( ФωФ)さとりごころのようです

39: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:18:53.59 ID:4sNxa27Q0
   



  一章 夏風燃ゆる


     四話 太陽の下で




41: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:23:25.06 ID:4sNxa27Q0
時計の針が十時を差す。
そろそろ太陽も本気を出してきたところだが、当の二人はのんびりと町を歩いていた。

妹者丘から弟者山の下まで南下し、さらに歩き続け南部へと向かう。
カロリー消費のため、という名目で行われた此度の散歩。
二人ともすでに胃を突き破りそうな満腹感がなくなっていた。

( ФωФ)「……なあ?」

lw´‐ _‐ノv「んー?」

ゆるやかな坂を歩きつつ、彼はシューに聞いてみた。
彼女はここまでの道のりで色々話していた。
そしてその話題の共通点は、この町に関する内容だった。

( ФωФ)「もしかして町案内のために散歩しようといったのか?」

lw´‐ _‐ノv「それもあるね。
       まあ、東部はほとんど説明することがないけど」


今、彼らは東部、弟者山の山裾を歩いている。
周りにはそれなりに家が建っていて、また草木もまばらに存在している。
ここは特徴らしい特徴がなく、故に口で説明するならこういうしかないだろう、「見たまんまだよ」。

実際、シューも東部をそのように説明していた。



44: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:28:43.86 ID:4sNxa27Q0
なので彼女は東部全体から、東部の一部分を説明することにした。
例えば、あの家の造りが芸術的だとか。
あの公園のブランコでよく子供が遊んでいるだとか。

lw´‐ _‐ノv「ていうか、父者山までは説明らしい説明ができないんだよね。
       特徴っていわれても、長年ここで暮らしてる私にはどこが特徴に値する点か分からないし。
       だからここでの説明は結構適当ですよん」

( ФωФ)「ありのままを話せばいいではないか?」

lw´‐ _‐ノv「目の前の景色全てを説明するのは疲れるし時間もかかるよ?
       かといって見所を述べようとしても、他の町と違う点を知ってなければ語れない。
       それが特徴というものだから」

( ФωФ)「たしかに」

lw´‐ _‐ノv「だから質問あればいってね。
       それに答えたほうがラクだから」

( Фω+)「ふむぅ……」

男は何を問うか、と考え片目を閉じる。

町のことはシューが勝手に言うのを聞いてればいいだろう。
そも、あれこれ尋ねて彼女を困らせるほうがまずいだろう。
私たちは散歩しているので景色は移ろう。
だから、町について質問すると際限なく出てくるに決まってる。
なら町に関するもの以外の質問は何かないだろうか?

しばらく彼は考えを巡らし、無言でアスファルトの上を歩いた。



47: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:33:55.74 ID:4sNxa27Q0
(;Фω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「……」

(;+ω+)「……むむぅ」

lw´‐ _‐ノv「思いつかないなら思いつかないでいいよ。
       無理しないでね」

(;Фω+)「ん、わかっ……あ、そうだ」

lw´‐ _‐ノv「?」

(*ФωФ)「……質問思いついたが、町のことではない。
       お前のことで訊きたいことがあるのだが」

lw´‐ _‐ノv「いいけど?」

(*ФωФ)「ぃよーし、ならば教えてくれ、その帽子についてな!!」

『ずびしっ!!』と効果音がつきそうな勢いで彼はシューのニット帽を指差す。
彼女は彼のそんなテンションに付いていけず、頭にクエスチョンマークを浮かべる。
彼は言う。

( ФωФ)「朝から気になってたんだ。
        お前は昨日の夜も帽子を被っていた。
        そして記憶違いじゃなければ、朝も被っていたな?」

lw´‐ _‐ノv「たしかに被ってたね、朝から」



49: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:37:10.97 ID:4sNxa27Q0
( ФωФ)「頭にハゲでもあるのか?」

lw´‐ _‐ノv「……ま、たしかにハゲはあるんだけど」

昨日の夜もニット帽を被り、今日は朝からニット帽を被っている。
いつもそんな生活をしているのなら……と仮定すると、シューは一日中ニット帽を被っている。
夏真っ盛りのこの時期にだ。

