( ФωФ)さとりごころのようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/07(土) 16:52:27.15 ID:XvyFleB90
   



  二章 走る幻、仄めく面輪


     一話 しぃと猫と




5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/03/07(土) 16:56:27.24 ID:XvyFleB90
駅前でブラブラしていたので、神社に到着するころにはすっかり空が赤くなっていた。
神社の脇にひっそりある砂尾家の中に入ると、シューはすぐ風呂場へ直行した。
どうやら汗を流しすぎたらしい。たまににおいも気にしてたのを思い出す。

シューがいなくなったので、彼は居間でのんびりすることにした。
台所ではヒートが晩飯の準備をしている。
「手伝おうか」と声をかけた彼に、「しばらく休んでなって」と返ってきたのだった。
だから彼は特にやることもないまま、ぼぉーっとテレビを見つめる。
画面はどれもニュースの時間帯らしく、向こう側で淡々とキャスターが喋っている。

「水不足が心配」「アフリカではよくあること」「海水浴場で大学生が水死」「明日の天気は全国的に晴れ」

一通りニュースが終わったあたりでヒートが台所から出てきた。
そちらの方に目を向けるとおいしそうな香りが漂ってくる。
また、示し合わせたように廊下の方でペタペタと音が鳴った。
シューが風呂から上がったようだ。

居間にいる人数が一気に三倍になった。
ヒートは彼と妹の顔を認めて言った。


ノハ*゚听)「これより家族会議を始めるぞおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」

いや、叫んだ。



7: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 16:59:53.06 ID:XvyFleB90
不幸中の幸いである。
“幸い”というのは、小さい山だけど中腹ということもあり、近隣に家がないので迷惑にならないという点だ。
“不幸”というのは、叫び声で耳がおかしくなったことだ。

男はキンキン鳴る耳を叩きながら、騒音の主を見て顔をしかめる。
そんなことなど構うものかと知らぬ顔で話し始めるヒートが恨めしい。
ちなみにシューは事前に察知してたらしく叫ばれる前に耳を塞いでいた。
聡い子である。

ノハ*゚听)「というわけでシューとロマさんは明日、椎名さんのとこに顔を出してね!
      私とショボンくんはロマさんが会った老婆について調べるから」

ウツロが出たという報告があった家に行くように、と言われた。
そこに異議を唱える声が一つ。

( ФωФ)「老婆の件は私がやった方がいいのではないか?
        あと、モナーさんの件は放っておいていいのか?」

彼の疑問は砂尾姉妹の方々が答えてくれた。
「今のモナーさんには何いっても無駄」とシューは言い、
「あの辺りは暗いから老婆の顔も見えてなかったって言わなかった?」とヒートは確認してきた。

ノパ听)「ついでにいっておくと、シューが調査とかそういうのを得意としないんだよ。
     だからどういうウツロだったか聞き込むのは私の仕事なの。
     なあに、ショボンくんもいるから大丈夫さ!!」

その夜の話し合いはそれで終わった。



8: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:04:55.38 ID:XvyFleB90
翌日。
朝食を食べた後、ヒートはすぐ、ショボンに会うため南部へ出かけた。
そして残った二人はのんびり椎名さんの家に向かう。

( +ω+)「昨日の話を思いだしてたんだが」

lw´‐ _‐ノv「ん」

( ФωФ)「調査とか苦手なのか?」

lw´‐ _‐ノv「……文献を調べるのなら得意だよ。
       聞き込みが苦手だけどね」

( +ω+)「ふーん」

椎名さんの家は町の東部にある。
彼らは神社を出て妹者丘を通り、弟者山山裾にまばらに生えている家々の間を歩く。
二人が足を止めたのは、涼しかった空気に熱がこもり始めたころになってからだった。

目の前にあるのはごく普通の家で、『椎名』と表記されていた。


lw´‐ o‐ノv「たのもー」

ガラガラと玄関の戸の音と一緒にシューの声が通る。
場違いな言葉に彼は心の中でつっこみをいれておいた。
すぐに家の奥から返事がきた。



9: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:08:50.05 ID:XvyFleB90
(*゚ー゚)「はーいどちらさまです……ああ、シューさん」

lw´‐ _‐ノv「きたよー」

(*゚ー゚)「はい、どうぞ上がってくださいな。
     そちらの方もどうぞどうぞ」

lw´‐ _‐ノv「おじゃましまーす」

( ФωФ)「すいません、おじゃまします」


二人は居間に通された。
椎名家のそこは砂尾家と比べ、西洋の色が強く出ている。
とりわけ家具が海の外の世界を感じさせる。

例えばテーブルに椅子がついていたり。
カラフルな食器棚があったり。
冷蔵庫がやたら大きかったり。
置物や観賞植物などの名前が横文字のみの物しか置いてなさそうだったり。

