( ФωФ)さとりごころのようです

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 01:49:09.88 ID:/n8W6tLi0
   



  一章 夏風燃ゆる


     二話 砂尾




60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 01:52:24.81 ID:/n8W6tLi0
分雲町の北部に位置する『兄者山』。
その小さい山の中腹に砂尾神社がある。

北東部にある『妹者丘』では温泉がある。
経営に力を入れているため、また町もいい客引きになると考えたため、夜でも結構明るい。
その光は兄者山、さらには砂尾神社まで届き、照らし出す。
朝が早く、それゆえ夜も比較的早いシューにとって、妹者丘は常々不夜城を連想させる。

そして神社自らが出す明かりもある。
石段を照らす光、境内を照らす光、シューの帰りを待つ母屋の光。
光、光、光。

おかげで二人を包み込んでいた闇は洗い流された。
故にお互いの姿を改めて確認できよう。

まずはシュー。
茶と白で編みこまれたニット帽を被り、服装はTシャツに短パン、スニーカー。
ずいぶんラフな格好だが、それに似合わないものを腰に下げている。
バッテンを描く二本の小刀の拵は贔屓目に見ても浮いてるだろう。

シューの隣を歩く男は赤いシャツにデニムのパンツ。
髪は少し短め。
服装はいたってシンプルで筆頭とすべき点は何もない。
特徴的なのは彼のまぶただろう。

lw´‐ _‐ノv「あれ?ロマの目……」

( ФωФ)「ん?」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 01:55:42.69 ID:/n8W6tLi0
シューは男の顔を凝視する。
といっても目を見開くことはない。
ただ、目の光が真剣さを帯びる。

(*ФωФ)「ちょ、顔、顔、ちか、近いって!!」

lw´‐ _‐ノv「……」

シューは男と比べると頭二つ分小さい。
なので両手で男の頭をがっちり固定、力に任せて位置を低くさせる。
そうやって男の目をまじまじと見つめ、男と顔の距離が触れるかどうかというくらい近づいていた。

男があわてているとシューは人差し指で彼の左目に触れようとする。
反射的に左目を閉じる男、それでもいいとシューはまぶたの上から触れる。

(*Фω+)「っっ!!」

lw´‐ _‐ノv「……やっぱり」

シューはまぶたに直角に交わるように縦線を指で描く。
しかしシューは描いたわけではない、ただなぞっただけだ。

lw´‐ _‐ノv「この痣は?」

( Фω+)「痣?……あー、これ?」

シューの行動が何を意味するか分かり、落ち着きを取り戻す。
彼女が指摘しているのは男のまぶたに描かれた縦線の痣のことだ。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 01:59:03.85 ID:/n8W6tLi0
( Фω+)「これは生まれつきだ。気にするほどのものでない」

lw´‐ _‐ノv「ふーん」

男の頭を解放する。
彼は少し残念そうにしたが、シューは気にせず言葉を紡ぐ。

lw´‐ _‐ノv「まあいいや。こっちだよ」

シューは母屋の明かりを目指し始めたので彼も後に続いた。
歩きながらも彼は周囲を見渡す。

神社としてはそれほど大きくはない。
石段や鳥居、参道は古そうだったが、本堂や母屋、鈴鐘はあまり年月を経てないような新しさを感じた。
もしかしたら賽銭箱もそうなのだろうが、生憎、木で作られた箱なので区別がつかない。

そんなことを考えていたが、シューが立ち止まったので彼も倣った。
少女は玄関の戸を引き、空気を吸う。

lw´‐ 0‐ノv「ただいまー」


     「おー、おかえりー!!」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:02:05.53 ID:/n8W6tLi0
奥から声が響き、次いでドタドタと音が聞こえた。
やがて現れたのは一人の女性だった。

ノパ听)「お勤めごくろうさま。
     麦茶作っておいたから好きなだけ飲ん……で……」

元気そうな女性だと男は思った。
ただ、発せられた言葉が尻つぼみになっていったので「あれ?」と疑問を感じた。
彼はシューに視線で尋ねる。
彼女も視線で答える、どうしたんだろうね??

