( ФωФ)さとりごころのようです

39: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:17:40.05 ID:zTzjdBff0
   



  一章 夏風燃ゆる


     風話 予兆



41: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:22:07.97 ID:zTzjdBff0
シューたちは蕎麦を食べ終えるとすぐに出かけた。
今頃はモナーさんとこに向かっているだろう。
さて、私もやることをやるとしよう。
といっても話すだけだけど。

(´・ω・`)「それでヒートさん、話というのは?」

ノパ听)「まあいろいろあるね。
     どれから話そうか?」

私が渡した座布団の上でショボンくんは正座している。
流石寺の子、正座が習慣になっているのだろうか?
まあ私も正座しちゃっているから人のことは言えないけどね。

今、私たちは二人きりで向かい合っている。しかも私の部屋で。
友人とかが来たら大いに誤解されそうではある。
そんなラヴな話は今のところ縁がないんですけどね、悲しいことに。

大体私の部屋に男を連れ込んでも、昼ドラめいたことなんてできはしない。
だってこんな部屋じゃあねえ。一応片付けてはいるんだけど……うん、まあなんというか。
そこらへんの言葉にしづらい点は目の前の少年なら言葉にできるだろう。

ノパ听)「私の部屋、どう思う?」

(;´・ω・)「毎回聞いてきますよね、それ?
       そしていつも直さないんですよね?」

よく助言を忘れる私に呆れているようだ。その後ショボンくんから評価をいただいた。
本棚置きすぎ、本棚のスペース空いたからといってトンファー置くな、などなど。



42: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:25:51.09 ID:zTzjdBff0
ノハ*゚听)「ま、私の部屋のことなんてどうでもいいんだけどね!」

(;´・ω・)「なんで聞いてきたのっ?!」

いいツっこみだと思う。
夏祭りのときに、盆踊りに混じって漫才をやってもらいたいくらいだ。
それを話したら丁寧な口調で答えてくれた、「お断りします」。

ノハ*゚听)「ん、ふざけすぎた。ごめんごめん!」

(;´‐ω‐)「……」

深呼吸を一つ二つ。
さて、真面目な態度で接しないとショボンくんに失礼だ。
もうすでに失礼だろうと天国から大人びた声が飛んできそうだが、それはそれ、これはこれだ。

ノパ听)「ロマさんを見てどう思った?」

(´・ω・`)「ロマさん?
      話したみたけど普通の人としか感じなかったなぁ」

ただ……とショボンくんの唇の動きが鈍る。
それもそのはず、ショボンくんは偶然にもロマさんの浄霊の力を目撃したのだから。
一本杉での出来事は、どちらかといえば嬉しい誤算だった。
浄霊の力については、今回の話で重要なものの一つだからだ。



43: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:29:31.83 ID:zTzjdBff0
(´‐ω‐`)「ただ、こんな時に分雲町に来たのが気になるところだね」

ノパ听)「やっぱりショボンくんもそう思うわけなんだ?」

私の質問にショボンくんは頷いて肯定の意を示す。
となると、私の考えもあながち間違えではないのだろう。
正直に言ってしまえば、間違えであってほしいのだけど。


近年、ウツロの出現率が格段に上がっている。
三十年前の資料を見ると、半年に一回見かけるかどうかというレベルだったのに、今では一ヶ月に数度の頻度だ。
そしてロマさんが現れた昨日、今日ですでに二回現れている。
一日一回の頻度になったら流石の私たちでも根を上げざるをえないが……この二日間は統計的な誤差だと思いたい。

ここ、分雲町は近いのだ。
何に、またはどこに近いのかと聞かれても答えられない。
根の国かもしれないし黄泉比良坂かもしれない。神かもしれないし鬼かもしれない。
だがどんなに近くてもあっちとこっちでは“界”というものが違うため、私たちは死ぬまで気づくことができないのだ。



まあ、簡潔に言葉にするなら。

この土地は霊的な神秘に近しい町なのだ。



45: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:33:50.35 ID:zTzjdBff0
だからウツロを退治する私たちは、縁や運というものを信じている。
ロマさんがこの町に偶然で来たのではない、そう考えているのはそのためだ。


