々、ぼくはマンガが好きで漫画家になりたかった」

( ^ω^)「でも、そんな一か八かのバクチを打つ胆力は僕にはなかったし
      何より絵がかけなかった、書こうとする努力もしなかったしね」

( ^ω^)「よって、僕は文字を書くしかなかった」
      「それで、ぼくの妄想が本当におもしろいものなのかどうか」
      「試すために、ブーン系作者になった」「反応がすぐ返ってくるし」

      「何より、色々あるけど、基本的にぼくはブーン小説って、
       面白いが正義を体現してる場だと思っているしね」


( <●><●>)「面白ければ、有名作者という結果に繋がると?」


( ^ω^)「そうだね、他の読み物に比べると、実力の比率が高いと思うよ
      ぬるい馴れ合いがあるには、あるけど
      面白くなければ、すぐ叩かれる
      面白ければ、賞賛され、まとめられ、有名になっていく
      実に、わかりやすくて、僕はすきだな」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:43:04.52 ID:1hBgerNc0
      

( <●><●>)「ふうむ」「やはり、いろんな考えがあるのですね」
       「あっ、いや、否定している訳ではないのです」
       「それでいい」「それもいい」

( <●><●>)「ですが先生」「私は、こう思うのです」
       「ブーン系とは、“麻薬”のやうなものではないかと」

       「たとえ、スレが1000までイっても」
       「たとえ、大御所作家と呼ばれるほど有名作家になっても」
       「しょせん、雲の霞のやうなものです」
       
       「なんにもならない」「なるわけがない」
       「非常に限定された電脳のステータスなんて、無価値ですよ」
       「万が一出版される事を考えたら、ケータイ小説でも書いていたほうが有意義です」

       「だけど、作者はみな、勉強する時間を寝る時間を、遊ぶ時間を」
       「ありとあらゆる時間を削り」「作品を書く、または雑談する」
       「なあんにも、なりゃしない、のにね」「麻薬ですよ、これはもう」

 

( ^ω^)「麻薬…?」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:45:51.68 ID:1hBgerNc0
    

( <●><●>)「 はい、そうです
        ブーン小説小説とは、麻薬なのです」



( <●><●>) 「音楽や演説などと違い、さあ、やるぞという革命には至らない
        いい小説とは、じんわりとその人の思考にしみこみとける麻薬なのです」
        「バカな市民たちには、麻薬でちょうどイイ」
        「革命はいらないのです」

( ^ω^)「はあ」 「ナルホド」 
      「そうですか…」

( <●><●>)「私もなあんの計画も無しに作者である先生を監禁した訳じゃありません」
       「先生は、いい物を書きます」
       「ですが、最近筆が止まってしたね?」


( ^ω^)「……」

 ぼくの口が、とまった。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:50:48.69 ID:1hBgerNc0
     

 たしかに、そうだ。

 僕はブーン小説の世界に身をおいてからというもの
 異常なスピードで作品を書いてきた。

 本当なら、沸いても、そのまま風化させるしかない
 自分の妄想が、他者に読まれ、認められ、時に叩かれ、評価される。


 ここまで熱心になれるものがあったのか、
 と、自分でも驚くほど、ブーン系の世界にのめりこんでいた。

 だが、最近書いた、自分のある新作が
 とある所で叩かれていると知り、筆が進まなくなった。



 ほんとうに、
 ピタリと止んだのだ。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 22:56:44.93 ID:1hBgerNc0
    



 オムライス と言うブーン小説で有名なまとめサイトがある。
 そこに、彼の作品がはじめてまとめられた。

 所謂、ほのぼの作品であった。
 それが、オムライス にまとめられた

 それが、気に障ったらしい。

 某スレ、というところで、散々叩かれた。
 オムライスにふさわしくない、だとか
 ほのぼのなんて、ただの手抜き、だとか
 空気作者のくせに、生意気、だとか
 
 果ては、あんなのまとめるオムライスも、たいした事ないな

 と、まで言う始末。

 此れが、ひどく彼の心を傷つけた。

 彼が前述した通り、ブーン系は面白いが正義を体現している場だと、盲信していたかである。
 このように、嫉妬、妬み、叩ければ、なんでもいい
 そういう、負の面がブーン系にあるとは知らなかった。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 23:01:28.12 ID:1hBgerNc0
     

( ^ω^)「……まあ、そうだ、
      ここんとこ、やる気をなくしていた、事実だよ、認めよう」


( ^ω^)「だが、それがどう関係あるんだ?」

( <●><●>)「関係あるんですよ」「私は貴方にもっとブーン小説を書いてほしい」
       「ここには某スレも」「なあにもありゃしません」
       「さてさて」「此処なら、存分に書けるんじゃぁないですか?」

