( ФωФ)さとりごころのようです

3: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 21:58:05.15 ID:5TWzej3E0
  


lw´‐ _‐ノv「いかんいかん、またやってしまったよ」



( ФωФ)「何をやってしまったんだ?」



lw´‐ _‐ノv「……んあ?
       あー、独り言だから気にしないで」



( +ω+)「人前で独り言に没頭するのもどうかと思うが」



5: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:00:43.03 ID:5TWzej3E0
   



  二章 走る幻、仄めく面輪


     三話 夜闇と電光と



9: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:04:37.81 ID:5TWzej3E0
午後七時。
日が沈み、青い空はゆるやかに黒ずみ始め、星がぽつぽつと見えだしてきた。
二人は薄暗い道をてくてく歩き、片方がぼそりと呟いたのでもう片方が注意した。

lw´‐ _‐ノv「んー、だってぇー」

( +ω+)「変な人と思われるぞ。というか私は今後そういう目で見たほうがいいのか?」

lw´‐ _‐ノv「変人ですから」

(;ФωФ)「いやいやいやいや、開き直るな」

彼らはしぃの家に向かっている。
一緒に向かっているので雑談に花を咲かせるのも当然だろう。
しかし彼にしてみれば、正直、話しにくい。
相手は独特の空気と話術を持っているからと、彼は無理無理納得したが。
ただ、納得したから上手く受け答えできるかといわれたら、そうではないのだけれど。
ニット帽が二本の刀に同調するように時々揺れる。

( ФωФ)「というか、お前っていうほど変人じゃないと思うが?」

lw*‐ _‐ノv「あら?ありがと」



11: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:08:09.88 ID:5TWzej3E0
シューが彼の言葉を軽く流す。
彼は「やれやれ」と呟く。
彼はお世辞で変人じゃないと言ったわけではない。
何故ならウツロの性質、戦い方などをちゃんと説明できていたから。

一般人にウツロのことを説明しても、「こいつ狂ってる」としか思われないだろう。
しかし彼は霊が見える人間であり、シューもそこを踏まえて説明してくれた。
霊が見えるからこそ、魂の性質からウツロの説明に持ったいったのだ。


変人というのは第三者には理解できない部類の人間だ。
人を見て、それに合わせて行動する人間なら、そいつは変人じゃなく一般的な人間だ。
人を理解するということは、自分も理解される人だから。


その理論でいけば、シューよりも自分の方が変人なのではないのかと彼は思う。
普通の人には霊など見えず、さらに浄霊できるおかしな力などあるはずないのだから。
かといって彼は自分が変人と認めるのはひどく癪だった。

lw´‐ _‐ノv「??どうしたの?」

( +ω+)「なんでもない」

涼しい空気にため息が出る。



14: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:12:30.35 ID:5TWzej3E0
( ФωФ)「そういえばお前と初めて会った時も、自分のことを『変人』だって言ってたよな。
        どこらへんが変なのだ?」

lw´‐ _‐ノv「頭に決まってるだろバカタレがっ」

(;Фω+)「力強く断言するなよ……いや、そうじゃなくて。
        自分で変人だと言ってても、周りがそんな風に理解するわけじゃないだろ?
        変人だと思われるためにはおかしな行動が背景にあるわけで」

lw´‐ _‐ノv「私がいままでしでかしたヤンチャを知りたいと?」

(*ФωФ)「そうそう」

lw´‐ _‐ノv「……」


シューは星影を仰ぎ、物思いに耽る。
話すべき内容をまとめ、空から帰還したシューの視線は彼のほうへ移動した。
二人の視線が重なり、彼は内心ドキリとしたが、表情には出さない。
彼女の声が虫の音色に混じって再生された。