だから、なんでそんなことをしているのか男は疑問をぶつけた。
それにシューは少しばかり言いよどむ。

lw´‐ _‐ノv「 ………………うーん?」

( ФωФ)「あー、答えにくいなら答えなくていいぞ?」

男はわずかな動揺も顔に出さずにいう。
「もしかして今の禁句だったり?」、そう考え自分の鈍感が憎く思えたとき、彼の隣からいたずらっ子の気配を感じた。

lw*‐ _‐ノv「そんなにビビらなくていいよ。
       どこまで話すか考えてただけだから」

(;ФωФ)「……動揺を顔に出してなかったと思ったんだが」

lw´‐ ,‐ノv「声が震えてたよー♪」

シューは男をからかう。
言葉が愉快な口笛に変わっていた。



51: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:41:48.27 ID:4sNxa27Q0
lw´‐ ,‐ノv「〜♪」

(;ФωФ)「……すまん」

lw´‐ _‐ノv「気にしてないからいいよ。
       そうだね、まず一度みてもらおうか」

そう言って、シューはニット帽を脱ぐ。

年相応の艶やかさを宿した黒髪。
型崩れを防ぐために挿してあるヘアピン。
肩甲骨辺りまで伸ばしてある髪は、押さえつけられてた物から解放されてふわりと風に舞う。

lw´‐ _‐ノv「日光とか風とか……どうしたの?」

(*ФωФ)「あ、うん、ごめん、見とれてた」

男は正直に白状した。
その言葉を聞いたシューは驚いたようで、まぶたがいつもより若干開いていた。
しかしすぐに元の表情に戻り、説明する。

lw´‐ _‐ノv「ちょっと後ろに回ってくんない?」

(*ФωФ)「あ、ああ、分かった」

彼は言われたとおりシューの後頭部を見下ろす。
ふと、後頭部の一部分の毛の生え方が微妙におかしい点に気づく。
さっと見た感じではハゲを髪で隠しているように見える。
しかしよく見てみると禿げてる部分が妙に細長い。



52: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:45:20.68 ID:4sNxa27Q0
(;ФωФ)「これは……傷痕か?」

lw´‐ _‐ノv「そうだよ。
       物心つく前で記憶にないけど、両親が死んだときについたらしいよ。
       古傷が日光とか風とかに染みるから、寝る時以外、いつもニット帽を被ってるんだよ」

それでお終い、というようにシューはニット帽を被る。
男はニット帽ごしにシューの傷痕を見て顔を歪める。
彼は考える、あの傷痕は大きい。
怪我したときはかなり大変だったろう、と。

( ФωФ)「……あれ?」

lw´‐ _‐ノv「ん?どうしたの?」

後頭部を見ていたらふと違和感を覚えて、思わず声を上げる。
その声を聞き、後頭部は側頭部に変わった。

(;ФωФ)「あ、いや。何か疑問に思ったんだけど……なんだったかなぁ?」

lw´‐ _‐ノv「?」

男は首を傾げ、その様子を見たシューも首を傾げる。



55: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:49:00.29 ID:4sNxa27Q0
彼は一度、頭の中を整理しようとする。
まずは先ほど見たシューの傷痕。
肩甲骨まで伸びている髪。ニット帽。
シューの言葉。傷痕。ニット帽。髪型。

(;Фω+)「……」

lw´‐ _‐ノv「おーい、どうしたー?」


ある点に気づき心の中で呟く、「ああ、なるほど」。


( ФωФ)「……ん。疑問点が分かったぞ」

lw´‐ _‐ノv「なに?」

( ФωФ)「なんでニット帽被っているのにヘアピンしてるのだ?」

lw´‐ _‐ノv「……」

側頭部は後頭部になり、彼から彼女の表情を見ることができなくなった。
なので何を考えてるかよく分からないはずなのだが、ニット帽から聞こえたため息で男はシューの気持ちを理解できた。
「な、何かおかしなこといったか?」という言葉を聞き、シューは彼の前から横へ移動する。

lw´‐ _‐ノv「……あのね、帽子って物は型崩れを起こしやすいものなの。
       というより帽子が変な型を作ってしまうの。
       もーちっとオシャレに気を使おうね?」

人差し指を立て、「ね?」と再度確認するように語尾を強めた。



59: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:53:45.10 ID:4sNxa27Q0
東部から南部にかけては、町の説明よりシューの周りの説明の方が話題となった。

例えば刀のことや、

lw´‐ _‐ノv「ちゃんと刃引きはしてあるから大丈夫だって」

(;ФωФ)「首に当てられたときは知らなかったのだから、慌てるのが普通の反応ですよ?」


砂尾神社のことや、

lw´‐ _‐ノv「……とまあ、そんなわけで砂尾神社は今、神社として機能してないんだ。
       さすがに二人じゃ、ましてその内成年してないのが一人いるんじゃどうしようもないから」