( ^ω^)「フウム…」


( ^ω^)「つまりナンだ・・・
      きみは私に麻薬のやうな小説をかけというのだな」
      「その為に、ここに呼んだ」「と」「そういう訳なのだな?」


( <●><●>)「……“私”が」「と、いう訳じゃありませんが」
       「ま、おおまかそう考えて頂けたらいいでしょう」



 ワカッテマスがス、と部屋の隅にある机を指差した。
 あそこで、書けという事なのだろうか。

( ^ω^)「フウム…解せんな」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 23:08:27.40 ID:1hBgerNc0
     
( ^ω^)「疑問はたくさんあるが…まあいい」
     「聞きたい事が」「二つある」

( ^ω^)「なぜ僕なのだ?自分で言うのもナンだが」
     「僕よりすぐれた作者はいくらでもいる」

     「そして、なぜ僕はブーンの姿をして、此処にいるんだい?」

( <●><●>)ニィ
 
 緊迫した質問に、
 ワカッテマスが返したのは、微笑みであった。

 その、醜く歪んだ微笑に私は、あっ、という声が、思わず口から洩れそうになるのを、防いだ。
 胃が、粘土の塊りを入れたように重くなっていた。

( ;^ω^)(……)

( <●><●>)

 押し黙った私を大きな目で一瞥すると、
 彼は冷たい微笑みを再度浮かべ、続けた。


( <●><●>)「先生、そうむずかしくかんがえなくてもヨイのです」
       「麻薬だなんて、とんでもない」
        「いい小説を書いてほしいだけなのです、私たちは」



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 23:15:02.24 ID:1hBgerNc0
       
 

 質問には、答えない、という事なのだろうか。
 答えを求める私を軽くいなし、机のほうへ、囃し立てる。


( <●><●>)「ささっ、先生」「先生も本当は、書きたいはずなんです」
       「わかってます」「わかってます」
       「PCは用意できませんでしたが」
       「なあに、心配いりません」「鉛筆とノートを用意しました」

 指差す方には、やはり汚らしい机、
 それとそれの上に載っているノートと鉛筆。

( <●><●>)「存分にお書きください」 
       「そうしたら、答えが見つかるやもしれません」
       「ささっ、邪魔者は消えます」「存分に、存分に…」

( ^ω^)「アッ、待って」

 言葉を残し、消えようとする彼に、
 なんとか一言言い放った。

( <●><●>)「……なにか?」

 行動を封じられたせいか、
 男は不機嫌そうに、こちらを振り返った。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 23:27:54.69 ID:1hBgerNc0
     

( ^ω^)「結局、なんにも答えてくれなかったキミだけど」
     「一つ、わかったことがあるんだ、伝えてもいいかな?」

( <●><●>)「……どうぞ」


( ^ω^)「このスレは、本当は全部僕の書いた物語で、
      そういう物語でしたってオチじゃないかなって、ずっと考えてたんだ」
      「突如AAキャラになるなんて、在り得ないからね」

      「でも、どうやら」「違うやうだ」


( <●><●>)「なぜ、そのような事を?」


( ^ω^)「ぼくは、ワカッテマスが嫌いだからね
      “僕”の設定の“ブーン”を出すのなら
      唯一の登場人物をキミにするわけないじゃないか」
      「大好きなハインにするに、決まってるからね」「きっとそうさ」

      「だから、そういう状況じゃないって事だけは理解できたよ」
      「ありがとう」「ありがとう」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 23:35:24.50 ID:1hBgerNc0
      
( <●><●>)「……面と向かって嫌いといわれたのは、初めてです」


( ^ω^)「だろうね」
      「でも、作者としてAAのワカッテマスが嫌い、それだけの事だよ?」


( <●><●>)「それはわかってます」「わかってます」
        「わかってますが…」

 少し、不機嫌そうな顔をして、
 彼は扉へ向かい、歩いてゆく。


(  )「……でも、なんだか、不愉快です」

 扉を潜りながら
 そういうと、彼はガチャリと扉を閉ざした。
 
 次いで、鍵がしまる音もする、まあ予想通りだ。

( ^ω^)「はは、唯一の僕以外の登場人物を怒らせてしまったやうだ」
      「果たして」「これから」「どうなることやら」

 ポリポリと頭を掻くと、僕は机に向かった。
 何故か、迷いは消えている。

 こうして、奇妙な“僕”な設定の“ブーン”の監禁生活が、はじまったのだ。
 願わくば、よい監禁生活を



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/12/11(木) 23:36:38.10 ID:1hBgerNc0


                                          其の一   了



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