( ФωФ)さとりごころのようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/10(火) 21:43:40.23 ID:zTzjdBff0
   



  一章 夏風燃ゆる


     五話 生者



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/10(火) 21:47:26.58 ID:zTzjdBff0
お昼のため神社に戻った。蕎麦だった。


今日の食卓で判明した事実。
砂尾家のヒートさんはどうやらお祭りが好きらしい。
だから何か催し物があると騒いでしまう。
また催し物がなくとも、人が増えると楽しくなってしまうようだ。
さて、そうなるとどういうことが起こるだろうか?

結論から言おう。
嬉しくなって、つい蕎麦を作りすぎたのだ。
「おかわりはいっぱいあるよ!!」、元気いっぱいの言葉は男二人にとって悪魔のそれだった。
ただ一人、砂尾家の末っ子はもくもくと箸を動かす。
男たちはよく食べるなぁと感心したが、

      「ノルマは四杯。二人とも頑張って。
       なに、わんこ蕎麦より楽でしょ?」

末っ子は、残さず食えと男二人に告げた。
大食い大会はヒート以外が参加した。

やがて全ての蕎麦がテーブルから消失する。
「今度来るときはもっと少なめにお願いします……」、ショボンは苦しそうに呟いた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/10(火) 21:51:27.20 ID:zTzjdBff0
お昼を済ませると、四人は二組に分かれて行動する。
ヒートとショボンは当初の予定通り、何らかの話をする模様。
居間からヒートの部屋へ移動するところから察するに、よほど聞かれたくない内容らしい。

彼らを横目で見送りながら、残った組も活動を始める。
こちらの組は午前中の続きをするようだ。


(;+ω+)「……もうちょっと休んでから出ないか?」

lw´‐ _‐ノv「ムリッス、サーセン」

今出なければストマックするぞ、と彼女はつま先でトントン畳を叩く。
寝そべりながら男はシューをぼんやり見つめる。


砂尾アキ、通称シュー。
ストレートのロングヘアで、頭部の傷を隠すためニット帽を被っている。
目が細いわけではなく眩しそうに薄目を開けてるため、ボンヤリしてる印象がある。
どちらかといえば垂れ目で、眉が少し太い。
身長は小さく顔立ちは整っているので、世間ではかわいい系で認識されるだろう。

服装は短パン、胸に『雨四光』とプリントされたTシャツ。
服に関心がないのか、それともセンスが抜群に悪いのか。
格好は変な意味で目立ち、そして他の女子のような着飾った華やかさが感じられない。

顔だけで考えるのならば、図書委員とかよく似合いそうである。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/10(火) 21:55:54.75 ID:zTzjdBff0
ただし彼女は見た目と違い、かなり行動的だ。
おとなしそうだが、朝から彼を振り回しているのだ。
ぶっちゃけ詐欺レベルである。
ほら、今だって彼のお腹を見つめて、


lw´‐ _‐ノv「……蹴るけどいいかな?」

(;ФωФ)「駄目!!」

物思いに耽っていた頭を急いで起こし、立ち上がる。
彼はそのままずるずると玄関まで引っ張られていった。
為すがまま外に出ようとすると、家の奥からヒートが顔を覗かせた。

ノパ听)「シュー!!外を歩くなら頼みごとあるんだけどー!?」

lw´‐ _‐ノv「りょーかいー」

ノハ;゚听)「用件聞いてからそれをいえよー!!
     まあいいやー!ショボンくんに聞いたから、モナーさんのところに顔だしておいてーっ!」

玄関先で彼らを見つめる目に、シューは先の言葉をリフレインする。
その後すぐに、二人は夏の光に飛び込んだ。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/02/10(火) 22:01:59.59 ID:zTzjdBff0
lw*‐ _‐ノv「んー、いい天気だねぇー」

(;ФωФ)「いい天気すぎるだろ」

lw;‐ _‐ノv「……まあ、暑いという意見には同意してあげる」

時間は午後一時。
太陽が波紋疾走しているレベルである。
空気は熱気を孕み、透きとおった青空は見るだけで目が焼かれそうだ。
ここから南部まで歩くのかと考え、男は思わずため息を漏らす。

lw;‐ _‐ノv「あ、そうそう。
       南部の案内の途中だけど、それは次の機会にしよう。
       その行程をすっ飛ばして、今から西部へいくから」

(;ФωФ)「む??もしかしてそこにモナーさんがいるのか?」

lw;‐ _‐ノv「そだよ」

神社から抜け出して、午後の道筋を伝える。
坂を下り、やがて道路の傾斜がなくなる。
ついでに建物もなくなり、代わりに田んぼや畑、ビニールハウスが周囲に現れる。
さらに歩き続けると一際大きい杉の木が見えた。