二人揃って再度、女性に目を向ける。
そして気づく。
女性は男を凝視しているのだという事を。

(;ФωФ)「…………何か?」

ノハ;゚听)「あ……あわわわわっ」

女性は顔を赤くして興奮している模様。
その状態がたっぷり五分ほど続いた後で息を胸いっぱいに吸う。

lw;‐ _‐ノv「あ」

シューは何かを感じた。
長年同じ屋根の下で暮らし、同じ血を分けた者としての悪い何かを。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:05:30.56 ID:/n8W6tLi0
  






ノハ*゚听)「シューがっ、ボーイフレンドを連れてきたあああああああああああああああっっ!!!
      やっべ、こうしちゃいられない!!
      すぐ赤飯を炊こう!!
      町内会にも連絡を回さないと!!!
      今日は宴会だ、もう町中の人みんな呼んでパァーといかなきゃっっ!!!!」


(;ФωФ)lw;‐ _‐ノv 「「やめて!」」




男は、シューとハモったのを新鮮に感じながら、頭痛も感じていた。
シュー、君も大変なのだな……。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:08:56.02 ID:/n8W6tLi0
しばらく女性の暴走は止まらなかった。
落ち着きを取り戻し、誤解を正したのがシューとハモってから三十分後。
電話の子機を片手に持つ女性の説得は困難を極めた。
二人としては落ち着いてられなかっただろう。
シューは表情に若干の疲れをみせて一人呟いてた、「町内会は洒落になりませんてば……」

ノハ*゚听)「いやあ、ごめんごめん。
      シューが男を連れてきたのをみて思わず、ね?」

(;ФωФ)「その“ね?”には色んな意味が含まれてるのだろうなぁ……」

lw´‐ _‐ノv「えと、とりあえず紹介するね。
       こっちは私の愛するヒー姉こと砂尾ヒトミ。
       ヒトミは瞳孔のヒトミという字で書く。性格的な問題でヒートって呼ばれてるよ」

ノパ听)「性格的な問題って何だよー?」

lw´‐ _‐ノv「……他人の前で暴走しておいて問題がないとでも?」

ノハ*゚听)「あっはっはっ!!問題大アリかもね!!」

lw´‐ _‐ノv「そしてこちらが今日、とある事情でこの家にきてもらった杉浦ロマ。
       どう書き表すかは分かんない」

(;ФωФ)「え?名前そこで止めちゃうの?」

ノパ听)「のまさん?」

(;ФωФ)「なんですかそのどっかのパクり騒動になったような名前は!?」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:13:43.55 ID:/n8W6tLi0
(;ФωФ)「私の名前は杉浦ロマネスク!!
       杉浦、ロ、マ、ネ、ス、ク、です!!」

男は選挙もかくやといった意気込みで話す。
というか叫ぶ。
今度はちゃんと名前が伝わったらしく、ヒートは笑いながら頷く。

ノハ*゚听)「あははははは!
      分かった分かった、よろしくねロマさん」

ヒートは男に手を差し伸べる。
その手の平を見つめ、彼はため息一つ。

(;ФωФ)「……またロマって呼ばれるのか」

ノハ*゚听)「いーじゃないのっ、そのほうが可愛いんだから」

(;ФωФ)「……姉妹ですね」

ノハ*゚听)「でしょでしょ!?」


互いの手の平が重なり、握手になった。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:18:01.96 ID:/n8W6tLi0
互いの紹介が済んだところで、三人は砂尾家の居間でくつろぐ。
座布団が敷かれ、彼らはその上に座る。
テーブルを挟んで男とヒート、その間になるようにシューが座っている。
そして各々の前にはヒートが作った麦茶が置かれていた。


lw´‐ _‐ノv「……というわけ」

ノパ听)「ふむふむ」

シューは彼と出会ったときの出来事、そしてこの家に連れてきた訳を話す。
全てを話し終えるとヒートはぼんやりと呟く。

ノパ听)「……浄霊の力かぁ」

lw´‐ _‐ノv「ヒー姉はどう思う?」

ノパ听)「凄いとは思うよ。思うけど……」

( ФωФ)「……」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:21:49.26 ID:/n8W6tLi0
先ほど豪快に笑ってたヒートだったが、男の力を聞き、言いよどむ。
男は彼女を見て歯切れの悪さを感じた。
初めて会ったにも関わらず、彼はヒートの性格を理解していた。