外から見た普通さは完全に消えてしまっていた。
異世界に入ったような感覚を覚え、まるで不思議の国のアリスみたいだなと彼は思った。


ボブカットの女の子に促されて二人は椅子に座る。
彼女は台所へ行き、麦茶の入ったコップをお盆に載せて戻ってきた。
それらを来客の前に置き、彼女も着席する。



10: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:12:03.27 ID:XvyFleB90
(*゚ー゚)「ようこそ椎名家へ。
     シューさんと……えと?」

( ФωФ)「杉浦ロマネスクです」

(*゚ー゚)「ご紹介ありがとうございます。
     私は椎名アヤ。しぃ、と呼ばれてるので気軽に呼んでください。
     本日はご足労ありがとうございます。どうぞ、ゆっくりしていってください」

丁寧に挨拶し頭を下げる女性に、男もぺこりとお辞儀する。
その後、雑談に花を咲かせる。

しぃは現在中学生であり、砂尾家と同じく妹と二人暮らしをしているとか。
親は仕事で忙しいらしく、ひと月の間に帰ってくる回数は両手で数えられる程度だとか。
親が趣味で買ってくる置物は目が痛くなるとか。
彼女の趣味は園芸だとか。などなど。

(*゚ー゚)「私は派手目な物より自然な美しさが好きなんですよ。
     両親はそこあたりを理解してないみたいなんですよね。
     庭にラフレシアのオブジェを造ろうって言われた時は喧嘩になりましたよ」

lw´‐ _‐ノv「園芸好きには、上等な料理に蜂蜜をぶちまけるが如くの発想だね」

(*゚ー゚)「まったくです。困ったものですよ。
     ロマネスクさんもそう思いますよね?」



11: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:16:29.23 ID:XvyFleB90
( +ω+)「……結婚してください」

(;゚ー゚)「はい?」

男がいきなりよく分からないことを言った。
しぃはなにかを聞き間違えたと思いこんで彼に尋ねる。
近くにあるニット帽は漏らさず聞き取り、ぼそりと呟く、「涅槃の海に漂ってなよこのロリコンが」
そんな自称高校生に弁明する。

( +ω+)「だってこの町にきて初めてちゃんと名前呼ばれたから」

(*゚ー゚)「ああ、そういうことですか」

彼の冗談を冗談と受け止めたみたいだ。
でも「ロマネスク」と呼ばれたことに感動したのは事実らしく、彼は体を震わせる。

(*ФωФ)「私、しぃさんのためなら全力で頑張りますから。
       砂尾家は皆、我が道を突っ走ってますから苦労が耐えなくて……」

lw´‐ _‐ノv「居座って一週間も経たないうちに泣きごとですかそうですか」

(*ФωФ)「いやぁ、たまにはロリも……」



(;+ω+)「……いや、よくないなぁ」

lw´‐ _‐ノv「なぜ私を見るの?
       出るとこ出てないとか言ったら、君の顔の凸を凹にするよ」



13: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:20:39.80 ID:XvyFleB90
そしてしばし言い争う二人。
しぃは彼らを眺めてクスリと笑う。

(*゚ー゚)「仲いいんですね」

lw´‐ _‐ノv「ロマにはいつも振り回されて困るけどね」

(;ФωФ)「それ、私のセリフだから。
       っていうか騒いじゃってすみません」

(*゚ー゚)「いえいえ、賑やかでいいです。
     そちらのほうがこの家も喜びますので」

しぃがそういうと視線を部屋中に走らせる。
その行為を見てると温かい空間だったところがひどくがらんどうに感じられた。
彼もシューも黙ってしぃを見つめる。
静寂が訪れる。そうしてできた間に、しぃは二人を見てゆっくりと口を開く。

(*゚ー゚)「私の妹にウツロさまが憑いていると思います」

lw´‐ _‐ノv「……詳しく聞かせて」

何が起こったかぽつりぽつりと語り始めた。



14: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:24:46.15 ID:XvyFleB90
(*゚ー゚)「つい最近まで、私の家の近くに野良猫が出てきてたんですよ」


二人は無言でしぃの言葉を聞いていた。

話をまとめるとこうだ。
その野良猫はここらに昔から姿を現していて、周りの住民はよく可愛がっていた。
一言で言ってしまえ、この辺りの共同体による放し飼いみたいな状態だったらしい。
その猫は住民たちのアイドルだったのだ。