16: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:16:31.57 ID:5TWzej3E0
lw´‐ _‐ノv「小学生のころ、案山子に何時間も話しかけてた。
       そのころは人も案山子もおんなじものだと思ってたからね。
       奴らはとても寡黙だ。でも何としてでも奴らの声をききたくてね。
       だから実力行使で殴ってみたりした。
       それでも奴らは何もいわなかったから、近くの鳥に話し方をきいてみようと思った。
       でもあいつら一目散に逃げてしまってね。『野郎……』と思いながら追いかけまわしたんだ。
       そのうち農家の皆様から『あんたがいれば案山子いらんね』っていわれて、案山子が姿を消したんだ。
       そのころの私はなにやってたんだろうね?若いって怖いね。
       もうね、バカかと、アボガド……」



(;ФωФ)「いや、ちょっと待ってください」


lw´‐ _‐ノv「ん?」

(;ФωФ)「……マジ?」

lw*‐ _‐ノv「さぁて?どうなんだろうね?」

(;+ω+)「……」

思ったよりもイミフな内容に彼は絶句する。
対称に、テンションが上がった彼女は饒舌になっていった。



17: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:19:04.30 ID:5TWzej3E0
lw*‐ _‐ノv「小六のとき、ちょっとしたことがあって一、二ヶ月ほど引きこもり。
       ヒー姉にすら顔を見せない徹底ぶりでしたっ。
       ご飯と一緒に置かれた紙に『おねがい。部屋からでてきて。今ならやりなおせるから。by ヒート』って書かれててね。
       やったぁ、 私 も v 速 民 の 仲 間 入 り だ ぁ ってこっそり思ったりもしたね。
       で、さんざん周りを困らせた後、晴れて出所。
       そこには元気に走り回るニット帽の姿がっ」


lw*‐ _‐ノv「中学に入ってからは特に目立った行動はしてないと思う。
       でもね、私ってほら、人の顔覚えるの極端に苦手だから、よく名前を間違えて挨拶した覚えがあるね。
       まあこれは小学校のころからだけど。
       もちろん顔を確認する時は両手でグッとロックして顔を寄せて……。
       いやん、はずかしいー、なに言わせてるんだよこの女殺しーっ」


(;+ω+)「お前が勝手に言ってるだけだろ」

lw´‐ _‐ノv「そういえばそうだね」

急に冷静になるなよ。
本当の話、じゃないと思いたい。あまりにぶっ飛びすぎている。
正直なところ、嘘だと言われたらすぐ信じてしまいそうだ。

lw´‐ _‐ノv「……あまりに変だから、この話は嘘ということにしとこう」

(;ФωФ)「うおいっ!!」



19: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:24:04.31 ID:5TWzej3E0
lw´‐ _‐ノv「なに?本当の方がよかった?」

(;ФωФ)「いや、嘘でよかったのだが。
        話の流れ的に本当のことを話すだろう普通!?」

シューの真意がどこにあるのか分からず、彼は混乱する。
その肩に気遣うように手のひらがぽんっと。

lw*‐ _‐ノv「今の話が嘘か真か、なーんてだぁーれもわからなーいもーんさ♪
       ま、存分に悩めや若人」

自分よりも若い者にそれを言われても複雑な気分になるだけだ。
答え提示しろよ幼女体型が、とこっそり思ったりもする。
すると肩に置かれた手のひらに力が籠った気がした。


(;ФωФ)「って、まてまて、いたっ、いたいからっつねらないでっっ!!」

lw´‐ _‐ノv「……悪かったね。
       いつかムチムチになってやるんだから」


どうやら気付かず呟いてしまっていたのだろう。
彼は痛さに声を荒げながら、何度も謝り続ける。
南無。



22: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:27:14.21 ID:5TWzej3E0
そうこうしているうちにしぃの家の前まで来た。
外から見ればごく普通だが、中身はカラフルなことを知っている。
『椎名』と表記されている家の敷地に入り、シューは呼び鈴を押す。

すぐに玄関の戸が開かれた。

(*゚ー゚)「どうもこんばんは」

lw´‐ _‐ノv「きたよー」

( +ω+)「ども」

しぃはすぐに彼らを家の中に入れた。
午前と同じくカラフルな居間に通される。
一度この部屋に入ったが、昼と夜ではやはり雰囲気が変わるもの。
初めて来たときより明るい居間の様子に、彼は今更ながら驚く。