(;ФωФ)「お前もなかなかの苦労人だな」


ウツロの祓い方などを道中話した。

lw´‐ _‐ノv「こう、バシュッとやってドバッと切り込んで……」

(;ФωФ)「あの……ジェスチャーとか効果音とかいらないから。
       もっと具体的にお願いします」



60: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 19:58:30.90 ID:4sNxa27Q0
lw´‐ _‐ノv「……お?」

( ФωФ)「む?どうした?」

雑談に花を咲かせていると、シューはある物に目を止める。
それはちょうどシューくらいの大きさの岩だ。
もっとも彼の目にはそれ以外のものも映っていたのだが。

lw´‐ _‐ノv「あの岩見える?」

( ФωФ)「ん、見えるぞ」

lw´‐ _‐ノv「あれはね、ただの岩っぽく見えるけど実はそうじゃないんだ。
       近くで見ると“道祖神”って文字が刻まれてるから」

( ФωФ)「道祖神って……あれか?
        交通安全の神だっけ?」

lw´‐ _‐ノv「そうそう。で、あれが分雲町と美府市の境になってるんだ。
       途中から町の説明してなかったから分からないだろうけど、ここは南部なんだよ。
       道祖神が南部の目印になってるんだ」

( ФωФ)「あー……だから途中、小学校とか消防署とかがあったのか」

lw´‐ _‐ノv「そ。
       ここは西部よりは家があるけど、やっぱり公共の建物が多かったりするんだ。
       そんなところで南部の説明終わりっと」



62: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:03:37.54 ID:4sNxa27Q0
シューはくるりと道祖神に背を向ける。
そして男に一声、「帰るよ」
しかしその声を耳にしても、彼は道祖神から目を離せない。

lw´‐ _‐ノv「どうしたの?
       そろそろお昼だから一旦神社に帰るよ。
       続きは午後ね」

(;ФωФ)「あのぅ……」

lw´‐ _‐ノv「ん?」

(;ФωФ)「こちらを思いっきり睨んでいる方がいらっしゃるのですが……」

lw´‐ _‐ノv「へ?」

シューは再度、道祖神を見る。
そして彼の言葉で示された人を探す。
しばらく眺めたあと、一つの結論を出す。

lw´‐ _‐ノv「いないよ?」

(;ФωФ)「いや、いるから!
        なんか坊主頭の人が私とお前を睨んでるから!!」



64: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:08:25.92 ID:4sNxa27Q0
lw´‐ _‐ノv「……あー、なるほど」

シューは誰がこちらを見ているのか、今度こそ理解できた。
理解したうえで、男に言った。

lw´‐ _‐ノv「多分その人は私たちを見てないよ?
       たまたまその視線の先に私たちがいるだけだよ。
       彼はおそらく私たちを通り越して、遥か彼方を見ているだけだよ。
       そう、あれは妄想世界(マイヘブン)を凝視しないと生きていけない生物なんだ。
       だから私たちは声をかけてはいけない。
       声をかけたら最後、私たちも彼の妄想世界(マイヘブン)の餌食となる。
       あれからなるべく遠ざかったほうがいい。
       そしてあれに憐れむような視線で送ってだな……」


(#´・ω・)「全部聞こえてるよ」

坊主頭が近づいてきて、シューに言った。
しょんぼりした顔立ちなのに、瞳に不思議な光を感じさせる。
正確には目に力が入っている。
そして力を入れさせた人物は言い放つ。

lw´‐ _‐ノv「……妄想世界(マイヘブン)の餌食となっちまったよ」

次いでため息。
言葉には諦めの色が強く滲み出ていた。



66: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:12:25.87 ID:4sNxa27Q0
坊主頭はシューの隣で事情を把握しきれない男に声をかける。

(´・ω・`)「やあ、君が杉浦ロマさんか。
      初めまして。僕はショボン、坊主さ」

(;ФωФ)「初めまし……ってなんでその名前で伝わってるんですか?!」

(;´・ω・)「え?ヒートさんからそう聞いたんだけど?」

(;ФωФ)「……」

『ロマ』で伝わった名前に対し、男の心境はまさしく『 orz 』だった。
ちなみにすぐに本当の名前を伝えた。心の片隅でヒートを少しばかり恨みながら。
そして互いに簡単な自己紹介をする。