だからしぃもその猫が好きだった。しぃの妹もその猫が好きだった。
しかししぃは理解していた。しぃの妹は理解してなかった。

その猫は年をとりすぎたのだ。
しぃが生まれた時からずっといたのだ。そろそろ寿命で死んでしまうんじゃないかとみんな思っていた。
そして当然の如く、その時は来た。
山の林の中で猫は冷たく横たわっていたのを近くのおじさんが見つけたのだ。
猫を可愛がっていたみんなは、その死を悲しんで小さな墓を建てた。

lw´‐ _‐ノv「つまり猫のウツロが出たということかな?
       そしてそれが妹に憑いていると?」

(*゚ー゚)「……はい」

lw´‐ _‐ノv「そう確信した根拠は?」



15: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:29:01.81 ID:XvyFleB90
シューが身を乗り出して聞いた質問にしぃはうつむいた。

(* ー )「妹には、その、猫が死んだことは伝えてないんですよ。
     遠くへ行ったことにしてます。
     だから妹はその猫に会いたがってたんですよ。それはもうとても」

lw´‐ _‐ノv「で、つーちゃんのところに現れちゃったんだ?」


コクンと頷くしぃ。
そこまで聞いて、シューは口元に手をあて何かを考え始める。
彼もまた話を把握するため、頭を回す。



死んだ猫。何も伝えられてない妹。現れたウツロ。

ウツロが出たと聞いて椎名家へ訪れたのだから、しぃの妹は死んだ猫を見ているはず。
でも彼女は猫が死んだことなど知らない。
だから妹はおそらく猫が遠くからここに帰ってきたと思っているのだろう。
もちろんしぃもその猫を見ている。そうじゃなければ砂尾家に連絡しないから。
先程の話からすると、しぃも猫の死を悲しんだ者の一人だろう。

なぜしぃではなく、妹に憑いたのだろうか?



16: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:32:44.83 ID:XvyFleB90
(;+ω+)「うーん?」

頭の中で単語が蠢く。
それらはボウフラのように泳ぎ回り、まとめようとしても達成できない。
ほかの要素を考えようとすると、単語が外に飛び出してしまいそうだ。

隣を見るとシューも難しそうな顔をしていた。
おそらく考えていることは同じなのだろう。
シューはウツロに慣れている。こう言っては悪いが、しぃの素人意見だけで全てを判断できない。
もしかしたらしぃが勘違いしているだけかもしれない。しぃに憑いてる可能性だってある。

( Фω+)「……ふむ」

片目を閉じて、額に人差し指の背を置く。
これは彼が深く考えるときの癖だ。
脳内物質を凝縮する感じで、意識を集中させる。


妹は何も知らない。遠くに行ったと伝えられた。
みんな猫が死んだことに悲しんだ。だから墓を建てた。
おそらくとても小さな墓だろう。林の中に埋めた。それをみんなで?
たしかにそう言ってた。

だとすると……。


( ФωФ)「なるほど、な」

彼の納得の声に視線が集まる。



18: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:36:10.17 ID:XvyFleB90
( ФωФ)「しぃさん、質問よろしいでしょうか?」

(*゚ー゚)「あ、はい、いいですよ」

( ФωФ)「しぃさんはどういう状況でその猫を見たのですか?」

詳しく話してくれた。
深夜、猫の鳴き声が外から聞こえたこと。
窓を開けて覗いてみると、妹の部屋の前の屋根で猫が座ってたこと。
その猫に見覚えがあって、しぃを見ると逃げていったこと。などなど。

( +ω+)「ふむふむ」

lw´‐ _‐ノv「……何に気づいたの?」

( ФωФ)「やっぱりウツロが憑いたのは妹さんのほうだってことだ」

(*゚ー゚)「だからそういってるじゃないですか」

( ФωФ)「いや……私たちは現場を見てないから。
        もしかしたらしぃさんに憑いてる場合だってあったわけで」

その可能性を伝えるとしぃは息を飲む。
シューは予想通り彼と同じことを考えてたらしく、「言え」と要求してきた。
男は深く息を吐き、大きく息を吸い込む。背筋を伸ばしてシューを見る。



19: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:39:27.92 ID:XvyFleB90
( ФωФ)「『猫を可愛がっていたみんなは、その死を悲しんで小さな墓を建てた』としぃさん言ってた。
        だけど猫の墓を作るのにそんなに人数はいらないはず。頑張れば一人でだってできる。
        なのにみんなで。……つまりそれだけその猫は愛されてたというわけだ」


( +ω+)「だからみんな、その墓で猫にお別れを言えたんだろう」


視界にある顔の眉間にしわが寄る。
男はそこで言葉を切る。みなまで言う必要はないだろうと考えたからだ。
理解できてるかどうか、相手を観察する。
すぐに眉間のしわを伸ばして、ニット帽は口を開く。

lw´‐ _‐ノv「つーちゃん……しぃちゃんの妹はお別れを言ってないから、猫がまだ生きてると思ってる。
       また会えると思ってるから。また会いたいと思ってるから。
       そういうこと?」