その明るさの基は何も蛍光灯やテレビ、色とりどりの家具のせいだけではない。
しぃより一回り小さい頭があるのが何より大きいのだろう。


(*゚ー゚)「ほら、お二人に挨拶しなさい」

(*゚∀゚)「こんばんわー、シューちゃんにおじちゃん!!」

小さな頭は勢いよくお辞儀をした。



24: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:30:08.35 ID:5TWzej3E0
(;+ω+)「うん、こんばんは」

彼も頭を下げる。
この子がウツロに憑かれたしぃの妹だろう。
姉と同じ髪型をしていて、彼女らはよく似ている。

lw*‐ ,‐ノv「ププッ……おじちゃん」

(;ФωФ)「お前は言うな。なんか腹立たしい」

彼自身、『成人になったら年をとるだけ』と考えているからおじちゃん発言は受け流せる類の冗談だ。
ただ、実年齢は二十歳なので複雑な感情も無きにしも非ず。
そして歳を知っているニット帽に言われるのはさすがに見過ごせないものがある。
「お前、私と少ししか離れてないだろうが」、その文句を彼は喉もとでとどまらせる。
それをいってしまえば最後、今後シューにロリータ発言できないだろう。
彼女にはこれから先ずっとからかわれる予感がするので、対抗できるカードをできるだけつぶしたくないのだ。

(*゚ー゚)「あ、晩御飯食べます?」

lw´‐ _‐ノv「いや、家でたらふく食べてきたので」

シューはすでに意識を彼からしぃに向けていた。
相変わらず切り替えが早い。



26: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:34:53.96 ID:5TWzej3E0
(*゚∀゚)「なら遊ぼうよ!
     今日は人が多いからボードゲームもできるよ!!」

(;゚ー゚)「こらこら、つー。
     少し大人しくしなさい」

(*゚∀゚)「いいじゃんいいじゃん!
     私たちもごはん食べたんだし!!
     私も姉ちゃんの友達と遊びたいよ!!!」

声のボリュームが大きく、居間に響く。
しぃになだめられている少女を見て、彼は一人の女性を思い浮かべる。
そして願う。どうかこの無邪気な少女が砂尾家の騒音元みたいになりませんように。

lw´‐ _‐ノv「……なんか昔のヒー姉みたいだなぁ」

その呟きは少女の未来を示していた。
おかげで彼は、その願い事が五秒で崩れ去ったのを知った。
シューはそんな彼の考えなど知らず、何事もなかったかのように言った。
事実、このニット帽には何事もなかったのだが。

lw´‐ _‐ノv「いいよ、遊ぼう」

「どうせしばらく待たなきゃいけないんだろうしね」と続け、つーの提案に賛同する。
つーは喜んで棚に置いていたトランプを取ってくる。
しぃはすまなそうな顔をして何度もぺこぺこしていた。

カーペットの上にトランプが置かれ、それを囲むように四人は座り込む。
その後三時間ほど遊んだ。



29: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:40:55.81 ID:5TWzej3E0
…………。
……。




lw´‐ _‐ノv「つーちゃんは今年で何歳なの?」

(*゚ー゚)「十歳です」

lw´‐ _‐ノv「へえ」

遊び終わったトランプを片付けているしぃにシューは質問する。
質問の中身はつーに関するものがほとんどだ。
ちなみに話題の彼女は眠くなったらしく、寝ようとしたところを風呂に入るように姉に言われて、現在入浴中。
だから今は遠慮なくつーのことを聞けるわけだ。

( ФωФ)「で、件の猫を見たのは何時ころでしたか?
        たしか深夜だといったのは覚えているのですが」

(*゚ー゚)「……午前一時あたりだったと記憶しています」

lw´‐ _‐ノv「んー、まだ時間はあるね。
       つーちゃんが寝てから対策を立てようか」



30: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:44:19.97 ID:5TWzej3E0
lw´‐ _‐ノv「今回の方針は猫のウツロを確認すること。
       だから例えウツロが現れても、今夜は見逃すよ。
       でも倒せるチャンスがあるか、ウツロが凶暴化してた場合、話は別だから。
       そのことを一応頭に入れておいてね」