( ФωФ)「アッパーなヒートさんにしては珍しいですね」

ノハ*゚听)「お?初対面で私の態度が珍しいと分かっちゃう?
      ロマさんって凄いね!!」

lw´‐ _‐ノv「分かりやすいだけでしょうが」

分かりにくいよりはいいと思いますよ?
二人はシューを見ながら心のなかで呟く。
もし声に出していたら、さきほどのシューと男のようにハモっていただろう。

lw´‐ _‐ノv「ハイハイ、何か言いたそうにこっちを見ないでねお二人さん」

表情を変えず、半ば諦めの色を入れて話すシュー。
バレバレらしい。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:26:01.88 ID:/n8W6tLi0
ノハ*゚听)「ま、今日はもう遅いから明日色々話そうか。
      シューはどの部屋使ってもいいから布団敷いてきて。
      私はロマさんと話しつけとく」

lw´‐ _‐ノv「あいよ」

シューは立ち上がる。
その様子を見て、男はなんとなく理解した。
理解したので言葉にした。

(;ФωФ)「え?私、今日ここでお泊まりですか?」

ノハ*゚听)lw´‐ _‐ノv 「「何をいまさら」」

二人の間では確定事項だったらしい。
流石に悪いと思ったのか、男は必死で弁明する。

(;ФωФ)「私としては宿さえ紹介してもらえればそこへいきますので」

ノハ*゚听)「私、この家しか紹介する気ないんだけど?」

(;ФωФ)「お二人の両親にバレたら殺されそうな気がしますし」

lw´‐ _‐ノv「両親は何年も前に故人してる。バレても許させるから問題ない」

(;ФωФ)「おっと、ご冥福をお祈りします」

ノパ听)「あ、どもども」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:29:55.52 ID:/n8W6tLi0
(;ФωФ)「でも、それならなおさら悪いですよ。
        女二人のところに男がやってきたら……」

ノハ*゚听)「悪くない。全然悪くないよ」

(*ФωФ)「ももももしかしたら、お、おおお、お」

lw´‐ _‐ノv「襲う、ってか?」

ノハ*゚听)「私は一向に構わん!!」

lw´‐ _‐ノv「ヒー姉、ノリで答えないで。
       まあその時は私の刀がハッスルしちゃうだけだから」

ノパ听)「あ、シューが襲われたら私もハッスルするかも。
     怒り狂って滝壺に落とすかもしれないなぁ」

(;+ω+)「……」

男は彼女らの発した物騒な言葉を想像してしまった。
夏の暑さによるものとは違う、気持ち悪い汗が流れる。
彼が沈黙している間にシューは居間を出て、男とヒートは二人きりになった。

男が黙って自身の身を案じているところにヒートは声をかける。

ノパ听)「さて、腹を割って話し合おうか」

先ほどとはうって変わって声に真剣さを帯びさせる。
その変わり様に今度は驚愕の意味で沈黙する。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:33:55.15 ID:/n8W6tLi0
ノパ听)「ロマさんは何歳?仕事は?」

(;ФωФ)「えと、二十歳で大学生やってます」

ノパ听)「ああ、さっきから気になってたけど敬語はいらないから」

男は思う。やっぱり姉妹だな……。
ヒートは構わず続ける。

ノパ听)「となると今は夏休み中か。
     ロマさんは一人暮らし?それとも家族と一緒に暮らしている?」

( ФωФ)「あ、一人暮らししてます」

ノパ听)「そうか。それならさ」

ヒートは言葉を区切る。
まるで次に発する言葉が重要だといわんばかりに。
そして男にとってまさに重要な言葉だった。

ノパ听)「しばらくの間ここで暮らさない?」

(;ФωФ)「…………はあ?」

居間に間抜け声が響いた。



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:37:37.90 ID:/n8W6tLi0
ノパ听)「正直言って貴方の力は役に立つ。
     だから夏休みの間だけでもいいからウツロ退治に協力してほしいんだ。
     嫌なら『なんでてめーのいうことを聞かなきゃいけねえんだバーカ』っていってね」

(;ФωФ)「そんなこといったらシューに殺されるから!!」

思わずつっこみを入れる男。
そして考える。
自分の力について。
自分が居座っている町について。
そして、

ノパ听)「それに」

ヒートの言葉で意識を内から外に向ける。


ノパ听)「貴方は偶然この町に来たわけではないのでしょ?」

(;ФωФ)「??……言ってる意味が分からないのだが?」

男の言葉を聞き、ヒートは少し悲しそうな表情になる。
彼女は天井を見つめ呟く、「そっか、分からないかぁ」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:41:21.03 ID:/n8W6tLi0
ノパ听)「まあ今言ったのはあれだ、“運命”ってやつだ。
     偶然この町にきた男が、偶然ウツロを倒せる力を持っている。
     偶然ウツロに追われ、偶然お勤め中のシューと出会った。
     これは偶然だと思う?」