(´・ω・`)「ヒートさんはどう考えてるの?」

ノパ听)「ん?ああ……」

考え事に没頭しすぎた。
ショボンくんの声で現実に意識を戻して、言葉を選ぶ。

ノパ听)「私はロマさんは運命みたいな不可視な力に導かれてきたんじゃないかなーと思ってるね」

(´・ω・`)「理由は?」

ノパ听)「偶然と考えるにはあまりに出来すぎている」

ショボンくんは口を止め、納得したようにこくこく頭を上下させる。
そう、あまりに出来すぎているのだ。
最近になって増え始めたウツロ、それらを浄霊できる男。
散歩していたらウツロに遭遇し、そしてそっち方面に詳しいシューと出会う。
本人に言ったら不気味がっていたが……つまりそれほど出来すぎているシチュエーションなのだ。


ウツロについては町の評判にも関わることなので、外部に協力要請したことはない。
偶然、霊能力者がこの町に立ち寄ったという話も聞かなかったし、そういう資料もない。
つまり分雲町にはいままで私たち以外、ウツロを退治する者がいなかったのだ。



46: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:37:39.97 ID:zTzjdBff0
なのに、だ。
ウツロが増え始めたらロマさんが現れた。まるで虫の知らせだ。
これはつまりどういうことなのか……ショボンくんが危惧しているのはそこらへんだ。
私は何ら確証のない空論を話す。

ノパ听)「いままで霊能力者がこの町に来なかったのは、この町の“特異な者を引き付ける力”が弱かったかもしれない。
     そして今、特異な者が現れたことから考えると……この町はより近くなったのかもしれない」

(;´・ω・)「……となると」

ショボンくんは息を飲む。
どんな結論を持ってくるか予想できたようだ。
私は予想通り話すのだろう。大きく息を吸って言葉を吐く。


ノパ听)「……ウツロが現れる頻度がさらに上がるかもしれないね。
     あくまでこういう展開が考えられるって程度だから、あまり気にしないでね。
     ただ、そういうこともありうるって頭の片隅に残してくれればいいよ」


一応フォローしておく。
あくまで気休めにしかならないだろうけど。



47: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:41:33.24 ID:zTzjdBff0
さて、近い近くないの話はこれで終わりだ。
話題を変えよう。さしあたっては間近な問題を議題にする。

ノパ听)「とりあえず先のことは置いておくとして。
     今のところウツロが出たという話は三つあるね。
     一つはモナーさんのところのガナーちゃん。
     一つは昨日、ロマさんが出会った老婆」

モナーさんの件はショボンくんにすぐ聞かせてもらったので、家を出る前のシューたちに頼むことができた。
こちらは今日中に解決するとまではいかないが、すぐに対処できるだろう。

老婆の件は、残念ながら情報が足りないので特定できない。
暗闇でよく見えない場所だったのだ。そして顔を目撃したのがロマさんだけなので、仕方がないだろう。
東の山で出会った、といっていたので弟者山周辺をくまなく調査する必要がある。


ノパ听)「あと一つは……椎名さんのところの、だね」

今日、モナーさんと話ができたなら、しばらくそっちは放っておくべきだろう。
ならば暇ができたシューとロマさんを、どちらかにあてたほうがいいだろうね。
そうだねえ。

ノパ听)「よし、私たちは老婆の件を洗おう!
     憑かれた人がまだいるのならアフターケアしなきゃまずいだろうし」

(´・ω・`)「……椎名さんのところにはシューをあてるの?」

元気いっぱいに肯定する。
するとショボンくんは気まずそうに閉口する。



48: ◆pGlVEGQMPE :2009/02/10(火) 23:45:17.85 ID:zTzjdBff0
ノハ*゚听)「まったく」

ショボンくんの考えが読めてしまった。思わずため息をつく。
彼はシューにウツロ退治を任せたくないらしい。
君も男の子だもんね。年下のシューに対して意地を張っているのだろうよ。
二人とも若いのだから好きなだけ激突すればいいよ。

でも、もう少しシューを信じてほしいと思うのは私が妹びいきだからだろうね。
まあなんとかなるでしょうよ。


あ、ついでにロマさんも信じとけ。












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