倒せるチャンスがあるか、ウツロが凶暴化していた場合、か。
前者はおそらくないだろうなと漠然と彼は思った。
チャンスがあるかどうかなんて簡単に判別できるわけがないからだ。
だから彼は後者について考え、思う。

もし凶暴化していた場合、私はウツロを倒せるだろうか?


lw´‐ _‐ノv「簡単に行動を説明するね。
       まずしぃちゃんにはつーちゃんの部屋以外の明かりを点けてもらいたい。
       明るいほうが見つけやすいからね。
       次につーちゃんの部屋の隣に私たちを待機させてほしい。
       その後は何があっても外に出ないこと。できれば窓も開けないでほしい。
       ここまではいいかな?」

(;゚ー゚)「は、はい、大丈夫です」

lw´‐ _‐ノv「暑くなるけど本当に大丈夫?」

(*゚ー゚)「今夜だけエアコンをつけておきますので」

lw´‐ _‐ノv「うらやましい。一台ゆずってくれ」

無茶言うな。



32: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:48:56.88 ID:5TWzej3E0
( +ω+)「それで私たちはどうするのだ?」

lw´‐ _‐ノv「つーちゃんの部屋の外を一晩中観察。
       これだけだよ」

(;ФωФ)「……ウツロが現れなければ朝まで、か?」

lw´‐ _‐ノv「とーぜん」

(;+ω+)「けっこう根気がいるな」

lw´‐ _‐ノv「そのためにロマも連れてきたんだから、頑張ってね」

例えどちらかが寝てしまっても、もう片方が起こせばいい。
それならたしかに一晩中見張れるだろう。
と、彼がそこまで考えてから、一つの不安を覚えた。
もしかして見張りを自分に任せてお前は早々に寝るんじゃないよな?

彼が難しい顔をしていたからか、隣から声がかかった。

(*゚ー゚)「すみません。がんばってください。
     私もがんばって起きてますので」



34: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:52:19.54 ID:5TWzej3E0
(;ФωФ)「いや、しぃさんは寝てもいいと思いますよ?」

ウツロを消してほしいと頼んだ立場だからといって、卑屈になることはない。
別に無理して起きている必要もないのだ。
そう思って彼は言ったのだが、しぃはゆるやかに首を横に振って彼の言葉を否定する。

(*゚ー゚)「つーの部屋の隣は私の部屋ですので」

態度から察するに一人だけ寝るのが申し訳ないみたいだ。
さらにいえば、たった一人の妹の安全を寝て待っているわけにはいかないとのこと。
とりあえずシューは「無理しないでね」と彼女に言ったが、彼もその意見に心の中で同意した。


そうしてさらに一時間。
つーはすでに就寝している。
しぃはシューに言われたとおり、家中の明かりをつけた。
そして三人はしぃの部屋で待機する。

部屋の中はよく片付いていた。
今更ながら考えてみれば、居間も片付いていたような気がするので、案外しぃは綺麗好きなのかもしれない。
まあ居間はカラフルな印象が強すぎたが。
そんなことを考えて、彼はしぃの部屋を見渡す。
彼女の部屋は居間ほどカラフルじゃない。むしろ地味な方だろうが、そこがいい。
窓際には観賞植物がいくつかあるが、名前は分からない。
マガジンラックには園芸関係の本や学校の教科書、漫画などが詰め込まれている。

なんだか女の子の部屋だな、というのが今まで女の子の部屋に入ったことのない彼の感想だ。



37: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:56:34.30 ID:5TWzej3E0
あと二十分ほどで日付が変わる。
午前一時までまだ時間があり、それまで猫のことを聞こうという流れになった。

かの猫は……しぃが動物に明るい人でなかったので種類は分からないとのことだが……茶の毛並みであるらしい。
オス猫で呼び名はたくさんあったようで、しぃたちはタマと呼んでた。
悪ふざけした若者にホーリーナイトとか呼ばれていたこともあったらしい。それは黒猫だ、ばかもの。