(;+ω+)

lw;‐ _‐ノv

汗をかきながらも何とか一本杉の下へ着き、二人とも木陰に入って小休止する。
熱中症には気をつけてほしいものだ。



12: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:06:00.47 ID:zTzjdBff0
少しの間、木の下で風を感じる。
その後再び立ち上がり、一本杉のある十字路を右折して西へ進む。
しばらく進むと小さな川が見えた。

『流石川』。
北西の姉者山から南部まで流れている。
分雲町を縦断しているこの川の水はひんやり冷たく、そのため町の子供たちがたまに遊んでいる。
本日は快晴、絶好の水浴び日和なので小さな頭がちらほら見えるのも分かる。

(*><)

(*<●><●>)

(*‘ω‘ *)

橋の下では生き生きとした顔がある。
それらを横目に見ながら橋の上を歩く、ゾンビ予備軍。
長身の男は汗をだらだら流し、少女も暑さでTシャツの肩や背を湿らせていた。

(;+ω+)「まだ着かないのか?」

lw;‐ _‐ノv「川を越えたらすぐだよ。
       だからもうちっと我慢して」



13: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:10:22.56 ID:zTzjdBff0
(;+ω+)「“すぐ”という言葉はな、人によって尺度が違うものなんだが。
       あと何分くらいで着くのだ?」

lw;‐ _‐ノv「四十分」

(;+ω+)「……ミイラになってしまいそうです」

そんな事を話しながらも、とにかく歩く。
というより先に進む以外の選択肢がない。
西に向かうにつれてちらほら建物が見え始めたが、日光を遮ってくれそうなものが少ない。
とりわけ彼らが進む道を侵食している大きな影など見当たらない。
立ち止まれば、日が沈むまで蒸し焼き状態なのだから。

lw;‐ _‐ノv「……光属性強すぎでしょ」

(;+ω+)「闇属性が恋しいな」

lw;‐ _‐ノv「まったくだよ。
       もうブラックゼニスとかそういうのでジュールを吸い取ってほしいよ」

(;+ω+)「できたらいいのだが、私、無属性の人間なもので。
       そういえばシューってニット帽被ってるから、かなり頭茹ってるだろ?」

lw;‐ _‐ノv「……かなり。
       頭がぐるんぐるんいってる気がする」


とは言うが、古傷が日光に染みるため脱ぐこともできないのだ。
心苦しいが耐え抜いてもらいたい。



14: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:14:27.14 ID:zTzjdBff0
ファンタジーな話の約四十分後、二人はようやく西部にたどり着いた。

周囲を見渡すとビルやアパート、コンビニ、レストラン、タクシー、その他いくつかの店が目に付いた。
まだ見えていないが近くには駅があり、美府市に近いため、それなりに栄えているのだ。
余談だがシューが美府市の高校へ行くときは、ここの電車に乗るらしい。

そしてここのどこかに、彼女が目の敵にしている役場があったりする。
よほどのことがない限り、一般市民には縁がないところなので説明は省く。


西部に入ってからは日陰があったので、そのエリアに沿って駅へ向かう。
緑が少なくて暑いことには違いないが、直射日光を浴び続けるよりはマシだ。
とはいえここまでで掻いた汗に、今も全身が舐めまわされているようでひどく不快だ。
よって二人のしかめ面は道中変わらず、目的地までそのままなのだろう。

西部に入ってからも歩き続け、ようやく駅が見え始めたとき、目的地に到着した。
『アスキーアート』と看板には書かれている。
店の外へ流れ出た香りから、甘味処と推察させる。
ただし看板に横に張られた「冷やし中華はじめました」の紙が、その予想を裏切ってくれる。

ニット帽は暑さから逃れるように店のドアを開けて、中へ入る。
彼もその背中を追って入る。

(・∀ ・)「いらっしゃい!」

やたら元気な声が飛んできた。



15: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:18:40.69 ID:zTzjdBff0
少女はクーラーのきいた店内に入って気を緩めている。
男も先ほどの暑さから解放され、店の入り口で突っ立っている。