坊主頭の名前は『ショボン』。
南西の山、父者山の麓にある芭盆寺の和尚の息子。
寺に住んでいて、父親にウツロ退治を手伝わせてもらっている。
十七歳でシューの一個上。
だから敬語はいらないとのこと。

男は頭のメモ用紙に黙々と書き込んだ。



69: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:16:15.96 ID:4sNxa27Q0
(´・ω・`)「っていうかシュー、無視って酷いと思わない?」

lw´‐ _‐ノv「酷いね」

(;´・ω・)「いや、君が無視したんだよ」

lw´‐ _‐ノv「無視じゃないよ。気づかなかったんだよ。
       そもそも私が気づかないのはいつものことでしょ?」

(;´・ω・)「途中から気づいて避けようとしてたじゃないのさ!?」

lw´‐ _‐ノv「坊主頭でこちらを睨むやつなんて私の知り合いに一人しかいないから。
       で、絶対何か小言を言われるから逃げたかったんだよ。
       それにどうせ、妄想世界(マイヘブン)を見つめてたに決まってるんだから君は」

(;´・ω・)「ちょ、決め付け?!」


( ФωФ)「……」

男はシューとショボンを観察する。

二人はぎゃあぎゃあ言い争いをしていて、仲がいいのか悪いのか分からない。
見ていて、ふと、ある記憶を思い出した。
いつだったかテレビで見た漫才で、一人がボケてもう一人がツッコむ。
あれだ。あれに似ている。

男が考えてるところにボケ役が声をかける、「ロマ、置いていくよ?」



70: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:21:13.97 ID:4sNxa27Q0
三人は道祖神が置かれている南部から、砂尾神社のある北部へ移動する。
何故かショボンもシューたちに付き添い、彼女はぶちぶち文句を漏らす。

南から北への最短距離で向かうならば、必ず通るところがある。町の中央部だ。
シューが説明したとおり、そこは傾斜が少ないので家より田畑が多い。
遠くへ目を向けるとミニチュア並の建物が中央の緑を囲っている。
だからだろう、中央部は牧場を連想させた。

lw´‐ _‐ノv「っていうかさ、ヒー姉はショボンのご飯まで作ってないと思うよ?
       そのまま回れ右して、和尚のおにぎりを食べたほうがいいんじゃない?」

(*´・ω・)「問題ないよ。お昼ごちそうするってヒートさんに言われたから」

( ФωФ)「ほう?ヒートが?」

(´・ω・`)「うん。何でも聞いてもらいたいことがあるんだって。
      何を話すかまでは僕も知らないけど
      ついでに君らを拾ってきてほしいって頼まれたんだよ。
      ……二人が出たあとで頼むのがヒートさんらしいけどね」

しかもヒートはシューたちの行き先を知らなかった。
さらにいえば、今日に限ってシューが携帯電話を家に置き忘れてたのも仇となった。
だからどこを探せばいいか分からず、ショボンは町のあちこちを駆け回った。

日射が体力を奪い、そんな中で走り続けてさらに消費したので、ショボンは近くにあった道祖神の脇で休憩していた。
そこでのんびり散歩するシューを発見したらしい。


(;+ω+)「……なんというか、ごめんなさい」



72: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:24:54.05 ID:4sNxa27Q0
(´・ω・`)「いいよ。砂尾家はこういうこと頻繁に起こすから慣れたよ」

lw´‐ _‐ノv「……それは私だけじゃなく、姉さんの悪口とも捉えていいの?」

「自分らの悪行の数々を思い出しなよ」、ショボンが言うとシューは閉口する。
思い出そうとしているのか、それとも思い出して何もいえなくなったのか。
男は後者であってほしいと願う、今後の生活のために。

lw´‐ _‐ノv「思いつきませんでした。
       悪行って何スか?」

(;´-ω-)「……自覚がないってことかよ」

前者でした。
ショボンは呆れて眉間を押さえ、男も心の中で肩を落とす。
朝のことを考え、急に腹が痛くなった気がした。


腹を押さえて視線を前に向けると、大きな杉の木がはっきり見えてきていた。
男の記憶違いじゃなければ、昨日の夜、あそこを通ったはずだ。
あそこの近くでシューに出会ったんだよなぁ、男は口を開かずに呟く。

杉の木は十字路の脇に生えている。
そこまで辿り着くのにあと数分程度だろう。
木の形がどんどん大きくなっていき、男は気づく。

杉に寄りかかる様に座っている女の子がいることに。



75: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:29:35.59 ID:4sNxa27Q0
とはいえ、男は特に気にしなかった。
たまたま目に入っただけだから。