(*゚ー゚)「人によって呼んでる名前が違うっていうのも面白いですよね。
     シューさんもまったく違った名前で呼んでたのも覚えてます」

lw´‐ _‐ノv「ん?私もその猫と面識あるんだ?」

(*゚ー゚)「以前、猫と一緒に会ったときに『お前の名前はこれで決まりだ』とかいってたのを見かけましたよ。
     まあずっと前の出来事ですから覚えてないかもしれませんが」

シューは首を傾げていたが、すぐに手のひらに拳を収め一言、「あーあー、あの猫だったの」
その様子を見て「いったいこの自称変人はどんな名前を与えたのだろう」と思い、彼は聞いた。

lw´‐ _‐ノv「すまん、忘れた」

( +ω+)「おい、名付け親」

lw´‐ ,‐ノv「だってぇー、こっち方面にあまり来ないんだもーん」

ちなみにその後、しぃにも聞いてみたが彼女も覚えてないようだった。
すぐに謝られたが、「謝らなくていいですよ」と彼は言っておいた。
だがシューよ。お前は謝っておけ。猫に。



39: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 22:59:15.70 ID:5TWzej3E0
  

      『 I wanna be a びッ……』


lw´‐ _‐ノv「あ、ちょっとごめん。電話だ」

シューはハーフパンツのポケットから携帯電話を取り出し、耳にあてる。
着信音にいろいろツっこみを入れたいが、彼は我慢した。
彼もしぃも黙りこみ、外から響いてくる虫の音と相槌を打つシューの声のみが聞こえる。

lw´‐ _‐ノv「……事情はわかった。そこで待ってて」

電話はすぐ済んだ。
携帯をポケットにしまうとニット帽は彼に顔を向ける。


lw´‐ _‐ノv「ちょっくらコンビニいってくる」

(;ФωФ)「……はぁ?」

「いきなり何言ってるんだこいつ?」、思ったが彼は口に出さない。
そんな彼の心を見透かしたように弁明する。



41: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 23:01:30.73 ID:5TWzej3E0
lw´‐ _‐ノv「モナーさん絡みだよ。わりと緊急事態。
       またんきくんとコンビニで待ち合わせしてる。
       ヒー姉たちに連絡入れとく。ロマはそれまで一人で頑張って」

相変わらずの無表情だが、若干焦っているようだ。
耳に入る会話がところどころブツ切りな感じがした。
何が起こったかは分からないが、彼女が「緊急事態」と言ったのだ。
行かせないわけにはいかない。

(;ФωФ)「なんとなく分かった。
        こっちは任せろ」

lw´‐ _‐ノv「うん任せた」

シューは立ち上がり、この部屋に入ってから壁際に置いていた二本の刀を手に取る。
そして急いで部屋を出ようとドアノブに手をかけたが、立ち止まる。
「どうしたのだろう?」とシューの背中を見ながら思っていると、彼女は振り返り、彼の顔をもう一度見る。


lw´‐ _‐ノv「ロマ。聞いて」

(;ФωФ)「お、おう」



42: ◆pGlVEGQMPE :2009/05/04(月) 23:04:33.25 ID:5TWzej3E0
lw´‐ _‐ノv「霊が見えるって言ってたよね?
       でも普段のロマは霊を見ないようにしてるんだよね?」

(;ФωФ)「……」

肯定の意思を伝えるために首を縦に振る。
霊が見えるというのは結構疲れるもので、そのため彼は『霊を見ない』ようにしているのだ。
分かりやすく言うなら、自分の意志で目を瞑っている、というべきだろうか。
「だが、なぜ彼女が見ないようにしてることを知っているのだ?」、疑問に思ったが彼の口から言葉が出なかった。

lw´‐ _‐ノv「なら霊を見るような感じで猫を見て。
       それでいろいろ分かるはずだから」

(;ФωФ)「ああ」

なんとか返事をする。
彼は脳みそに『ウツロを刮目して見よ』と刻み込んだ。


そして彼の返事を聞いたシューは、表情を変えずに部屋から飛び出して行った。



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