(;ФωФ)「そう考えると気味が悪いな」

空気が体を締め付けてきた。
気体は肺の中で重く居座り、気温が若干下がったように覚える。
ヒートはそんな雰囲気でも健気に語り続ける。

ノパ听)「この町は他と比べて近いからね。
     だから特異な力を持つ貴方が、この特異な町に引かれて来たかもしれない。
     私は運命的な何かが働いたと考えてるだけど。
     貴方にとって気味悪いだろうけど……何事もプラスで考えといたほうがいいよ」

(;+ω+)「……」



( ФωФ)「そうだな。
        しかしヒートは運命を信じているっていうのは意外だったな」

ノハ*゚听)「言うな!恥ずかしいじゃないの!!」

男は場を和ませるためにヒートをからかう。
彼女は律儀に反応してくれた。
空気が幾分軽くなったところで男は切り出す。

( ФωФ)「いいぞ。ウツロ退治、引き受けよう」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:45:40.26 ID:/n8W6tLi0
      「力強く返事をするロマに、ヒー姉の周りには喜びの空気が満ちた。
       しかし齢二十三にもなる女がこんなに無防備でいいものだろうか?
       個人的な感情を言わせてもらうなら駄目に決まってる。
       そら、彼奴の目を見てみろ。まるで猫化の猛獣を思わせるではないか。
       ロマが舌なめずりをしてヒー姉を見定めている。
       ヒー姉逃げて!お願い逃げて!!
       あ、でもその後の展開をちょっと見てみたいなと思わなくもなかったりして……」

(;ФωФ)「誰が舌なめずりした、誰が!?」

ノハ*゚听)「あらあら、盗み聞きかいな?」

二人が声のする方向を見ると、居間と廊下を仕切るガラス障子の向こうに見知った人影があった。
その仕切りのわずかな隙間にはやはり見知った顔があった。
半分の顔は言う。

| _‐ノv「盗み聞きじゃないよ。
    本当に違うよ。
   ダッシュで敷いて帰ってきたら、入りにくそうだったから」

半分の顔は弁明する。

| _‐ノv「あ、ロマ、ちょっときて。
    部屋案内するから」

| _‐ノvb そ

ノハ*゚听)b そ



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 02:49:48.98 ID:/n8W6tLi0
二人は勢いよく親指を立て、意志の疎通を図っていた。
第六感があれば、二人を繋ぐホットラインみたいなものが見えていたかもしれない。
きっとこんな会話が為されてただろう。
「準備できやしたぜ姉御」「よくやった誉めてつかわす!!」

(;Фω+)「……なんか一瞬、馬鹿な考えがよぎった気がしたが」

ブツブツいいながらも立ち上がる男。
ガラス障子が開けられ、シューの姿があらわになる。
男がその姿に違和感を持ち、凝視すると、彼女の腰に掛けられていた物騒な物二本が消えていた。
おそらく部屋に置いてきたのだろうと彼は思う。
にもかかわらず、家の中でニット帽を脱いでいないのは少しおかしくも感じられた。

lw´‐ _‐ノv「ついてきて」

( ФωФ)「うっす」

それなりに長い廊下を二人で歩く。
長いといっても人が住む家なので、一分もかからない内に足を止める。
薄暗い廊下で立ち止まり、シューは障子を指差す。

lw´‐ _‐ノv「ここがヒー姉の部屋」

( ФωФ)「うん」

lw´‐ _‐ノv「ここが私の部屋」

( ФωФ)「ヒートの隣か。あいわかった」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 03:08:24.24 ID:/n8W6tLi0
lw´‐ _‐ノv「そしてここがロマの部屋」

(;ФωФ)「…………え?」

lw´‐ _‐ノv「不満?」

(;ФωФ)「男としては大歓迎なのですが……女の子の隣部屋はまずくない?」

lw´‐ _‐ノv「相部屋よりはいいと思うけど?」

シューはそれぞれの障子を右から順に指差していった。
ヒート、シュー、そして唯一の男。
つまり彼はシューの隣部屋になったわけだ。

男は戸惑いながらも障子を開け、自分が割り当てられた部屋に入る。
部屋の中には布団が敷かれていた。
ただし、それ以外は何もないところだった。
彼は布団を見て部屋全体を見て……ふと、おかしな点に気づいた。