(・∀ ・)「あ、シュールか。隣の方は兄さん?」

lw´‐ _‐ノv「居候だよ。っていうか」

元気よく挨拶してきた店員の頭を、両手でがっちり固定するニット帽。
彼女はまじまじと手の中にある顔を見つめる。
少女に連れられてきた男も店員も予想外な行動に固まる。

(;・∀ ・)「え?あの?ちょっと?」

lw´‐ _‐ノv「……」

空気は「動くな」と言っているようだ。
三体の氷像が数秒間、蝉が喧しい夏の昼に現れた。
氷像を溶かすことができるただ一人の人物はやがて、ぽつりと。

lw´‐ o‐ノv「あ、またんきくんか」

その言葉を合図にシューは手を放し、変な空気から解放された。


(;ФωФ)「なにがしたかったのだ?」

lw´‐ _‐ノv「んー?誰なのか分からなかったんだよー。
       気軽に声をかけてくる人だから、知り合いかなっと思ってね」



16: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:23:28.06 ID:zTzjdBff0
(;ФωФ)「えーと?」

救いを求めるように店員を見る。
その眼に気づき、店員は簡単に挨拶を始める。

名前は……まあちゃんとした名前があるらしいが、分雲町・美府市ではまたんきで通っていると話した。
あまりに平凡すぎる名前のためにあだ名のほうで覚えられる方が早く、本人もそれでいいと諦めているとのこと。
シューとは中学からの腐れ縁だと言う。
美府市の高校に通っているが、そこでもこいつと同じクラスなので嬉しくないとぼやく。
シューは自他ともに認める変人であり、「彼女に振り回されて疲れる」と話すところから付き合いの長さが窺える。

今は夏休みなので地元の甘味処でバイトしている。
そこへシューたちが訪れ、いきなり頭をロックされた。
どうしてそんなことをしたのか?理由は分かっているらしい。


lw´‐ _‐ノv「またんきくん」

またんきがその理由を話す前に少女は止める。
シューを見て何かを察したのか、一瞬だけ顔をしかめてから口を動かす。二名様ですね?
テンプレートな言葉を聞き、昼過ぎでがら空きになってる席に通される。

とりあえずジンジャーエールを二つ頼んだ。



19: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:26:29.27 ID:zTzjdBff0
飲み物はすぐに来た。氷が入っていてよく冷えている。
外へ出た水分をいくらか補給したあとで、男は質問する。

( ФωФ)「お前って近眼なのか?」

lw´‐ _‐ノv「視力は両方2,0だよ」

( ФωФ)「ならなんで?」

あんなことをしたのか、と口に出さずに伝えた。
またんきにした行為がよく分からなかった。
なので聞いてみたが、ニット帽は少し困った表情を作った。

lw´‐ _‐ノv「んー、タイミングって大事だと思わない?」

いつか話すという意味だろう。
「まだ覚悟ができてないんだよ」、独り言のように放たれた言葉は空気に溶けた。
ならこの話はここまで。話題を変えるべきだ。

( ФωФ)「ところでモナーさんの件は?」

lw´‐ _‐ノv「そだね。
       またんきくん、ちょっとちょっと」

店員を手招きして、店長を呼べと伝える。ついでに彼女は外に貼られた冷やし中華の紙のことも伝える。
近所の子供のいたずらにブチブチ言いながら、またんきは店の奥に消えていった。



20: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:31:45.17 ID:zTzjdBff0
二人は四人用のテーブルに向かい合うように座っていた。
シューがジンジャーエールを持って立ち上がり、男の隣に移動する。

すぐに人が来た。
その人の後ろにまたんきがついてきている。

( ´∀`)「お客様、どうなさいましたモナ?」

lw´‐ _‐ノv「ちょっとモナーさんと個人的な話をしたいんだ。
       けっこう重い話だから、お客が誰も入ってこないようにしてもらいたい」

( ´∀`)「……分かりましたモナ」

この人がモナーなのだろう。
彼はまたんきに『営業中』の看板ひっくり返してくるよう指示する。
そして彼女はモナーに目の前の席に座るよう指示する。
「冷やし中華始めました」の紙を持って帰ってきたまたんきにも座るよう言った。

lw´‐ _‐ノv「本当のところ、またんきくんは聞かなくてもいいんだけどね。
       まあ話が話だから。モナーさんの味方は近くにいたほうが心休まるだろうし」