しかし男の傍にいた二人の反応は違っていた。
「どう思う?」、ショボンはシューに確認を取り、シューは頷く。
彼女らの答えは同じらしい。
男は二人の態度がよく分からなかったので尋ねた。

( ФωФ)「あの少女がどうしたのだ?」

(´・ω・`)「ああ、あれウツロだから」

(;ФωФ)「え゛?」

さらりと言ってのけるショボン。
男はさらに尋ねる、「どうして分かったのだ?」
今度はシューが答えた。

lw´‐ _‐ノv「私は寺の手伝いをすることもあってね、前の手伝いの時にあの子を見たんだよ。
       ただし白黒の写真でだけど」

つまりあの子はもう亡くなっているということ。
なのにあの子が木の下にいる。

(;ФωФ)「いや、でも霊かもしれないぞ?
       それに悪霊じゃないかもしれない。もしかしたらいい霊かもしれないのだ。
       なのにいきなりウツロと言われても……」

lw´‐ _‐ノv「すぐに霊を持ち出すのも思い切りがいいね。
       でもロマ、昨日の出来事を思い出してみて」



77: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:33:07.88 ID:4sNxa27Q0
(;ФωФ)「?」

“昨日の出来事”とは何を指すが理解したが、何故それを今尋ねるのか理解できなかった。
とりあえず言われたとおり思い出してみることにする。
山に入り、老婆に出会い、追いかけられ、浄霊の力で倒した。
そして考えて考えて……シューの意図がどうしても分からなかった。

(;ФωФ)「……思い出したがそれがどうした?」

lw´‐ _‐ノv「ロマは昨日以前に霊に出会ってるはずだよね?
       君が言ってたんだよ、昔から霊が見えていたって。
       でも君は昨日のあれを“妖怪”と表現したよね」

(;ФωФ)「……あ」

シューが何を言いたいか理解した。

たしかに昔から霊が見えていた。
加えて言えば浄霊したこともあった。
だから彼は生き物と霊の区別ができるのだ。

彼の目に半透明に映るものが霊、そうじゃなければ生きている者なのだ。
しかし昨日の老婆は彼の常識を覆した。
老婆の体ははっきり見えていたのに、走る速さは異常だった。
その様から「あれは妖怪」と言ったのだった。


杉の木の下の少女を見る。
姿がはっきりしている、しかしすでに亡くなっていると聞いた。



81: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:38:19.76 ID:4sNxa27Q0
lw´‐ _‐ノv「“ウツロが人に憑いて現世にいる肉体・魂の情報を半分貰う”っていったよね?
       だからウツロは一時的に現世の住人になるんだ。
       つまり霊能力がなくても目に見えるし触れることもできるってことだね」

「ウツロが現界するってそういうことなんだよ」と締めくくるシュー。
そういえば、人とウツロにはあまり違いが見られないと昨日聞いた気がする。
会話はリレー選手のバトンのように、ショボンに続く。

(´・ω・`)「あの子の記憶が誰に憑いているのか……予想できるけど断定できない。
      でも今はそんなに危険じゃないみたいだよ。
      まだ憑き殺すレベルではないから簡単に祓えるね」

( ФωФ)「……なるほど」

ウツロが皆、昨日の老婆みたいな凶暴な奴と思い込んでいたから、ショボンの説明で少し安心する。
あの少女みたいに危険ではないのなら、ヒートの頼まれ事も楽にできそうだ。

lw´‐ _‐ノv「よし、出番だよロマ。祓ってこい」

(;ФωФ)「え?ちょ?まって!」

先ほどは楽にできそうと思ったが、いきなり突撃させるのは反則だと思う。
ツっこみ役のショボンも止めない。
どうしてか、と聞いてみたら、

(´・ω・`)「君がどう祓うか興味があってね」

どうやら見てみたいらしい。



83: ◆pGlVEGQMPE :2009/01/15(木) 20:41:54.39 ID:4sNxa27Q0
(;+ω+)「……やれやれ」

杉の木に近づく。
女の子は男に気づく様子すら見せず、空に視線を漂わせる。

( ФωФ)「すまんな。楽になってくれ」

( ‘∀‘)「……」

話しかけても反応しない。
頭に触れても同じだった。

分解させるイメージを思い浮かべる。
それを手の平から送り込んだ。












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