( ФωФ)「あ……シューさん質問いいですか?」

lw´‐ _‐ノv「うむ、申してみよ」

( ФωФ)「あの襖なんですが」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 03:12:44.61 ID:/n8W6tLi0
男が指差したのは部屋の両脇に存在する襖。
彼は廊下でそれぞれの部屋の間隔を思い出す。
そして部屋の大きさを改めて見たあと、襖に目を向ける。

この間隔だとあの襖の先は……。
男が考えてるところに声が割りこむ。

lw´‐ _‐ノv「ああ、そこ押入れじゃないから。
       私の部屋に直通だから開けるときは一声かけてね」

(;ФωФ)「ちょ、やばくね?」

lw´‐ _‐ノv「やばいの?」

(;ФωФ)「だって私、本当にケダモノになっちゃうかもよ?
        例え十三、四あたりの少女でも襲っちゃうかもよ?」

lw´‐ _‐ノv「……私をどんな目で見てたかよく分かったよ。
       ちなみに私、今年で十六ね。高校生ね。
       身長で判断したね?胸で判断したね?
       刀にする?滝つぼにする?それとも男色寺に寄贈しとく?」

(;+ω+)「ごめんなさい」


厳しい上司も惚れ惚れしてしまうほど、見事な土下座がそこにあった。



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 03:16:35.50 ID:/n8W6tLi0
( +ω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

( +ωФ) チラッ

lw´‐ _‐ノv「……」

(;+ω+) ビクッ ! !

lw´‐ _‐ノv「……はぁぁ」


lw´‐ _‐ノv「もういいから。だから顔をあげなよ」

(;ФωФ)「うん、まあ、ごめん」

lw´‐ _‐ノv「だからいいってば」

男は立ち上がり、シューと向き合う。
彼の視線が幾分下がっているのは、シューの身長が彼より低いだけではないだろう。
彼女は若干、ポーカーフェイスを崩していう。

lw´‐ _‐ノv「年上なんだからしゃんとしなさい」

(;ФωФ)「うん、分かった、しゃんとする」

このときだけシューが男の姉のように見えた。



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 03:20:43.94 ID:/n8W6tLi0
lw´‐ _‐ノv「あとこの廊下の先にトイレとか洗面台とかお風呂があるから。
       もうしばらく待ってくれたら着替え用意できるから。
       着替えもらったらすぐにお風呂入ってね」

再度、廊下に出て説明を受ける。
説明の途中でシューはごめんね、と言った。

lw´‐ _‐ノv「この家には男物の下着がないから。
       服ならなんとかなるんだけどね」

( ФωФ)「それはいいとして、すぐに風呂に入らせてもらっていいのか?」

lw´‐ _‐ノv「君、汗臭いんだよ」

(;ФωФ)「……あー」

lw´‐ _‐ノv「まあさっきまでウツロに追われてたもんね。
       だから着替え用意するまで部屋を好きに使っていいから。
       今、ヒー姉が近くの温泉に買いにいってるからゆっくり待っててね」

そうしてシューは自分の部屋の障子に手をかける。
彼への説明は以上だと行動で示した。
そのまま男はシューの後姿を見つめる。
ニット帽につけられたボンボンが静かに主張している。
そのボンボンが部屋に消える直前で停止する。

lw´‐ _‐ノv「っと、そうそう。
       一つ、どうしても聞きたいことがあったんだ」



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 03:25:22.71 ID:/n8W6tLi0
男は首を傾げたが、とりあえずシューの言葉を待ってみた。
すぐに目的の言葉が彼女の小さな口から発せられた。

lw´‐ _‐ノv「ロマは私が今、何を考えてるか分かる?」

( ФωФ)「??」

彼はその言葉を聞き、頭にクエスチョンマークを浮かべた。
そしてしばらく考えたが、ついに答えは出てこなかった。

( ФωФ)「ポーカーフェイスのシューの考え事なんて分からんよ」

lw´‐ _‐ノv「そう……そうか」

シューは彼の言葉にぼんやり反応した。
反応が薄いわけではないのだろう。きちんと言葉を聞いているのだから。
どちらかといえばそれは、



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/01/02(金) 03:29:17.77 ID:/n8W6tLi0
( ФωФ)「なんかがっかりしてないか?」

lw´‐ _‐ノv「うん?何が?」

( ФωФ)「?」

いつの間にか元のシューに戻っていた。
彼はそう思っただろう。






「鈍感なんだね」、彼女の声はどこにも届くことはなかった。








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