( ´∀`)「それでシューちゃん、話ってなにモナ?」

個人的な用ということもあり、店長の口調が砕けていた。
ニット帽は彼の目を見ながら言った。



22: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:35:51.71 ID:zTzjdBff0
lw´‐ _‐ノv「まだガナーちゃんが恋しい?」

( ´∀`)「……」

lw´‐ _‐ノv「病死だっけ?今時それはないよね。
       あまりに理不尽すぎると思わない?」

( ´∀`)「…………」

lw´‐ _‐ノv「亡くなってから何日たったんだっけ?
       かれこれ二ヶ月くらいかな?
       まったく、人生これからだっていうのに七歳でこの世を去るなんて親不幸にも……」

( ´∀`)「帰ってほしいモナ」

シューの話は強引に遮られ、口を閉ざす。
彼女の話から推察するに、モナーさんはガナーちゃんという子を最近亡くした。
また、彼はこの話をあまりされたくないらしい。

なぜこの話をするのか、とモナーさんの目が言う。その訳をシューは簡潔に説明した。



lw´‐ _‐ノv「今日、ウツロが現れたんだよ」

(;´∀`)「……っ」

今度はモナーさんが口を閉ざす番だった。



25: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:40:03.34 ID:zTzjdBff0
lw´‐ _‐ノv「現れた場所は一本杉。
       現れた人物はガナーちゃん。
       さて、ここまでくれば何を言いたいか分かってくれる?」

(;´∀`)「ウ、ウツロさまが現れただって?
      しかもそれがガナーってどういうことモナ?!」

「わかってくれてないみたいだね」、ため息混じりに言葉を吐き出す。
シューとモナーさんの話を店員は黙って聞く。男も同様だ。
話を耳にしながらも男は考える。


ウツロ。
死者は現世での記憶を切り離されていき、清められていく。
しかし砂尾家の人たちがいうには、分雲町は何か(またはどこか)に近いため、この地では分離された記憶に同調しやすい。
そうやってこの世に現れる存在がそれを指す。

ウツロが現界するためには二つの条件がある。
一つ、生者は死者に肉体・魂の情報を半分分け与えねばならない。
一つ、生者は死者の記憶を強く想わなければならない。

前者はウツロが現界する基盤を作っているにすぎない。
とはいうものの基盤はまやかしみたいなもので、時間が経つとどんどん崩れてくる。粘土で作った球と同じだ。
だから安定をもとめて、後々この世の情報を得るため襲いかかる性質があるが、はじめのうちは無害だ。
憑かれたら肉体・魂の情報を半分持っていかれる、といってもすっぱり半分持っていかれるわけではない。
これはあくまで比喩で、こちらもはじめのうちは生者にあまり影響はない。
だから前者はひとまず脇に置いておくことにしよう。

迅速に対応しなければならない問題は後者の方だ。



26: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:43:48.36 ID:zTzjdBff0
“死者の記憶を強く想わなければならない”

要は死者を愛しているということだ。愛しすぎてるというべきか。
それこそ「君が死んだら私も死ぬ!」と考えているのかもしれない。
人を愛するのは素晴らしいことだ。『愛は地球を救う』といわれるくらいなのだから。


ただしそれがここ、分雲町で通用するかと言われれば疑問符が出てくる。
一部の人間は知っているのだ。愛というのは強力であるが、万能ではないことを。

あまりに死者を想いすぎると、その愛ゆえウツロが現れる。
例えしっかりとウツロを浄化したとしても、生者が心変わりでも起こさない限り何度でも生まれおちる。
ウツロはきちんと駆除しなきゃいけないため、アフターケアもしっかりやらないときりがないのだ。
今回、シューがモナーに会いに来たのはそういうわけだ。


ここに来るまでの道中、少女は少しつらそうに男に説明した。
彼女の眉間にしわは暑さのせいなのか、ウツロと憑かれた者への悲しみなのか、彼には判断できなかった。

「二者の関係は皮と肉ほど近い。だからこその皮肉なのかねぇ?」
少女がそう言ったので振り向くと、男は初めて彼女の笑顔を見た。
とてもぎこちなかった。



28: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:48:59.59 ID:zTzjdBff0
そして現在。
シューは杉の木の下で会ったウツロについて話す。

lw´‐ _‐ノv「そんなわけだからもっと楽に暮らしてほしい。
       なあに、時間があなたの傷を癒してくれるって」

店内に陽気なレゲエが流れる。
彼女の軽口めいた口調はおそらく、モナーに気を使っているのだろう。
それでモナーの気持ちが晴れるわけではないのはみんな知っているだろうが。