彼は頷いた。
『また会いたい』と願っているのなら、ウツロが現界が十分に考えられる。
人生とは人によってまちまちだが、誰もが多くの出会いと別れを経験する。
その中で死ほど明確な別れは存在しないだろう。
だからこそ皆が皆、その別れを惜しむのだ。再会することなど叶わぬ故。


シューは腕を組み、唸りながら薄く開いたまぶたをさらに細める。
難しそうな表情をして一言つぶやく、「ありえそうだね」



20: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:43:14.12 ID:XvyFleB90
組んでいた腕を解き、いつも通りの無表情に戻ったニット帽は、男の目を見る。

lw´‐ _‐ノv「……今は決めつける時でないから、ロマの考えが正しいと現段階では言えないね。
       それは可能性の話でしかなく、本当は知らない誰かの別の記憶とシンクロしてるかもしれないからね」

シューはそこで言葉を止めるが、彼から目を逸らさない。
一呼吸置き、「でも」とさらに言葉が流れる。

lw´‐ _‐ノv「とりあえずはロマの考えで動こうと思う。
       今のところ一番考えられる可能性だろうから」

ニット帽が揺れて、しぃに顔が向けられる。
二人の話を黙って聞いてた彼女は、いきなりシューに見つめられて少々驚く。
シューは確認のため、しぃが猫を見た状況を再度尋ねた。
それが済むとシューは椅子から立ち上がる。

lw´‐ _‐ノv「それじゃ、晩御飯後にまたお邪魔するから。
       いろいろ準備するからいったん帰るね」

(;゚ー゚)「あ、はい」

(;ФωФ)「む?」



21: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:47:34.69 ID:XvyFleB90
シューは男を待たずに玄関へ向かって歩く。
彼は慌ててニット帽を追う。
靴を履いて、二人のうしろをついてきたしぃを見てそれぞれ挨拶する。

( ФωФ)「おじゃましました」

lw´‐ o‐ノv「おぼえてろよー」

( +ω+)「……なんで悪役の逃げ台詞を言うのかな、お前は?」

漫才を前にしてしぃは優しく笑い、手を軽く振る。
そうして二人は椎名家をあとにする。


時刻は十一時間。
正午の鐘がなるまでには砂尾家に着くことができるだろう。
本日も晴天なり。日差しが強く、熱が肌に吸い込まれる。
すぐに汗が湧き出るが、構わず歩く。
どこからか子供の甲高い声が響く。おそらく近くの公園ででも遊んでいるのだろうと思う。


(;ФωФ)「ちょっといいか?」

lw;‐ _‐ノv「ん?」



22: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:51:18.05 ID:XvyFleB90
(;ФωФ)「私たちがいない間に猫が現れたらどうするんだ?」

lw;‐ _‐ノv「おそらくそれはないよ」

(;Фω+)「どうして?」

ニット帽を見ようとして、背景の深緑が目に染みた。
風がほとんどなく、弟者山の木々の微動だにしないさまは力強さを感じる。
太陽や空気だけでなく山も燃えている、彼はふと思った。

lw;‐ _‐ノv「霊の定義は話したと思うけど?」

(;ФωФ)「む?もしかしてあれか?
       魂となっても記憶の浄化に抵抗して現世に現れるとかいう……」

lw;‐ _‐ノv「そうそう。
       未練があってその記憶を手放さないから霊となって現れるんだ。
       まあ、ある程度の記憶を切り離されてるだろうけど、それでも大事な一は守り通す。
       そこを踏まえた上で聞くけど、一つの事柄にこだわってる奴があれこれ器用にこなせると思う?」

確認のための疑問。
単純にその疑問の答えが、男の質問の答えではないのだろう。
数秒考え、彼女が何を言いたいのか理解した。



23: ◆pGlVEGQMPE :2009/03/07(土) 17:56:15.49 ID:XvyFleB90
(;ФωФ)「霊は記憶が少ないから行動が単調になる。
        その点はウツロも同じ……ということか?」

lw;‐ _‐ノv「そのとおり。
       大事な一を守り通した霊も同調した記憶であるウツロも、基本的に足りてないんだ。
       だから行動原理はそこらの機械みたく一定なんだよ」

(;+ω+)「なるほど」

しぃは深夜に猫を見た。
ならばその猫は深夜にしか現れない。
その事実を認めて後ろを振り返る。


椎名家はすでに他の家々に飲み込まれていて、瞳に映らなかった。







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