( ´∀`)「……楽に暮らせって言われても」

シューがガナーの説明を始めてから、ずっと無言だったモナーが口を開く。
その顔に能面のように張り付いた笑顔が逆に不気味だ。

lw´‐ _‐ノv「ムリ?」

( ´∀`)「無理モナ」

即答だった。
取りつく島もありはしない。



30: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:52:33.24 ID:zTzjdBff0
なるほどね、と呟き立ち上がるニット帽。
彼女に合わせ、隣に座っている男も同じく席を立つ。

lw´‐ _‐ノv「またんきくん。
       ガナーちゃんっぽいのを見かけたら連絡ちょうだいね」

(;・∀ ・)「え?うん、わかった」

lw´‐ _‐ノv「それとモナーさん。
       ウツロの基となった死者はね、どいつもこいつも考えていることはおんなじなんだ。
       自分がいなくても幸せになってもらいたいってね。
       ……愛した人には生き急いでもらいたいとは死んでも思わないんだよ、彼らは」

( ´∀`)「……」

lw´‐ _‐ノv「今は理解したくないだろうから、しなくていい。
       でも忘れないでほしい」

店のドアを開けると熱気が肌を押してきた。
背中には覇気のない「ありがとうございました」がかけられる。
二人は外に出て、手で支えていたドアから離れる。
それは先ほどの雰囲気を切り離すように音をたてて閉まった。



31: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 22:56:19.71 ID:zTzjdBff0
時刻は十五時を回ったところだ。
外気はまだまだ熱を伴い、大地を蒸す。
アスキーアートを出た二人は日陰を伝って駅周辺をのんびり歩く。

( +ω+)「……なあ、あれでよかったのか?」

男は一通りの流れを見て、モナーの説得に失敗したことを悟っていた。
あの話し合いでは誰も考えを変えないだろう。
なによりシューの説得はあっさりしすぎてて、引くのが早すぎるとさえ思っていた。
シューは言った。

lw´‐ _‐ノv「今はあれでいい、というよりあれくらいしか言えないよ。
       人間は機械じゃないんだからそう簡単に割り切れないよ。
       いつか……」

彼女はそこで言葉を飲み込む。だが言いたいことはわかる。
今のモナーは二つの心がぶつかりあっている。
生きたいモナーと死にたいモナー。
そうじゃなければウツロにとり憑かれることはありえないのだから。
「いつか、モナーさんが乗り越えてくれるのを願うしかないね」、彼女の声が頭の中で流れた。


( Фω+)「気長に頑張るしかないのか。
        ま、とりあえず今日のところはお疲れさん」

lw´‐ _‐ノv「ん」

男の労いにニット帽のボンボンが遠慮がちに揺れた。



32: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:00:30.03 ID:zTzjdBff0
( ФωФ)「やっぱりああいうことを話すと落ち込むのか?」

lw´‐ _‐ノv「ん、まあね。
       ウツロに憑かれた人と話すとどうも暗欝な気分になっちゃうから。
       ……いかんいかん、こんなところ誰かに見られたらプギャーされちゃう」

( +ω+)「誰にプギャーされるのだ?」

lw´‐ _‐ノv「名前も知らない誰かじゃないの?
       まあメシウマよりは気楽だけどさ。
       さて、次はどこで涼む?」

( ФωФ)「まかせる」

lw*‐ _‐ノv「そかそか。
       実はつい最近、あのコンビニが新しいアイスを販売したんだ。
       だからおごれ」

( +ω+)「はいはい」

彼は思う。
こうやって無邪気にふるまうのは、おそらく沈んだ心をリフレッシュさせるためじゃないのかと。
もしくは彼自身、落ち込んでいたから励ましているというのもありそうだ。

そう考えるとおごってもいいかなと思ったりしなくもない。



34: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:02:57.54 ID:zTzjdBff0
lw*‐ _‐ノv「お?最近お金がなかったからたすかるよー」

(;+ω+)「貯めろ。
       で?なんて名のアイスなんだ?」

lw´‐ _‐ノv「貯めてたけど泥棒に盗まれたんだよちくしょうめー。
       まあいいや。えーと……たしか名前は……」
















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